「ねぇ、あんた、あたしを見て何とも思わないのかい?」  
女の言葉に、男の心は揺れた。  
目の前に立つ女は生まれたままの姿に、領巾だけを纏っている。  
「動かないでくれないか」声の震えを抑えて、そう告げた。  
「男は皆、あたしの躰に触れたい、抱きたいって思うんだよ」  
女は、妖艶な笑みを浮かべる――まるで、男の心を見透かすかのように。  
男は視線を落とし、黙々と彫り続ける。  
ふとした出会いから、仏師である男は、  
女の姿を菩薩像に写したい、と思った。  
遊び女として、数多の男と肌を重ねてきながら、女はどこか清らかで、  
澄んだ美しさを湛えていて、男は一目で心を奪われた。  
ふと気配がして目を上げると、女がすぐ傍らに膝を付いていた。  
「動くな、と・・・・」  
女は、男の手から彫り刀をそっと取り上げ、床に置いた。  
「何を―――」  
叱る様な男の声を遮って、女が言った。  
「あんたの目を見たら分かるよ。  
あんな目で見られたら、あたしも、ほら」  
女は自らの茂みに手をやり、そこから滴る甘露を指で絡め取る。  
それで、男の唇をなぞりながら、耳にふうっと息を吹き掛けた。  
「欲しいの」  
女の甘い声に、男の躰は痺れた。  
いけない、いけない――どこか遠くで声がする。  
しかし躰は声に逆らい、気が付くと女の細い腰を抱き締めていた。  
互いに唇を貪りながら、床に倒れ込んだ。  
仰向けに横たわった男を跨ぎ、女は天に向かって  
そそり立つ楔へと、腰を落としていく。  
「あ、ぁあん・・・・・、こんなに大きいの、初めて」  
悩ましげな声をあげて、女は腰をくねらせた。  
蜜壺の熱さに溶けながら、男は下から女を突き上げてやる。  
「・・・は、いぃ・・・・もっと・・・」  
女は、形の良い乳房に男の手を導いた。  
乳首を摘み捻ってやると、白い喉元を見せて仰け反った。  
――こんな時でさえ、この女は清らかで美しい――  
共に絶頂を迎えた瞬間、男はそう思った。  
 
 

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