俺の中にわだかまる想い。
気付いてもらえないもどかしさと、
気付かせないようにしているのに苛立つのは理不尽だと
咎める俺の良心と。
俺の中に蓄積されていく秘密が
なにも知らない君に向かって暴走する―――。
「…ぅんっ、あっ…ああ、つ、るが、さ……だめ…っ!」
必死に堪えようとする途切れがちな声が耳に優しい。
上から見下ろす体はやっぱり細くて、
なのにとても柔らかくてあたたかい。
ベッドのシーツを掴んだ指先がかすかに震えるのを見て、俺は笑う。
「我慢…しないで。……正直に、素直に。全部言ってごらん」
「……あああっ!」
優しく言いながらしなやかな脚を抱え上げて、
更に深く腰を進めた。
仰け反った彼女がびくっと体を硬直させて悲鳴を上げる。
すると俺を包んだ場所の締め付けが強くなって、
引き摺られそうな感覚に耐えて吐いた息がひどく熱い。
「……すごいね。そんなにいい…?」
「敦賀さん…いじわる、ですよ……こんな…ときに…っ」
彼女なりに睨んでいるつもりなのだろう。
眉をつよく寄せて、涙目で俺を見上げた表情にとても煽られる。
愛しさが込み上げる。
―――すべてを素直に言わなければいけないのは、きっと俺のほうなのに。
「あ…んっ……、や…ああっ、つるが…さ…っ…」
「言って。…いいの?よくないの? …どっち」
「…そんなの…言えませんっ…」
恥ずかしいのか顔を真っ赤にして、シーツに押し付けた頭を横に振る。
まだ、初めての時から何度目かの行為。
気持ちが追い着いていないのか、体の反応ほど正直じゃない彼女に笑って、
強く腰を押し付けて動きを速める。
同時に、腰を支えていた手を離して小振りな胸を掴んだ。
「あっ、ん…や…ああっ!」
「俺は、すごくいい。……君は?」
胸を弄りながらさらに激しく突き上げる。
気持ちいいのか、熱い中の反応が強まる。俺も限界が近い。
ぎゅっと目を閉じ、甘い声でないている彼女が可愛くてしかたなくて、
首を伸ばして開いたまま喘いでいる唇をひと舐めした。
「あ……いい、…です、わたし…も……あう、ん…っ!」
シーツから離れた震える指が、俺の頬に触れる。
間近に覗き込んでいると、涙で濡れた目が俺を見て
溢れそうな涙を堪えながら嬉しそうに笑った。
ずきん、と胸の奥に走る痛み。
「…………キョーコちゃん」
「……え? …あ、あっ、やだ、つるがさんっ…!
ダメ、いやあ、そんな…ああ…んっ!」
濡れた目で、でも一生懸命に笑顔を浮かべる幼い彼女の姿が重なった。
ほんの少しの背徳感と、彼女に対して秘密を抱いていることが、
俺の中にわだかまる欲望を膨れ上がらせる。
小さく呟いた名前は聞き取れなかったのか、
追い上げるような激しい動きに翻弄され、今度こそ本当に泣き出しながら
強くかぼそく縋り付いて来る彼女の中に、耐えた欲望を解放した――。
吸い込まれるように眠りに落ちた彼女の額の、
汗で張り付いた髪をそっと払ってやる。
寝顔はあどけなく、こうしているとあまり昔と変らないように見える少女。
本当のことを告げたとき、彼女はどういう反応をするのだろうか?
その時が来るのを怖いと思っているのか、それとも待ち望んでいるのか。
どちらともいえない感情を持て余し、静かに眠る彼女を抱き締めながら
俺も眠りに落ちていった――。
終