「今日のゲストはなーんとっ――敦賀蓮さーん!!」
ブリッジロックの紹介に黄色い声援でしばらく番組進行はストップ。
唯一その司会の彼らと並んで進行役のアシスタント役を務めていたキョーコは冷静にその様子を観察し、
やっぱり敦賀さんの人気ってすごいのね、などと他人事のように考えていた。おまけに
『この調子だと私の出る幕はほとんどなさそうだし、あっという間に終わりそう。
早く帰れそうだし、晩御飯は何にしようかな』
熱狂する会場の中、ただひとり呑気に構えていた。
この後の蓮の視線に気付くまでは――。
キョーコはこの番組で毎週、さまざまな国の民族衣装やあらゆる職業の制服を着ることになっていた。
ペンキ塗りのはけの形をしたマイクを持ってだぼだぼのオーバーオールで登場したり
風船を持って着ぐるみをかぶったこともあれば(遊園地の職員、という趣旨だったらしい)
メイド服やナース服など、一度は着てみたかった乙女心をくすぐる制服もあり、衣装はキョーコの密かな楽しみだった。
今日の制服はスチュワーデス。
蓮を前にしてさほどきつくはない露出度で、キョーコは内心ホッと安堵していた。
しかし…中央で3人の横に立っていたキョーコだったが、蓮が座っている斜め後方からやけに熱い視線を感じる気がする。
『気のせい、気のせいよ、集中するのよキョーコっ』
言い聞かせている時点で、すでにその視線が蓮のものであり、自分がことさらに凝視されていることを、
キョーコはイヤというほど自覚し始めていた。
『う…敦賀さん、お願いだからそんなに見ないでっ…しかもなんだか視線が熱い!
敦賀さんのことだもの、また変なこと考えてるんじゃ…って…変なことって何よっ私ったら仕事中に!!
い、いけないわ、これ以上考えたら考えを敦賀さんに読まれてしまう!
そして「いやらしいこと考えてたねキョーコ」って夜の帝王の顔で迫られるっ…無よ、心を無にしなくちゃ」
そして蓮は、案の定キョーコを穴が開くほどじっと眺めていた。
『あれが「光さん」か…やはりキョーコに熱を上げているようだな。
それにしてもキョーコは可愛い。後ろ姿だけでこんなに可愛い子も他にいないな。
しかしそのスカートは短すぎだろう?前で指示を出しているあのADなんて、
下から覗き込むように足を眺めてるじゃないかまったく…衣装を決めてるのもさては男のスタッフだな。
あそこの客もキョーコしか見ていないし、許せないな…この衣装は買い取って持って帰らせよう』
仕事には手を抜かない蓮だったが、バラエティ番組で、しかも目の前にキョーコがいるとあっては
むしろ仕事よりもキョーコに手を抜かない蓮となっている。
端から見守る社はもはやため息しか出せず、『どうにでもなれ』と天を仰いでいた。
「さー次はファックスで送られてきた視聴者からの質問に答えていただきましょおおお!!」
進行上仕方なく蓮の正面に立ったキョーコは、初めてその顔をちらりと見た。
やはりと言おうか、キョーコをじっと見ていた蓮はにっこりと微笑む。
その笑顔はキョーコには『今夜はお仕置きだからね』と言っているように思え、慌てて目を反らした。
脅えた様子のキョーコに蓮は内心ムッとする。
『会場の客や「光さん」には笑顔で、俺にはそんな顔?どういうことかな?』
『ひぃいっ、なんか似非紳士スマイルで怒ってるぅうううう!!』
横から質問の書かれたファックス用紙を渡されて、
キョーコはさっさと終わらせてしまおうと淡々と読み上げることにした。
「さ、最初の質問です!敦賀さんの好みの女性のタイプを教えてください、これは東京都の…」
「君だよ、キョーコ」
「ひっ…では次っ!敦賀さんは現在、お付き合いされている方は…」
「いますよ、今質問を読んでいる女優の京子さんです」
「も、もぉっ、じゃあこれっ、敦賀さんはお休みの日はどんなことをして過ごし…」
「それは君が一番よく知っているよね?」
キュラキュラと間髪入れずに答える蓮に混乱を極めるキョーコ。
同じくらいに取り乱しているリーダーを無視して、残りのふたりが質問した。
「ちょっと敦賀さんーー!それは冗談?それとも事実ですか?!」
「事実だったら明日の新聞一面、この番組の話題になっちゃいますよっ!?」
盛り上げにかかる二人の問いに、蓮はキョーコから目を逸らさないまま笑顔で告げる。
「さあどうでしょうね…じゃあ、京子さんに答えてもらいましょうか」
『ひぃっ!肯定すれば全国の敦賀ファンを敵にっ…だけど否定したら……っ!!』
結局キョーコには敦賀ファンよりも、大魔王の餌食になるほうがその何十倍も恐ろしいのだった。
「つ、つるがさっ、なんでぇ、はあっ、ちゃんと私、認めた、のにぃっ!」
「肯定するまでのあの一瞬の間が許せないな」
「ひ、ひゃ、だめっ、せっかくの、衣装、汚れちゃう、いやっ」
「せっかく汚れていいように買い取ったんだ、いっぱい濡れて汚してごらん」
結局スチュワーデスの制服のままキョーコを連れ帰り、蓮はすぐに行為に取りかかっていた。
首元のリボンで手首を胸の前で結び、ベッドに押し付けスカートをめくりあげて臀部を撫でる。
ストッキングの艶めかしさが気に入ったため、そのまま中央を何度も指でこすってやる。
下着とストッキング、二重の布越しの指の感覚がもどかしく、肘をついたキョーコは動きに合わせて腰を揺らす。
「ぁあん、いじ、わるっ、脱がせて、つるがさんっ、脱ぎたい、脱ぎたい、のっ」
「そんなこと言うもんじゃないよ。キョーコ、さっきも収録中に、変なこと考えてたろう?」
「…っ!へ、変なこと、なんてっ」
「考えてなかった?ほんとに?」
愛撫を一旦やめて指を離す。上体を起こし座らせて制服の上を脱がせると、繋がった手首にひっかかり止まった。
そのままブラをズリあげて乳房を後ろから揉みしだく。
見なくても触覚だけで充分わかるほど、その突起は固くなっている。
蓮がその先を何度もはじくと、その度に甘い声を漏らしてキョーコは首を振った。
「ひや、ごめんな、さいっ、考えた、ちょっとだけぇ」
「何、考えたの?」
「つるがさんの、視線が、いやらしくって、はぁあっ、昨日の、お仕置き、思い出した、のお」
「昨日のお仕置きって、何をしたっけ?言ってごらん」
後ろから膝を大きく広げる。
「あっ、つ、つるがさん、の、前でっ、いけない、ことっ、じ、自分で…自分の、指、で…っ」
「そうだったね、俺に見られて感じてたよね。指で?何をしたっけ?」
「い、いやっ」
ビリっとストッキングを中央で引き裂き、下着の横から指をねじ込むと、蓮の指にはとろりと愛液が温かく巻きついた。
「何をした?言ったら同じこと、してあげるよ?」
「ゆ、指、でっ…く、クリト…ス…何度も、触って…ああっ、はあっ、あん!」
「それだけ?」
「中っ、中ッ、指、入れて、そ、そう、です、きゃ、んっ…はあ…それ、で、ぐちょぐちょ、に、かきまわっ…あ、ん」
「そんなこと思い出してたの?いけない子だね、キョーコ」
「ひゃんっ、やあ、いっぱ、ああん、やっぱり、いやっ、ああぁ、ああぁん!敦賀さんの、指じゃっ、すぐっ」
「すごいね、シーツに水溜り、できてるよ」
「あ、あっ、だっだめっ!い、いっちゃ…やあ、あっ…んああっ……!!」
キョーコの痴態を見ているうちに、蓮の自身も熱く滾り上を向いていた。
裸になった蓮は絡まっているキョーコの上の服を、ブラを残して優しく取り払う。
まだ必死に息を整えているのを楽しみながら四つんばいにさせ、
後ろからゆっくりとストッキングと下着を同時に下ろしていく。
スローモーションのような動きと、臀部や太股にかかる蓮の吐息にキョーコはぶるりと身震いする。
「あ…ぁあ…ん…つ、つるが…さん……はや、くぅ」
「自分でおいで?」
脱がせるとそのまま後ろ手をつき、ただ笑みを浮かべている蓮を振り返り、キョーコは恨めしそうに顔をしかめる。
「意地悪…敦賀さんのいじめっ子っ!」
「いじめてないよ、キョーコの好きにさせてあげるのに」
膨れっ面のままおずおずと蓮の上に跨ったキョーコはスカートを片手でめくりあげ、
軽く立てられた蓮の膝にもう片方の手を付き、自らゆっくりと高くそそり立つ肉棒を埋め込んでいく。
蓮がじっと見ているのをキョーコは知っていた。
そしてそれを見られることで、自分がますます興奮してしまうことも。
だからあえて見えやすいようにと、スカートを自らめくって見せている。
恐る恐る蓮の目を見ると、果たして繋がっていくその部分を楽しげに眺めている。
その視線にキョーコの身体はカアっと熱く燃えあがる。
「ん、ん、ゃん、入ってく、のっ…み、見ないで、敦賀さんっ…熱くて、変な気分、なっちゃう」
「見ないで?もっと見て、の間違いだろう?」
見透かされている視線に顔が、耳が赤くなる。
恥ずかしさで気が狂いそうなのに、心に反してキョーコは動きを止められない。
ゆっくりと奥まで埋め込み、臀部の肉が蓮に触れると、今度はゆっくり腰を浮かせていく。
抜き去ってしまう寸前まで上げては再び体重を下ろして咥え込む。
ぬちゅ、くちゅ、と液が溢れる卑猥な音も、キョーコの耳を犯すように高めていく。
「ん…はあ…あんっ…あ…あつ…おっきぃ、あっ…つるがさんの…これ…大好きっ…はあぁん…」
一方の蓮も、自分の熱く脈打つそれが呑み込まれては吐き出される生々しい光景に、
服を乱したまま、恥ずかしがり瞳を潤ませながらも快感に溺れていくキョーコの痴態に、
そしてキョーコの内側の熱い翻弄に、次第に制御するのが難しくなっていく。
キョーコの羞恥心を煽るためにもなるべく蓮は冷静なフリをしていたが、そろそろそれも限界に近づいていた。
今夜はキョーコが懇願するまで攻めないつもりだったが、耐えるのが無理と悟り方針を変える。
「大好き?じゃあもっとあげようね」
「きゃっ、待って、まだ私が、ぁああっ!」
繋がったまま押し倒し、膝を抱え上げて挿入を深くする。
さっきキョーコがしたように、蓮もまた抜き去る直前までゆっくりと腰を引き、そして一気に突き進んだ。
「はああんっ!あっあっつるがさっ、そんなっ」
「もう一回?」
同じようにして深く突き刺す。
何度も何度も、次第に間隔を早めて繰り返し、揺れる膝を肩に乗せて夢中で突き上げる。
「やああっ!あああっ、あんっ!んあっ、ああっ、こすれてっ、あんっ!いっぱい、いっぱい、きてぇっ」
「いやらし、こと、キョーコ、好き?」
「あんっ、好き、いやらしいこと、大好きっ」
「俺のこと、好き?」
「はあっ、好きっ、敦賀さん、好き、敦賀さん、の、いやらしい、これ、も、好きっ、大好きっ」
「俺じゃ、ない、よ…んんっ…いやらし、のは、キョーコっ」
「はあんっ、わたし、いやらしい、のっ、いけない子なのっ、だめっだめっ、ああっ、いくっ、イきたい、のっ!」
「……くっ…今日は、俺も…もうっ」
「きてっ、一緒にっ…はあっ、ああっ!あっ、やだっ、あっきちゃうっ、ああんっ…!」
「キョーコ、そんなに、腰、振っちゃ、ダメ、だっ」
「んっ、んっ、ふあっ、ああっ、あっだめっ、イクっ、ひあああっ、ああっ、つるがさんっ…あああっ……ああんっっ!!!」
しばらく激しく息を荒げていたキョーコに、蓮は繋がったまま髪を撫でキスを落とす。
落ち着くまではこのままで…さて次はどうしようかと思案していた蓮だったが、
キョーコはやがてすやすやと眠ってしまい、虚をつかれて呆れた蓮は、ハアアア、と大きくため息をついた。
このままだと寝ているキョーコを犯してしまうと思い、ゆっくりと身体を離し乱れた服をそっと取り去った。
生まれたままの姿で眠るキョーコの顔は純粋無垢な少女のそれで、
直前までの淫らな行為に、蓮の胸には罪悪感というトゲがチクリと刺した。
それにしても…と蓮は考える。
こんな何も知らないような顔をして、キョーコはますます愛の行為に貪欲になっていく。
それを教えているのは自分だということを棚に置いて、蓮は少し心配になってきた。
そのうちこの色香を無意識にバラ巻いたりするのでは…
そしてなにより自分が翻弄され続けてしまうようになるのでは…
「それは…困るな」
やはり翻弄するのは――せめて繋がる行為においては自分でありたい。
すでにこの日、危うく主導権を握られつつあったことに危機感を覚え、
蓮はキョーコが起きてからの次なる遊戯を模索するのだった。