「そうだな…じゃあお前が行け」
と、あの人は言った。
仰々しいソファに身を落とし、シャンパンの入ったグラスを傾けながら。
時間は22時52分。私は指定されたマンションの前に立った。
エレベーターに乗り込み、「閉」とその男が住む階のボタンを押す。
ひゅん、と一瞬だけ箱が揺れ、私の身体は移動する。この瞬間が私は好きだ。
「重力…アインシュタイン…爆弾…」
いつもの暇つぶしでひとり連想ゲームをしているうちに、再びひゅん、と小さく音がして箱は止まった。
時計を見る。22時54分。予定通り。
「…光…煙…煙突……クリスマス…キリスト…神…あの人…」
部屋の前で4分ほど時間を潰し、22時59分になったところで持たされている携帯電話を取り出した。
登録されている番号を表示させ、発信ボタンを押す。
呼び出し音が耳に響く。何度かカウントしたところで数えるのを止め、時計を見ることにした。
40秒を超えたが留守番電話にはならないのでそのまま鳴らし続ける。
間もなく60秒、という瞬間になって、発信音は中断された。
「…はい」
男の声。
わからないようにしているようだが少々息が荒い。そういうことか。
「お取り込み中失礼いたします。ローリィ様の御命で参りました。
鍵は預かっておりますので差し支えなければ入室させていただきますがよろしいでしょうか」
「ああ…構わないよ。寝室にいる」
「了解いたしました。では失礼いたします」
携帯電話を折りたたみ、今日の仕事道具が一式詰まったバッグの取っ手を握りなおし、私はマンションの一室へ足を踏み入れた。
静かにドアを開けて靴を脱ぎ揃える。
暗い。
しかしリビングへと通じる廊下には小さな灯りが点いている。
男の一人暮らしにしては広大とも言えるだろう。
が、最近の私は感覚が麻痺しているのか驚きもしなかった。
芸能界でトップクラスともなればこんなものなのだろう。第一そんなことは今日の仕事とは無関係だ。
邪念を取り払い、頭をクリアにしたところで寝室のドアの前に立った。
いくつかドアがあるが、ここが寝室なことは間違いない。
なぜなら女の声がこの中から聞こえてくるからだ。
「あっ、つ、るが、さんっ、今の電話、誰?」
「誰だろうね」
「女のひとの、声、聞こえ…、あ、ぁん、んんっ、ぅうあ、や、やぁっ」
それは私です、と心の中で呟きながら、気付かれないようにそっとドアを開けて足を踏み入れ部屋の隅に立つ。
男が上から女を組み敷き、腰を激しく動かしているところだった。
橙色を帯びたベッド脇の電灯で男の汗ばんだ背中が光り、美しい光景だ、とふいに思う。
美しい、などという感想を持ったのは久々かもしれない、私はそんな感想を持った自分自身に少し驚いた。
男は女の両足を持ち上げ、腹に押し付けるようにして今度は大きく揺らし始めた。
動きに合わせて女の声が大きくあがる。
「ああああっ!あっ、あっ、だめっ、奥までっ…あああああっ!」
「奥まで…好きだろう?」
「あ、あ、はぁ、も、いっちゃ…から、だめ、なのっ」
「キョーコのダメは『もっと』って意味だよね」
「あああっ、あ、あっ…!あっ…イっ…やぁっ……あっ………!!」
女の指が男の背中に食い込み、必死に耐えるような呻きを残して動きは止まった。
部屋には二人の荒い息づかいが響いている。
私はとりあえず30秒ほど待つことにした。
「…キョーコ、大丈夫?」
20、21…敦賀蓮は彼女の髪をかき上げ労わっている様子。
「ん…」
口もきけない、といったところか。敦賀蓮の恋人、新人女優の京子。
28、29。
「失礼いたしております」
明瞭な声で挨拶をすると、ふたりはガバっと身を上げた。繋がったままで。
振り向いた格好の敦賀氏は一瞬驚いて天を仰ぎ、「いたのか…」とため息をついた。
が、一方の京子嬢は、激しく動転、口をパクパクと動かし、言葉にならない声をあげている。
そしてようやく自分の状態を思い出したのか、敦賀氏を引き剥がして突き飛ばし、真っ赤になって毛布をひっぱりあげた
「キョーコ、綺麗にしてあげるからじっとして」
「な、な、なに冷静におっしゃってるんですかっ!!だれ、誰?!なんなんですかあの人は!!」
「誰って…見たらなんとなくわかるだろう?社長の使いの人だよ…」
「使いの人って!敦賀さん知ってらしてんですか?!あの人いつから…」
「さあ…さっき電話の後入ってきたみたいだから…ちょうどクライマックスのあたりからかな」
「はい、『今の電話、誰?』のあたりから丁重に拝見させていただきました」
「―――!!!」
真っ赤になったり真っ青になったり忙しい人だ。
「京子様はご存じないようなのでご説明させていただきますが、わたくしはローリィ様のご命令で参りました。
一晩こちらにお邪魔させていただきご命令を全うさせていただきますのでその旨ご了承ください」
「京子様…」
京子嬢は自分の呼ばれ方に反応して今度は頬をぽっと桃色に染め、照れたような嬉しそうな表情をした。
呼び名がお気に召したということか。
しかしすぐに我に返り、首をぶんぶんと振って自分の頬をペシペシと叩き、
混乱している頭を整理…しようとしているらしい。整理できているとも思えないが。
思っていた子とずいぶん違う。なんだか見ていて飽きない。
「ご命令、って…?」
隣りに寄り添う敦賀氏を見上げて不安そうに訊く。
「あー…とにかく、この人を納得させればいいらしいよ」
「納得って…」
「わたくしも具体的にこまかく命を受けているわけではございません。
ですから独断で手当たり次第にとりあえず始めさせていただきます。ではまずは撮影から」
私は床に置いていたバッグからデジタルビデオカメラを取り出し、右手で持って電源ボタンを入れた。
「すぐにでも始められて結構ですが、さきほどオルガスムに達したばかりですから無理は強いません。
まだ時間が必要でしたらお待ちいたしますがいかがいたしますか?
シャワーを浴びられるのでしたらこちらで勝手に待たせていただきますのでおかまいなく」
呆然としたまま動かない京子嬢。
これは案外てこずるかもしれない。
さてどうしたものかと思案しかけたところで、敦賀氏は諦めたようにため息をついて彼女に話しかけた。
「って言ってるよ?すぐ始めましょうか、京子様」
なるほど、彼が進行してくれるなら話が早い。
「なに言ってるんですか!冗談じゃないですっ!さささ撮影なんて!!
だいたい敦賀さん以外の人に裸…しかも抱き合っ……そりゃ女の人ですけど、ちがっ…そういう問題じゃなくって…」
どんどん声が小さくなっていく。京子嬢は依然混乱中らしい。
「この人が納得すればいいらしいから、社長に見せるわけじゃないと思うし大丈夫だよ」
「当たり前です!!ってもう!そういう問題じゃありません!!」
彼女は毛布にくるまったまま敦賀氏の胸をバシバシと叩いて必死に抗議している。
取り乱している様子はなかなか興味深いものの少々まどろっこしい。
私はバッグをあさって左端に詰めてあったものを取り出した。
そしてベッドに詰め寄り京子嬢の毛布を引き剥がす。
振り上げている両腕を後ろに廻し、カシャン、と軽快な音を立てて彼女のか細い手首を拘束した。
「え…??」
「ちょっと君…」
「敦賀様が許可できないのでしたらすぐにでも取り外しますが」
「いや、俺は別に構わないけど…」
「そうですか、では始めていただけますか」
「な、な…なんなんですかあ!!」
「何って手錠でございます。京子様の腕に合わせて小さく作っておりますので抜けることはございません。
ちなみに痕がつかないよう内側には特別に――」
「そんなことはいいんです!!」
「そうですか。では敦賀様、お好きに進められてくださいませ。
あ、京子様、わたくしが気になるようでしたら忘れてくださって結構です」
私は再度ベッドから離れて撮りやすい位置を確保した。
少しの間唖然としたままの京子嬢だったが、後ろ手にされたことで自らの胸があらわになり、
またそれを撮影されていることに羞恥の波が襲ってきたらしく、
今までの勢いはどこへやら、顔を赤らめたままみるみるうちに瞳に涙を溜め、身を捩る。
身を捩っても無駄だというのに…せめて、とでも思ったのか私と反対の方向へ向こうとしている。
その様子に自分の中で今までに感じたことのない感情が芽生えたのを私は悟った。
なんと言ったら良いのか…いわゆる同性愛的な欲情とは全く違う、
もっと…そう、弱いモノに意地悪をしたくなる気持ち、とでもいうのだろうか。
つまり嗜虐的欲望だ。
そしてカメラのモニター越しに見た敦賀氏の目もまた、
自分と同じサディスティックな欲望を隠れ持っている、と私は気付いた。
恥ずかしげに逃げようとする彼女に、彼もまた、煽られている。
これはきっと私や敦賀氏の性癖だけのせいではあるまい。
京子嬢が密かに持っている、被虐的な状況に快楽を覚える性癖がそうさせるのだ。
「キョーコ、どこ向いてるの?カメラはあっちだよ」
「いやです…」
「泣かなくても大丈夫だよ…恥ずかしいなんてすぐに忘れさせてあげるから」
「いやっ」
嫌がる京子嬢を無視して敦賀氏は後ろから彼女を抱擁した。
首すじ、耳、と舌を這わせる。
手は小さく膨らむ胸へと進み、その頂きにある突起を指で優しく転がすと、そこはすぐにはっきりと尖り主張し始めた。
「…っ…やめ…あっ…」
ぽろりと大粒の涙が彼女の頬を伝ったが、その尖り具合を見たあとでは悦びの涙にしか見えない。
事実、敦賀氏の落とすキスのひとつひとつに、指の動きに、完璧なまでに快楽の反応を見せている。
完全なるマゾヒスト、そして紳士の皮をかぶったサディスト。
なるほど、なかなかの組み合わせじゃないか、私はそう思いながら、彼女を初めて見た時のことを思い出した――。
「なあ、あの子、どう思う?」
ローリィ様はいつものように訊いてきた。
事務所に新しい人間が入ると、いつもこうやって第一印象を私に訊いてくるのだ。
お前の洞察力はなかなか鋭いからな、とローリィ様は言う。しかも歯に衣着せずに言いやがる、と豪快に笑いながら。
「わかりません」
私が言うと、大げさに驚いた。
「わからない、だって?その言葉を聞くのは蓮以来だな」
そう、私はいつだって思った印象を素直に言った。
"根性はありますがチヤホヤされるとダメになるタイプですね"
"彼は売れませんね"
"敦賀蓮のマネージャーは本当に男ですか?"
好き勝手言ってもあの人は怒らずむしろ喜ぶ。
が、敦賀蓮に関してはよくわからなかった。
そして「京子」も。
どす黒い怨念のような感情を持っているようにも、純粋なようにも、並外れた根性を持っているようにも、
あるいは繊細で壊れてしまいそうな一面もありそうで、とにかくアンバランスなオーラを感じた。
――その「わからない」二人が目の前にいることに、私は少なからず感慨深いものを覚えていた。
こうしてみると、京子嬢の中心にあるのは純粋な彼女なのだろう。
そしてそれを引き出したのが敦賀蓮、といったところか。
思わず感慨にふけっていた私だったが、敦賀氏の声で我に返った。
「キョーコ、足広げて」
たしかに京子嬢はぴったりと足を閉じて横座りしたまま。時折もじもじと足を動かしている。
「い、いやっ、絶対、いや」
首を振って拒否している。
どうやらその一連の拒否行動がさらにサディスティックな感情を揺さぶるものだとは全く考え付かないらしい。
「そう…じゃあ俺が代わりに見せびらかそうかな。
そうしたらあのお付きの人が俺のモノを悦ばせてくれるかもしれない。
なんせあの人、社長の命令、って言えばなんでもしてくれるしね」
そんなことさせる気など毛頭ないくせによく言うものだ。
…と思ったが、なぜか京子嬢には抜群の効果があったらしい。
「いやっ!そんなのヤダッ!!」
「じゃあ広げて。…そう、カメラに見せて」
「……っ!」
唇をギュッと噛みしめ、徐々に足を広げる京子嬢。
そこに待っていた光景は彼女の被虐的性向を確信させるには充分だった。
「そう…いい子だ…もっと広げてごらん」
敦賀氏は彼女の膝をつかんで強引に押し広げる。
彼女の中央の茂みの下はライトで橙色に光り輝き、その下のシーツには染みができていた。
「そのままじっとしてて」
敦賀氏は京子嬢をベッドに置き去りにし、私の横に立ち、嬉しそうにその様子を眺める。
「うん、いい眺めだね。ちゃんと表情も撮ってる?」
「はい」
「あの顔がまたたまらないからね」
満足そうに眺めたところで私の開かれたままのバッグに目を留めた。
「いろいろ持ってきたんだね」
「どうぞどれでもお好きにお使いください」
じゃあ、と言いながらごそごそと物色した敦賀氏は、大きめのバイブレーターを掴んでベッドへと戻った。
「もう閉じてもいいですか…?」
「ダメ。まだこれからだよ」
そういうと彼女の蜜壷へゆっくりとその異物を飲み込ませる。
「あっ、あっ」
彼女が身をずらして後退するのも構わず押し込むと、京子嬢のそこはみるみるうちに奥まで咥え込んでいく。
敦賀氏は奥まで入れたそれをまた引き抜き、再び入れ込む。
「あっあんっ、やめ、やめてぇ」
「気持ちいい?よだれがダラダラ垂れてるよ」
「やだっつめたい、つめたいの、ぃやぁ」
「すぐに熱くなるよ、キョーコの熱で」
スイッチを入れたのか電気音が聞こえ始める。
後ずさりする京子嬢だが、後ろで手を拘束されていてバランスを崩し、仰向けに倒れる。
敦賀氏は楽しくなってきたのか夢中で弄んでいる。
ゆっくり抜き差ししていたが、それに飽きたのか激しくかき回し始めた。
「あっ、ああぁ!んっ、んあっ、やだやだっ、そんなので、イきたく、ないっ」
「ん、あとでちゃんとあげるから。キョーコのココもすごく悦んでるし」
聞く耳持たず。完全に敦賀氏のSスイッチも入ったらしい。
「あっ、んんっ、あ、あ、あ、ああぁあぁぁ!!」
ビクン、ビクンと太腿が震えている。絶頂に達したか。
スイッチを切り異物を抜いた敦賀氏に今度はうつ伏せにされ膝を立てられ尻を突き出す格好になるる。
休む間もなく与えられる愛撫。
敦賀氏は張りのある臀部に口付けを落としながら、さきほどの場所に指を入れる。
「いつもみたいにしてごらん」
彼は指を動かさない。
片方の肩をシーツに押し付け、恨めしそうに敦賀氏を振り返った京子嬢は、
ゆっくりとカメラにも目を向けるとパッと顔を赤面させる。
恥ずかしそうに目を伏せ、しかしゆっくりと腰を前後に動かし始めた。
「んっ…んん…あ、ん、ぁんっ、んぅ」
「そうやって動かすと気持ちいいのかな?いやらしいんだね、キョーコ」
「ゃあっ!んぅ、あっ、いやぁ…」
恥ずかしさを忘れて乱れ始めると敦賀氏が言葉でそれを引き戻す。
なるほど、そうやって自らの羞恥を認識させ、彼女の被虐的な快楽を高める。
そしてそれは同時に彼自身の嗜虐的な快楽を高めることにもなる。
面白い構図だ。なんとなく、あの人が私をこの場へよこした理由がわかったような気がした。
「お、おねがいっ、カメラ、止めてっ」
「俺はいいけど…君は納得できた?」
「いいえ、まだでございます」
「だって。ごめんね、キョーコ」
「や、やだ、なんでっ」
恥ずかしがる京子嬢は確かに可愛らしいが、私としてはそんな彼女がカメラの存在を忘れてしまう瞬間が見たいと思った。
こんな風に貪欲に何かを知りたいと思ったのは初めてかもしれない。
敦賀氏が指でかき回すと、くちゅくちゅと高らかに音を上げ、飛沫を飛ばし、京子嬢は再び達して崩れた。
敦賀氏はハァハァと息を荒げて揺れる細い背中と拘束された手首に優しく舌を這わせながら、
一方で休ませずに陰核を指でこすり続ける。
容赦ないな、この人は、と呆れつつも、不本意ながらに彼の気持ちがわかるような気がしてきた。
嫌がる様子に煽られ、我を忘れて喘がせたいと思うのだろう。
この少女にはそんな魅力があるのだ。自分が男だったらそう思うに違いない。
「あっ、も、もう、だめ」
「キョーコが欲しい」
「…でも、お願いです…今夜は、もう…」
「キョーコの中に入りたいな」
さっきからずっと我慢してる、もう我慢できない、欲しくてたまらない、
キョーコだけ何度もイって、見てたら興奮してきた、キョーコの中も欲しそうだよ、
…ってそんなに言ってる暇があったら勝手に入れてしまえばいいものを、と思ったが、
どうやら敦賀氏は彼女に入れていいと言わせたいらしい。
「ほら、ぐちょぐちょに濡れて、いやらしい音を立てて、熱くなってヒクヒク待ってる」
「い、言わないでください、そんなことっ」
「だって本当のことだよ?」
「…ちょっと、待って、ください…まだくるし…んっ…」
「待てない」
…紳士なのかサディストなのか大人なのか子供っぽいのか、この男はいまいちよくわからない。
「あ、ん…もう……いい、ですよ…」
「入れてほしい?」
「な、ちが…!」
「どうしても入れてほしい?」
「もうやだっ…違うでしょう、敦賀さんがどうしてもって…」
「キョーコ、欲しい?俺のこと、欲しくないの?」
「…っ…ずるい………欲しい、です…敦賀さんが、欲しい」
うつ伏せた状態で愛撫を続けられ、京子嬢は根負けした様子で懇願する。
「おいで」
敦賀氏は体勢を変え、座った姿勢で彼女を誘う。
京子嬢はふらふらとバランスを崩しながらも近づき、向き合って跨り、ゆっくり腰を下ろそうとした。
「違うよキョーコ、あっちを向いて」
「え?!…いやです…あの…敦賀さんの顔、見たいし、それに」
「いいからあっち」
くるりと向きを変えさせ、腰を持って高く反り立つ自らへと埋め込ませていく。
「や、やだっ、カメラ、恥ずかしいのっ…ね、おねがいっ…!…あ、あ、ああっ、んぁっ」
胸を揉みしだきながら、彼女の身体を上下に揺する。
「あ、あ、あっ、ああ、ん、んぁ、ああぁ、やだ、ぁああぁっ……っ…!!」
「すごい、イキっぱなしだね」
敦賀氏が脱力している京子嬢の足をM字に広げると、モニター越しに繋がっている部分が顕わに見えた。
耳元で何か小さく囁いている。
「……言って」
「…私、キョーコは…」
「カメラ見て。台詞だと思って言ってごらん」
顎を掴まれた彼女のまっすぐな潤んだ瞳がカメラに捕らえられる。
「…私…キョーコは…敦賀さん…が…大好き、なの…」
「それから?」
「大好き…で…中に、ぁあ、ん…熱くて、あ、いっぱい、で…」
言ってるあいだも腰を揺すられ、くちゅくちゅと淫らな音が響く。
「も、やだ…熱くて、なにも、考えらなく、なるのぉ…あっ、ああ、あっ気持ち、いいよぉ」
「キョーコ、そんな台詞、教えてないよ」
繋がった上にある陰核を強くこすりながら、京子嬢の腰を持って突き上げる。
彼女の身体は敦賀氏のその動きに合わせて跳ね上がり、落とされる。
「あっ、あっ、ああっ、だ、だめっ、また、ぁああっ」
「だめ?やめて欲しい?」
「やだっ、もっと、あっ、んんっ」
「欲しがりさんだね、キョーコ」
「ぁあっ、あっ、やだやだ、きちゃ、きちゃうっ!あっ、ああっ!……あっあぁあああん!」
結局この瞬間にも敦賀氏は満足しなかったのか、脱力した京子嬢を横にさせ
足を持ち上げ結合部分をカメラに見せつけながら後ろから突き続けた。
このあとようやく満足した敦賀氏は疲れて眠り込んだ彼女を確認し、
ベッドの脇に落ちていたバスタオルを腰に巻いて、荷物を片付けている私のところへやって来た。
「手錠の鍵と、それから撮影したデータをもらえるかな」
素直に差し出すと、敦賀氏は嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとう、きっと彼女も喜ぶ」
そうは思えませんが、と言いそうになったがなんとか飲み込んだ。
「では失礼させていただきます。
もしまたわたくしめが御入用でしたらローリィ様まで申し出ていただければ馳せ遣わさせていただきます」
「…そう…ありがたいけど、もう頼まないと思うよ…」
ったくあの人は、とぶつぶつ言っている敦賀氏の声を背後に聞きながら、私は部屋を後にした。
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「おー、昨夜はどうだった?」
翌日、お屋敷でローリィ様が嬉々としてやっていらっしゃった。
「ご命令は全うさせていただきました」
「そうかそうか!いや、半年つきあってればそろそろマンネリ化してるんじゃないかと思ってなあ。
で、あいつらのことは"わかった"か?」
「どうでしょうか…でも、大変興味深いお二人でございました」
「興味深いか、お前がそんな風に言うのは初めてじゃないか?
おおそうだ、今度は事務所を巻き込んで温泉旅行にでも連れてってやるか!
それはいい、そして温泉と言えば卓球大会だ、豪華商品を用意しなくちゃな!」
ご機嫌で叫びながらローリィ様は行ってしまわれ私は取り残される。…また忙しくなりそうだ。
それにしても…ローリィ様以外にも面白い人間というのはまだまだいるらしい。
世の中はまだ広いに違いない、そう思うと少しだけ心が弾むのを私は感じた。
そういえばさっき他の使用人たちが、今日は二人が共演しているドラマがあるとか話していたな。
見てみようかな…ドラマなんて見るのはいつ以来だろう、などと考えながら、私は自室へと引き上げた。