眉間に皺を寄せ、キョーコは切なげに啼き声をあげる。
「あっ、んんっ…あぁんっ、んっ…」
「…キョーコ、聞いていい?」
「…はい…なんですか?」
動きを止めた俺は、整えるための息を何度かついてから質問する。
「なんで今日に限って、しっかり目を開けて俺の顔、見てるのかな…」
「ダメですか?」
不思議そうに首をひねる様子が可愛らしい。
「いや、ダメではないんだけど…」
むしろ煽られているような気にもなって興奮しているのが半分、
まっすぐな目に罪悪感を覚えてしまうのが少々と、
残りはあまりに見つめられて…なんだか照れるというか、恥ずかしい気分になってきた。
キョーコに対してはさんざん羞恥心を煽る言動を繰り返しているのだが、逆の立場には慣れていない。
だが、じっと見られると恥ずかしい、なんて悟られたくない。
日ごろからこの子の魅力に翻弄され続けているのだからと、抱き合う時はいつも俺のペースで事を進めている。
戸惑いを悟られることはそのわずかな優越すら奪われてしまうような気がした。
「いつもは見てって頼んでも目をそらしてるのに…どうして?」
思えばキスの時点から目を開けていた。
俺はいつもキョーコの表情を堪能しながら、その反応を見ながら愛撫を進めていくからわかるのだが、
そんなことは今までに一度だってなかった。だから今日は妙だと思っていた。
「あの…さっき敦賀さん、私の膝で寝ちゃったでしょう?」
「ん、そうだね」
「あの時の寝顔、なんだかすごく可愛かったから…私の知らない顔もまだまだあるんだぁって思って。
それでその…こういう時はどんな顔してるんだろうって思っ、あっ、なんで明かり…!!」
俺はキョーコの答えの途中で自分の顔が赤くなっていくのがわかって、ベッド脇の明かりを素早く落とした。
「…見なくていい」
「もう、せっかく…」
照明へ伸ばそうとするキョーコの細い腕を掴んで押さえつけた。
「そんな余裕、失くしてあげるから」
『敦賀蓮』の皮をかぶって笑みをこぼすと、キョーコはわたわたと焦って身をよじる。
「あ、あのっ、やっぱり見なくていいです、ごめんなさいっ」
「今夜はキョーコが我を忘れるまで終わらないからね」
可愛いだって?冗談じゃない!
俺はこの子の前でどこまで情けない男になっていくんだ、まったく…。
動揺しているのをごまかすように、俺は再び腰を打ちつけた。