今日はドラマの打ち上げがあった。
私が20才の誕生日を一週間前に迎えたことを皆知っていたから
『お祝い』とか言われてかなり飲まされてしまった。
日付が変わる頃敦賀さんのマンションに着いて、エントランスで
暗証番号を入力していると、“一緒に暮らしているんだなぁ”と
強く感じる。
眠っているかもしれない敦賀さんを起こさないようにと静かに
鍵を開けると、案の定玄関の明かりだけが煌々と点いていた。
薄暗いリビングの近くまで行くと、なんだかすすり泣くような声が
聞こえてきて、それはだんだん大きくなり、あえぎ声に変わった。
そして何やら淫猥に響く音と、聞こえてきた声。
「愛しているよ。っ、ふぅ、、、いって」
それは何時も私が耳元で聞いている敦賀さんのものだった。
何がどうなっているのか、どうやってその場を離れたのか、
気付くとマンションの外の暗がりにへたり込んでいた。
敦賀さんの声、何時もと同じように熱っぽく艶を含んでいた。
『愛している』昨夜までは私にくれた言葉。
今はその人を愛しているの?
それとも私に言ってくれたのは嘘で、その人だけを愛しているの?
どうして私に一緒に暮らそうって言ったの?
私はまた男に捨てられるの?
解からない、哀しくて、切なくて、身体が粉々に砕けそうで、
何も考えられない。
どれ位そうしていたのか、携帯の着信音に、相手を確かめもせず
出ると敦賀さんだった。帰りが遅いからと心配して掛けてくれた
らしい。私の様子がおかしいことに気づいた敦賀さんに、慌てて
『なんでもない』と告げ、マンション近くまで来ていると言って
しまった。直ぐに帰らないと不審に思われるだろう。
どうすればいいのか、まだ分からないけれどとにかく帰らなければ。
エントランスを入ると、エレベーターを出てきた敦賀さんがいた。
私を見て嬉しそうな顔をして抱きしめてくる。
部屋に入ると“おかえり”のキスをされて、1分後にはリビングの
ソファで膝に抱かれていた。いつもと変わらない敦賀さんの態度に
益々訳が分からなくなってくる。
「どうしたの?」
声を聞いたらもうだめだった。涙が溢れて止まらない。
他の女性を愛する敦賀さんの側にはいられない。ここを出て行くと
泣きながら告げると、しらばっくれている風でも開き直っている風
でもなく何の事かと聞いてくる。
しゃくりあげながら、敦賀さんと誰かの情事を覗いてしまったこと
を告げた。
「見たの?」
「いえ、声を聞いただけ…」
「それは、こんな声かな?」
背中にまわっていた右手が離れてリモコンを操作する。
グチュグチュという音とあえぎ声がした。
『ああっ、蓮、蓮、いいよぉっ』
『ぅん、キョーコッ』
明るい画面の中で余りにも見知った顔の二人が蠢いている。
「さて、キョーコ お仕置きは何がいい?」
まるで鏡を前に置いている様に、その映像と同じ手順で責められて
朦朧としながら“こんなのいつ撮ったのよぉ。蓮のバカァ”
と心の中だけで叫ぶキョーコだった。