社さんとエレベーターを降りると、3人組と鉢合わせた。
「おはようございます!」
さわやかな挨拶をされる。
「おはよう・・・」
にっこりと返したものの・・・実は俺は上の空だった。・・・誰だったけ?
後ろから3人の話し声が聞こえてきた・・・
「リーダー、最近ちょっと見直したよ。
女の子を見る目あるんだな〜って。
不破尚のPV見た?カインドのCMの時より驚いた。
メイクと衣装であんな綺麗になるんだね、彼女」
「すごく話題になってるよな〜でも俺がきっとキョーコちゃんのファン第一号だと思うよ。
カインドのCMの前から目が離せなくなってたって、
多分俺くらいじゃないかな、って思うもん。
最初はぱっと見本当に地味だったもんな、彼女・・・」
「今結構スタッフも注目してるよね」
「そーなんだよ、現金だよなあいつら!もっとも、彼女に声かけても
誘えた奴誰もいないみたいだね。俺だけじゃなくて。
今んトコ全然そーゆーの興味ないみたいだ」
「なんか業界では珍しいタイプだよね」
「でも最初から見てたって、リーダー彼女のどこがそんなに気に入ったの?」
「うーん、礼儀正しくて最初から好感度は高かったんだけどさ。
華奢な割に元気で動きイイし、笑顔や切りかえしがよかったし。
・・・でもさ、たまにふっと寂しげな顔するんだよ。あれがトドメだったなぁ・・・」
「そんなに想ってるのに・・・報われてないよね・・・(ホロリ」
「ほっとけよ!俺とりあえず友達から、でいいんだ。
もっと彼女のこと知りたいし、俺のこと彼女に知って欲しい。
まずはそれからでいいんだ。・・・お付き合いの基本デショ?」
「・・・今初めてリーダーが大人に見えたよ」
「んだよ、俺背が低いからかよ!」
「・・・それは全く関係ナイよ・・・」
「・・・。あ、そうだ、誰それがキョーコちゃん狙ってるって聞いた?
あいつキョーコちゃんが全然話に乗ってこないんでムキになってるらしいよ。
リーダー、様子見に行ってあげたら?」
「え、まじで?アイツしつこいらしいんだよな?!んじゃちょっと行ってくる!」
小柄な青年が駆け足でラブミー部の部室に向かっていく。
素直に気持を口に出来る彼が、俺は少しだけうらやましかった。
あんな風に彼女に素直に手を差し出せたら・・・
でも、さんざん意地悪してしまった俺の手を、彼女はどう思うのだろう。
社さんが俺の顔を横目で見ながら小さくため息をついた。
「蓮・・・お前の周りの気温が少し下がってるぞ・・・
だから言ったのに。とっくに馬の骨だらけじゃないか・・・」
分ってる。彼女はどんどんキレイになり、男たちを惹き付ける。
この業界にいる以上、彼女が売れ始めてきてる以上、
それは避けられないことなのだけれど。
(イヤダ)(オレヲミテ)(オレダケヲミテ)
この溢れかえるどす黒い想いはどうすれば抑えられるんだろう・・・