ただいま、と玄関を開けて、下を向いて靴を脱いでいると、ダダダダダっと走ってくる音がした。
顔を上げた瞬間にキョーコにぎゅうっとしがみつかれた。
「つるがさんおかえりなさいっ…遅かったですよぉ」
一瞬甘い香りが。これは…
「ただいま…酔っ払ってるねキョーコ」
一度キョーコに甘いカクテルを作って飲ませたらすっかりハマってしまい、
それから俺の帰りが遅い時は、たまにこうして自分で作って飲んでいるらしい。
仕事で遅くなることについて責められたり泣かれたりしたことはないが、
キョーコが酔っている時が決まって夜遅くで独りのときだということを考えると、やはり淋しいのだろう。
少しの量で酔ってしまうから飲みすぎることはないが、待たせていると思うと少々申し訳ない気分になる。
「そして…今日の格好はなにかな?」
抱きついている身体を無理矢理引き剥がして、距離を置いて眺める。
酔ったキョーコが最近ハマっていること…それはコスプレ。
いや、キョーコ曰く「演技の練習」らしい。
撮影で着た衣装を借りたりもらったりして、
それを着ては自分なりにシチュエーションを組み立てて演じているとのこと。
スチュワーデス、女医、看護婦、巫女、家庭教師風、キャリアウーマン風…さまざまな格好で妄想の世界に旅立っていく。
「えへへ。なんだと思います?」
「メイドさん…みたいだね」
キョーコは短いスカートの裾をつまんでくるりと一周回ってみせる。
そのひらひらのスカートはお尻まで見えてしまいそうなほどに短い。
そして真っ白の太ももまでのタイツを履き、頭には耳までつけている。
可愛い。たまらなく可愛い。
今すぐに食べてしまいたいほどに愛らしいのは事実。しかし――
「キョーコ、それは短すぎだろう?!」
「大丈夫ですよぉ。撮影のときは、見えてもいいパンツを履いてたんですっ」
ぷぅっと頬を膨らませて、怒る俺に抗議する。
普段なら嫉妬で怒る俺には脅えるくせに、アルコールが入ったキョーコは怖いものなしだ。
今言っても無駄だと悟り、ため息をつきながら居間に移動する俺のあとを、
キョーコはぴょんぴょん跳ねながらついてくる。
「ねえ敦賀さぁん、これかわいくないですか?ほら、お耳だってついてるんですよ?」
「……」
「せっかく敦賀さんだって喜ぶと思ったのにぃっ」
「…可愛いよ」
「え?もう一回!よく聞こえませんでしたっ」
「まったく…」
ふぅっとソファに座った俺の横に、キョーコはぴょこんと寄り添って座り、上目遣いで見上げてくる。
「ねえご主人さま、もう一回言ってくらさいっ!」
「…っ」
あまりの可愛さに、くらっと目が回りそうになった。
おまけにその格好。なんだか犯罪でも犯している気分になってくるじゃないか…勘弁してくれ!
「言ってくれないんですかぁ?意地悪…キョーコはひとりでご主人さまの帰りを淋しく待っていたのに…」
「…悪かったよ、遅くなってごめん」
「おとなしく待っててえらかったですか?」
「そうだね、いい子だったね…」
もう完全にロリコンの変態になった気分だな、これは。
「じゃあじゃあ、ごほうびください!」
「ごほう……」
キョーコはぎゅっと目を閉じ、唇をすぼめて「んー」と言いながら待っている。
目を閉じててくれてよかった…おそらく今の俺は顔を真っ赤にしているはず。
こっそり呼吸を整えてから、その唇にちゅっとキスをあげた。
「はい、ごほうび」
「えぇーーこんなのじゃ足りませんー」
俺の腕をつかんでイヤイヤと首を振りながら揺する。
なすがままに揺すられながら必死に耐えるが…ダメだ…決壊寸前…。
「キョーコ頼むよこれ以上はちょっと…その格好じゃ…なんというか…」
「なんですかぁ?」
「その…いけないことをしている気分になるんだよ…犯罪でも犯しているような…」
「犯してくださいっ」
「おか…っ…な、何を言っ…!」
「いけないこと、しましょう?そうと決まればさっそく」
キョーコは自らメイド服の胸のボタンを外し始めた。
呆然としている俺を無視して全て外し終えたキョーコは、ぐいっと開いてそこから胸をぽろんと出した。
そして固まって動かない俺の両手を取り、その膨らみに触れさせる。
「んふ…これ…ご主人さま、好き、でしょう…?」
俺の手の上から揉みしだくように動かす。
「おっきい手…気持ちいい…あぅ…ん…」
うっとりと微笑むその表情に、抑えていた俺の理性の糸はあっけなく切れた。
乳首を指の先で小刻みにはじいてやる。
「ああっ、あんっ、ご主人さまっ、本気になっちゃ、だめっ、今夜はキョーコがご奉仕、するんですっ」
拒絶の声を無視してその果実にむさぼりつきながら、スカートの中に手を差し入れ下着を取り去った。
溝に指を這わせると、そこはもう充分すぎるほどに潤っていて、ぴちゃ、と小さく音がする。
その音に煽られるように、俺は手早く服を脱いだ。
形勢逆転、あっさり押し倒しにかかる俺に焦ったキョーコは、
身を返して四つんばいになってソファの端へと逃げていく。
「だ、だめですっ!まだ、何もご奉仕、してないのにっ」
耳をぴょこぴょこさせている姿に思わず笑いそうになるのを抑えながら
逃げるのも構わずその腰を掴み、ゆっくりと身を埋め込んでいくと、
嫌がっていたはずのキョーコのソコは甘んじて俺を受け入れる。
「あっあっあっ…っ…ゃあっ…んっ…はぁっ…」
「もっと…欲しい?」
キョーコはふるふると首を…いや耳を振るが、そのまま奥まで呑み込ませる。
顔を伏せて臀部を突き出すその様はなんとも卑猥だが、
キョーコの幼さを引き立たせるひらひらの服装を目にすると、
その清純さを冒しているようでなんとも複雑な気分にもなる。
しかしそんな罪悪感に心を惑わせる余裕もないほどに、キョーコの中は居心地が良くてたまらない。
ゆっくりと…そして徐々に激しく腰を振る。
「あっ!あっ、だっ、だめ、だめですっ、つるがっ、さんっ、ひぁっ、あぁんっ!」
「ご主人さま、だろう?」
「あぁっ、やぁっ、いやっ、いやぁっ」
本当にイヤなのだろうか、一瞬不安になって腰を止めるとキョーコは自分から腰を揺らす。
「なんだ、悦んでるんじゃないか」
「だって、あっ、あんっ…お酒のせい、ですか?あ、熱いっ、あそこ、熱いですっ」
「ほんとだね、キョーコの中っ、燃えそうに、熱いっ…」
「あっ、だめっ、ヘンに、なるぅっ、あっあっ…だめっ…っちゃ…ぁああっ…あああぁんっ…!!」
ご希望通りに動きを再開すると、キョーコは泣いているかのような哀しげな声を上げて脱力した。
息を荒げているキョーコを返して仰向けにすると、その表情はさきほどまでのとは違っていることに気付く。
「酔いが醒めたかな、ウサギさん?」
「……っ!」
キョーコは真っ赤になって両手で顔を覆う。
「も、もう…っ」
「だぁめ。まだこれからだよ」
白いタイツの両足を持ち上げて、まだ固く溜め込まれたままの欲望を突き入れる。
酔った淫らなキョーコも可愛いけど――
俺にはこっちのキョーコでいいかな…あれは刺激が強すぎる…
罪深い白ウサギを思うがままに汚しながら、俺は小さく苦笑いをこぼした。