遠くで携帯電話が鳴っているのを聞きながら、
しゃがみこんだ俺は浴槽の縁に座らせたキョーコの膝を大きく広げさせ
その熱く火照っている中央の溝をぺろりと舐め上げた。
「あぁっ!」
縁に置いた細い両腕で自らの体重を支えるのに必死で、
キョーコはすでに逆らう余裕などすっかり失っていた。
「ん、おいしい。けどこんなにどんどん溢れてちゃ、飲みきれないな」
「だ、だめ…つるがさん、やめ、てぇ…っ」
潤った蜜壷とは裏腹に、キョーコはさっきから拒否の台詞ばかり吐いている。
どうやらバスルームが明るいのがお気に召さないらしい。
一方の俺は、そんなお気に召さない状態のキョーコにたまらなく欲情するわけだが。
「その言葉が本心ならやめてあげてもいいんだけど」
大きく膨らんで俺を誘う陰核をちゅぅっと吸うと、キョーコはビクンと反応し身体を反らせた。
「ココはもっとお願いします、って言ってるみたいだし」
反応の良さに悦んだ俺は、その突起を苛めることに専念し、いつ電話が切れたのかにも気付かなかった。
突起の頂上を舌で突付いたり、また根元をゆっくりと舐め回し、
それに合わせて溢れて出してくる蜜を時々じゅるじゅると音を立てて吸い上げる。
「あ、あ、あっ…だ、だめっ、あ、あぁっ、あ…っ…あん、んっ、やだっ、もぉ、やぁっ」
いくら飲み込んでもとめどなく溢れてきて、吸いきれずに縁へと垂れていく。
俺はそれを塞ぐように指を差し入れ、指がすっぽり収まると抜いてしまい、
キョーコが欲しがって震える様子を楽しみながら再び入れ込む。
「ぁあっ!はぁ、んんっ!あ、あぁ…ん…っ…あ、や、やだ、つるが、さぁん…」
「何も知らないって顔して、下はこんなにいっぱいお漏らしして、いけない子だな」
俺の言葉に応えるように、きゅっと指が締め付けられる。
「すごいな…ひくひく啼いてるよ、キョーコのココ」
「もう…お願いつるがさんっ、それ以上…あ、あっ…はぁ…ぁん…い、言わない、でぇ」
「ごめん、意地悪言うとキョーコのココが悦ぶからつい、ね」
抜き差しをやめて回すように動かすと、耐えるように太腿の肉が美しく締まる。
「あ、あ、あっ…だ、だめっ、倒れ、ちゃうからっ、や、やぁっ、んん!」
唇を塞ぐ。
左手で背中を支えてやると、待ちわびたように首に腕を回ししがみついてくる。
腰を浮かせていやらしく動かしているキョーコ。
自ら入れ込もうと求めて揺れているのか、あるいは逃げようともがいているのか。
どちらにしろ俺に容赦する気はまったくないが。
2本の指を奥まで差し込み、激しくかき回してやると、
「あああっ、ぁああ、あん、あ、だめだめっ、イっ、イっちゃ…っ…ぁああっ……っ…!!!」
くちゅくちゅと卑猥な音がバスルームに響き、甲高く啼いてキョーコは俺に倒れ落ちた。
全体重を預けられたのをいいことに、俺は背中を向けさせたキョーコをバスルームの壁に押し付ける。
両手首を押さえつけ、控えめに浮き出る背骨を下から上へ、愛しむようにキスを落とす。
「…いい?」
うなじまでたどり着いたところで耳へと移動し、舌を這わせてからできるだけ甘く囁いて許しを請うた。
が、この日のキョーコは頑固だった。
「…だめ、です」
「どうして?」
「ん…あつい…からぁ」
キョーコが絶頂の余韻で荒がる息を必死に整えているのも構わず、
まだ小さく震えているその場所に、俺は主張している自身のモノをぎゅうぎゅうと押し付ける。
「ココが熱い?欲しいからだろう?」
「ち、ちがうっ…ちがうの、のぼせちゃう…ほんとに、だめぇ」
俺はくらりと小さな眩暈を覚えた。
「我慢できないよ…今すぐ入れたいんだ、キョーコの中」
「おねがい…おねがいです、待って…ベッドで、ね?」
振り向いたキョーコは眉間をわずかに寄せ、潤んだ瞳で俺を見上げ、おねがい、ともう一度小さく懇願した。
…計算してやっているとも思えないが、俺はこの目にすこぶる弱い。
「――わかったよ、じゃあベッドで。待つぶんいっぱい苛めるからね」
「ん、はい…先、行っててください。私…あの…身体洗っていきますから」
洗ってあげるよ、と言う俺を無理矢理追い出し、キョーコはバスルームの入り口を閉めてしまった。
諦めて身体を拭き、ミネラルウォーターを取ろうと冷蔵庫へ向かうと、
リビングのテーブルの上に置いてあるキョーコの携帯電話が再び鳴った。
光っているディスプレイを見ると、予想通りの名前が表示されている。
俺はため息をついて手にとり、そしてボタンを押して耳に当てた。
『もしもーし』
「…もしもーし、じゃないだろう」
『なんだ蓮かよ。俺はキョーコちゃんに電話してんだよ』
楽しそうな声が耳を打つ。
電話の相手は古賀。
俺とこいつは今のように互いに世間に顔が知れる前からの…あまり認めたくはないが、いわゆる友人だ。
当然俺とキョーコが付き合っているのも、こうして一緒に住んでいるのも話したので知っている。
話したというより酒を飲まされ言わされたわけだが、お前が本気で恋愛するとは、とひどく驚かれた。
俺だって自分自身驚いている。
いや、正確に言うと、今までも本気だと思っていたがキョーコと付き合い始めた今、
それが本気ではなかったことを思い知らされている。
古賀とは久々にドラマで共演することになり、10日ほど前から撮影が始まったのだが…
今週に入ってから、こうして夜が更けた頃にほぼ毎日キョーコに電話をしてくる。
キョーコはというと、特には嫌がっているわけでもなく、
むしろ「敦賀さんのお友達と仲良くなれて嬉しいです」なんてあの罪な笑顔で微笑むものだから俺も何も言えない。
「まったく…いい加減、俺とふたりの時間を狙ってキョーコに電話してくるのはやめてくれないか」
『そーんなこと言ってぇ。キョーコちゃんがひとりの時にかけられてもイヤなくせに』
「…お前、わざとだろう」
『なんの話かな?』
「とぼけるなよ。毎晩俺が帰って一息ついた頃を見計らって電話してるだろう。
電話がないと安心してりゃ昨日みたいに突然飯を食わせろなんて押しかけてくるし」
『でもキョーコちゃんは喜んでたぞ?昨日のご飯美味しかったなぁ。
あり合わせのものですみません、であれだけ出てくるんだからな。特にあの肉じゃがなんて――』
「あれ?電話、誰ですか?」
バスルームからキョーコが髪を拭きながら出てきた。
「…誰でもないよ。ただの嫌がらせ電話」
『ひどいなぁ』
「お前は黙ってろよ」
「あ、わかった、古賀さんでしょう?」
くすくすと笑うキョーコに渋々ながら電話を渡す。
「今日は敦賀さん、ちゃんとごはん食べてましたか?」などと話しているキョーコ。
そんなことは目の前の俺に聞けば済むだろうに…
電話を取り上げてすぐにでもさっきの続きをしたい欲求に駆られるが、
楽しそうなキョーコの様子を見るとそんな大人げないこともできず、
仕方がないのでこのあいだに台本でも読むか、と俺はひとり寝室へと消えた。
30分ほど経って、台詞をすっかり頭に入れたところで寝室から出た。
「キョーコ、そろそろ電話―――…は、終わったみたい、だな」
キョーコは電話を切ってそのまま寝てしまったらしく、
床に倒れこんだ状態で深い寝息を立て、手元には携帯電話がコロンと転がっていた。
「キョーコさん、風邪ひきますよ」
つんつんとほっぺを突付いてみると、
「ん…つるがさぁ、ん…」
満面の笑みを浮かべた甘い寝言で返された。
ハァァァァァァ…、と思わず巨大なため息が口を突いて出る。
こんな無邪気な寝顔を見せられたら、襲いたくても襲えないじゃないか!
くそっ、あの男、明日絶対ただじゃ済まさないからな!
ブツブツと悪態をつきながら、キョーコを抱え上げてベッドへ運んだ。
翌日の収録後、俺の顔を見るなりきびすを返した古賀の首根っこを掴んで引き止めた。
「古賀くん、どこへ逃げるのかな?」
「…その恐ろしいほどに爽やかで紳士的な笑顔はやめてくれ」
「人の幸せを邪魔してなにが楽しいんだおまえは」
「邪魔なんかしてないぞ?昨日だってキョーコちゃんが眠くなった、って言うからすぐに切ったし」
「俺が見たときはもう寝てたんだ」
「結構なことじゃないか」
あれぇ?蓮くんは彼女を寝かせずに一体なにをしようとしていたのかな?と古賀はニヤニヤと楽しそうな顔をしている。
こいつ…とことん俺で遊ぶ気だな!?
「とにかく…もう電話してくるな」
「わかったよ」
「突然押しかけてくるのもやめろ!」
「わかった、わかったって。とりあえず今日は電話もしないし遊びにも行かないよ」
「絶対だな」
「約束するよ、ほら指切り」
「…するか、気色悪い」
蓮くん冷たいなぁ、と笑っているのを背中で聞きながら、俺はスタジオを後にした。
とりあえず今夜は邪魔されないだろう、安堵しながら玄関のドアを開けると――
「敦賀さん!おかえりなさーーーいっ!」
キョーコがものすごい勢いで飛びついてきた。
「ただいまキョーコ。ご機嫌だね」
「そうなんです!見てください、すっごくいいものもらったんですっ!!」
手をひっぱられてリビングまで連れて行かれた俺が見たものは…ディ○ニー映画のDVDの山。
「すごいでしょう?!見てください、あっこれ、子供の頃見て、また見たいって思ってたんです!
で、こっちは見そびれたままで、ずっと見たくて気になってたもので、
それからこれ!私もう大好きなんです、何度も借りて見てるんですけど、そのたび感動して泣いちゃって」
ね、敦賀さんも一緒に見ましょう?と目をキラキラ輝かせているキョーコ。
「…いいけど…これから見るの?」
「そうですよ、今夜は徹夜ですっ!!」
「……キョーコ」
「はい?」
「それ、誰にもらった?」
「お待たせ、帰りましょう」
「了解。あ、そうだ。キョーコちゃんにアレ、渡してくれた?」
「渡したわよ。ぴょんぴょん跳ねて大喜びしてたわ」
声をあげて笑いたいのをこらえて震える古賀、プレゼントの贈り主。
「蓮をいじめるのもほどほどにしてくれ、って社くんに泣きつかれたわよ。どんどん不機嫌になってくんだ、って」
「やだね。こんな楽しい遊び、やめられるかよ」
「自分が彼女と別れたばかりだからって…」
「だって不公平じゃないか。俺が長い長い秋の夜を淋しく過ごしてるってのにあの男、
日本中の女の子が一瞬でとろけそうな顔してキョーコキョーコって幸せそうに」
「要するに八つ当たりじゃないのよ…
…まああんなイイ男が泣きながら『もうやめてくれ』って懇願してくる姿は私もぜひ拝見したいわね」
「お?さすが敏腕マネージャー!言うことが違うねえ」
次はどんな手で遊ぼうか、と計画を練りながら帰路につく2人。
最強サディストコンビの蓮いじめはまだまだ幕を開けたばかり?……かもしれない。