目を覚ますと、隣で気持ち良さそうに寝息を立てている敦賀さんがいる。  
ああ、昨日は確か一緒にご飯を食べて、シャワーを貰って、それから…。  
たくさん、肌を重ね合ったのだっけ?  
肌を重ねる行為は、恥ずかしいけど気持ちが良くて、ひとつになれる感じがして、心の中がほわっとする。  
こうやって、裸のまま二人でシーツにくるまって、敦賀さんの腕の中で眠れることが、何とも幸せな気分になってしまう。  
……すごい。敦賀さんったら。男の人なのに睫が長いのね。  
髪の毛だってつやつや、ふかふかですごく気持ちいいし。  
長くて綺麗な指だって、端正な顔立ちだって、長身でしなやかな体だって、演技力や表現力だって何でも持ってる。  
そんな人が恋人なんて、やっぱり、信じられない。  
でも、こうやって二人でいるときは、心の中がムズムズとあったかくなって、幸せだなー、好きだなーって感じるの。  
もそもそとシーツから手を出して、敦賀さんの頬に触れる。指先に感じる敦賀さんの体温が、心地いい。  
キス、したいなー。してもいいかな?起こさないように、こっそり、こっそり…。  
ゆっくりと顔を近づけて、触れるだけのキスをした。  
 
唇に触れた敦賀さんの、ふにゅ、とした唇の柔らかさとあたたかさに、胸がきゅうと締め付けられるように、鳴る。  
こんなに、甘く、あたたかい胸の苦しさがあるなんて初めて知った…。  
「……ん」  
あ、起こしちゃったかな?しまった。敦賀さん、忙しい人だからゆっくり眠らせてあげたかったのにな。  
ゆるゆると長い睫が上がって、敦賀さんの視線と私の視線がぶつかった。  
「…おはよう」  
「おはようございます。起こしちゃいました?」  
甘やかな微笑をたたえて、口を開いた敦賀さんが色っぽくて思わず見とれてしまう。  
帝王な時の敦賀さんは、激しい目眩がするくらいドキドキするけど、こういう柔らかい笑顔の時も、胸のあたたかさでドキドキする。  
「どうしたの?そんなに見つめられたら照れるよ」  
あ、よだれでもついてるかな?って慌てて口を拭おうとする敦賀さんが、なんだか可愛い。  
「いや、好きだなーって思って…」  
敦賀さんを見つめながら、ぼーっとした頭で発した言葉。嘘じゃないけど、なんだか気の抜けた声になってしまった。  
は、恥ずかしい…。  
「……」  
ほら、敦賀さんだって呆れ物が言えないじゃない。  
ん?んん?あれれれれ?  
 
見上げた私の目に写る敦賀さんは、赤くなって口元を抑えてる。  
目が合うと、逸らされてしまった。  
「最上さん…。それこそ、照れるよ」  
え?照れたの?あの、敦賀蓮が?こんなに、百戦錬磨みたいな顔して…。好き、のたった一言で?  
「す、すみません」  
なんだか私まで照れてちゃう。恥ずかしさと一緒に、ムズムズと嬉しさがこみ上げてくる。  
だって、なんだか敦賀さん、見たことないような可愛い顔するんだもの。  
「ふふっ」  
二人とも、赤い顔してかち合った視線に思わず笑みがこぼれる。  
二人してくすくすと笑ってたら、敦賀さんがぎゅーってしてくれた。  
「…ん、苦しっ」  
でも、気持ちいい…。  
「ごめん」  
少し手を緩めて、軽く抱きしめたまま落とされるキスが、好き。  
「好きです」  
もう一度、目を見て呟く私に、  
「俺も、好きだよ」  
と言って、敦賀さんはたくさんのキスをくれた。  
ゆったりとふにふにした優しいキスから、啄むようなキスになって、だんだん、深い口付けに代わってく…。  
「…んっ」  
私の口からこぼれる吐息が、なんだか恥ずかしくて、頬が火照ってくる。  
するすると体を這い回る敦賀さんの手が、くすぐったいけどあたたかくて、気持ちいい。  
 
「んっ、…はぁ」  
耳の後ろに唇を落とされて、首筋から鎖骨にかけて這う舌が、ヌルヌルしてて不思議な感じ。  
「やっぱり、怖い?」  
「大丈夫です…」  
初めての時、凄く痛くて泣いてしまったから、それ以来敦賀さんはこうやって訊いてくれる。  
こういう、優しさが本当に好き。私を想ってくれてるのが実感できて嬉しい。  
「怖かったら、言って?止められないけど、優しくできるように努力するから」  
優しい目をして、私を見下ろすように体制を変えた敦賀さんの首に腕を回した。  
くっついた体が、あったかい。  
「大丈夫です。敦賀さんに触られるの、嬉しいですから」  
…こういう事言うの、なんだか照れくさいな。  
恥ずかしいから、耳元でこしょこしょと囁くと、敦賀さんは頬にキスをくれた。  
「よかった…」  
安心したような声。優しい響き。この声が耳に心地いい。  
「……して?敦賀さん」  
えっちの気持ちよさはまだ、よくわからないけど、敦賀さんに触れられるのは好き。  
「ありがとう、最上さん」  
お礼なんか言われるような事言ってないのに…。  
そんな事言わなくていいです、と言おうとしたけど、唇を塞がれて言えなかった。  
「んっ、ふっ、んん」  
 
敦賀さんの乾いた手が、胸に触れた。  
恥ずかしいな。私の胸、小さいから、触り応えとかないんじゃないかなぁ?  
「んっ、んんっ」  
胸の先を摘まれて、ぞくぞくと甘い電流のようなものが体中をかけ巡る。鳥肌が立つ。体の中が、なんとなく熱い。  
くりくりと指で転がされて、時々、きゅうと強めに摘まれる度に、吐息がもれた。  
「あっ、ああん」  
敦賀さんの形のよい唇が、私の胸の先を捕らえる。  
きゅ、と吸われたかと思うとコロコロと舌で転がされ、押しつぶされて、お腹の中がじんわりと熱くなるのを感じた。  
「声、出して?」  
「む、り…、ん、恥ずかし、です」  
だって、私の声じゃないみたいなんだもの…。  
「じゃあ、ゆっくりでいいから。気持ちいいと思ったら、ね?」  
「…は、はい」  
胸の先に付いたまま動く唇が、くすぐったいような、熱いような。また、お腹の中が熱くなる感じ。気持ちいいってこういうこと?  
「…んっ、はぁ」  
でも、やっぱり、声を出すのは恥ずかしい。  
「最上さん…、かわいい」  
熱に浮かされたような敦賀さんの声。その声聞くの、ぞくぞくする。  
「か、かわい、く、なんか…、んっ」  
「かわいいよ」  
かわいいって言われるのが嬉しくて、胸が高鳴った。  
 
「ひゃっ」  
敦賀さんの手がするすると体を滑り降りてきて、下腹部の草むらの中の割れ目を撫で上げた。  
「怖い?」  
敦賀さんを受け入れる所の少し上にある粒に、やわやわと触れながら訊ねられる。  
「こわ、くっ、ん、ないです」  
ただ、びっくりしただけ。  
舌で胸を舐められながら、指先で粒を弄ばれる。皮を押し上げられて、中のコリコリしているところを押しつぶされた。  
「あ、ああっ、あん」  
「ここ、気持ちいい?」  
思わずあげてしまった声に、確認するように敦賀さんが反応する。  
気持ちいい?わからない。でも、お腹の中がじゅんってなって、体中が熱い。  
「あ、熱いっ、です。カラダがっ、ああん」  
今度は、唇が粒を捕らえた。指と違ってヌルヌル這い回る舌が、また、体を熱くする。  
「あっ、あっ、んぅっ」  
私、なんだか変…。おかしくなっちゃいそう。  
「つ、敦賀さんっ」  
なんとなく行き場がなくて、シーツを握り締めていた手を敦賀さんの頭に置いた。  
「ああんっ、あっ、あっ、ああっ」  
違うの。そんなに、激しく舌を動かして欲しいわけじゃなかったのに。何も、考えられない…。  
「敦賀さ、あっ、わたしっ、おかしくなっちゃうっ、」  
何か、変。  
 
体の奥から何かがせり上がってくる感覚に目眩を覚える。  
「あっ、やぁっ、はなしてっ、敦賀さんっ、何か、ああんっ、きちゃっ、ああああっ」  
体が、ガクガクと震えた。一瞬、頭の中が真っ白になった。  
「はなしてって、言ったのにぃ」  
「おかしくなったの?」  
唇を離して、私の顔を覗き込む敦賀さんは、凄く嬉しそう。  
「…はい」  
「イッてくれたの、初めてだ…」  
きゅうって私の体を抱きしめて、頬にキスをくれた敦賀さんが、子供みたいに笑ってて凄く可愛い。  
そっか。ああいう風に真っ白になるのがイクってことなのね…。  
「もう、入っていい?我慢できないよ」  
耳元で囁く吐息が熱い。  
「い、痛くないです?」  
やっぱり、ちょっと怖い。けど、お腹の中はじんじんと熱いまま。  
「あっ」  
「今日は、たくさん濡れてるから、大丈夫だと思うよ」  
割れ目を撫で上げて、確認してから敦賀さんが言った。  
避妊具を着けて、入り口に敦賀さん自身をあてがう。  
「でも、やっぱり痛かったら、言って?」  
そう言って、敦賀さんが入ってくる。ゆっくり、ゆっくり、私の中が押し広げられて、敦賀さんでいっぱいになる。  
入ってくる感覚が、私の全身を粟立たせた。  
「あっ、入っちゃ、う、」  
 
痛みはなかった。ただ、熱い。私の中が熱いのか、敦賀さんが熱いのかわからない。でも、じんじんと痺れたように、熱い。  
「痛い?」  
「い、いたくないっ、です。ただ…」  
「ただ?」  
「なんだか、熱いっ」  
奥まで、敦賀さんが入ってきた。体の中にこもった熱は、さらに熱くなる。  
「動くよ?」  
「はっ、はい、…あっ、ああっ」  
敦賀さんの動きに合わせて、また、せり上がるような何かを感じた。中が熱くて、最初は恥ずかしくて出なかった声も、勝手に出ていく。  
「ああっ、んっ、あっ、あっ、…ひゃぅっ」  
やっ。今、何か、変な感じ。  
「ここ?」  
「あっ、やっ、敦賀さんっ。ソコ、へんっ!へんっ、なのっ」  
ぐいって、敦賀さんが奥まできた瞬間触れたところを擦られると、体中が一気に熱くなった。  
お腹が熱いのが、ソコに集中する感じ…。  
「あんっ、あっ、あっ、つるがさっ、だめっ、あつっ、よぉっ」  
駄目って言ってるのに、敦賀さんはソコばっかりたくさん擦る。ぐりぐりと押し付けられて、離したと思ったら、また、奥まで…。  
繰り返し擦られて、また、体の中から何かがせり上がってくるのを感じた。  
「あっ、あっ、つ、るがさっ、またっ、またっ、おかしくなっちゃうぅ」  
 
「いいよ。おかしくなって…、俺も、すぐだからっ」  
何だか、余裕のない声?駄目。熱くて、熱くて、何も考えられない。  
「あっ、つるがさっ、くるっ、くるのっ、いっちゃ、…あああっ、んんんんんっ」  
ガクガクと痙攣する体でしがみついて、真っ白になる意識の中。耳元で、  
「……、キョーコっ」  
名前を呼ぶ敦賀さんの声が聞こえた。  
 
「…うれしい」  
敦賀さんの隣で寝転んで呟く私に、何が?と敦賀さんが訊ねた。  
「名前、初めて呼んでくれた…」  
ふつふつと、嬉しい感情が湧き上がって、心の中があったかい。  
「俺も、嬉しい」  
今度は敦賀さんが呟く。凄く嬉しそうな顔で笑う敦賀さん…。きっと、よっぽどの事があったのね。  
「キョーコがいっぱい気持ちよくなってくれた」  
「へ?」  
敦賀さんは子供みたいに、顔面いっぱいの笑顔…。か、可愛いっ。でも、なんだか恥ずかしい。  
恥ずかしくて、きっと、真っ赤になった私を抱きしめて、  
「ずっと一緒にいようね」  
って、敦賀さんが言った。  
私は、敦賀さんのそばいられるのが嬉しくて、  
「ずっと、ずーっと、一緒にいてください」  
答えながら、幸せを噛みしめる。  
約束ですよ?敦賀さん。ずっと、ずっと…。  
一緒にいてください、ね?  
 

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