ポルシェに乗り込み、キョーコは押し黙ったままの蓮に戸惑っていた。  
蓮とのCMの撮影を終えて、自分の今までにない身体の異変に病院に行かなければと思い込んでいたところ、  
蓮がその必要はないという。  
(こ、こういうのって、も、モー子さんに先に相談した方が良かったかも……だって)  
スカートの中で湿った下着が意識され、もじもじと脚を擦り合わせる。  
(動転していたとはいえ、私なんて恥ずかしいことを敦賀さんに!)  
「あ、の、私、だるまやでお店のお手伝いをする予定で……先程の、あの……相談は、自分で……何とか、します。  
や、やはり、先輩であられます、つ、敦賀さんのお手を煩わせるわけには、いきません……ので、す、すみません」  
しどろもどろの言葉にも、蓮は正面を向いたまま前の車のテールランプを見つめていた。  
「……そう。俺は構わないのに。何なら今ここでも教えてあげられるよ?」  
「え、あ、その」  
(や、やだ。心なしか『夜の帝王』になっていない?! も、もう撮影は終わったのに〜!)  
「脚を開いて」  
「へ」  
辺りは薄暗くなっているとはいえ、赤信号の度に停車する車内だ。  
「誰も見ていないから大丈夫だよ」  
(な、何を言い出すの〜?! まさか私、何か敦賀さんの逆鱗に触れることでも口にした?!)  
「俺も見ないから、下着の中触ってごらん」  
(よ、『夜の帝王』ですらない!? つ、敦賀さん、い、一体!)  
「言うとおりに」  
有無を言わせない雰囲気に、キョーコはスカートを捲くり、ショーツの端から自分の秘処に触れた。  
(敦賀さんだから、無体なことはしない、な、何か理由があるはずよ、だ、だって、こんなこと……)  
他の車とすれ違ったり追い越されたりする度に、キョーコは脚をすぼめる。  
見られないはずだ。でも見られるかもしれない。そんな羞恥心が少女の秘められた快感を刺激する。  
ただ添えているだけの指がぴくりと動き、透明な液がじっとりと染み出すのがわかった。  
「……ぁっ?!」  
蓮の手が伸びてきて、キョーコの手首を握った。  
「撫で回して」  
直接触れることはしない。キョーコの手を軽く上下に動かすだけだ。  
「どうなっているの? 俺は見たりできないから」  
キョーコはぶんぶんと頭を振る。  
「も、もう、……だめ、こんなの、恥ずかし」  
「少し、濡れてきた? 運転で余所見ができないから、教えて」  
蓮は約束通り、キョーコを見てはいなかった。片手でハンドルを握り、時折片手でキョーコの  
首筋にそっと触れる以外は何もしない。その指先がうなじを撫で上げると同時、キョーコの愛液があふれ出た。  
「や、どうして……さ、撮影の時より、ぬるぬるして、きて……ん、やだっ……」  
 
キョーコの息が上がってきていた。  
「や、やっぱり、私、変、なんです……、敦賀さんに、感染しちゃいま、す……」  
(とっくに、君にあてられているんだけど)  
蓮は無表情に運転を続けていた。キョーコの手を掴んで、割れ目を前から後ろへとなぞらせた。  
滑らかな動きに、すでに花芯がほぐれてきていると知る。  
「手、は、離して……もう、あっ」  
蓮は少女の中指と人差し指を摘んで突起に押し付けて強く揺さぶり、キョーコに自慰を続けさせた。  
「不快? 嫌な気分になった?」  
キョーコは眉根を寄せ、首を振る。  
「んぁっ、嫌、とかではなくて、……何を、…考えればいいのか…、わかん……ない、んです…何だか、もう……どうして」  
拒絶ではない反応、色づいた声に、鼓動が跳ね上がる。  
「指を沢山動かしてごらん。考えるから不安になるんだよ」  
蓮は、キョーコに胸を触るように言った。  
首を傾げ、ゆるゆると横に振った少女だったが、「撮影の時と同じようにしないととどうして君のソコが濡れてきているのか  
わからないよ」という男の言葉を正直に受け止めて、ニットの裾から手を忍ばせる。  
その下のブラをたくし上げ、蓮の指示通りに片胸を持ち上げる。小さな胸を揉み、きゅっと先端を摘む。  
「んっ」  
「上と下を同じように可愛がって」  
「か、可愛が、る?」  
「撮影の時、俺が胸を触ってて、どう思ったの? 俺の手の動きはどうだったの?」  
「すごく、恥ずかしくて……だって、敦賀さんの手が吸い付く感じで……指がさわさわと動い、て……ぁっ」  
「今も、俺が触っていると思って想像して。想像力も役者には必要だよ?」  
「ぁっ、え、は……い」  
右手で秘処を、左手で胸の尖りを弄り続ける。湿った音が車内にこもり始める。  
「最上さん、どんな想像をしているの?」  
「んぁっ、……はぁっ、言ったら、つる、がさん、……に、軽蔑、され、る」  
「軽蔑なんてしない」  
「……してい、ます……今、胸の先を、濡れ、てる……ところ、をっ、ぁあんっ、優しく撫でてくれ、てる……はぁっ」  
はじめは困惑していた彼女が、蓮が側にいるのも忘れているのか、自分の快感を追い求めるため、  
初めてであろうはずの自慰に没頭し始めていた。  
「ぁあっ、……んっ、んぅ……ぁっ、いやっ、だめぇっ……敦賀さぁんっ」  
ポルシェの助手席で自分を思って自慰に耽る少女。昔の面影、普段の純真な彼女を知っているだけに胸が高鳴る。  
ギャップが大きい。ましてや外は公道という、車の中で繰り広げられる、愛しい少女の淫猥な様に、蓮の欲望も限界にきていた。  
(マスコミだろうがファンだろうが、見つかったら只じゃ済まないな)  
さすがにこの状態で、下宿先に送り届けるわけにもいかないと、まだ冷静な頭の一部で考え、  
だるまやへ向けていた進路を、自分のマンションへと変えていた。  
 
 
地下の駐車場に愛車を停めると、蓮は助手席を横目で見た。  
キョーコは必死に自らの身体を愛撫していた。右手も左手も休むことなく動いている。  
スカートを穿いた脚は大きく広げられ、ニットはブラの外れた胸の上まで上げられている。  
幸い夕闇に紛れて周囲には知られなかっただろうが、少女の裸を  
他人の目に晒すような危険な真似をしたかと思うと、考えなしの自分を罵った。  
何も知らない少女に性的な強制をしているのかと、良心が疼きつつもずっとこうして彼女を愛でていたかった。  
「最上、さん?」  
「……が、さん、……私どうしちゃったんです、かっ……ぁんっ、頭の中も、ココも、熱、い……どうなっちゃうの……?  
んぁっ、ぁっ、…どんどん、わけが、わからなくなって……手が、手が、止ま、らないんですっ……いやっ、ぁあっ」  
初めてキョーコの痴態を見て、蓮は息を呑んだ。  
割れ目がたっぷりと濡れてひくついている。くぷくぷと音が聞こえてきそうだ。手ばかりか腰全体を揺り動かし、  
自分の指に愛液をなすりつけている。ずれたブラの下の桃色の乳首はぷっくりと膨れていて、咥えたくなるほどだ。  
キョーコは、正体のわからない自分の行動の恐れからか、快楽の余韻からか、震えている。  
「だめ、です。近寄らないで、くだ、さい……きっと、ひ、どい熱病に、罹ってしまったん、だわ……んぁっ」  
(もしかして、俺のことを心配している?)  
「ぁあんっ、また、いっぱいいっぱい出てくるぅ……や、だぁ」  
キョーコの指を使って、濡れそぼった割れ目を撫で上げる。花芯がわななくのが見え、愛液がシートに  
流れ落ちた。ぬちゃぬちゃという水音が響く。  
「ぁあっ……な、に?」  
「ご、めん、最上さん…ひどいこと、しているね……これは、楽屋でも言ったけど病気じゃ、ない、  
今この行為はただただ俺のエゴでしている、俺は君の前ではいい先輩ではいられなくなる」  
スカートを下ろし、秘部を隠す。少し落ち着いたら、だるまやの店の前まで送り届けようと視線を逸らした。  
しかし、キョーコは蓮の袖をひっぱり、彼を振り向かせる。  
「……敦賀さんの、エゴって何、ですか? 私、敦賀さんを怒らせてしまったんですか? このままじゃ、変に、おかしく、  
なって……はぁっ、どうしたら……教えて、ください? ココ、ココがむずむずして……ぁあっ、意地悪しないで……」  
震える手で腕を掴まれ、潤んだ瞳で見上げられる。その姿は彼女の色香を助長させるだけだ。  
呼吸の度に上下する細い首筋、ニットに浮き上がった二つの乳首、愛液が伝った太腿、下着は膝下に引っかかっている。  
蓮を挑発するのには充分だった。  
 
キョーコがそれと自覚していないとしても彼女の誘惑に、勝てるわけがなかった。  
蓮は触れまいとしていた身体を引き寄せた。折れてしまいそうな細さに、力の加減に戸惑う。  
半開きに開いた少女の唇に、唇を重ね、舌を軽く撫でた。柔らかく温かい。当たり前のことに胸が熱くなる。  
「……ぁっ?」  
今までしていた行為が自慰だと気がつかなくとも、キスの意味は彼女の中で決まっていたらしい。  
「キスは好きな人としないと、……私、初めて、なんです」  
「俺は、君が好きだよ、きっとずっと昔から」  
「そんな、の、うそ、です……そんなの、そんなの、ひどい」  
首を振り続ける少女。男に対する不信が根強いのか、不破尚の存在がそれほどに大きいのか。  
「俺は一生君にしかしたくないよ、君は?」  
細い首筋にキスを落としながら、胸を撫で回す。力ずくになりそうになる欲望を抑えて、少女の快感を更に開花させようと  
ニットの上から優しく、乳首をつねる。  
「やっ、はぁっ」  
少女の手が蓮の頭に回った。髪を乱されて、蓮は微笑んでいた。  
「俺に触られるのは嫌? 嫌だったらやめる」  
心許なくなったような表情で、キョーコは首を振る。  
「して、ください……独りだと、不安、な、んです、敦賀さんに、だったら何をされても構いません…撮影の時、  
ううん本当はずっと前からあなたのことを考えるとドキドキしてて、他の、あいつショータローに触られた時はただ、  
ショックだったのに……どうして? 私、……怖いんです、男の人のこと何にも、知らない、  
でも……上手く言えないんですけど、きっとこれは私の我儘なんです、でも、敦賀さんが、欲しい……私のものにしたい、  
私のものになってくれますか?」  
蓮の目が据わった。  
「他の奴なんか思い出せないくらい、どれだけ君が好きか、その身体に沢山教えてあげるよ」  
 
「あぁっ、……強、い」  
キョーコは、蓮が肉芽に触れて扱き出したその勢いに眩暈を覚えた。  
自分で刺激するよりも官能的で、彼の背中に手を回して自分に引き寄せていた。  
「すごい、ぐちょぐちょだ。最上さんのコレを知っているのは、俺だけだね。濡れているのは  
感じているってこと、わかる? こんなに美味しそうにひくついていやらしいね、俺の指に絡み付いてくる」  
「いや、……そんなの、知らな」  
キョーコの衣服はまた肌蹴られ、ブラは後部座席に放られてしまった。  
抱きかかえられて、運転席の蓮の上に跨がされ、お互いの唇を貪りあった。  
滑らかな舌で口内を蹂躙された後息つく暇もなく、蓮がさらなる愛撫を始める。  
鎖骨から胸へと唇を這わせられた。唾液を塗りつけ、すべらかな肌に吸い付く。  
長い指は秘処を撫で回し続け、肉芽をコリコリと突き、第一関節を中へと出し入れさせている。  
「はぁっ、あっ、あっ、……ぁあんっ、ソコ……やっ」  
自分の体重で蓮の指に挿入する形となり、眉根を寄せながらも浮かせた腰をまた、沈めてみせる。  
「初めてなのに、おねだりするなんて、俺を誘っているとしか思えないね。もっと動いてみせて?」  
「う、動く……んです、か?」  
「こんな感じで、腰を振るんだよ」  
キョーコの肩口を軽く押し下げ、脇下を持ち上げるという動作を何度か繰り返した。  
「あっ、こんなの、私、私」  
恥らいつつも、蓮の動きを辿って上下に動き出す。  
キョーコは蓮の指を絡めとるように、注挿を繰り返した。  
「上手だね」  
「ぁっ、んぅ……敦賀さんの指が中、引っかかって、お、おかしく……頭が朦朧と……はぁっ……ぁっ」  
キョーコは蓮の指を中で締め付けた。蓮が眉根を寄せる。  
「君は初めてだから……これ以上は」  
「いや、もっと、もっと……このままじゃ私」  
 
キョーコの快楽を満たすだけのつもりだった。まだ男を知らない少女に無理をさせたくない。  
だがキョーコは、蓮の高まりに気づいてしまった。  
「敦賀さん、苦しそう?」  
「いやらしい君を見て、興奮したんだよ」  
「い、いやらしいって……わ、私のせいなんですか?!」  
キョーコは、違うのに敦賀さんがいっぱい触ったからなのにとぷくぅと膨れてみせる。  
それでも蓮の苦しげな様子が気になるのか、広い背中に回していた腕を離して、蓮を下から覗き込む。  
「えっと、……敦賀さんは? 私、どこをどうしたら、……あの、触っていいんでしょうか?」  
蓮はキョーコの申し出に笑ってしまう。  
(本当に何をするのかわかっていないのに)  
「俺はいいんだよ」  
「でも、その、私は、敦賀さんに……何もできなくて……きっとつまらないですし、それに」  
キョーコは蓮に優しく口づけされ、言葉を失った。  
「君が側にいるだけで本当は充分なんだよ」  
少女が愛おしくなって蓮はさらにその身体を強く抱き寄せていた。  
「ずっと君を諦めたくなくて、でも俺には君を求める資格もなくて、でもそのくせどんどん欲が湧いてきて、  
今目の前にいる君は……俺の願望が作った幻かな」  
キョーコが顔を伏せて囁いた。  
「それなら……てください」  
「え」  
「つ、敦賀さんの、私のに……入れて、ください、私は本物です、だから、敦賀さんもそんな悲しいこと、言わないで、  
あなたがしたいことを、して? 苦しそうな敦賀さんを見るぐらいなら、私、何をされてもきっと平気です、それに多分、  
あなたにいろんなこと……して欲しい……や、あ、そ、の、もしかして、私、……変なこと言って、ます?」  
背けたキョーコの顔を、顎を持ち上げて振り向けさせた。  
朱色に染まった少女の頬が可愛らしくて、蓮は再び唇を寄せた。  
 
「こ、これ、敦賀さんの?」  
蓮は避妊具をつけた自身を、少女の腹に擦り付けた。  
初めて女を抱いた時以上に、緊張し切羽詰っていた。滅茶苦茶にしたい、大事に触れたい。  
二つの気持ちがせめぎ合い、焦らすようにして先端でキョーコの入り口をくちゅくちゅとなぞる。  
「つ、敦賀さん? や、やっぱり私が相手なんかじゃ」  
「あのね、自分を卑下するのはよくない。俺が君に夢中なんだってこと、まだ信じられない?  
それとも俺のこと怖くなった? 気持ち良くさせてあげたいんだけど、余裕がないことがバレたかな」  
「怖くなんてない、大丈夫、です……だってここがあったかいから」  
キョーコは自分の心臓の上で両手を重ねた。  
「すごくドキドキしているんですよ?」  
「俺もドキドキしてる。だから、ココも抑えがきかない」  
自身を指し示すと、キョーコは全身を真っ赤にして蓮の肩口に顔を伏せた。  
「つ、敦賀さんの……破廉恥」  
くすくすと笑って蓮はキョーコの腰を抱き上げた。  
向かい合い、少女の表情を窺いながら、挿入を始める。  
少しずつ圧迫していき、半ばまで入ったところで、彼女の眉根が寄せられた。  
「い、……」  
苦痛の声を出さないよう噛み締める唇が青ざめていた。蓮の腕を握る手に力が篭っている。  
少女の小さな身体にはきつすぎたか。蓮はキョーコの首筋にキスを落とし、その細い腰を持ち上げた。  
「やめよう、無理をしない方がいい」  
キョーコは必死に首を振る。  
「だめ……敦賀さんに失望されたくない」  
「失望なんてしない。ただ君を壊したくないんだよ?」  
「こんなの平気です、だって敦賀さんの周りには沢山綺麗な女の人がいて、きっと私は霞んで見えていて  
いつか敦賀さんが他の人を好きになる日が来るかもしれない……その時あなたの中に、私が何の価値もなかった  
人間として残りたくない、少しでもあなたの心の中にいたい」  
キョーコの震える唇から告白される悲痛な言葉に眩暈を覚えた。不破が彼女に与えた傷の深さに、  
苛立ちを覚える。今日彼女を抱かなかったら、その心に陰を落とすかもしれない。  
キョーコの髪を梳いて、蓮は瞳を妖しく輝かせた。  
「今から君が余計な不安な気持ちを抱えなくてもいいように、俺の身体に夢中になってもらう。  
俺から離れるなんて二度と言わせない、覚悟して欲しい」  
 
「息を吸って」  
蓮はキョーコの胸を弄りながら、じっくりと自身を押し進めていく。  
「君の恥ずかしいところがどうなっているのか、口に出して言ってごらん」  
「あ、はぁっ、……はい、って、きて……こんな、大きいの、私、や、いっぱい……ぁあっ、そんなに、……んぅっ」  
苦痛の色は変わらない。けれど、ゆらゆらと腰を前後させ、胸の尖りを捏ねると、鼻にかかった吐息を漏らしていた。  
蓮は、キョーコの身体を揺らしたりその動きを止めたりしながら、少女の様子を窺った。  
苦悶の表情だけではない、ぼんやりとした視線、かすかな腰のゆらめき。キョーコ自ら唇を求めてきた。  
「沢山動くよ? 苦しいなら正直に言って」  
蓮が突き上げる。キョーコはびくりと脚をひきつらせた。  
「はぁぅんっ、……やぁっ、そんな、何、どうして? 敦賀さん敦賀さん、怖い離れないで」  
苦しげに、浮遊感に、戸惑いながら、蓮にしっかりとしがみ付いていた。  
破瓜の印が流れ落ちる。男の中で感慨と嗜虐的な感情が入り混じる。背中に走る痛みに、笑みさえ浮かべた。  
「君の下の口が俺を食べているみたいだ、そんなにほお張っておいしいのかな」  
視線を下ろしたキョーコは悲鳴をあげそうになった。蓮と繋がった秘処。  
二人の身体がねっとりとした蜜を垂らしながら一つになっている。嬉しさよりも恥ずかしさが勝った。  
「う、そ、やぁっ、見ないでっ」  
蓮にされているのに、自分が彼を支配している感覚。  
「君のが俺をきゅうきゅう締めつけて苛めてくる、ちゃんと見て。君のファンは驚くだろうね。  
礼儀正しい君が男を苛める、こんな淫らなことが出来る子だなんて思いもしないよ」  
「あぁっん、苛めているのはあなたの方ですっ、見ないでくださいっ」  
羞恥心が快感をもたらすことを少女は知らない。  
「俺と一緒に動いて?」   
「一緒?」  
「一緒。俺をイかせて黙らせることができるかもしれないよ」  
キョーコは蓮の言葉の意味を理解してはいなかったが、男の激しい動きに合わせ始めていた。  
 
「あっ、変なの変なの、……何、そこはっ……はぁっ、そこ、…らめっ」  
蓮は乱れる少女の姿に、息を弾ませた。  
「君の中は温かくて、ずっとこうしていたいね」  
「じゃあ、ずっと入っててください」  
蓮は目をわずかに見開き、笑った。  
「君は俺に腹上死でもさせる気?」   
「ふく、じゅう、し?」   
キョーコのたがは外されていた。恥じ入りながらも、蓮の全ての愛撫に応えていた。  
お互いに快楽を与え合う中で、キョーコのケータイが鳴った。  
蓮に促されて恐る恐る出ると、だるまやのおかみだった。  
「あ、の……ごめ、んなさい、おかみさん、……私、お店行けなく、て、ぁっ」  
『そんなことはどうでもいいんだよ。予約のお客さんキャンセル入ってね。それよりキョーコちゃん、具合悪いのかい?   
電話も出来ずに、上ずった声で……まさかどこかで倒れ』  
「ちが、……ごめんなさい」  
罪悪感でキョーコの目に涙が浮かぶ。  
「すみません。俺が引き止めているんです。必ず彼女を送り届けますから」  
『あんた誰だい』  
蓮は名乗りながら、キョーコを揺さぶった。  
「あっ、やぁっ、動かないでぇ……もう、おかしくなっちゃ、んぁっ」  
『…………』  
電話の向こうで沈黙が流れる。おそらく感のよいおかみさんのことだ。事情を察している。  
『……まさかまさか、何てことをキョーコちゃんに。キョーコちゃん、正気かい? お酒なんて飲んでやしないだろうね?  
いいですか、うちの人には黙っておきますから、無茶な真似しないでください。  
あなたね、傷物にしておいてキョーコちゃんを泣かせたら只じゃ済ませませんよ』  
低い声だ。  
「一生大切にしますから、……俺の我儘で、彼女を叱らないでくれませんか」  
「おかみさん、ごめん、なさい……ごめんなさい、私、すぐに」  
『ああ、泣かないでおくれ。うちに帰ってくるときはいい笑顔でいるんだよ? キョーコちゃんがまさかとびっくりしたけど、  
その、なんだ、今日は琴南さんって娘さんのところに泊まったことにしといてあげるから……ほら、本当のこと  
知っちまったら、あの人が激怒するだろうからね、と、とにかくわたしもお店があるから、き、気をつけるんだよ』  
電話が切れ、蓮の動きが激しくなる。  
「お、おかみさんにおかみさんに何て顔をして会えば、もぉ、やだ」  
「笑顔でいてって言ってた。俺の前では笑えない?」  
「い、今は、は、恥ずかしくて、……それどころじゃ」  
「愛してる」  
蓮の真っ直ぐな告白に、キョーコは俯く。  
「君以外は霞んで見えるんだ、ちゃんと君の顔を見たい」  
キョーコは赤面を上げて、にっこりと笑った。  
「敦賀さん、……大好きです」  
 
キョーコは蓮に抱きかかえられて部屋へと運ばれた。  
「初めてなのに車の中でって、後で君が落ち込みそうな気がするからね」  
「そうなん、ですか? 私、敦賀さんとならどこでもいいです?」  
愛らしい笑顔に蓮の動きが急く。  
「君は、他の男にもそんな態度をしていない? 無意識なものだからすごく心配だ」  
蓮は、キョーコの衣服を全て剥ぎ取り、ベッドの中央へ彼女を横たわらせた。  
指で花芯をなぞると、キョーコの脚がすぼまる。  
「また濡れてきている」  
「は、はっきりと言わないでくださいっ。敦賀さんがこんな破廉恥な人だなんて、私なんかよりそれこそファンの人が騒ぎます。  
それから……私、今更ですがわかりました。下着が濡れているのは病気じゃないってわかりましたけど、何だか敦賀さんだけに  
反応、してるんです……何かこう、私ってふしだらなんでしょうか? 嫌われますよね?」  
一番弱い上目遣いに、蓮は暴走しないように天井に視線を向けた。  
「嫌うわけがない。お願いだからその顔は俺だけにして?」  
蓮は自身をキョーコへと埋め込んで動き出す。  
「初めてなのにきつい思いさせてる、大人気なくて、俺に幻滅しただろうね」  
キョーコはすぐには返事も出来ない様子で、蓮の首にすがりついた。  
「んっ、……敦賀さんは、怖い時もあるけど、優しくて、それに……今は、ちょっと、ぁあっ、夢みたいな気持ち」  
蓮は、キョーコの快楽に溺れていく様に身を震わせる。  
ベッドが大きく波打つ。  
「明日はだるまやご夫妻に、たっぷりとお灸をすえられるな。ごめんね、最上さん」  
「……が、さぁんっ」  
男の冷静な予想もそこまでで、キョーコの裸体の前ではセックスに慣れない少年のように、  
生まれて初めて愛しい人との一夜に心酔していった。  
 
 

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