お友達にご用ができて、お出かけのはずだったのに突然ひまになってしまった土曜日のお昼下がり。
みんなにないしょで私は一人。
こういう時こそ、秘密のお部屋に入って。扉をしめて。
ここはおうちのゲストルームの一つ、そのクローゼットの中。
だれも私がここにいることを知らないのって、ひみつなのって、なんだかワクワクする気持ち。
似たようなお部屋はたくさんあるけど、すみっこにあるここは使われることがほとんどないの。
クローゼットは二段めががらんと空いていて、
天板を外しておまじないグッズや宝物をかくしたりして、
今では私のお気に入りの場所。
扉をしめていればもし誰かがさがしに来ても見つからないわ。
今日は何をしようかな。
キャンドルに火をつけておねがい事をする?お札も作ってみようかしら。
それとも、おし花にしたとっておきの四つ葉のクローバー、しおりにしようかな。
お姉様にさし上げようかしら。蓮様もうけ取ってくれるかしら。
おじい様の分も見つけられるかしら…
…いやだ、ねむっちゃってたみたい。
昨日おじい様とおそくまで映画を見ていたのがわるかったのかしら?
さっきまで明かりに使ってた豆電球は電池が切れちゃってる。
ぐしゃぐしゃになった髪の毛とスカートを直しながらすわりなおすと、
扉の向こうにぼんやり明かりが見える。
あれ…?私、お部屋の電気なんかつけなかったわ。
どうして、誰もいないはずなのに?
…あれぇ…?
なんだか変な声が聞こえるわ…
苦しむみたいな、悲鳴みたいな、
いいえ、今まで聞いたことのないような…??
音を立てないようにそうっと、扉のスリットからお部屋の様子をのぞいてみた。
ここからはクローゼットの横にあるベッドをななめ上から見下ろすようになるはず。
さっきまでねむっていた目はなれなくてすぐにははっきり見えなかったけど、
ああ、ベッドサイドにおいてあるスタンドの明かりがついているんだわ。
ぼんやりした明かりだけど、それしかない暗いお部屋の中ではちょっぴりスポットライトみたい。
そのライトに照らされたベッドの上には…
とっさに口をおさえるのがせいいっぱいだった。
どうしよう、私、何を見ているの!?何を聞いているの!?
ベッドでおり重なる二つの人影。
ライトにほんのり照らされた…
ベッドのシーツの上の、マクラの上の、さらさらの短いキレイな茶色の髪の毛。
あれは…誰?
見なれているはずなのに、見なれていない表情の、
聞きなれているのに、聞きなれない声の…
「あっ…っぁ…ふぅ、っん…」
なんて、声なの…!?
でも、でも…あれはお姉様。
はだかの…!?
はだかの女の人なんてはずかしくてじろじろ見られないといつも思っていたのに、
思いがけなさすぎて…私は目をそらせずに見つめてしまう。
でも本当にお姉様?
首のあたりに外されたブラジャーが乗っているだけのすがたで、
お顔を赤くして、はあはあと苦しそうな息をしているあの人が…?
いやいやをするように首をふるお姉さまの口からは、とぎれとぎれの息と声がどんどんもれてくる。
「あっ、ぁ…んんっ、つるがさん…っ」
…え…?今、なんて…?
お姉様の首元からブラジャーがはらいのけられた。
…蓮様…!
今度は口をおさえるまでもなかった。
おどろきすぎた時は声なんか出ないのね。
あお向けになったお顔を明かりに照らされているお姉様とちがって、
角度と影のせいではっきりとは見えにくいけど…まちがいない。
さっきお姉様がよんだもの。
蓮様が…
…お姉様の上におおいかぶさっていた…
腰から下は毛布でかくれていたけど、蓮様も、やっぱりはだかで。
やだ、はずかしい…!
ひどくごちゃごちゃになった頭の中で、もうさけびたくなるほどドキドキしてる。
でもこんなところを見つかるなんてそんなのもっといや。
声はぜったい出せないわ。
それに…それなのに、
どうしよう。
ここから出ることもできないわ…
はずかしいのに、はずかしくてたまらないのに、
見つめてしまう私の前でお姉様の声がさらに大きくなった。
「あぁっ、あぁん…あっぁぁ…」
この声って…よくわからないけど…なんとなくわかる。
私ももう8才だもの。
おじい様の見ている映画でもときどき見るもの。いつもすぐ追いはらわれちゃうけど。
はだかで、だきあって。
いやらしい声…
蓮様たち、えっちなこと、してる…
初めて見るそれは映画やドラマどころじゃなくて、もう頭の中が真っ白。
あら…?何かしらあれ。
お姉さまの胸がたくさん点々と赤くなってる。
ちょうど、虫にさされたみたいな?
ふしぎに思っていたけど、理由はすぐにわかった。
蓮様がお姉様のはだにすい付いて、ちゅぅ、ちゅぱっと音を立ててくちびるをはなすと、そこが赤くなってる。
まねして自分の手首にそうしてみて、ああ本当になるわ、と感心したけど、
そうされるたびに「あんっ」とかわいい声をたてるお姉様のことはわからなかった。
蓮様がふしぎみたい。
蓮様がお姉様の胸に顔を近付けると、ぴちゃぴちゃと音がしはじめた。
乳首をすったり、ぺろぺろなめてる音…
いやだ、赤ちゃんみたい。
おかしいな、と思ったのに、お姉様は声をもらすだけ。
「あっあ、あぁんっ、ああんっ、つるがさん…っ、ぃ…い…あ…っ」
…お姉様、泣きそうなお顔してる…
でも、悲しそうでもつらそうでもないの。
とろんとした目をしてて、なんだかたよりないような、かわいいお顔…
赤ちゃんにお乳をあげるのとはちがうみたい。
蓮様だとあんなふうになっちゃうの…?
ぴちゃぴちゃ犬とか猫みたいに音を立てて、蓮様はお姉様の左の胸をいっしょうけんめいなめ続けてる。
そして右は指先でくにくにとつまんでる。
「ゃんっぁあっ…!あぅっ、はぁん…ア…あっあぅ…っ」
お姉様の声はどんどんいやらしくなっていく…
「キョーコはここが一番感じるね…」
蓮様の声もいつもとちがう…
低くて、それなのによくひびいて、なんだかぞくぞくする。
はずかしいのに、やっぱり目がはなせなくなっちゃう。
…感じるって、なに?
あんなふうに、お姉様みたいになっちゃうこと?
私の、くやしいけどまだ平らな胸にさわってみる。
乳首をつまんでくにくに動かしてみる。
はずかしくて蓮様みたいにできないけど、なんだかへんなかんじ。
もどかしい感じがするだけで…
お姉様みたいにならない。
胸がお姉様みたいにふくらんでないとだめなのかしら…?
なめないとだめなのかしら…?
それとも…?
「あぁ…つるがさん…もっと、かんじるとこ、っ…ありま…すぅ…っ」
あ、お姉様、お話した…
蓮様にきゅうってだきしめらたり、胸とはだかの体をなめられたりなでられたりしてるお姉様。
はあはあって苦しそうだけど、じっとおなかに乗せられた蓮様のお顔のほうを見つめてる。
「へえ…どこ?」
手を止めて、蓮様、いじわるみたいな声。
初めて聞いた…
いつも、おだやかであったかい声でお話してくれるのに…
「いじわる…あっ、わかってる、くせに…」
おこったみたいにお姉さまが言う。でも泣きそうで、弱よわしいの。
「キョーコはどこでも悦んでくれるだろ?一番可愛く鳴いてくれるのは、ここだけど。」
いたずらっ子みたいに言う蓮様に、ぴんととがった乳首をつつかれて、
「んうっ」
ってお姉様は本当にかわいい声を上げた。
かわいくて、いやらしい声。
「ちがぁ…そこじゃな…あっ…つるがさんがぁっ、いちばん、…っすき、なぁ…ところ…!」
なんだか、せつなくなっちゃう。
こんな声でお姉様がお話しするのを聞くのも、初めて…
てれたような真っ赤なお顔で。
「わかってるんだ、俺の一番好きなところ」
蓮様は笑い声を立てた。
ここからはよく見えないけど、きっと、あのすてきな笑顔を見せてくれてるのね…
「でも…君の全部が大好きだよ?」
蓮様の声、すごく、すっごく、うれしそう…
聞いたことない。
こんな蓮様、
しらない…
あ…キス、してる…
でも、あれ?くちびるをあわせるだけじゃ、ないの?
ほんとうのキスって、あんなのなんだ…
食いつき合うみたいになってたくちびる、それがはなれて…
「君のおねだりも、大好きだよ」
蓮様の声にお姉様はぷぅっとふくれた顔をしたけど、
「お願いです、っ…いれて、ください…」
はずかしそうに、そう言った。
蓮様は笑ってる。やっぱり、うれしそうに。
「もっといじめたいけど…そろそろ社長が戻ってくる時間か…。」
おじい様…?そうなのね、きっと二人はおじい様によばれておうちにきたのね。
ふっと現実に引きもどされたのに、蓮様の次の言動でまっさかさまにつき落とされてしまった。
「じゃあ、お望みどおりに」
そう言って、蓮様はお姉様の足をつかんで、ぐっと持ち上げて、
開かせて…!?
…やだぁ…っ!!?
あんな…あんなところを、見られてる、の?
お姉様が、蓮様に、
蓮様、あんなところを…
なんなの!?
私がこんなにびっくりしてるのに、お姉様は少し笑って、蓮様の首に手を回しただけ。
「すごく濡れてるね、溢れてぐちょぐちょだよ…」
「だってぇ…っ」
蓮様はお姉様の首にちゅってして、お姉様の足をもっと上げる。
蓮様の姿勢が変わって、毛布の下で下半身がびくびくと動き始める。
「キョーコ、好きだよ…」
「ああっ、ぁあああんっ…ああー…っ…!」
お姉様が悲鳴を上げて…
蓮様は体を上下に動かしはじめた。
…どうなっているの?
なんだか腕立てふせみたいだけど…
とてもそんなものじゃないわ。
分からないまま、お姉様がまたお顔を赤くしていやらしい声をあげているのを見つめてしまう。
なんて言うのかしら…初めて見るお顔なの。
まゆがよって、ほそめられた目と、声の出るお口…
そうだわ、色っぽいって言うんだわ。
お姉様にそんなこと思うの、初めて…
苦しそうなのに、なにかしらとても安心したような表情で。
どうしてかしら、お姉様、なんだかとてもきれい…
「はんっ、あっ・・・ああっんぁ、ああ・・・ぃ、ぃ・・・っあぁ・・・」
お姉様のうっとりしたような泣き顔が、せつない声が。
どうしよう、ものすごくドキドキするの。
いれてって、何?
ぬれてるって、何?
下半身をぴったりとくっつけて、いっしょにがくがくと動いてる二人・・・
男の人のあそこって、女の子のここって…
でも、まさか、そんなわけないわよね、
もしそうでも、ほら、いたいもの、できないもの。
息がはあはあして苦しそうだけど、これは…気持ちいいことなんでしょう?
「きもちぃ…ああっ…つるがさ、すき…きもち、いい…ぃいよぅ…んん…ぁ…っ」
お姉様、何度もきもちいいって、言うもの…
「っつ…ゃぁっ・・・もっとぉ…いつも、みたいに、してぇ…っ」
「…ここは俺の部屋じゃないんだよ…さっきまで恥ずかしいって、言ってたのに?」
言いながら、蓮様はお姉様の乳首をまたぺろっとなめた。
「ゃああっ!…イイ、のぉっ、いつも、みたいにぃ、も、っと、あぁんっ、もっと、あん…っ!」
もっとって、言うもの…
「キョーコ…今日は、積極的だね…嬉しいよ」
蓮様もはあはあと息をして、時々かすかにお姉様みたいな声がもれてる。
蓮様も、気持ちいいの…
「声も、出したくないって、言ってたのに…」
「だ、ってぇ…じらす、もん…とめ…ないでぇっ、だめえぇ…たりない、もっ、ぜんぜ…っんぅ…ゃあ…!」
ドキドキが止まらない。
どうしよう、体があつくなるの。
どうしよう、私、なんだか変…
お姉様…どんな感じなの?
やっぱり、わかんない。
私、なんだか変、どうしよう。
さっきいたかったところの上、さわるとなんだかしびれたみたいになる。
でもそれだけ。
やっぱりちがうのかな。こんなんじゃないんだわ。
それとも…
私はこどもだからだめなのかしら。
蓮様じゃないからだめなのかしら。
こんなに胸がドキドキして、どんどん変な気分になっていくのに、
お姉様みたいにならない…
「もぅゃぁあ…も、どぅしてぇ…いつも、みたいに…くれなぃぃ…っあぁっ…」
「…もう、あとで泣き言はきかないよ…ほら、キョーコ…もっともっと、ほしがって…!」
「はぁああん!すき…っつるがさん、…ゃぁあっ…っくるぅ…!あぅっ、うれ、しぃ…っきゃあぅ…っ!」
お姉様の声で頭がぐるぐるする。
悲鳴みたいになってるけど、もう夢中で気持ちいいんだって、なんとなくわかる。
色んな音で部屋中いっぱいで、追われちゃうみたい。
ぐちょぐちゃとしめった音がして、
ぱしぱしって、たたくような音がして、
ぎしぎしとベッドがきしんでて、
お姉様と蓮様の動きはどんどん速くなってく。
「よくばりなキョーコ、すごくかわいい…」
「すごぃ…よぅっ…あっ、つょくしてぇぇ…ああっ、おねが…ぃっ…、もっと、あんっ、あ、っ・・・つょく…ぅ…あああっ!」
「いいよ…キョーコ…すご…っ…」
とぎれとぎれに上がる二人の声に、くるっちゃいそう。
もう…なにもかんがえられないわ…
そのあとは、ぼんやりした頭にかん高いお姉様の声がひびいて。
いきなりしずかになったのだけおぼえてる…
二人が出て行ってからどのくらいたったかしら?
しびれたような感じもドキドキももうなくなって、
つうっと、涙がほおをすべりおちてきた。
落ちついてわかったことは一つ。
はだかでだきあうのは恋人同士だけよね。
そうなのよね。
ああ私失恋したのねって、今やっと思ったの…
でも、わかってたの。
蓮様がお姉様を見る時、ものすごくうれしそうになる事。
お姉様も蓮様といる時は、とても安心した顔をされてたの。
気づいてた。
ううん、いつからか、きっと、知ってた。
二人がお互い好き同士だって。
ふしぎなの。
失恋したら大泣きするわって思ってたのに、
今は涙がもう流れてこないの。
だって見てしまったのだもの。
お部屋を出て行くときの二人の事。
「さっきの、本当だよ。」
って蓮様が言った。
何のことか分からない様子のお姉様に、もう一度蓮様は言った。
「キョーコの全部が、大好きだ」
「私も、敦賀さんの全部が大好きです」
顔を見合わせてほほえむ二人…
思い返した今でさえ、
流れた涙も止まるくらい、
つい私までほほえんでしまいそうになるくらい…
幸せっていうものを初めて見たの…
(1話目終)