最近の私はバラエティの仕事以外にもドラマの仕事がコンスタントに入り始めてなかなか順調。
そしてなにより――いまだに信じられないけれど、敦賀さんとお付き合いしている。
付き合い始めて約半年ちかく。このことはごく身近な人にしか知られていない。
超がつくほど人気者の敦賀さん相手だし、ファンやイメージあってのお仕事だし、
そういうのを公表するにはタイミングが重要、ってことらしい。
付き合い始めて今までは、とにかく信じられなくて、幸せで。
敦賀さんの強引さや嫉妬深いところ、意外と子供っぽいところや我が儘なところ、
そういうのを知っていくのが毎日新鮮で。
それに…深い関係になるのが怖くて尻込みしてた私を、ゆっくり解きほぐすみたいに時間をかけて愛してくれて、
ようやく最近、恋人ってこういうことなのか、なんて思えるようになってきた。
なのに今になって、今度は違う不安が募ってきている。
きっかけは、ひとりでバラエティ番組を見ていたとき。
名前も良く知らない俳優さんが司会の人に、
ドラマで恋してると本気になっちゃったりしません?と聞かれて、こう答えたのだ。
「そうなんですよ、僕、本気で恋しちゃうんですよ!
女優さんのほうは撮影終わるとあっさり『お疲れ様』で終了、みたいですけど」
別に…敦賀さんもそうだ、と思ったわけじゃない。
きっと、もし聞いてみたとしても、そんなことあるわけじゃないか、と呆れて言うに違いない。
ただ、綺麗な女優さんたちを相手に毎日仕事をしていて、まったく心が揺れないなんて、どうして言い切れるんだろう?
例え今までなかったとしても、この先……
今まで能天気にそんな不安を抱かなかった自分が不思議でならなくなってきた。
「――…コ…キョーコ、どうした?」
突然敦賀さんの顔が目の前にあって、ソファに座っていた私は飛び上がって驚いた。
「敦賀さんっ!!あ…あの、おかえりなさい」
「ただいま。何度も呼んだのに反応しないから寝てるのかと思ったよ。
考え事?それとも妖精さんとでも会話してたのかな?」
笑いを噛み殺している様子の敦賀さん。
「もう…バカにしてるんですね?第一こんな都会のマンションに妖精さんたちは来ないんですっ」
「別にバカにしてなんかないよ。かわいいな、と思っただけ。で、何か心配事?」
「――いえ…なにも」
「ほんとに?」
「おなかすいてますか?何か作ります」
こんな幸せがいつか終わるんじゃないか、そう思ったら胸がきゅううっと痛くなった。
敦賀さんは笑顔を作って立ち上がろうとした私を押し倒し、唇を塞ぐ。
「んっ…るが…さん…」
「ごはんより、キョーコが欲しいな」
「だめ…まだシャワー浴びてないです…んん」
その日も敦賀さんは、優しくいたわるように愛してくれた。
その翌日。
ドラマの収録が終わって楽屋で帰り支度をしていると、ドアがノックされた。
「はーい?」
ドアのほうに向かうと、私が開けるのも待たずにドアは開けられて、
そこには見たことのない女の人が立っていた。
少しパーマのかかった長い髪、170くらいはありそうな身長でスラっと細くて華奢で、
とにかくすごく綺麗でスタイルが良くて、私は口をあんぐり開けてぼんやり眺めていた、と思う。
その人はというと、私を頭の先から足の爪の先まで、すべてチェックするみたいにじろじろ見ている。
――綺麗な人だわ…ポスターの中から出てきたみたい
そんなことを思っていると、しばらく私を観察していたその人がようやく口を開いた。
「なぁんだ、期待はずれ」
「え?」
「蓮に新しい女が出来たっていうから見にきたんだけど、たいしたことないじゃない」
自分は昔敦賀さんとつきあっていた、とその人は言った。
要するに…ヨリを戻したいと思って日本に来たら、女がいると聞いて見に来たらしい。
「じゃ、そういうことだから」
部屋に香水の香りを残して、その人は去ってった。
それからどのくらいじっとしてたんだろう?
覚えていないけど、何も考えられなくてただぼんやり座っていたら、ドアがノックされて敦賀さんが入ってきた。
「キョーコ、どうした?電話しても出ないし」
「あ…電話…?」
「いや、気付かなかったんならいいんだよ。帰ろうか」
収録が早く終わって、そういえばキョーコも同じ局で仕事だったと思って。
敦賀さんが話しているのを遠くで聞きながら、私はさっきの人のことを考えていた。
――あんな綺麗な人とつきあってたんだ…
そうよね、敦賀さんみたいな素敵な人なら、並んで立ってるだけで絵になるだろうし。
そもそもなぜ私みたいな人間を選んでくれたのか、そっちのほうが不思議なんだわ。
きっとあの人がヨリを戻そうって言ってきたら…
「キョーコ、やっぱり表から出よう」
「え?」
腰に手を廻されてくるりと方向転換される。
「表って…だって目立っちゃうからダメだっていつも――」
出口を振り返ると、さっきの女の人が外を向いて待っているのが見えた。
「…大丈夫だよ、たまに表から出るくらい平気」
「敦賀さんっ!」
私はわざと大きな声をあげてしまった。
あの人が気付いて振り返るのが見える。
「わ、私、忘れ物したんです、だから取ってきます」
「忘れ物?どこに?」
「…楽屋です。あの、先に帰ってて結構ですから」
「楽屋って……なにもなかったと思うけど…一緒に行くよ」
「いえ!いいです、ひとりで行きますから」
「ちょ…っとキョーコ!」
そのまま表の出口へと走って外へ出た。
敦賀さんは追いかけてこなかった。
目の端であの人が敦賀さんに近づいてるのが見えたから、きっとあのあと話をしてそのまま――
どうしよう…もう敦賀さんのマンションには帰れない。
そう思って、自分が他に行くところなんてどこにもない、と気付いた。
――そっか私…敦賀さんを失っちゃったら、なんにも残らないのか。
空を見上げると、雨がポツポツと落ちてきた。
「仕事、がんばんなきゃなぁ」
雨がひどくなっていく様をぼんやり見ていたら、いきなり腕を掴まれた。
「…ったく、何をやってるんだ君は」
「敦賀さん……」
そのまま車に押し込まれた。
シートが濡れるからいい、と言う私を無視して、敦賀さんは怒ってるみたいに黙ってマンションまで運転した。
部屋に入るなり、服を着たままバスルームに放り込まれ、熱いシャワーをかけられる。
「敦賀さん…怒って…っ…んんっ!」
唇を塞がれたまま服を脱がされていく。
胸の突起をカリっと噛み付かれて私は思わず声を上げた。
「ああっ!だ、だめ…」
「ダメじゃない。キョーコ、なぜ逃げた?」
「に、逃げてなんか…」
「逃げただろう?」
顎を掴まれて、眼を覗き込まれて思わず眼を逸らす。
「だって…」
「俺から逃げるなんて、許さないよ」
「あっ…!」
いきなり指を陰唇に這わせ、中の愛液をクリトリスへとぬすりつける。
「あ、だ、だめっ!!…ゃあっ!」
そのままくるくると突起を触られて、あっというまに絶頂感が身体を走り抜ける。
力が入らなくなって、そのままペタリと座り込んでしまった。
敦賀さんはハァハァと息をする私をひっぱりあげて浴槽のふちに座らせた。
シャワーを止めて膝をついて、私の両頬を両手で挟んで確認する。
「もうイったの?」
「…はい…」
「嫉妬したの?あの女に」
「はい…」
「どうして?」
「だって…だってあの人、すごく…すごく綺麗で、スタイル良くて色気もあって…
私なんて……胸もないし…色気も…っ…」
素直に気持ちを吐いてるうちに、涙がこみあげてくる。
私を見ながら敦賀さんは呆れたようにため息をついた。
「キョーコ…ずっと抑えて優しくしてきたけど、もうやめるよ」
「え?」
「キョーコの色気を教えてあげるから」
敦賀さんは言い終わらないうちに、戸惑う私の両膝を広げて顔を埋めた。
バランスを崩して倒れてしまいそうで、身体を支えるのに必死なのに、
そんなことには構わず敦賀さんはあそこの襞に舌を這わせる。
「だ、だめっ、つるが、さんっ!」
明るいバスルームで今までにないくらい激しく吸い付かれたことが恥ずかしくて、
なによりじゅるじゅると響く音…自分がこんな音を出しているってことの恥ずかしさに身体中が熱くなる。
そしてそのことはますます快感に拍車をかけていく。
敦賀さんは蜜の溢れる場所とその上の尖りを交互に苛めて、確実に私の感じる場所を攻めてくる。
あまりの気持ちよさに何も考えられなくなってきて…恥ずかしさを忘れて喘ぎ始めてしまう。
「あ、あ!やだっ、そん、な、音、たてない…でぇっ、はぁん!だ…めっ」
「じゃあ、自分でやってごらん」
突然中断した敦賀さんは、少し下がって壁にもたれて座る。
「じ、自分でって…」
「どこをどうしたら気持ちいい?知ってるだろう?」
紳士スマイルを浮かべて嬉しそうに告げる。
「そんなっ…そんなの、できない…!」
「見せて」
恥ずかしくてたまらない。そんなのできるわけない!
そう思っているのに…突然止められた愛撫にあそこがうずいてしまって我慢できずにそっと指を伸ばす。
クリトリスにそっと触れただけで、身体がビクンっと反応した。
「感じやすいよね、キョーコは」
「い、言わない、で…」
「おまけにいやらしい」
ちゅぷ、とあそこに指を入れる私を楽しそうに眺めながら解説する。
「そう…そこが好きなんだね。そうやって抜き差しするのが好きなのかな」
「や…んぅ…あん…わかん、ないぃ…」
「一本じゃ足りないだろう?ほら、2本でも余裕で食べちゃったね。音が響いてるよ」
「いやっ…聞かないでぇ…ああんっ…やだ、私、の、こと、見ないでっ!」
「なるほどね、かき回されるも好きなんだね。すごいよ、どんどんよだれが垂れちゃってる」
「あ!あ!やだっ、気持ち、いぃっ、ん、んぁっ、きちゃ、きちゃうっ!」
我を忘れて思いっきりかき回し始めた私を見て、敦賀さんは立ち上がって私の手を取り指を抜かせた。
「や、やだっ、どうし…!」
抗議する私の腕をひっぱりバスルームを出る。
鏡の前の洗面台で手をつかせ、腰をひっぱって臀部を突き出させた。
後ろでズボンを脱ぐ音がして、臀部の中央に敦賀さんの熱いモノが押し付けられる。
ソレで溝をなぞったり、入り口のほうで抜き差しを楽しんでいる。
「あ、んっ、敦賀さん、の…いじわる…」
「キョーコ、鏡、見てごらん」
鏡に映る私は…目がうつろでトロンとして、物欲しそうで…すごく淫乱な顔をしていた。
「わかる?色気ってのは、こういうことだよ」
「…っ…わかん…ない…!」
「わかるよね?キョーコ、今、すごくいやらしい顔して、ここからダラダラと卑しい液を垂らして、
腰を振って、入れてくれってお尻出してるんだよ」
「ち、ちが…」
「違うの?じゃあいらない?」
差し込まれようとしていたモノが引き抜かれる。
「ああっ!や、やだ、抜かない、でぇっ」
「いらないんじゃないの?」
「嘘、嘘、なの、欲しいっ、すごく、欲しい!おねがい、も、入れ、て…」
私の懇願に答えて敦賀さんは熱くなってるソレを激しく突っ込んできた。
初めての激しさに…今までにないくらいに乱れてしまう。
めちゃくちゃに突かれれば突かれるほど、
敦賀さんの好きにされてるって思うと、なんだか嬉しくなってしまって快感が高まって。
「あ!あ!やだぁ、つる、が、さんっ、どうしよぉ、気持ち、いい、よぉ、あん!
や、やだ、こわ、こわれ、ひゃうぅ、怖い、よおっ、ぁあっ!んん!」
敦賀さんは突然動きを止めて、私の顔を掴んで鏡越しに眼を合わせるように向けさせた。
「もう逃げない?」
「あ、つるが、さんっ…やだ…続きっ」
「質問に答えて、キョーコ。もう俺の愛を疑わない?」
「ん…はぁ…わ、わから…ない、です…だって…」
「抜いてほしいの?」
耳元で囁かれて思わず叫ぶ。
「やだっ!抜いちゃ、だめぇ…っ…逃げ、逃げません、もぉ…だって、離れたく、ない…
好き、好きなんです、敦賀さんの、こと…すごくっ…苦しいくらい…んんっ」
「俺だって好きだよ…すごく。だから疑ってほしくないな」
「…わかりました…わかったから…っ…もう…」
「ほんとに?」
「ほんとです、だから、だから早くっ!」
動きが再開されて、身体じゅうの毛穴が開いたみたいに興奮してしまう。
両腕を後ろにひっぱられて、手首を掴まれてますます強く突き上げられる。
激しくされることがこんなに気持ちいいなんて――
「…すごく、絡みついて…締め付けてるよ、キョーコ…中まで、いやらしい子、だな…」
「ああっ!んぁ!はぁ、やだ、イく、イっちゃうっ…!」
「…っ…いいよ…!」
「やぁ!あ、ああっ!ああ―――っ……!!!」
敦賀さんは崩れ落ちた私を抱え上げて、今度はベッドルームに連れて行く。
「わかった?色気ってのは見た目やスタイルの問題じゃないんだよ」
「……よく…わからないです、けど…」
わからない。わからないけど――
「敦賀さんに愛されてるってことは…わかりました」
「ほんとに?」
「…たぶん」
「たぶん、じゃ足りないな」
私を組み伏せて、前髪をかきあげてくれながら囁く。
「イヤって言うほどわかってくれないと、満足できない」
「敦賀さん、貪欲ですね」
「キョーコはマゾだよね」
「私が、ですか??」
脈絡のない言葉に理解できずに戸惑うと、敦賀さんは吹き出して笑い出した。
「そうだよ、しかも筋金入りの」
「そんなことありませんっ!」
「わかってないな…じゃあそれも教えてあげるから」
「え?え…?ちょ、ちょっと…!ちょっと待ってください!」
それからその夜はさんざん敦賀さんの「S」攻撃に弄ばれて、
私がマゾかどうかはともかく、敦賀さんの愛情はイヤと言うほど確認された。
確認がすっかり済んで、敦賀さんの胸に擦り寄りながら聞いてみる。
「あの人、またくるんでしょうか?」
「さあ…もう来るなとは言ったけど。来てももう逃げない?」
「はい、もう…平気です」
ほんとはまだちょっと不安だけど。
でももう少し自信持ってもいいかな、なんて思いながら、私はあったかい気持ちで眠りに落ちていった。