はぁ、とため息をついたことに気付いて、私は自分を戒めるみたいに首を振った。
ダメダメ、しっかりしなきゃキョーコ。
この撮影が終わってマンションに帰ったら、敦賀さんが戻ってきたときのためにお掃除して、買い物して、それから…
必死にやることを考えるけれど、あまりやる気が起きなくて再びため息。
敦賀さんは10日の予定で地方ロケ。
今日はその8日目だ。
1日目は、敦賀さんのぬくもりがまだ残ってる気がして、ストンと眠りに落ちた。
2日目は、仕事がハードだったから、疲れて気付いたら朝だった。
3日目くらいから…なぜだか不安になってきて、胸がざわざわして、眠れなくなった。
淋しいってこういうことを言うんだろうか?
今までこんな不安、感じたことはなかった。
敦賀さんと会って、人を本当に好きになるってことを知って、そのうえ愛されるってことを知った。
強くなれた、と思ったのに、もしかして弱くなったのかな…。
淋しくなったらいつでも電話しておいで、って敦賀さんは言ったけど、
電話したら鋭い敦賀さんのことだもの、私が本当に淋しくなってることなんて、すぐに気付いちゃう。
そう思うと電話もできず、それで余計に淋しさが募ってしまう。
「会いたい…」
しょんぼりと局を出て、一歩、外を歩き始めた瞬間、私の前に巨大かつまばゆい光を放つド派手な車が横付けされた。
社長さんだわ…
今日は一体何の用かしら、と立ち止まった私の前でドアが開いて、伸びてきた腕に引っ張られて車の中へ引きずり込まれた。
「―――…敦賀さん!?」
「ただいま、キョーコ」
腕の中でぎゅっとされて、見上げるとふんわり笑う愛しい人の顔。
「だって…だってまだ…」
まだ2日も残ってるはずだし…嬉しいけど、またロケに戻るんだったらぬか喜びもしたくない。
混乱する頭で、ただぼぉっと敦賀さんの顔を見つめていると
「いい画が撮れたから、って早く終わったんだ。驚かせようと思ったんだけど…キョーコ、ちゃんと寝てた?」
敦賀さんの目をちゃんと見れなくて、胸に顔を埋めてシャツを握り締めた。
「ごめんなさい…」
強くなって敦賀さんを支えたいのに。
心配なんかしないで仕事に専念して欲しいのに。
握り締める手に力がこもってしがみついてる私を強く強く抱きしめて、大丈夫だよ、って頭を撫でてくれた。
何度も髪をすく指が、背中をさする掌が優しくて、渦を巻いてた不安が嘘みたいに消えていく。
「敦賀さんに会いたかったんです、すごく」
「俺もだよ。会いたかった。会って、それから…」
いきなり深くキスされた。
驚いたけど、久しぶりの唇につい許してしまう。
舌が入ってきて、口の中を器用に動き回る。
思うように息ができなくて、苦しさと気持ちよさで吐息が漏れる。
なんだか頭がふわふわしてきて、うまく考えが働かない。
ただ、気持ちいい、って思ってたら、いきなり服を上げられて、ブラジャーをめくられた。
「あっ!だ、だめですっ」
焦って敦賀さんの手首を掴むけど、敦賀さんは心底不思議そうに首を捻って、「どうして?」なんて訊いてくる。
「どうして、って!だってここ、車の中ですよ?!」
「そうだよ?」
「う、運転手さんだって」
「聞こえないよ、仕切られてるし」
「それに外から…」
「見えないよ、スモークガラスだし」
質問は終わり、と言わんばかりに満足げな顔で、敦賀さんはブラジャーから覗かせた胸の突起を弄り始めた。
指で突付いたりつまんだり…敦賀さんは聞こえないし見えないと言ったけど、
もしも…と思ったら恥ずかしさで混乱してくる。
「だ、ダメダメ、やっぱりダメです敦賀さん、おうちに帰ってから…」
「ねえキョーコ、どうして電話してこなかったの?」
「え?……あっ、んんっ」
敦賀さんは胸に強く吸い付いて、口の中で粒を転がす。
時々じゅるじゅるっていやらしい音を立てながらしゃぶりついて、
同時に私の両足をシートに上げさせ、スカートをめくりM字に開かせた。
じゅん、と身体の真ん中が熱くなる。
一瞬期待してしまったけど、敦賀さんは相変わらず胸に執着してる。
しかも片方ばかり吸われて、もう片方も思わず自分で触っちゃいそうになる。
けどそんなのダメ、残ってる理性を必死に呼び戻してギュッと掌を握り締めてたら、
「こっちも?」
見透かされてるみたいでまた身体が熱くなる。
反対の膨らみも大きな手で揉まれたり粒をぎゅうっと引っ張られたり、
もう恥ずかしいんだか気持ちいいんだか…わけがわからなくて眩暈がしてくる…
「だめぇ…気持ち…い…」
「気持ちいいのにダメなの?」
敦賀さんはくすくす笑って余裕の顔。
私だけこんなの、いつも、ずるい…
ずるいって思うのに、いつも途中から頭が真っ白で任せてしまう。
大きく開いた足の付け根…身体の真ん中が…
「…るがさ…ん……あつい、の…」
「どこが?」
「こ、ここぉ…」
下着をぎゅうっと掴む。
敦賀さんは私の膝を強く持って、もっとよく見せて、とさらに広げた。
「ほんとだ、大きな染みができてるよ。いっぱい濡れてるんだね」
楽しそうに下着の上から指でぎゅうぎゅう押したり、細くして食い込ませたりして、
それから舐めたりちゅうちゅうと吸ったり、軽く歯を立てたりし始めた。
すごく気持ちよくてたまらないけど、上からじゃなくて直接愛撫して欲しいの…
「ん、あ、もお…やだ、ちがっ…」
もどかしくてたまらない、もう限界……
「敦賀さん…脱がせて、ください…直接さわってぇ…」
「よく出来たね。キョーコ、そうやってちゃんと言わなきゃ、ダメだよ」
とにかく恥ずかしくて手で顔を覆う。
「でも見ないで、おねがいです」
「そんなの無理だよ」
苦笑いしながら脱がせてくれた。
お願い見ないで…自分でもわかるの、あそこがじんじん熱くて、きっと…
「すごいね、糸ひいてるよ。びしょ濡れだ」
「あ、あん、あぁ…んんっ!」
敦賀さんはいきなり指を二本呑み込ませてきた。
ほんとに充分潤っていたみたいで、私のそこに抵抗なくどんどん入ってくのがわかる。
入っていくときの感覚が気持ちいい…これからされることを考えて、ますます身体がうずいてしまう。
やだ私…ほんの数日抱かれていないだけで、こんなに感じちゃうなんて……
指を根元まで入れられて、待ちわびていた刺激を与えられる、と思ったのに、
敦賀さんはそのまま動かしてくれない。
恐る恐る顔を覆っていた掌を下ろして様子をうかがってみるけど、
ただ楽しそうに指を入れてそこを眺めてる。
「やだ、見ない、で…。…ねぇつるが、さん、お願い…」
「なにを?」
「も、もっと、気持ちよく、してえ」
「どんな風に?やってごらん」
我慢できずに、言われるがままに腰を動かした。
抜き差しして欲しかったから、前後に動いた。
敦賀さんの指が抜かれるまで腰をひく。
「あ、あんっ」
やだ、もう声も我慢できない…指が抜かれたらまたすぐに欲しくって、押し付けるように腰を持っていく。
自分でも卑猥なことをしてるって頭の隅で思うのに、自制できずに欲しがってしまう。
「あ、あ、ん、んぁっ、はぁ、あん、お指、あつ、いぃ……」
「俺の指じゃなくて、キョーコの中が熱いんだよ」
そう、なの?もうよくわからない…
「いやらしい身体になっちゃったね」
「つるがさん、の、せい……あ、はぁ、やだ、もっと…」
かき回して欲しくて、腰を大きく回す。
でも敦賀さんの指みたいに早く動けない。
全然、足りない。もっと気持ちよくしてほしいのに。
「おね、おねがい敦賀さん、お指、動かして、あんっ、ぐじゅぐじゅって、あれ、してぇ…」
「いいよ、ほかには?」
「あと、んぅ…お口で…おしゃぶり、して…っ」
「キョーコのおねだり、すごくかわいい。ちゃんと言えたご褒美、あげようね」
指で激しくかき回されて、大きくなってるはずの肉粒を吸われて舌で転がされて、すぐに絶頂の波が押し寄せてくる。
「あん、あん、あっ、あっ…んんぅ、ああっ!あ……っ…んんんんん…!!」
敦賀さんはイッてしまってひくひく震えてる私を嬉しそうに見て、
それから乱れたそこをぺろぺろと舐めた。
綺麗にしてくれてるんだと思うけど、舐め取る動きにまた感じてしまって、
舌が這うたびにビクンと反応して声があがってしまう。
「あ…ん……もっ…とお…」
「ちょっと待ってね」
ズボンと下着を下ろしてシートに腰を沈めた敦賀さんは、おいで、と手を差し伸べる。
だけどすでに興奮している敦賀さんものが、実はもっと大きくなるって知ってる私は、
跪いてその肉棒の先をちゅうっと吸った。
「…こらキョーコっ」
「だって…」
だって、もっとおっきくなるでしょう?
私の中、いっぱいに埋め尽くして欲しいもの…
ペロペロと頭の部分やと側面を舐めながら手でこすりあげると、脈打つみたいに勢いを増してきた。
「もういいから……入れてごらん」
「はい…」
素直に跨って、手を添えてゆっくりと腰を下ろす。
「あ…ん……っ」
「どうした?」
「は、入ってく…のぉ…」
「そうだね…ん…俺も、気持ちいいよ」
ほんと?嬉しい。
「それに…敦賀さんの、すごく、あったかい…ぅ…ん…」
「ずっとこうしたかったから、かな」
すごく熱くて熱くて、それに私の中でさらに大きくなってくみたい。
たまらなく愛しくなって、敦賀さんの肩に手をおいて、思わず腰を揺らしてしまう。
ちらりと見た敦賀さんが嬉しそうだったから、ますます一生懸命になっちゃって、
気付いたらいやらしく腰を振ってた。
「あ、あ、あっ、はぁっ、あん、あっ、やだ、いい、つるがさんっ、もう、おっきくなっちゃ、だめっ」
自分の中が敦賀さんのモノでこすられる感じが気持ちよくて、我を忘れそうになる。
背中を反らせて、横を見たら、車のウィンドウガラスにそんな自分の姿が映し出されていて、
忘れかけていた羞恥の嵐が一気に襲ってきて、小さく悲鳴を上げて敦賀さんの胸に顔を埋めた。
「キョーコ?」
「…やっぱりだめっ、こんなの…恥ずかしい…」
恥ずかしい、けど、止められずに腰を揺らしてしまう自分がもっと恥ずかしい。
「ああ…だったらココ、見て」
敦賀さんは私の頭をぐっと押し下げて、繋がってる部分を見せ付ける。
「どうなってる?教えてキョーコ」
「や、やだっ!」
すごく淫乱な自分…それを見せ付けられてるみたいでまともに見れない。
見れないけど、わかる。
さっきから自分の中からぐちゅぐちゅと溢れる音、ちゅっ、ぷちゅ、って空気の漏れるいやらしい音が響いてる。
認めたくなくて、ぎゅっと目を閉じてる私の顔をくいっと上げさせて、敦賀さんは私の目を覗き込む。
「教えて」
片手は私の腰を抑えて動きを止めてしまう。
ちゃんと教えてくれるまでおあずけだよ、そう言った敦賀さんの顔は夜の帝王のそれで、
くらくらと眩暈がして心臓の音がさらに早まる。逆らえない、瞳。
「だって、恥ずかしっ…」
「そうだね、すごく恥ずかしいことしてる」
「…っ……入ってます、いっぱい…私の中、に……」
「なにが?」
「つるがさん、の…熱いのが、です…おねがい、もうこれいじょ…ヘンに…しないでえ…」
「だめ、ちゃんと言って。俺の熱いなにが入ってるの?」
耐えられずに逆らって腰を動かすと、しっかり掴まれて「ダメ」と止められる。
やだっ、もう我慢、できないっ…
「つるがさ…も、だめ…いつもみたいに、いっぱい…してっ」
「泣いてもダメだよ。してあげるから言って?」
恥ずかしさの極致で、顔から火が出そう…
再び胸に埋めた顔もまた引き戻されて、目を見て言うんだよ、と釘をさされる。
「つるがさんの…熱い、おちん……ん…私の中、ぎゅうぎゅう、はちきれ、ちゃう…っ、はや、はやくぅ…」
「うーん、まあ合格、かな」
敦賀さんは私の腰をぐりぐり回させて、自分は大きく突き上げ始めた。
擦れる快感と、奥まで突かれる激しさが同時に襲ってきて、快楽で頭が真っ白になっていく。
「あっ、あっ、あぁんっ、気持ち、いいっ、んんっ、ぁあ、やだっ、おかしく…な、ちゃうっ」
「…っ、欲しかった?」
「んっあっ、はい…会いたかっ、たぁ、会って…したかった、です…あ、んっ…」
「そういうことは…素直に言わないと、ダメ、だよ」
「はい……んっ…!」
私を抱え上げて体勢を変える。シートに押し付けながら、奥までぐいぐい入れられて、抑えるのも忘れて喘いでしまう。
「ああぁっ、あ、んんーーーっ、あっ、あっ、やだっ、よすぎ、ちゃうっ、だめっ!」
「…んっ、だめ?」
「だ、だめっ、だめ、あっ、もっと、もっと、してっ、あぁんっ!やだっ…き、きちゃ、うぅ…っ」
「キョーコ、好きだよ、会いたかった」
「あ、あんっ、わたし、もっ…ああぁっ…ぁあっ……やぁあっ…―――!!」
車は事務所に着いたので、社長さんに挨拶に行くことにした。
敦賀さんが飛行場を出たらあの大きな車が待っていて、私のところまで直行してくれたらしい。
椹さんに挨拶をしてから、手を繋いで社長室に行ったら、ニヤニヤした社長さんが待っていた。
「仲がいいのは結構なんだが、おまえらやけに激しいらしいなぁ」
「なっなっ…なんのお話…」
「運転手が言ってたぞ、すごいの聞かされた、って」
敦賀さんを見たら、しれっとした顔で目を反らされた。
「……敦賀さん…?」
「あー…運転席との仕切りの窓がちょっと開いてた、かな?」
「な?!!」
憤慨して叫んでる私を見て、ごめん、許して?と子供みたいに謝る敦賀さん。
きっとその目に弱いこともわかってやってるんだわ。
敦賀さんがいない間淋しかったことも、そのことに気付かれそうで電話しなかったことも…
なにもかも全部お見通しで腹がたつ!
「キョーコ、まだ怒ってるの?」
社長室を出て怒ってずんずん進む私の顔色を伺いながら敦賀さんはついてくる。
「怒ってます、もう絶対許さないんだから!」
「ごめん、お詫びに何かプレゼントでもするよ」
「いりませんっ!」
わかってる、本当はとっくに許している自分が許せないの。
だって大好きで大好きでたまらないから。
でもなんだか悔しくて、もうしばらく怒ってるフリをしよう、と考えてるのに、
ごめん、と謝ってる敦賀さんが可愛くて、
「もう…次にまたそんな悪さしたら、許しませんからね」
結局許してしまって、ため息をついた。