久しぶりのデートの帰りだった。
「敦賀さん、お家に寄っていっても構いませんか?」
「何だい改まって?勿論いいに決まってるじゃないか。」
キョーコと付き合い始めて早三ヶ月、付き合う以前から家には何度か来ている。
なのに何故か神妙な面持ちで、懇願するかのように聞いてくる。
-何かあったのか?随分思い詰めた感じたけど…-
マンションの駐車場に着き、車を降りようとした時キョーコが呟いた。
「今夜は家に送ってくれなくてイイです。」
「えっ?だって帰りはどうするんだい?」
「あっ明日、送って行ってください。」
「それって、つまり泊まっていく…って事?」
「…ハイ。」
付き合い始めはしたが、まだそうゆう関係にはなっていなかった。
キス止まり、しかもそっと触れるだけの可愛いものだった。
もっと関係を深めたいと思ってはいるのだが、何度キスしても慣れないのか
毎回キョーコはギュッと目を閉じ身を固くする。
その姿は可愛くもあるが、次へ進むのを躊躇わせる。
-これ以上進んだら間違い無く箍が外れるな。
そうしたら止める事など出来ないし、もう暫く待つか…-
そう心に決めた。
内では欲望と言う名の獣が今か今かと、ソワソワしていたが
そのことを匂わす事さえしなかった。
-ようやく時が来たのか?-
「ちゃんと意味が分かって言ってるのかい?」
「もっもちろんです。」
うつ向いている彼女の肩が少し震えていた。
「無理しなくてイイんだよ、急ぐ事じゃ…」
言い終わらないうちにキョーコは車から降り、エレベーターホールに向かって歩き出していた。
慌てて車を飛び下り後を追う。
「私って魅力無いですか?」
エレベーターホールに着いた時キョーコは呟いた。
「そんなことないよ。」
-どれだけ我慢してると思ってるんだ。-
「だっだっていつもキスだけで、それ以上はしようとしないじゃないですか!」
「しないんじゃなくて、出来なかったんだ。」
「え?」
ポーンとエレベーターの扉が開く、キョーコの背中に手を添え乗り込み扉が閉まった瞬間抱き寄せた。
顎に手をかけ無理矢理口を開けさせ、舌をねじ込み口腔を犯した。
「んっ!?ふっ…んん…」
たっぷりと自分の持つテクニクックを余すことなく使い、上顎を舐め舌を絡め強く吸い付いた。
再びポーンと音がし扉が開くと、唇を離しキョーコを見つめる。
「分かる?これよりずっと凄い事するんだよ?」
「…だっ大丈夫です。」
「ホントに?俺は君が思うほど優しくも大人でもない。
ずっと、ずっと君が欲しかった、嫌だと泣いても離してあげられそうには無い。」
「嫌だなんて言いません。嬉しい、敦賀さんが私を欲がってくれてたなんて。」
「エレベーターを降りたら、もう逃げられないよ。」
「私を敦賀さんの物に、心だけじゃなく躰もあなたの物にして下さい。」
「でもっ…」
そっとキョーコの指が蓮の唇に触れ、言葉を遮られる。
「敦賀さんになら何をされてもイイの。好きに、あなたの好きにして下さい。」
そう言われた途端もう一度抱き締め口づける。
さっきよりは優しいが、深い口づけをし抱き上げてエレベーターを降りた。
案の定箍が外れた、待ち望んだ時がやってきたのだ。戒めを解かれた獣が喜々とし思案を巡らせる。
-要望通り俺の物だという事を、じっくりと刻みこんでやろう-
長い永い初めての夜が始まった。