「ただいま」  
 
玄関を開けたが明かりはついておらず、ひんやりとした空気が俺を包む。  
キョーコはまだ、か。  
 
リビングまで行き、暖房をつけて上着を脱ぎ、とりあえずシャワーを浴びることにした。  
そう遅くはならないと言っていたので、キョーコもそろそろ帰るだろう。  
 
熱めのシャワーに当たりながら、今日はどんな風にキョーコを抱こうかと考える。  
いつもは途中で許してやるが、たまにはとことん卑猥な言葉を言わせるのもいいかもしれない。  
キョーコの可愛く潤んだ目を見るのが楽しみだ、と嗜虐的なことを思いながら身体を拭いていると、ドアの向こうで音がした。  
どうやらキョーコが帰ってきたらしい。  
 
下着を履き、バスローブを羽織って髪を拭きながら洗面所を出ると、  
果たしてキョーコがコートを脱いでいるところだった。  
 
「おかえり、キョーコ」  
 
冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、おかえりのキスでもしようとキョーコのもとに向かった。  
 
「た、ただいま帰りました」  
 
真正面に立った俺から目を逸らす。  
 
「どうした?こっち見てただいまって言ってくれないのかな」  
「い、言えません…!」  
「どうしたの?」  
「…っ…ど、どうしたの、じゃありませんっ!」  
 
キョーコは真っ赤な顔をして横を向いたまま、  
俺のバスローブの襟元をぎゅっと掴み、それを引き寄せる。  
 
「お願いですから、ちゃんと前は結んでくださいっ」  
「ああ…なんだ、そんなことか。いいじゃないか、別に」  
「良くないですっ!…敦賀さんの…胸元とか、ドキドキしちゃって…心臓に悪いですし…それに…」  
 
自分で言っておいてさらに顔を真っ赤にして、それっきりキョーコは黙り込んでしまった。  
なるほど、下半身が見えるのが恥ずかしいのか。  
確かにキョーコといる場合は下着が膨らんでいることが多いかもしれないが。  
 
「そんなに見るのがイヤかな。俺はむしろ見てほしいけど」  
「なっ、なっ、何を言ってるんですか!」  
「こっち見て、キョーコ」  
「イヤです!」  
「ほら、見てごらんよ」  
「い、いやっ!絶対いやですっ!!」  
「ふー…ん…」  
 
そう何度も何度も嫌がられるのは、さすがに少々気に食わないな。  
俺の考えを感じ取ったのか、キョーコはピクリと小さく震えた。  
 
「俺はそんなに汚らわしいか…」  
「そ、そんなこと――!」  
 
反論するキョーコの腰を引き寄せ、有無を言わせず唇を奪い、激しくその咥内をむさぼった。  
舌を絡めとり、頬の内側の肉を味わうように奥まで味わう。  
ちゅぱ、くちゅ、と音を立てていると、キョーコの呻き声はやがて甘い吐息に変わってきた。  
 
「んっ、ん、んぁ、はぁ、んん、んっ…」  
「…ん……俺のこと、汚らわしいって思うの?」  
「そんな、ことない、です…つるがさん、いつも素敵で…全部、好きです…」  
「じゃあ、愛してくれる?」  
「え…?」  
「全部、愛してくれるかな」  
 
頬に、唇に、そしてその口の中へと指を這わせる。  
キョーコはしばらく考えていたが、ゆっくりと跪き、細い指でそっと腹や足を撫でた。  
そしてぺろりと下着越しに俺のモノを舐めた。  
ぺろり。ぺろり。  
ゆっくり、じっとりと舌を這わせる。  
 
俺はすぐにでも下着を下ろしてその口の中に放り込みたいと思ったが、  
ぺろぺろと懸命に舐める姿がミルクを舐める子猫のようで、あまりに可愛らしいので抑えることにする。  
頭を撫で、髪をすくってやると、くすぐったそうに首をひねる。  
何度も何度も繰り返され、布越しの緩やかな快感がもどかしくなってきた。  
 
「キョーコ…そろそろやめないと下着が濡れてる」  
「んっ…でも…敦賀さん、こうして濡らすとおもらししちゃったみたいで、なんか可愛いです」  
「……っ」  
 
まったく、俺を蹂躙しようなんて許さないよ、お仕置きしようと思ったその瞬間、  
すっかり大きくなっているソレをキョーコはぱくりと咥え込んだ。  
 
「…くッ…こら、キョー…コ…」  
 
思わず頭を押しやろうとするが、キョーコは布越しにもぐもぐと頬張り、  
その口の中で舌を這わせたり軽く歯を立てたりして弄ぶ。  
 
不本意ながらに吐息が漏れてしまう。  
 
キョーコはそれに煽られるかのように一生懸命舐めたり吸い込んだり…  
おまけに太腿を優しく這う手が俺の快楽を高める。  
 
…くそっ、だめだっ…!  
 
思わずイキそうになってしまい、キョーコの両頬を掴んで離させた。  
キョーコはハァハァと息を荒げて頬を火照らせ、潤んだ目で俺を見上げている。  
 
「つるが、さん……汚して、いいんですよ?」  
 
聖母のように清らかに微笑まれ、その清純さを汚したい俺の欲求は頂点に達し、理性の糸はブツリと切れた。  
キョーコの腕を引っ張って立たせ、その勢いで放り投げるようにソファに手を付けさせ押し付ける。  
 
「あ、だ、だめです!見ちゃダメっ!」  
 
拒絶の言葉に確信を得てスカートをめくりあげ、調べるように覗き込むと、  
案の定ショーツの中央は大きなシミをつくって俺を誘うように甘い香りを漂わせていた。  
 
「キョーコのここは、もういっぱい汚れてるみたいだね」  
 
仕返し、とペロリと下着越しに舐めると、ビクンと身体を震わせる。  
下着を膝まで下ろし、臀部の肉を押し広げ、ふぅっと息を吹きかける。  
 
「あ、あん…だめぇっ」  
「足までいやらしい液が垂れてるよ。まだ触ってもいないのに」  
「はぁ、んっ、だ、だって、つるがさんの…気持ち良さそうで、おっきくなってくの、見てたら…あ、んっ」  
「俺のせい?」  
 
つつ、とその溝に指を這わせると、キョーコは身体を弓なりに反らせて高く啼いた。  
 
「ああっ!…ご、ごめ、なさ、ちがうのっ、私が、いやら、し、から…」  
「そうだね…いっぱい頬張って、美味しかったのかな。食いしん坊だね、キョーコ」  
「んっ、おいし、かったの…ねぇ、つるがさん、もう…」  
「次はどうしよっか」  
「も、だめぇ…」  
「下のお口にも欲しい?」  
「あ、あん…ほし、欲しい、のっ…!おねがい、です……私の…中、汚して、ください…も、待て、ないっ…!」  
 
キョーコの懇願に満足し、明るいリビングで俺は激しく腰を打ちつけた。  
逃げるように顔を突っ伏すのも構わず、上から突き刺すように押し付ける。  
 
「あ、あ、あっ、あんっ、だめっ、こんなっ、壊れ、ちゃうぅっ!」  
「壊れそう?…じゃあやめないと」  
「いやっ、だめっ!や、やめちゃ、いやぁ……っと、ん、あん、もっと、してっ!もっと、もっとぉっ」  
 
悦んでいるなら、と期待に応えて激しく続けると、キョーコの喘ぎは切羽詰ってくる。  
そろそろか、とストロークを早めて奥まで突き上げると、キョーコは小さく悲鳴を上げて崩れ落ちた。  
 
仰向けにさせ、再び繋がったところで頬を軽く叩く。  
 
「ん……」  
 
キョーコは小さく唸ってだるそうに身をよじり、うつろな眼をそっと開けた。  
 
「も…つるがさん、激しすぎ…」  
「ごめん、つい…」  
 
ごめんね、と優しく囁いて、額にそっとキスをした。  
ホントはいつも、優しくしたいと思ってる。  
少しだけ苛めて、そしてその何倍も優しくしたい。  
だけどいつもこうして理性が飛んで、ただ激しく苛めてしまう。  
行為のあとは罪悪感にさいなまれて、それまでを取り繕うことに必死になる。  
 
ハァァ……  
 
自分が情けなくて、思わず大きくため息をついた俺の考えに気付いたのか、  
キョーコはまたあの汚れのない美しい笑みを浮かべて、  
 
「大丈夫ですよ」  
 
と俺の頭を撫でた。  
 
「敦賀さんの全部、好きですから。優しいところも、意地悪なところも」  
 
だから安心してください、とキョーコは続けて、  
そして頬を赤く染めて、恥ずかしそうに腰を揺らした。  
 
「また欲しくなった?」  
「…はい……」  
 
潤った瞳で見上げられて、俺は再び理性の糸を切ることにした。  
 

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