敦賀さんが動くたびに、くちゅくちゅといやらしい音が耳に届く。
そんな音、させないで欲しいのに…
恥ずかしい気持ちがますます膨れ上がって、耳を塞ぎたくてたまらない。
でも前に耳を塞いで、音をたてないでください、ってお願いしたら、
すっと伸びてきた両手に塞いだ手をつかまれて、
「どんな音?」
「俺じゃないよ。これはキョーコが立ててる音なんだよ?」
――云々。
意地悪に笑みを浮かべられて、
私はそれ以来抗議の声をあげることができない。
悔しい。いつも敦賀さんの意のままに組み伏せられて、その指に…その舌に翻弄されて。
今日こそは敦賀さんが、参ったよ、って白旗をあげるくらいに、私のほうが敦賀さんを翻弄してみたい、っていつも思うんだけど……
わかってる、そんなこと思うこと自体がきっと恐れ多いことなんだって。
だって翻弄するどころか、敦賀さんにキスされるだけでもう、私の頭はぼんやりしてしまうのだから。
いくらなんでも早すぎる、って自分でも思うけれど、
頭の後ろを大きな手のひらで支えられて、唇を塞がれて、口の中を舌でかき乱されて……
敦賀さんが上手いのか、大人のキスというのがそういうものなのか、私にはよくわからない。
ただ確かなのは、敦賀さんにキスされると、私は身体に力が入らなくなってしまうってことで。
そして気付いたら、たいていはその逞しい胸の中か…あるいはその下か。
「んっ…やっ、敦賀さ、んっ…ねぇ…っ!」
気持ちよさで頭がぼぉっとして、視界が定まらなくて…泉が立てる音すら気にならなくなり始めて、私は頭の隅で危機感を覚える。
このままじゃまた、意識が薄れてしまう。
そして後になって、よく覚えていないのに喘ぎまくりだったとかイキっぱなしだったとか苛められるのだ。
「ん、どうした?」
息を少し乱しながら、なんだか楽しそうに訊いてくる敦賀さん。
だめ…きっと何を言っても、あの眼に、そして身体に、結局は言いくるめられてしまう。
解かってはいるけど、どくどくと激しくなっていく自分の心臓の音を聴きながら、小さな声ながらも必死に抗議する。
「だ、めっ…も、だめぇ……はげし…から、いやぁっ」
「…イヤ?気持ちよく、ないなら、やめるけど」
やめると言いながらも、敦賀さんは動きをやめない。
気持ちよくないわけ、ない。
むしろ気持ちよすぎて、頭がヘンになりそうで、そんな理性が飛んだ自分を見られるのがイヤなのに。
敦賀さんの視線を痛いほど感じる。
恥ずかしさで顔を背けていてもわかるくらいに。
きっと「気持ちよくない」と言っても、瞳を覗き込まれて判定されたら、瞬時にバレてしまう。
一度だってこの人の「追及」をごまかせたことなどないのだから。
表情を見られたくなくて、無理矢理身体をよじって枕に顔を押しつけて隠す。
「よくないですっ」
「横がいい?」
「ぁああっ、ちが、ちがぁあっ、ふぁああっ!」
足を持ち上げられて、横になった身体にぎゅうぎゅうと腰を押し当てられる。
入り口ばかり攻められていたのに、今度は奥まで突き当てられて、さっきまでとは違う高い波が押し寄せてくる。
「だ、だめなのっ…!だめ、ああっ、ああぁあっ!」
「なにがダメ?教えて?」
「わっ、わかんなっ…」
押し付けた口で必死にごまかす。
もう、ダメ…ほんとに、ダメなのっ…
「わからなくないだろう?ほら…やめて、いいの?」
「ひぁあ、ん、ああっ…ダメ、なのっ…気持ち、よすぎちゃう、からっ…あそこ、ヘンに、なっちゃう、壊れちゃうからっ、だから、だめ…っ!!」
「んっ、そんなに、いいんだ?」
「ぁああっ、いいっいいのっ…んあ、あ、あぁんっ、気持ちいぃっ…そこっ、ぁあっ、もっとぉっ…っ!!」
結局嫌がっているとも煽っているともわからない恥ずかしい台詞を吐かされて、
私がそのことを知るのは目覚めた翌朝、耳元で囁かれた時。
寝起きに真っ赤になった耳たぶを齧られて、私は朝からそうしてまた攻められることになるのだった。