どさくさの苦しい言い訳で膝枕をしてもらう内に、俺の頭を膝に乗せたまま、彼女が寝てしまった。
目が、離せない。
口元が微かに開いた可愛い寝顔を、瞬きもせず、下から食い入る様に見つめてしまう。
浅い呼吸で静かに動く、彼女の膝の感触、暖かな体温、可愛らしい匂い。
思わず、腹部に顔を押し付け、そこにキスをして、擦り寄せてしまいたくなる。
このままずっと、こうしていたかった。
彼女のあどけない寝顔を見る内に、『敦賀蓮』ではない、本当の自分が頭をもたげて来る。
無意識に、口をついて、出てしまった。
「……ちゃん、……キョーコ、ちゃん」
「……ん」
「……キョーコちゃん……」
「……ん、……ん? つ、るが、さ?」
「……違うよ……僕、だよ」
「……だ、れ」
「……キョーコちゃん……。石、ずっと持っててくれて、ありがとう」
「……コー、ン?」
「……うん」
眠る彼女の顔が、とても幸せそうに笑って、俺は胸がズクリときた。
「……コーン、コーン……。会いた、かったぁ……」
思わず、目の前にあるあどけない頬に手が延びかける。
俺は、無意識に頭を彼女の膝から浮かせ、彼女の唇に、自分の唇を合わせ様としていた。
彼女の浅い吐息が俺の唇にかかり、その吐息を吸い込み、酩酊した気分でそのまま口付けをしようとした、時。
「コー、ン……?」
吐息が混ざり合い、唇が触れ合う瞬間。彼女の問い掛ける一言で背中に冷水を浴びせ掛けられた様に、我に返る。
ーーーーーなに、を、やってるんだ、オレは。
心臓がどくどくいっている。唇が触れる直前で固まり、動けなくなる。
自分の唾液で彼女の唇を湿らせたい衝動を抑え、ソコには一切触れず、震える唇で、飢えた様に
彼女の吐息だけを飲み込む。
静かに彼女の顔から自分の顔を引き剥がし、彼女を起さない様に細心の注意を払って膝に頭を乗せ直した。
抱きしめたい。抱きしめ、たい。この子を、閉じ込めて、思いきり可愛がりたくて、たまらない。
「……コーン……?」
欲望を沈めて、言葉をしぼり出す。
「……オレも、君に会いたかった……ずっと……」