女優になって仕事も落ち着き、例のバイトからも離れていた奏江だったが、  
家族が詐欺に騙され借金を背負ったため、お金を稼ごうと久々に手を出す。  
が、デート相手が悪かった。  
すっかり奏江を気に入った男は無理矢理ラブホテルに連れ込み押し倒す。  
「や、やめなさいよっ!こんなの契約違反っ…」  
制止も耳に入っていない様子の男に頭が真っ白になる奏江。  
 
――どうしよう…やっぱり会った時にイヤだと思った時点でやめておけばよかった…!  
 
抵抗するも男の力には敵わない。  
もうだめ…と思ったその時、ものすごい音でドアがノックされた。  
 
「ちっ、なんだよ!これからって時に…いいか、騒ぐなよ」  
手首をベッドの柵にくくりつけ、声をあげないようにと奏江の口を塞いで男はドアへ。  
ドアを開けると、いきなり男は殴られて後方に吹っ飛び飛鷹登場。  
警察に突き出されたくなきゃ今すぐ出て行け!とすごい剣幕で言われ、男退散。  
 
怒った様子のまま拘束を解いてやる飛鷹。  
口を塞いでいたタオルを外し、固くベッドに結ばれたロープを解き始める。  
「ったく、何やってんだよ!こんな自分の品を下げるようなこと二度とすんなっ!!」  
「な、なによっ、あなたには関係ないでしょう!」  
 
――違う、こんなことが言いたいんじゃないのにっ…  
 
この子が自分のことを想ってくれていることはわかっていた。  
心配したが故に本気で怒っていることも。  
だけど歳の差のせいか、元来の性格のせいか…助けてもらったこの状況でも、素直に礼すら言えない自分に、奏江は自己嫌悪で情けなくなってくる。  
 
「…あぁ、そうだな…俺はお前の恋人でもないし、俺が一方的にお前を好きなだけだしな」  
飛鷹はロープを外すと、そう言いながら奏江の手首を取り優しく指でさすった。  
いつもなら突っかかってきて、口喧嘩の応酬が始まるはずなのだが、いつもと違う言葉と行動に、奏江は戸惑う。  
「悪かったな、余計なお世話で助けたりなんかして。手首、冷やしとけよ、女優がアザなんか作るな」  
飛鷹はすっくと立ち上がり、「じゃあな」と言い残して部屋のドアへと歩き始めた。  
 
「待って…お願いっ、待って!!」  
 
気付いたら奏江は飛鷹の手首を掴んでいた。  
 
「なんだよ」  
「お願い、行かないで…もう少し…傍に…いて…」  
「…何泣いてんだよ…泣くなら初めからこんなことすんな。わかったか?」  
 
飛鷹は優しく奏江を抱き寄せ――  
 
 
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