「キョーコは、呼んでくれないの?名前…」
ソファの上で敦賀さんに膝枕をしていたら、突然訊かれた。
「……?敦賀さん?」
とりあえず、いつもの呼び名を呼んでみる。敦賀さんは、ふぅ、とため息を吐いてもそもそと私の体の方に顔を向けた。
「そうじゃなくて、下の名前」
へ?下の名前?
「……呼べません」
だって、なんだか照れくさくって…。今まで、何度か呼んでみようとしたことはあるのよ?
でも、恥ずかしくって呼べなかった。
「そっか。まあ、いいか、焦らないで」
言いながら、敦賀さんは私の腰を撫でた。
ソファから降りて、私の前に膝立ちで座ってキスをくれる。
「したくなったよ、キョーコ。いい?」
「…っ、じゃあ、ベッドルームに…」
「んーん。ここで」
ここって…。リビングですよ?ソファの上ですよ?あ、明るいですよっ!?
「恥ずかしいで…、んっ」
反論できないように塞がれた唇が熱い。敦賀さんの唇が、私の唇を挟んで、ちゅ、ちゅ、って啄むように吸われる。
「…んっ」
気持ちいいな。敦賀さん、キスが上手なのね。
たくさん、唇を重ねるだけのキスをして、意識がふわふわしだした頃、敦賀さんの舌が私の唇をなぞる。
「…ふあ」
吐息のもれた唇から、するりと舌が入り込んできた。
「んっ、んー!」
キスをしながら、器用に私のブラウスのボタンを外しにかかる、敦賀さんの手をぺしぺしと叩く。
「んんっ」
駄目。ここじゃ駄目…。恥ずかしい。
思ってるのに、私の舌を捕らえる敦賀さんの舌や、ブラから差し入れられる手を拒む事ができない。
胸の先に触れる、敦賀さんの両手の手首を掴む。
唇が、頬に、耳に移動してきて、
「キョーコかわいい。いっぱい、気持ちよくなって?」
って囁いた。
耳元で囁く、この声が好き。なんだかぞくぞくしてしまう。
「あっ、ん」
敦賀さんの唇が首筋に降りてきて、ブラの隙間から、胸の先をくわえた。舌先で転がされたり、唇で挟まれてきゅ、と吸われたり…。
だんだんと、体が熱くなる。
「ああんっ」
空いた方の手で、私のショーツを脱がせて、割れ目を撫で上げられた。
何度か撫で上げてヌルヌルしてきた指で、割れ目の少し上の粒に触れる。
敦賀さんの指が、くるくると踊るように動いて、体の奥がじんじんとと痺れたように、熱い。
「あんっ、…あっ、ああっ」
堪えきれなくて、敦賀さんの頭を抱え込むようにしがみついた。指に絡まる髪の毛が、なんだか可愛い感触…。
そんな事、考えてる場合じゃない。
「敦賀さんっ、きちゃう、のっ、ああんっ」
アレがきちゃう。ムズムズ高まる熱が全身を駆け巡る。
「んっ、んんっ、真っ白に、なっちゃ、ああああっ」
敦賀さんに、舌と指でいじられてイっちゃった。気持ちいいけど恥ずかしい。
えっちの気持ちよさはわかったけど、恥ずかしさはいつまでたっても消えないな。
「やっ、敦賀さんっ!」
敦賀さんは、軽いキスをくれてから、スカートを捲り上げて私の脚をM字型になるように開いた。
やだやだやだっ。恥ずかしいっ…。だって、明るいし、座ってる敦賀さんには丸見え…。
「敦賀さんっ、やだ、…ひゃあっ」
割れ目に、敦賀さんの舌が這う。敦賀さんを受け入れる入り口に、舌がねじ込まれて、うぞうぞと蠢いてる。
敦賀さんの舌が熱い。私の中も、熱い。トロトロにとけてるみたい…。
こういう事されるのは初めてじゃないけど、恥ずかしさには慣れない。恥ずかしい。でも、好き。
「んっ、あっ、ああっ」
敦賀さんに舐められてる入り口も熱いけど、中も熱い。じくじくと疼いてきてる。
早く、早く…。敦賀さんが欲しい。
「敦賀さんっ…、も、だめっ」
いつも、指や舌で散々ほぐしてから、敦賀さんは入ってくるけど、なんだか、今日は待てない。
明るいから?いつもは着てない服を着たままだから?わからないけど、早く敦賀さんに入ってきて欲しい。
「あっ、つ、敦賀さん、……もっ、きて?」
こんな恥ずかしいおねだりするの、初めて。敦賀さんも、少し驚いた顔。でも、すぐに嬉しそうな顔に変わった。
あんまり、見ないで?敦賀さん。すっごく恥ずかしいんだから…。
「いいの?」
「んっ、敦賀さんが、欲しい…です」
ため息のような、吐息と一緒に吐き出した声にドキドキと胸が高鳴る。敦賀さんの声が艶っぽくて、ぞくぞくと体中の血液が駆け巡る。
「ホントに?」
「あっ、は、早く…」
何度も確認しないで?敦賀さんと早くひとつになりたいの。
「じゃあ、入るよ?」
ポケットから避妊具を取り出して、するすると器用に着けた敦賀さんは、私の脚をM字に開いたまま、腰を進めてきた。
「んっ、あああっ」
こうやって、敦賀さんが入ってくる瞬間が好き。私の中が満たされる感じが気持ちいい。
いつも、たくさんほぐされてる分、敦賀さんのがおっきく感じる。中が、熱い。
「あっ、んぅっ、敦賀さんっ、あんっ」
しがみつこうと伸ばした腕を、敦賀さんの首に回した。
「ここ?キョーコの感じるところ…」
「んっ、んっ、ああんっ、ソコっ。…すぐっ、おかしっ…、なっちゃうっ」
初めてイってしまった日から、敦賀さんは私の中を確認するように、何度も何度も擦る。
抜き差しを繰り返しては、体が熱くなるところに当たるようにぐりぐりと押し付けてくる。
「んあっ、あっ、あっ、やぁっ、くるっ、くるのっ、あああああんっ」
激しい目眩と共に、体の力が抜けてく。体が、ガクガクと痙攣して、私の意識は真っ白になる。
敦賀さんはそうなる私を満足気に見つめて、一息つくのを待ってから、また動き始めるのだった。
「なんか、今日、やらしいね。キョーコ?」
「そんな、こと、んっ、ないですっ」
そう感じるのは多分、部屋の明るさと乱れた服のせい…。恥ずかしくて、そう思いたかった。
「気持ちいい?」
「んっ、きもち、いっ、…敦賀さっ、敦賀、さんと、こうするのっ、ああんっ、すきぃっ」
何だか、今日の私、変。恥ずかしい事ばっかり言ってる。
「それはよかった」
敦賀さんは、私の言葉を受け止めて、嬉しそう笑う。頬に唇を落として、また体の奥まで自分をねじ込んできた。
「あっ、ああっ」
恥ずかしい声が勝手に出ていく。顔も、体も、中も、全部が熱に浮かされたみたいに熱い。
「あっ、あんっ、敦賀さんっ、熱ぅいっ」
「…っ、キョーコ、名前、呼んで?」
「敦賀さんっ」
「そうじゃなくて…」
そうじゃなくて。普通の時には照れて絶対に呼べない名前…。
「あっ、…れ、蓮さん?」
やっとの思いで口に出した呼び名に、嬉しそうに、でも困ったように笑って、
「さん、は、いらない」
敦賀さんは言った。
「あっ、んっ、あっ、あんっ、れ、蓮っ」
名前を口に出すと、心がくすぐったい。でも、嬉しくて口に出す度、体が熱くなる。
こうやって名前が呼べるの、すごく嬉しい。
「んっ、ああっ、ね?キスして?んんっ」
「駄目だよ」
敦賀さんの頭を掴んで唇を求める私から逃げようとする。
「終わって、…っ、口、ゆすいでから、ね?」
あ、そうか。口でしたから、私が嫌じゃないかって気にしてくれてるのね…。
でも、今は敦賀さんとたくさんキスがしたい。
「おっ、おねがいっ、ねっ、んんっ、してっ?蓮っ」
名前を口に出した瞬間、敦賀さんは真っ赤になって私の肩に顔をうずめた。そして、
「キョーコ、…っ、それはっ、反則だよ…」
って、触れるだけのキスをくれた。
触れるだけのキスじゃ、物足りない。もっと、もっと深いキスがいい。
「あっ、もっと…」
たくさん、敦賀さんを感じていたい…。
繰り返し、軽いキスをくれる敦賀さんに、
「もっと」
って、子供のようにキスをせがんだ。
熱い。体中が熱くて、熱くて、またアレが近づいてくる。
「んっ、んっ、んっ、んんっ」
次第に深くなっていったキスの、粘膜の触れ合う音や、つながり合ってるところが擦れる音が響く。
きちゃう。また、体中の熱がせり上がってきて、ぞくぞくと体を走り回る。
また、きちゃう。
「んっ、んんっ、んんんんんんっ!」
襲いくる熱に体を任せて、波に飲み込まれた。
唇を付けたまま、ガクガクと震える体の奥で、敦賀さんがはじけるのを感じた。
服を整えて、敦賀さんの隣に座る。さっきの自分を思い出してものすごく照れくさくなった。
「敦賀さん、何か飲みます?」
台所に水を取りに行こうかな、と思って切り出す。
ん?なんか、敦賀さん、怒ってる?
「名前、さっきは呼んでくれたのに」
怒ってるんじゃなくて、拗ねてるみたい…。なんだか、子供みたい。可愛いっ。
「やっぱり普通の時は照れくさいです」
そう言った私に、仕方ないなって顔をした。
「まあ、焦らずに、ゆっくり待つよ」
そう言ってくれた敦賀さんは、やっぱり大人で、格好良かった。
敦賀さんの耳に唇を寄せる。
「えっちの時は、また、呼んでもいいですか?」
こしょこしょと耳打ちする私に、一瞬だけ驚いた顔を向けた後、
「もちろんだよ」
って、最っ上級に嬉しそうな顔をする敦賀さんが、ものすごく可愛い。
なんだか照れちゃう。
恥ずかしくなって視線を逸らした私に口付けて、
「呼んでくれてありがとう」
敦賀さんが言った。
「ど、どういたしまして…」
は、恥ずかしい。
私は照れて、俯いてしまった。敦賀さんの目が見れないけど、多分。
み、見ないでぇ…。
嬉しそうな顔して、私を見つめてる。そう確信しながら、照れくささと戦うのだった。