「ただいま。何か聴いてた?」
彼の部屋での待ち合わせ。何だかいてもたってもいられなくて、ラジオを点けた。
ラジオから流れる切ないメロディーに乗せられた歌詞に自分を重ねて、思わずこぼれた笑みを見られたのだろうか。
帰って早々、微笑ましげに訊ねてくる彼に、恥ずかしさを隠せない。
「おかえりなさい。テレビだと嫌でも敦賀さんが目に飛び込んできて、すぐにでも会いたくなるので…」
今日はラジオにしてみました、と照れて笑うキョーコを愛しいと思う。
「でも、流れてきた曲聴いてたら、余計に敦賀さんに会いたくなりました」
「へぇ?どんな曲?」
キョーコを腕の中に閉じ込めて軽く抱きしめ、訊ねた。
「えと、綺麗でもないし、不器用な女だけど愛してくれるの?って不安になる女の子の歌なんですけどね」
愛される価値のある女になりたい、と歌う。綺麗で可愛い女になると決意を表している曲に、キョーコもそうなりたいと思った。
「過去の傷跡も未来も預けるから、強く強く抱きしめてって、何だか私みたいだなって」
蓮の背中に腕を回してそう告げるキョーコを、抱きしめる腕に力を込める。苦しい位に抱きしめてくれる力強い腕に、キョーコは安堵を覚えた。
「そっか。また、流れるかな?」
「さぁ、わかりませんね」
キョーコが興味を示した曲に、蓮も興味が沸いた。自分も聴きたいと思ったのだった。
でも、歌っているのは有名でないインディーズバンドのようで、今度はいつ流れるかわからないらしい。
きっと、忙しい日々を過ごすうちに、こんな話など忘れてしまうだろう。
でも、言葉は胸に残る。
「過去の傷跡も未来も、か」
「はい」
すりすりと頬を擦り付けながら抱きしめる腕。キョーコもまた、力を込めてお互いの温もりを確かめ合うように抱き合った。
「敦賀さんとこんな風になるなんて、夢にも思いませんでした」
キョーコにとっての蓮は、最初は大嫌いな存在だった。
それがいつしか尊敬できる先輩になって、彼と渡り合える演技がしたくて必死で追いかけて、今では一番近い距離にいる。
冬にかじかむ指先を吐息でゆっくりと温め溶きほぐすように、蓮はキョーコの心を、ゆっくりと溶きほぐしてくれた。
蓮の隣りに居られる事が、キョーコにとっては何よりも幸せ。
それは蓮にとっても同じ事で、なかなか会えない二人でも、こうして会える時をお互いとても大事にしている。
「俺も。キョーコが振り向いてくれるとは思わなかった」
そう言ってキョーコの顎に手を当て、唇を落とす。深く口付けた後、潤んだ瞳で自分を見上げるキョーコに、胸が高鳴った。
「……まいったな」
「何がですか?」
今日のキョーコの姿。いつもは着ていない制服姿で、何だか犯罪を犯している気分になる。
「いや、こっちの話…」
もごもごとごまかして、キョーコの手を引いた。
成人している蓮が、高校生のキョーコと付き合っている自体、犯罪なのかも知れないが、お互い好きなんだから仕方ない。
「敦賀さん?まだ、夕方ですよ?」
「いいから」
ベッドにキョーコを座らせて、何度もキスを落とす。キョーコはそれを、黙って嬉しそうに受け入れた。
お互いの唇の感触を確かめ合うように、何度も何度も重ねるキスに、甘やかな熱が生まれる。こぼれる吐息が熱い。
触れるだけのキスが、啄むようなキスに変わり、いつしか深い口付けになっていく。
「……ん」
制服のリボンを外しボタンをへその辺りまで外して、蓮の手がキョーコのブラの中に滑り込んだ。胸の先に指を這わせるとキョーコの体がふるりと震える。
「んっ、ん」
ピンと立ち上がったキョーコの胸の先を指先で弄んでやると、キョーコの口から気持ち良さそうな声がもれた。
ブラをずらして、胸の先を口に含む。コロコロと転がして舌先で押しつぶすと、キョーコの口から鼻にかかったような声がもれた。
「……あ、ぅん」
キョーコの胸に舌を這わせている蓮の右手が、スカートの中に滑り込んだ。するりと器用にショーツを脱がせて、割れ目をなぞる。
キョーコの体が、ひくん、と揺れた。
「あ、…はあぁ、んっ」
舌でねっとりと胸を愛撫されているキョーコの中は、蓮の細くて長い綺麗な指をやすやすと飲み込んでいく。
ゆっくりと出し入れをして、時々くるりと回してやると、吐息とともにひくりとキョーコの体が反応した。
中はすでに、じっとりと潤んでいて蓮の指に絡み付いてくる。
「あっ、ああっ」
舌と、指でいじられて素直に反応するキョーコの口からもれる喘ぎ声に、蓮もまた、胸の中が熱くなる。
このまま、自身を突き入れてしまいたくなるのをぐっと我慢して、キョーコを満足させてやろうと、唇を離してキョーコの顔を覗き込んだ。
「あっ、んっ、敦賀さん…」
やばい。キョーコの姿を上から見下ろしている蓮は、瞬時にそう思った。
いつものように、潤んだ瞳で見上げてくるくらいならまだ、耐えられる。しかし、今日のキョーコの姿は本当にまずい。
開いた制服の胸元から覗くずらされたブラ。ずらされたブラのお陰で見える、ピンと主張しているピンク色の乳首。
乱れたスカートの襞が、キョーコの表情を更に淫らに見せている。
「敦賀さん、止めちゃうんですか…?」
思わず見とれている自分に、そんな格好で、そんな表情で見つめられて、そんな言葉を吐かれたら。
蓮の頭の奥で、何がブツンとはじけた。犯罪なんて知ったことか、とばかりにキョーコに激しい口付けの雨を降らせる。
「…んっ、んっ、んんんんっ」
自身に避妊具を被せて、勢いよくキョーコを貫いた。
「んっ、つ、敦賀さっ?そんな、いきなりっ、…あ、ああっ」
「ごめん、今日は、加減できないっ」
歯止めがきかない。ためらいなくキョーコの中を蹂躙する。中が擦れる感触に、たまらずキョーコは声をあげた。
「あっ、あっ、ああっ、ああんっ」
擦られる感覚が、いつもより強烈に感じる。一気に奥まで突き上げられて、わけもわからないまま、キョーコは蓮をうけいれた。
「あっ。そ、んなっ、奥っ、までぇ、ああっ」
潤みきっているキョーコの中は、痛みは感じない。こもった熱が溢れ出して、きゅうきゅうと収縮を繰り返し蓮を締め付ける。
「……キョーコっ」
うわごとの用に名前を繰り返す蓮の、恍惚とした表情を見つめながら、キョーコも、また、高ぶっていく。
「ああっ、あっ、あっ、ああっ、ああんっ」
激しく打ちつけられる腰の動きに合わせて、小さな体がひくりと跳ねる。
「……っ、ごめんっ、もたないっ」
「…え?あっ、あっ、あっ、あああっ」
いつものようにキョーコが達するのを待つ余裕などなかったのか、勢いよく突き上げてつながったまま背中を反らせて蓮は達した。
唸り声をあげて、キョーコの中でビクビクと跳ね回る蓮を感じて、キョーコもまた、体を痙攣させた。
「ごめん、手加減出来なくて」
「いえ、大丈夫ですよ」
「気持ちよかった?」
訊ねる蓮に答えはない。キョーコはただ、俯いて真っ赤になっているだけだった。
「ちゃんと、イってくれたんだ?よかった」
そう言って、安心したように笑う蓮にキョーコは自分の手を重ねて、しっかりと握りしめた。
「私、敦賀さんに釣り合う女になりたいです」
仕事でもそうだし、もちろん恋人としても。綺麗な女に、可愛い女に、蓮に愛される価値のある女になりたいとキョーコは心底、思っている。
あの、ラジオから流れてきた曲の女のように。
「もう、充分だよ」
そんなキョーコの頭を撫でながら、蓮は愛おしそうに、笑う。
「これ以上、狂わされたらたまらない」
ポツリ、呟く声は、低くて本気なのだとキョーコにもわかった。
「「過去の傷跡も未来も…」」
二人、同じタイミングに出た言葉に思わず吹き出す。
くすくすと笑い合いながら、ずっと二人一緒にいるのだと、抱き合った胸の温かさに、感じた。
過去の傷跡も未来も預けるから、ずっと、ずっと抱きしめて………。