キョーコは最近、悩んでいる。
仕事も増え始めたのはいいのだが、そのぶん共演者やスタッフから食事に誘われたり、電話番号を聞かれたりすることが多くなった。
ふたりきりで、という場合は断っているし、電話番号も適当に言い訳して教えてはいない。
当然やましいことは何もないのだが、それでも蓮は心を乱されるようなのでキョーコは隠している。
もともと嘘がつけないうえに蓮は鋭いし、なにより黙っていることが後ろめたい。
黙っている内容の数も溜まってきた。
白状するべきか…いや、わざわざ不機嫌になることを言うこともないのか?とキョーコは密かに悩んでいた。
「キョーコ、最近なにか隠していないか?」
食事も終えようという頃、蓮のまっすぐな瞳に見据えられて、キョーコは視線を返すことができない。
「な、なにおっしゃってるんですか、隠し事なんてありませんっ」
慌てて食べ終わった皿を持って立ち上がるキョーコ。
わかりやすい、隠し事大有りです、って言ってるようなもんじゃないか、と蓮は内心呆れるが。
しかしあの様子じゃ(俺的には)たいしたことじゃなさそうだな、
もう少し突付けば洗いざらい喋るだろうし、と余裕を浮かべていた。
が、その晩。
キョーコはあまりに気になっていたため、寝言で全部洗いざらい告白。
声をかけてきた人の名前も状況も事細かに報告したうえ、
「やましいことはないけど、これ言っちゃったらきっと敦賀さん不機嫌になるわ、どうしよう…。
敦賀さんってば意外と子供っぽいし嫉妬深いしおまけにいつまで忘れてくれないし」
翌朝。
「んーーーっ、なんだかすっきりして目覚めのいい朝!
あれ?敦賀さん、どうかなさったんですか?眠れなかったんですか?」
「なんでもないよ」
「…どうしてスネてらっしゃるんです?」
いいんだ、どうせ俺はガキっぽい上に嫉妬深くてさらに執念深いんだ、とぶつぶつ呟いている蓮。
「まあ…最後が可愛かったから許してあげるよ」
「ほぇ?なんのお話ですか?」
「独り言」
「ふふ、敦賀さんってば、変なのぉ」
寝言の最後、「でも大好きなのぉ」とキューティーハニースマイルを浮かべて付け加えたキョーコを思い出し、
とっさに反対を向いてこっそり顔を赤らめた蓮だった。