マンションに戻ると部屋は真っ暗。
暗闇の中、月明かりにキョーコがぼんやり浮かび上がっている。
どうやらガラス越しに夜空を眺めている…のか?
「キョーコ…どうしたんだ?!」
心配して声をかけると、キョーコはゆっくりとした動作で振り返る。その目はどうやらうつろなようで。
「どうした?一体何が…」
「敦賀さん…抱いて」
キョーコの手から、バサリと冊子が落ちる。どうやら台本らしい。
ということは…これは台詞?そういえば男を誘う役をもらったとかで悩んでたな。
自分の置かれている状況を把握しようと思考をめぐらすが、
うっとりと色っぽく迫るいつもとは違う彼女に心臓はバクンと跳ね上がった。
小さく震える手で台本を拾い上げ、キョーコに手渡す。
首筋が熱くなるのを感じながら、気付かれないように背を向け傍らの間接照明で部屋に明かりを灯した。
「…とりあえず落ち着きなさい。キョーコ、君は…時々そうやって、役に入れ込みすぎて、
自分との区別がつかなくなるんだよ。今もそういう状態なんだ、今の君は本当のキョーコじゃなくて…だからとにかく」
「こういう私はお嫌いですか?」
「そうじゃない…そうじゃないよ。嫌ったりするわけないじゃないか。そういうことじゃなくて」
「わかってない」
キョーコは背中に寄り添い、腰にすっと手を巻きつける。
回した手で俺の胸へと這わせて上下にさすり、胸の膨らみを背中に擦り付ける。
「私だって欲情するの」
こんなふうに俺を煽って、この子は普通じゃない自分を俺が抱くのか試しているのか?
もう抑えられそうにない自分と戦いながら、動きを止めようとキョーコの手へと自らの手を重ねた。
するとキョーコはその両手首をつかみ、俺の腕を後ろへと回した。
そして後ろ手にしたところで、ソファにあったベルトで両手首を縛る。
「…?!っキョーコ、何を…っ」
驚いて振り向いたところで胸をドン、と押され、そのまま倒れるようにソファへと座らせられた。
「待ってて…すぐ……」
キョーコは着ているシャツのボタンをひとつ、またひとつと外していく。
すべて外し終えるとゆっくりとシャツを脱ぎ捨てた。
黒いブラジャーをした色白の身体が照明に浮き上がり俺を誘う。
もはや抑えることを忘れて見入っていたが、手を出そうにも縛られて動けない。
「キョーコ、これじゃ手伝えないよ。外してくれないか」
「オイタはダメ…敦賀さんはすぐに全部脱がせちゃうんだから」
くすくすと笑いながらキョーコはスカートを脱ぎ捨てると黒のショーツを露わにする。
ブラジャーとセットで以前にプレゼントしていたものだった。
まだ目の前の彼女は下着をつけている姿だというのに、
今までにないキョーコの大胆さに興奮しているのか、既に俺の下半身は熱くなっていた。
「頼むよキョーコ…」
「いけない人ね。もう固くなっちゃったの?」
キョーコはゆっくりと近づいてきて…シャツのボタンを外し胸をはだけさせ、ズボンを下げられ、
ボクサーパンツの真ん中は膨れ上がっていてなんとも情けない気分だ。
その間も俺は、脱がせているキョーコのブラジャーから覗きそうで見えない突起やショーツの中の茂みを想像してますます興奮は高めていた。
下着姿だけで完全にタつなんて…
「まるで発情期の男の子ね」
そう、あるいは変質者、だな。
自由に動ける足のつま先で、キョーコのショーツの中央をこすってやる。
「あっ…ん!…もう、ダメぇ…んん…ぁあ…」
手の指ほどは動き回らない愛撫がもどかしいのか、
キョーコは自ら腰を前後に揺らしてつま先に擦り付けてくる。
花芯と思われる膨らみが親指に当たる。
「綺麗だよ、乱れてるキョーコも綺麗だ」
「はぁ…んぅ…っ…」
キョーコは腰を動かしながらブラジャーを少しズリ下げて乳首を出し、
自らつまみあげるとそこはきゅっと上を向いて小さく立った。
「はぁ…ん…ねぇ、私、こうされるの、好き…」
「ほかには?どうされるのが好き?」
手が駄目だら言葉で手伝ってあげようね。
「ほか…ほかには…」
キョーコは名残り惜しそうにしながらも俺の届かないところまで下がり、おずおずとショーツを下げて脱いだ。
「糸をひいてるよ。びちょびちょに濡れて、淫乱な子だ」
「ん…そう…私……いやらしいの…」
「足にまで垂れてるよ。待ちきれない?」
顔を赤らめ、キョーコはこくんと頷く。
「も…待てない……いい?」
「なにが?」
「…もっとエッチなこと…もっと…気持ちいいこと、してもいい?」
「いいよ、好きなようにしてごらん」
許しを得たキョーコは嬉しそうに笑みを浮かべながら近づいてきて俺の下着を脱がせる。
脱がせやすいように尻を浮かせてやると下まで一気に下げ、いきり立ったそれをじっくりと見る。
愛しそうに何度か手で触ると、ソファに上がり俺に跨ってきた。
首に手を廻し、ゆっくりと腰を下ろしていく。
はちきれんばかりに膨れているせいか、入り口で少し入れたところで動きを止める。
「ああっんっ!…おっきいよぉ…入んない、かも…」
「そこまででいいの?我慢できる?」
少し腰を揺らして煽ってやるが…手が使えないせいか、あまりいつものようには苛めてやれそうにないな。
「やっ、やだぁ、そんなの、がまん、でき、ないっ…!」
「いいんだよ、気持ちよくなって」
キョーコはぎゅっと目をつぶり、ゆっくりと俺を沈めていく。
眉をしかめたり、一瞬うっとりと恍惚の表情を浮かべたり、小さく声を上げたり、
快感で刻む表情がたまらなく艶っぽく、そして可愛らしい。
「いい顔だ…うまいよ、もっとおいで」
「ん…あ…入ってるぅ…」
「そうだね。どんどん呑み込んでるよ、キョーコのいやらしいところ」
「やだ…言わないでぇ…っ…ぁあ、ん…全部、はいっちゃった…ん…」
しかしキョーコはゆっくりと腰を上げ、入ったそれを再び抜いてしまう。
「…っ…キョー…コ…?」
「んー、もう一回」
俺の肩に手を置き、下を向いて位置を確認しながらまた呑み込む。
奥までゆっくり入れ、また抜き出す。そしてまた…
そうして何度も何度も抜き差しを繰り返し、徐々に動きは早くなっていった。
ブラジャーからこぼれる乳房が小刻みに揺れ、ちゅぷ、ぐちゅ、と徐々に大きな音が響き出す。
「いやらしい…音だね…空気が漏れてる音がするよ」
「聞かない、でっ…見ないでぇ…」
「そんなの無理だよ。まったく…いつそんな動き、覚えた?」
キョーコは器用に腰を廻している。
たまに腰を突き上げてやると、キョーコはそのたびに甲高く鳴き声を上げる。
「ああっ!…敦賀さん、が…教えた、のぉ…ああん!あ、あ、やだ、きちゃ…う…」
「感じてるキョーコの顔、一番綺麗だな」
「だ、だめっ、見ちゃ、いやっ!」
片手で俺の目を覆う。暗闇の中での繋がりは一層キョーコの中が感じられる。
俺は目も手も塞がれたまま、無我夢中で腰を突き上げる。
二人で果ててしまうまで、俺は執拗にキョーコを啼かせ続けた。
感じているキョーコが一番綺麗と言ったのは本心だ。恐らく彼女は意識していないのだろうが。
荒げる息を落ち着かせてから俺のモノを抜き去り、キョーコは俺の腕を縛っていたベルトを外した。
行為の途中からは既にいつものキョーコだったが…
本人は今になって我に返ったのか真っ赤になって慌てている。
「ほんとにごめんなさい…私ったら……痛かったですよね」
「痛いかどうか、試してみる?」
「え?」
キョーコの両腕を高く上げ、今度は俺がその腕を固く縛り上げる。
逃れようともがく彼女を抱え上げてベッドまで移動し、その腕をベッドの柵に繋げてみた。
少し離れて眺めてみると、これはなかなか扇情的な光景だった。
「さあ、たっぷりお返しをさせてもらおうかな」
倍返し、くらいじゃ借りは返せないな、と付け足して、俺はキョーコを朝まで征服した。