そっと見上げると、やっぱり敦賀さんはじっと私を見ていた。
私にいつも言ってるように、敦賀さんだって我慢しないで声を出せばいいのに。
そう思いながら、私はその行為を続ける。
敦賀さんの息が、少しずつあがっていくのがわかる。
時々堪えきれなくなったみたいに、眉をひそめて小さく声が漏れる。
気持ちいいのかな。
そう解釈して、少し嬉しくなって、私は続ける。
その間も、ベッドの背にもたれかかった敦賀さんは私の髪を梳いている。
優しく、撫でる。
撫でられるのはくすぐったくて、なんだか敦賀さんのネコになったみたいで好きだ。
「ん、んっ…んぅっ、んっ…」
手でその根元のほうをこすりながら、奥のほうまで咥え込む。
敦賀さんの手が止まって、はぁっと息を漏らして天を仰いだ。
余裕がなくなってる敦賀さん。
こんな彼を見れるのは私だけ?
一瞬浮かれて、でも…過去にはたくさんいたかも…そう思うとなんだか悲しくなって…
おまけにしゃぶることに夢中になっていたらちょっと喉が苦しくなってきた。
「キョーコ…?大丈夫?ほら、もういいから」
敦賀さんは慌てて私の顔を離して、腕をひっぱって私の身体を引き寄せた。
ケホケホっと軽く咳き込んでしまって、背中を撫でられる。
なんだってこの人はこんなに優しいんだろう。
私は何にもお返しできていないのに。
いつもの悪い癖で暗い思考へと篭りそうになっていると、ぎゅっと抱きしめられた。
「苦しかったね、ごめん…」
「いえ、そんな、大丈夫ですよ」
「でも泣いてる」
「あ、いえ、これは…」
敦賀さんは少し身体を離して怪訝な顔をした。
「苦しいからじゃないのか?どうして泣いてる?」
「あ、あのっ」
空気がピリっと締まったことに焦る私に、容赦なく鋭い視線が注がれる。
「俺が何かした?」
「違うんですっ!その、嫉妬したんです…こんなことを敦賀さんはどれくらいの女性と、って考えてて…」
敦賀さんはそれを聞くと黙ってしまって、そのまま私を押し倒した。
そして私の前髪をあげたり頬を撫でたり涙をすくってくれたりしながら、「いい?」と訊いた。
「え?…あ、はい、どうぞ」
なんだか間抜けな答え方しちゃったな、と思っていると、敦賀さんは身体を起こして、私の膝を大きく開いた。
そして自分のソレを持って、その先で私の溝を何度も往復させた。
フェラの前の敦賀さんの愛撫が蘇ってきて、またあそこが熱くなってくる。
そろそろ入ってくるかな…
待っている私の顔をじっと見ながら、敦賀さんはそのまま何度も何度も…
くちゅくちゅと卑猥な音が立ち始めて、恥ずかしいやら待ち遠しいやらで顔が火照ってくる。
「あ…ん、あ…あの、つるが、さんっ…」
痛いほどの視線に耐え切れず顔をそらして、でも懇願の意味を込めて名前を呼んだ。
それでも敦賀さんは黙って、ただ繰り返す。
溢れてくる蜜をすくい取って、それを陰核に擦り付ける。そしてまた蜜壷へと戻って…
「ぁあっ…!」
じゅぷ、と先を少し埋め込まれて、思わず声が出てしまった。
その悦ぶ声に敦賀さんはまた意地悪に抜いてしまう。
身体がじんじんと疼いて、たまらなくなってきて、さっきとは明らかに違う涙がこぼれてきた。
「や…ぁあ…っ…も、もう…つるがさん、お、お願い、です…っ」
「なに?」
「は、はや、くっ…もう、がまんできっ…」
私ってば、なんてこと言ってるの…!
恥ずかしくて、でも敦賀さんは相変わらずじっと私を見ているから、両手で顔を覆って、駄々をこねるみたいに首を振った。
すると覆いかぶさってきた敦賀さんにその手を退けられて、目を覗き込まれる。
「キョーコは不安?俺はこんなに…愛してるのに」
敦賀さんの表情は、少し怒っているようだった。
「…すこ、し…だけ…」
ごまかせそうになくて正直に言うと、敦賀さんはハァァ、とため息をついてうなだれた。
怒りは収まったみたいだけど、今度は落ち込んだみたいだった。
「あのでもっ、か、過去のことはいいんですっ!そ、そりゃ、敦賀さんほどの方なら、両手の指じゃ数えきれないくらいの女性とそういうことをなさっていても不思議じゃありませんし、あっ、やだ、ずる…」
懸命に言葉を探していると不意打ちみたいに敦賀さんが入ってきた。
「キョーコの中、熱い…すごく…濡れてる…」
「あ、あっ…やだっ…あぁ…んっ、あっ…!!」
奥まで入れられて、今度はそのまま引き抜かれてしまって、思わず敦賀さんの背に手を回して引き寄せた。
「キョーコがイヤだって言ったから、つい」
「い、意地悪しないでっ、ぬ、抜かないで、くださ…い、ぁあ…あ、あっ…」
再び、ゆっくり、入ってくる。
敦賀さんの存在が、自分の中に隙間なく埋め込まれていくこの瞬間が、愛しくて、気持ちよくて、脳味噌が痺れるみたいに心地いい。
無意識に自分から求めるように腰を擦り付けていて、耳元で小さく「いやらしいね」と囁かれた。
そのまますがりつくように首すじに吸い付かれて、ゆっくりと腰を打ち付けられて、次第に快楽の波に溺れ始める。
このへんからいつも、私の記憶は曖昧になる。
「あっ、あっ、敦賀さんっ、もっと、あぁあっ、きてっ…!」
恥じらいも忘れて声をあげてしまう。
そんな自分の声にますます身体が熱くなって、ただ、もっとこの人が欲しい、欲望だけが私を支配する。
「あ、ぁあん、あっ、あっ、もっと、熱く、して…」
薄くなっていく意識の中で、自分の淫らな声がこだまする。
いつになったら私は、この人を夢中にできるんだろう…
少し悔しく思いながらも、結局私はこの夜も、彼の強力な魔法には抗えないままなのだった。