今夜は某ホテルで富士テレビ総力をあげてのスペシャルドラマの試写会兼打ち上げパーティー。
主役は蓮。
キョーコは主役の蓮の恋人役、に、こっそり意地悪をする小悪魔的な女の子の役をもらっていた。
パーティの前、試写会が行われているあいだに社に連れて行かれた部屋には
細身のちょっと大胆にスリットの入った黒いドレスがかかっていて、
待ち受けていたメイクさんに「今日はちょっと大人っぽく」とされるがまま。
できあがって鏡の前に立ったら、そこにいた自分は普段とも今回の役とも違う「大人の女」。
常々大人な蓮には釣り合わないと、密かに劣等感を抱いていたキョーコは、飛び上がって喜んだ。
敦賀さんにも見てほしい…
そう思いながら胸を弾ませてホールの扉を開けたのだが――
足を踏み入れてすでに1時間近く経っているだろうと思われるのに、
いまだにキョーコは蓮の近くにすら行けないでいる。
ひとり、誰かとようやく話し終わるとまた誰かがやってきて話しかけられる。
共演していた人たちはもちろん、スタッフ、さらには顔も知らないスポンサーの関係者…
ひっきりなしに代わる代わる自己紹介され、握手を求められ、演技の感想を述べられる。
こんな新人の自分に話しかけてくれるなんて光栄だ、と思い、ひとりひとり律儀に相手をしていたのだが、
さすがに15人を超えたあたりから数えるのも放棄して、キョーコは徐々に疲れてきた。
蓮はどこにいるのか…目の前からひとり去った隙に眼で探す。
見つけた先には、女優陣に囲まれ笑顔で対応している蓮が見えた。
楽しそうな蓮、そして綺麗なドレスが板についている女優たち。
見なきゃよかった。
胸がムカムカしてきて、思わずうつむいたキョーコはまた話しかけられた。
「どうしたの、京子ちゃん?俺じゃご不満かなあ」
顔を上げた先にいたのは共演者の古賀。
今回撮影のあいまにいろいろ話をするうち、打ち解けて話せるようになった数少ないひとりである。
「そんなこと、ありませんよ」
力なく笑顔を作ったキョーコに古賀は驚いた。
「顔、真っ青だよ?」
「え?あ…高いヒールに慣れなくて…」
「靴くらいじゃそんな顔にならないよ、ちょっと端っこに行こう」
「いえ、あの、大丈夫です…」
「大丈夫って顔じゃないよ。社さんは――ああ、なんか囲まれてるなぁ」
古賀に腕を引かれてとりあえず会場の端に行ったキョーコだが、確かに気分が悪くなっていた。
「今にも吐きそうな顔してるよ…人に酔った?」
「…そうかもしれないです…」
「じゃあ、ちょっと出ようか」
言われるがままに会場を出たキョーコはその数十分後、そのホテルの一室にいた。
横になれるようにと古賀がホテルの人に言って部屋を用意してもらったのだ。
ドレスのままベッドの上にどさっとうつ伏せる。
疲れた…なによ敦賀さん、あんな笑顔振りまいて…
そうよね、綺麗なドレスの似合う女の人なんて見慣れてるんだし、
私が少しドレスアップしたくらいなんともないだろうし、
第一それ以前にきっと私の姿なんてまだ見てもないんだわ。
得意のネガティブな思考に支配されていくうちに涙が込み上げてくる。
窮屈なドレスも脱いでしまいたい、と思ったが、着替えは別の部屋にあるのを思い出す。
ため息をついてごろんと寝返ったところでドアがカチャリと開く音がした。
驚いて上半身を起こすと、古賀が顔を出した。
「気分はどう?――なんか今、一瞬残念そうな顔しなかった?」
「そんなこと…そんなことないですよ」
苦笑している古賀に思わず和んでキョーコも笑顔になる。
キョーコのその笑顔に古賀は心臓がバクンと跳ねたのを感じた。
「えっと…お水入れるよ」
共演中古賀は、キョーコを恋愛感情を持って見たことは一度もなかった。
10歳近くも年が離れているし、言うなれば妹のように可愛がっていた。
ところがさっき会場に登場した彼女の美しさ。
古賀は言葉を失うほどに驚いた。
そして次々に話しかける男共を見ているうち、ジリジリと苛ついてきて酒を煽った。
ようやく話しかけることができた京子は真っ青な顔で、思わず必死に世話を焼いていた。
こんなことは初めてで、古賀は自分自身の必死さに戸惑っていた。
しかもこの状況。
ホテルの一室でふたりきり。
ベッドの上で半身を起こしている彼女。
古賀は柄にもなく声が震えそうになるのを抑え、
スリットから覗く足から目を逸らしてベッドの端に座り水を差し出した。
「ありがとうございます。…すみません、ご迷惑をおかけして」
そんなこと!と声をあげて思わず見たキョーコの顔に、また古賀の心臓が踊る。
動揺している古賀を不思議そうに見つめてくる。
この子…自分の魅力に全然気付いてないんだな。
庇護願望と同時に、
「いいんだよ、俺も会場を抜け出したい気分だったしね」
自分のモノにしたい――はっきりと自分の気持ちに火が点くのを古賀は感じた。
そっとキョーコの水を取り上げて枕もとのテーブルに置く。
大きく割れたドレスの裾から出ている白い太ももをそっと撫でる。
キョーコの目が大きく見開き脅えたような表情に変わる。
が、かまわずスリットをめくって撫でる手の位置を上げていきながら
強引に覆いかぶさり首もとにキスをした。
「ちょっと!古賀さん、やめてくださいっ!」
キョーコの拒絶に、頭の隅ではもうひとりの自分がブレーキをかける。
まだ子供だぞ…いきなり行為に及ばなくても徐々に手に入れればいい…
そうだ、いつも通り、まずは心を手にしてからそれから――
しかしいくら必死に言い聞かせても止まりそうにない。
「古賀さんっ!ちょっと、…どうかしてるんですってば古賀さん……我に返ってくださいっ!!」
張りのある太ももの感触、大きくあいた胸元の下に隠れる形のよさそうな小さな膨らみ。
ひとつひとつが欲望を掻き立てる。
古賀は今までに味わったことのない激情になす術を失っていた。
「やめっやめて!…や、やだっ―――敦賀さんっ!!!」
突然予想もしない名前が叫ばれたことに驚いた古賀は、動きを止めてぽかんとキョーコの顔をみつめる。
「…え?敦賀さんって…」
その時。
ダン!とドアが開いて蓮が勢いよく入ってきた。
キョーコを押し倒している古賀、押し倒されて涙ぐんでいるキョーコを目にし、蓮は一瞬で状況を悟る。
「この――」
「やめて、敦賀さん!」
キョーコの言葉に殴りかかろうとしていた蓮の動きが止まる。
古賀は呆然としたまま無反応で蓮を情けなく眺めている。
「私なら大丈夫です!あの…古賀さん、酔ってらっしゃるんです、騒ぎにしないであげてください」
「この男をかばうのか?」
「違います…!お願い、殴ったりしないで…敦賀さんのために言ってるんです…」
腕を握られ、上目遣いで涙ぐまれ、蓮はため息をついて握った拳を収めた。
「わかったよ――古賀さん、酔いは醒めましたか」
「…あ、ああ…確かにちょっと悪酔いしたよ……」
ぼんやりしている様子の古賀だったが、我に返ったのか落ち着いてきた。
「…すまなかった。京子ちゃん、ごめん…ほんとに悪かった…」
「いえ…あの、大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫。酔いを醒ましながら歩いて帰るよ。敦賀くんも悪かったね…止めてもらって助かったよ」
古賀はふらふらと部屋から出て行く。バタン、とドアが閉まり、しん、と部屋が静まり返った。
「敦賀さん、どうしてこの部屋…」
「彼、社さんに部屋番号を教えてたんだ。最初から襲うつもりじゃなかったみたいだね」
「そうですか…」
キョーコは蓮に背を向け上着と荷物を取る。
「何してるの?」
「なにって帰る支度です」
「気分が悪かったんだろう?急いで帰る必要はないよ、もう少し横になってても」
「もう大丈夫ですから帰ります」
「…なにか怒ってる?」
蓮はキョーコの肩に手を置く。
が、キョーコは蓮のほうを向こうとはしない。
「怒る?どうして私が怒るんですか、そんなわけありません」
「怒ってるじゃないか」
「怒ってなんかいません!」
叫ぶように言って振り向いたキョーコは再び涙で瞳をうるませている。
「やっとこっち向いた」
「…敦賀さん、遅かったですね」
「え?」
「話が弾んでらしたんでしょう?綺麗な方たちに囲まれて、ものすごぉく楽しそうに話してましたもの。
頬の筋肉緩ませて、ニコニコして、相手の方たちを笑わせたりしてて」
「妬いてた?」
「……っ…」
「オレも妬いてたよ。キョーコなんて男をとっかえひっかえ肩やら腰やら触らせてるし」
「触らせてなんかっ!」
「奪いに行こうにも隙がなかった。ごめんね」
蓮はキョーコをぎゅっと抱きしめ、耳元でもう一度「ごめんね」と甘えるように囁く。
キョーコはぷうっと頬を膨らませて駄々をこねるように拗ねるように答える。
「いやです、許したくありません。いつもそうやって甘えて…ずるいです」
「そっか…じゃあ許されないついでにいけないことしちゃおうかな」
蓮はキョーコの腕を取り、大きな引き戸を開けて部屋のベランダへと引っ張っていった。
「…ちょっと敦賀さん?いけないことって何――」
「手をついて」
キョーコにベランダの手すりを掴ませると、ドレスの裾をめくりあげて臀部にちゅぅ、と吸い付いた。
「黒のTバック?ずいぶんいやらしい下着で男を誘ってたんだね」
「違いますっ!これは…下着の線が出ないように…」
「ここの匂いでも誘ってたのかな」
指で下着を少しずらし、その先にある突起を優しく転がす。
「あぁっ!…だ、だめですっ…何してるん…ですか、やめてください…!」
「何するか、よーく知ってるくせに」
「あ、あっ…やだっ、あっ」
たえるように頭が下がっていき、臀部はますます突き出される。
蓮は跪くとその両方の膨らみを押し広げ、中央の溝を長い舌でじゅるりと吸い上げた。
「ああっ!」
外にもかかわらず声を上げるキョーコ。
蓮は気にする様子もなく愛撫を続ける。
チロチロと突起を刺激すると、真っ赤なそれは脈打つように震えながら膨張する。
それに比例するように蜜がとめどなく溢れ、Tバックを濡らしながら太ももへと伝い落ちていった。
立ち上がった蓮は愛液で指を濡らしその源へと指を二本差し入れる。
ちゅぷ、と待ちわびたように飲み込まれる。
歓迎しておいて締め付ける内部を楽しみながらかき回すと、喘ぎ声はさらに艶を増した。
「あっ、はぁ!んっ、あっ、やっ、やだっ…いけない、こと…しちゃ、やだぁ」
「いけないことが大好きなんだろう、キョーコ?」
言葉で煽るとうなじが赤みを増した。
指の動きを止めると、肉壁が脈打って興奮しているのが伝わる。
「嫌い?だったらやめようか?」
蓮の表情を見ていないのをいいことに意地悪く笑って聞いてやる。
キョーコはぶるぶると必死に首を振る。
その間も指の隙間からは粘着を帯びた液が垂れ続ける。
自分がこう育てたとはいえ、蓮はその反応の良さに感動すら覚えていた。
「好きっ…大好きです、いけないことされるの…だから…もっと…」
「もっと?もっと何?」
「……っ…もっと、いけないことして…いやらしいこと、いっぱいっ…」
「どうしようかな」
「やだっ、もっと…もっと苛めてぇ…」
求めに応じて激しくかき回すと、愛液を飛ばし、か細く叫んで到達する。
蓮はすばやく準備を整えその入り口に自分のモノを抜き差しする。
軽く入れては抜き、溝をたどるようにもてあそぶ。
「あっ、やだっやだっ、イジワルっ、あん、でも、まだダメぇ」
「キョーコのココ、どんどん淫らになってくよね…古賀さんのでもよかった?」
「やだ!いや…敦賀さんのじゃなきゃ、イヤぁ…」
「どうして?教えて」
「だ、だって…だって敦賀さんの、気持ちいいのぉ…」
「どんな風に?」
「…っ…す、すごく…もぉ…敦賀さんの、バカ…言わせないで…!」
「ごめんね…だっていやらしい事を言うキョーコ、たまんなくかわいくて好きなんだよ。
もっと苛めてあげようって嬉しくなるんだよ。苛めてほしいんだろう?」
キョーコは顔を真っ赤にして仕方なく続ける。
「――すごく……熱くて…お…きくて…」
「それから?」
「わかんないっ…もう…気持ちよくなって…頭が真っ白になるのぉ…気持ちよすぎて…いつもよく、覚えてない…」
「覚えてないの?その気持ち良すぎたあたりからのキョーコが一番淫乱で綺麗なのに」
「もう、いいでしょう?お願い!入れて…っ…もっと、奥までください…っ」
蓮はキョーコの腰をがっちりと掴み、引き寄せるタイミングに合わせて突き上げる。
何度も突き上げ、キョーコが達しそうになると一旦緩め、今度はゆるゆると回し…充分に楽しんだところで激しく突き続ける。
「ああっ!や、やだっ!声っ…声出ちゃ…!あっ、あっ!…ああああっ…―――っ…!!」
「…っ……キョーコ…イった?」
息を荒げるキョーコはただ何度も頷く。
蓮は優しく髪を撫でてやる。
「そう…とりあえず、帰ろうか。続きはそれから」
「やだ…」
「え?」
「敦賀さんが…満足するまで、ここでいっぱいしたい、です…」
顔を蓮のほうに向け、おねだりをするキョーコに蓮はため息をつく。
「しょうがないな…」
テレビの画面にこの色気がにじみ出るのも時間の問題かもな…
蓮は近い未来訪れるであろう新たな悩みを思って再び大きなため息をついた。