「・・・・少し・・・考えさせて下さい」  
 
 
 
 
思わず口からでた。  
私に来た、ドラマのお話に、喜んでハイと言えなかった。  
 
理由は一つ。そのドラマの主演が……敦賀さんだと知ったからだ。  
 
あのマンションでのこと以来、敦賀さんには会っていない。  
 
 
あの時の敦賀さんはとても怖くて…冷たい目と熱い身体のギャップが恐ろしくて  
それまで包み込むように私を抱いた、あの優しい敦賀さんが消え失せたようで  
何度かはいっていた携帯電話の着信も、どうしてもかけなおすことができなかった。  
 
敦賀さんの怒りのもとはきっと私にあるらしい。  
それは何となくわかるのだが、  
ショータローのプロモの話についての言い訳も、抜かりなく言い訳したはずなのに、  
どこが怒りのポイントなのかどうしてもわからない。  
 
このまま敦賀さんの前に出るなんてできないの。  
 
だけど、せっかく自分を作り上げていくチャンス。もっともっといろんな自分を増やしたい。  
 
ドラマに出たい気持ちと、怖じ気付く気持ちで、ペラペラになるほど悩んでいた。  
 
モー子さんに相談にのってもらい  
(私がショータロー信者だと思われていたなんて、ひどい辱めよっ)  
モー子さんは敦賀さんが私を好きかもしれないと言った。  
 
トクン  
と胸の奥が鳴る。  
 
ううん。  
少し前なら…もしかしたらと期待したかもしれない。  
だけど、この間の敦賀さんの目を思い出すと、ぶるっと身体が震える。  
あの目に身体が凍り付く。  
 
 
あり得なさ過ぎて笑えないわ。  
 
 
敦賀さんにとっては、私はきっと単なる後輩。  
あんなに優しく抱いてくれてたのも………  
単なるセックスフレンドにでもきっと優しいひとなんだ………  
女性には優しいひとなんだわ。きっと誰にでも……  
 
「敦賀さん、あんたの嘘に気付いているのかも。」  
 
モー子さんと導きだした結論はそこに行き着いた。  
そうか…思えば私なんかが敦賀さんをだませる訳はないもの。  
 
正直に言わなきゃいけないのかもしれない。  
復讐のためにプロモの仕事を引き受けたこと。  
 
でも……あいつにまた抱かれたなんてことだけは……絶対言いたくない。  
もしかして、でも、それすらも、敦賀さんにはわかってしまっているのだろうか。  
 
だとしたら……私はもう、あの優しい胸に抱かれることはないのかしら…………  
 
もう人を愛するなんてコトはないと思う。  
ショータローのコトがある限り、私には恋愛なんてできない。  
 
………だから身勝手だとはわかってる。わかってるけど  
 
失いたくない…………敦賀さんを………  
 
 
 
下宿に帰ると、おかみさんがお風呂をすすめてくれた。  
 
あれほど荒々しく扱われた私の身体に残った印は、胸のてっぺんに残る薄く残った歯のあとだけ。  
お風呂に入る時ぐらいしか気にはならないが、指でなぞるとツキンとまだ少し鈍く痛みを感じる気がする。  
せつない。  
これはもしかしたら、敦賀さんの私に与えた罰だったんだろうか。  
ショータローに抱かれたことで、私の身体を汚れたと思ってこうしたんだろうか……  
 
ショータローに感じてしまった自分のからだが恨めしい。  
私がとても幸せになれるセックスは敦賀さんとのセックスなのに、  
ショータローの愛撫にも反応してしまうほど開発されてしまったのが恨めしい。  
 
胸の歯のあとを、つ…となぞる。  
敦賀さんの唇を、舌のぬめりを、噛み付くようだった激しい愛撫を身体が覚えていて、  
つい自分でそのままあとをなぞり、  
 
そのまま…………  
 
歯のあとから乳首に登り、摘むように、きゅっと絞る。  
 
「……ん…くっ」  
 
息が上がり、からだが火照り、目を閉じればすぐに敦賀さんの息づかいを思い出すの。  
体中をゆっくり撫で回し、熱くなっていく身体を確かめるように指は敦賀さんの手の流れを追う。  
 
「ん…う………ふ……」  
 
お湯の暖かさとからだの芯から沸き上がる火照りで、今にものぼせそう。  
 
身体を這っていた手が、私の一番熱い………そこに行きつく………  
 
「んうあああんっ…」  
 
湯舟の中でもわかるほどとろりと潤んでいるソコにゆっくり指を差し入れていく。  
 
「んっ…あ…んっっは…んっ…ああっ」  
 
もどかしい。  
 
ゆっくりからだんだん激しく、指をグチャグチャに動かしてみても満たされない。  
湯舟のお湯もだんだん激しく波立ってくる。  
 
やあっ………  
こんなんじゃ…やっ…こんなんじゃないの…  
もっと…もっと熱くって…もっと奥まで……もっと、もっと…………  
 
ああ、ああ、ああ、ああんっ………  
 
湯舟のへりにしがみついてますます波立つお湯はばしゃばしゃ音をたててくる。  
 
もっと…っ…もっと奥を…奥をえぐって…  
お願いっ……あああっ………敦賀さん…っ  
 
「んあああっああんっ……」  
 
昇りつめて背中がビクンと反る。  
 
だけど満たされない。  
 
どうしちゃったんだろう、私の身体は………  
欲しい……敦賀さんが欲しい………  
抱いて欲しい…  
 
バカだ、私。今そんなこと言ってる場合じゃないのに。  
 
 
湯舟の中で力が抜けていきながら自分をぎゅうっと抱きしめた。  
 
 
………だめだ。  
一刻も早く敦賀さんに謝ろう。  
 
ドラマの仕事もしたいのならなおさら  
ううん、それよりも  
あの笑顔に会えないのが…こんなに寂しいなんて。  
 
敦賀さんとのわだかまりもできるだけ無くしておきたい。  
 
ただ見てるだけでもいい。  
そばにいられないことが嫌だ。  
 
 
……それに  
きっと敦賀さんは許してくれる  
正直に自分の非を認めて謝れば……  
 
あの人は…そう言うヒトだもの…  
 
そう信じたい  
 
 
 
「…蓮…お前最近どうかしたのか?」  
 
一瞬何を言われたのかわからなかった。  
 
仕事の移動中車の中で  
社さんは覗き込むように俺を見ていった。  
 
「なんか深刻な顔してることがよくあるからさ…」  
 
そんな顔してたんだろうか。  
 
彼女のことを勘繰ってる社さんに、当たり障りのない否定を繰り返しておいた。  
まるで俺の落ち込みはすべて彼女に関わることのように言う社さん。  
……………半分は当たっている……のかもしれないが  
俺の目下の懸念は、仕事のことだ。今回の仕事のオファー。  
 
社さんいわく  
「超〜濃い〜い〜恋愛ドラマ」  
 
いつか社長が言っていた言葉をどうしても思い出す。  
 
『お前の「愛」の演技は嘘くせえ!』  
 
くしくも社長が心配した通りの仕事が舞い込んだ。  
もちろん俺自身は何の心配もしていない。…………でも、なんだ?この不安感は………  
 
 
彼女のことは……………  
 
獣のように彼女を抱いた、あの日以来、  
彼女とは連絡がとれていない。  
何度か携帯に電話をしたが、留守番機能を使い切れてない彼女にメッセージを残すこともできず、  
着信履歴で俺からの電話だとわかるはずなのに、彼女からは一度もかかってこなかった。  
 
謝ることもできない。  
言い訳もできない。  
 
……………いや、たとえ言い訳できたとしても、何を言ったらいいんだ?  
 
俺自身があの日の自分が理解できないのに、いったい彼女に何を言える?  
 
そう考えると、俺はこのまま彼女に会えなくていいのかもしれないじゃないか。  
そうすればこれ以上…………彼女を傷つけることもないはずだ。  
 
別にいいじゃないか。同じ事務所の先輩と後輩の関係は崩れない。  
彼女を……抱くことがなくなっても別に何も困らないじゃないか。  
 
「……そんな訳で、そんな初ジャンルの仕事には、今のお前闘志みなぎってると思うしさ、  
結局思い当たると言えば…キョーコちゃんのことくらいしか」  
 
〜〜〜〜〜〜〜〜〜。  
 
 
 
なんでそう、彼女とくっつけたがるんだこの人は。  
 
「…あの子………まだ高校生じゃないですか」  
 
そう、まだ子どもなんだ。  
 
「俺には高校生と恋愛できるほどの柔軟性はありませんから!」  
 
そうだ。最初に抱いたのが間違いだった。  
彼女と不破の過去を思って、いつまでもあの男に振り回される彼女がもどかしくて  
何もかも忘れさせたくて、あの男のことなんか夢に見たりしないように…………  
 
 
彼女を離したくなくて  
 
 
今まで俺が経験してきた恋愛とは違う。  
もっと俺にとっての恋愛は軽やかで優しくて甘いだけのモノだ。  
 
こんなどろどろした気持ちは恋愛なんかじゃない。  
自分自身が理解不能になるのは恋愛じゃない。  
 
 
第一…彼女が不破のプロモに出たくらいで、不破と同じ時間を過ごしたくらいでなんだと言うんだ。  
 
かつて俺がつきあっていた恋人ですら、  
他の男に気持ちを移された時、彼女たちのために身をひくことが出来たのに。  
 
………………じゃあ、なんなんだ。  
彼女にたいしてだけ、焼けるように胸が締め付けられる。  
 
俺は彼女が………どちらかと言えば好きなはずだ。  
けして嫌いではない。  
思い出の中の小さな女の子。  
あの頃の気持ちを引きずってるだけだ。  
愛しいと思うことがあっても、それは女性として愛しているのとは違う。  
 
そう…思っているのに。  
 
なのにどうしてこんなに辛くなる。  
時折引き裂きたい気持ちにかられるのはなぜだ。  
 
彼女に自分の痕をつけて、あまつさえ冷静な判断を失って彼女の中で果てた………  
こんな感情は初めてだ。  
 
 
 
俺は彼女が憎いのか?  
 
 
 
「……れ〜〜〜〜ん〜〜〜?  
女の子は早いよぉ……大人になるの…  
あの年頃の女の子は一般人でも目を見張るものがあるんだから  
芸能人なんてなおさらだ  
きっと自分でも気付かないうちにすごいスピードで磨かれて  
どんどん綺麗になっていくぞ。」  
 
社さんの言葉が胸の奥を引っ掻いていく。  
 
 
「…それこそ、たかが4つの歳の差なんか気にしてお前が目をそらしてるその隙にね。」  
 
ドクン  
 
「…いいのか?…  
よそ見してるとそのうちどこかの馬の骨に横から攫って行かれるぞ。」  
 
 
 
 
………………俺はそんなこと…………  
 
一瞬、不破尚の顔がよぎった。  
 
 
今度敦賀さんに会ったら何をおいても開口一番に謝ろう。  
 
そして本当のことをちゃんと話そう…………  
 
そう心に決めていたのだけど  
偶然エレベーターで出くわしてしまった私は思わず、大絶叫の末眼前逃亡。  
 
ああああああああああ 私の大バカ〜〜〜〜  
 
このまま逃げることも考えたけど、考え直して土下座DE号泣。  
詳しく事情を説明するため  
そのまま敦賀さんの車で送ってもらうことになった。  
 
急に用事があると言い出した社さんを事務所まで送り、そのまま車で夜の街にドライブ。  
私が話すショータローのプロモに出た本当の理由を黙って聞いている敦賀さん。  
 
「アイツのプロモを踏み台にしてやろうって…  
アイツと対等に目立つために「演技」を利用しようとしてたこと  
……それを敦賀さんに知られたくなくて復讐のためじゃないって嘘をついてしまって……  
 
ごめんなさい!」  
 
………アイツニダカレテシマッタコトハ…………イエナイ……  
 
敦賀さんは聞いているのか、聞こえてないのか  
ずうっと前を見つめたまま無反応………  
 
 
気がつけば高速道路に面する海岸線を走る車。  
黙ったままの敦賀さんは、ほとんど私の顔を見ることもなく、人気のないパーキングエリアに車を停めた。  
 
アイドリングの音だけが低く響く。  
 
ずうっと前を見つめたまま、無言の敦賀さん。  
助手席の私を一度も見ない…  
 
 
黙殺…?  
 
…や・やっぱり…  
 
心をこめて謝れば許してくれる…なんて…甘かったのかな…  
 
 
………………何を期待していたのかしら…  
 
 
 
自虐的な気持ちで夜空を見上げると  
 
まぁ ステキ  
今夜も星一つ見えない淀んだ夜空  
いっそ心地いいわね ホホホ  
 
息が苦しい  
苦しくて……涙がでそうだ  
 
こんなに近くにいるのに……………敦賀さんが……遠い……  
 
 
 
「…なんで オレに知られたくなかった訳…?」  
 
なぜ君が謝るんだ。  
俺が最初に君に謝らなければならなかったのに。  
 
不破のプロモの話を、必死に言い訳する彼女に気押されて  
この間の自分を詫びるタイミングを逸してしまったのが、かえって自分をかたくなにさせているのがわかる。  
自分勝手なものだ。  
 
あの日の彼女もそうだった。  
必死で何に怒っているのか、許しをこうていた。  
 
なのに俺は………俺は…彼女を……  
 
 
………はじめから  
 
さっきの彼女の話をきいていたら、俺は彼女をあんなふうに傷つけなかったろうか。  
 
演技を復讐に使おうとしてたことを知ったら、前の俺なら怒りが込み上げてきたんじゃないのか。  
なのに、さっきあの話を聞いた時、怒りよりも少しほっとしたのはなぜなんだろう。  
彼女が変わらず、あの男を憎んでると言うことで……  
 
 
いやそれより  
なぜ彼女がそのことを隠す必要があるんだ。  
 
「俺は君の事情を知ってる。今さらだろ…?」  
 
 
そうだ。今さらなんで。  
 
 
「それは…だって…敦賀さんが………  
私が言った演技の勉強してる理由を信じてくれたから………だから…  
 
だから…その…」  
 
 
…だから…?  
 
「…敦賀さんの信用を失いたくなくて………」  
 
 
 
スウッ…………  
 
目の奥に冷たく張りつめていた棘が溶けていくように  
何かが流れていくのがわかった。  
 
俺の信用が彼女にとってそれほど大きく、そのために嘘までついてしまった彼女が  
小さくて………  
 
バカだなあ……  
 
胸の奥が少し暖かくなる。  
 
「信じてもらえないかも知れませんけど…」  
「信じてるよ。」  
 
初めて彼女をまっすぐ見る。  
そう。  
演技のことで、彼女を疑っていたことなどなかった。  
 
そう言うとほっとした顔で少し笑う彼女。  
 
嬉しそうな彼女を見た時、思わず抱き締めていた。  
腕の中でほうっと息をつく彼女。  
そうっと抱きしめかえしてきた彼女の髪に唇を埋め  
 
この間はごめん…と小さな声で謝った。  
 
どうかしてたんだ…本当に傷つけるつもりはなかったんだ…  
そう呟くと、顔を起こした彼女がニコッと笑った。  
 
「……わかってます。」  
 
そう言った一言だけの言葉が、俺の胸の奥で何かをはじかせた。  
 
 
片手で彼女を抱き、片手で彼女の顔をそうっとなぜ、そのまま口づけていった。  
 
優しい…優しいキス。  
 
すごくすごく欲しかったキス。  
 
前のキスよりゆっくりと優しい動きをする唇。とろけそうに絡まる舌…  
気がだんだん遠くなってくる。  
 
ガクンッ  
 
シートを倒され敦賀さんの髪が私の額にかかるほど近くで見つめられる。  
深い瞳…外の闇よりもっと深くて吸い込まれそうになる。  
 
エンジンを切ると外の灯りも少し離れたところにある街灯と、流れる高速道路のヘッドライトの灯りだけ。  
敦賀さんの顔もはっきりと見えない。  
なのに、敦賀さん目が、じっと私の目を見てるのがわかる……  
 
車の通り過ぎる音の間に、遠く波の音が聞こえる。  
 
息が苦しい。近くにいるだけで、こんなにも…  
心臓の音が耳の中で大きくなったり小さくなったりする。  
 
たまらなくなって自分から敦賀さんの唇を求める。  
舌と舌をからめて、奥に奥に求めていく。  
 
体中で敦賀さんを感じたい。  
抱きしめあって口づけるだけでこんなにも満たされる。  
 
「…ん………」  
 
少しだけもれた敦賀さんの声が甘い。  
もっと聞きたい………  
もっと……もっと…………  
 
 
「…ん………う…つ…るがさ…………」  
 
どうしよう。  
敦賀さん…私を軽蔑するだろうか…………  
 
 
「………ん?……」  
 
お願い  
 
嫌いになりませんように………  
 
 
 
 
 
「………私…に………させて下さい………」  
 
え?  
 
一瞬何を言ったのかわからなかった。  
唇を離して彼女の顔を見つめる。  
かすかにヘッドライトの明かりがもれて見えた彼女は  
ほおを染めて潤んだ目で見上げていたように見えた。  
 
「…な…に?」  
 
「…………………私に………敦賀さんの…………させて下さい………」  
消え入りそうに小さい声で彼女が囁いた。  
 
………………って……………  
 
ぐっと俺の胸を押し返す。  
されるがままに彼女から引き剥がされ、そのまま運転席のシートに押し倒された。  
彼女が上からのしかかる。  
 
………!…  
 
上からそうっと降ってきた彼女の唇をむさぼろうとして髪に触れようとした時  
 
「………お願いです………私を…軽蔑しないで…くださ…い」  
 
そう彼女が囁く。  
 
髪に触れようとした手をとめて、そのままに彼女を見つめていると  
彼女は俺のシャツのボタンを順にはずしながら  
首に胸に唇を這わせていく。  
 
舌を這わせる。  
 
唇から小さな舌をのぞかせながらふいに潤んだ目で俺を見上げた。  
 
ぞくっ…  
 
いつもの彼女とは違う…すごく色っぽい。  
思わず抱き寄せようと手をのばすと、その俺の手をつかまえて指を口の中に入れゆっくりなめまわす。  
 
「…!」  
背中に何かが駆け上がる。  
ぶるっと身体が震えた。  
 
手のひらに唇を這わせながら  
 
「…………させて…」  
 
ため息のような声。  
 
 
そのままボタンをはずしつづけ、全部はずし終わると、彼女の舌は下腹部にまで到達する。  
 
 
 
………まさか………………彼女は………  
 
 
 
手がベルトにかかる。  
もどかしげにはずしにかかる。  
ジーンズの上からそうっとほおずりされて彼女が何を求めているのか、確信した。  
 
うまくはずれない彼女を押さえて、自分でベルトをはずし、ジッパーを下げると  
下着の上から口付けて来る。  
 
ビクン  
 
その刺激で俺のモノはますます高ぶる。  
 
彼女がそんなことをするとは思わなかった。  
いや、もちろんあの男と経験があるかもしれないが…  
 
そうっと彼女が触ってくると、思わずぶるっと身震いしてしまった。  
 
ほおずりする…そして………  
 
小さな舌がゆっくり這い出した時、小さくうめき声がもれてしまった。  
 
「……っう…」  
 
小さく敦賀さんが呻く。  
私の手の中でまた少し大きくなったよう…  
 
愛おしげにそれを手で包み、ゆっくりと横からなめる。  
 
ピチャピチャ…ピチャ…  
ゆっくり舌を巻き付けるように愛撫する。  
 
「…ん………っ…う」  
 
敦賀さんの息が荒くなる。嬉しい。感じてくれてる………  
少しくびれたところに舌を這わせ、唇で軽く食む  
 
ビク、と敦賀さんがうごめく………  
 
敦賀さんが小さく何かを言ったような気がした。身体を起こそうとしている…  
 
だめ。  
見ちゃ…だめ。私きっと…今、ものすごくいやらしい顔してる………  
 
こんな私…恥ずかしすぎるっ……  
 
「だめです………見ないで…見ないで下さい……っ…」  
 
あきらめたように敦賀さんのからだが倒れ、ほっとした。  
 
もっと…もっと気持ちよくなって下さい……  
 
口をできるだけ大きく開けてゆっくり敦賀さんを飲み込んでいく……  
 
「…っふっ…ん………」  
 
舌で愛撫しながら喉の奥まで入れ、少し吸い込むようにする。  
 
敦賀さんの手がたまらず私の頭を押さえる。  
 
見上げると苦しそうに眉を寄せている敦賀さんが見えた。  
感じてるの…?嬉しい………もっと…もっと感じて………  
 
 
………!………  
 
こんな……  
彼女の口の中で嬲られてるようだ。  
 
ビクビク、からだが反応する。  
絡み付く舌が少し熱くて、うごめくのが何か他の生き物にでも嬲られているようで………  
 
いつもは俺にされるがままになって乱れる彼女に  
今は俺の方が弄ばれてるみたいだ…  
 
一生懸命俺に奉仕してくれていることが  
 
とまどって  
驚いて  
 
…………嬉しくて  
 
意識が飛びそうになる。  
 
俺自身経験もある。  
でも今まで経験したどんな愛撫より、彼女の小さな口で愛されてるのが  
 
すごく………興奮する…………  
 
吸われるたびに放ちそうになる。  
こんな…気持ちよすぎて………  
急激に高まる射精感  
 
 
「…だ…駄目だ………っ…それ以上は………っう………」  
 
 
ああ………っ………出る……  
 
 
「……!やめ……だめだ…STOP!」  
 
無理矢理引き剥がす。  
びっくりして固まる彼女。  
 
かろうじてこらえた。  
 
肩を捕まれ、息が上がり紅潮してる彼女の顔が遠くのヘッドライトに照らされて見えた。  
 
 
「……い…けない子だ……。こん……な……だめだよ。俺だけ……」  
 
息がうまくできない。  
 
「君にも…君も…気持ちよくなってくれなきゃ…」  
 
「………敦賀さ………私いつも敦賀さんにすごく…………気持ちよくされてるんです………  
お願いです……もし…もし私にされるのがイヤじゃなかったら………」  
 
潤んだ目が俺を見つめる。  
 
小さな口からちろりと舌がのぞく  
 
 
 
「私の口の中で………いって下さい…………」  
 
 
そう言うと彼女はもう一度俺を含んだ。  
 
 
「………っ………う……っ…あ」  
 
敦賀さんが感じてくれてる。  
ショータローに仕込まれた口での奉仕。  
一生懸命覚えたけど、あんまり好きじゃなかった…  
 
でも敦賀さんが反応してくれるたびに、もっともっと気持ちよくなって欲しくて  
 
…………それに………耳をくすぐるような敦賀さんの声が………どんどん私を刺激してる………  
 
もう私のあそこはドロドロに溶けているようだ  
片手を自分のあそこにのばすと………もうツナギの上からでもわかるくらいぐっしょり濡れている………  
 
「ん…はああんっ……」  
ちょっと触っただけでもう、からだが跳ねそうになる。  
私……いやらしい子だ…………  
 
敦賀さんがたまらず私の頭を抱え込む。  
 
自分から喉の奥の方まで敦賀さんを吸い込んでいく…  
 
「…は……っ…………あ…っ」  
 
奥に、浅く、抽送するたびに、苦しげな息が上がる敦賀さん…  
 
 
ひときわ敦賀さんが大きく跳ねる  
そして…………  
 
 
「…キョー…コッ…………っう・あああっ…っ」  
 
ドクッドクッドク  
 
喉の奥に叩き付けられるように、敦賀さんが放った…  
 
 
コクン  
 
彼女の喉が鳴った時、俺は驚きと喜びで気が遠くなりかけた。  
彼女は俺の欲望の固まりを戸惑いもせず飲み干した。  
 
彼女を引き寄せ抱き締める。息の上がってる彼女は抱き締めると少し震えた。  
 
 
「君は………本当に君は……」  
 
なんていったらいいのかわからない。  
 
「嬉しい……です………気持ちよくなってくれたんですね…」  
 
欲しい。  
この子が欲しい。  
 
他の誰にも渡さない。  
 
社さんの言葉が蘇る。  
 
『そのうちどこかの馬の骨に横から攫っていかれるぞ』  
 
 
 
今までの恋人に対する気持ちとはぜんぜん違う。  
恋愛なんかじゃない  
 
ただこの気持ちが単なる独占欲であってもかまわない。  
 
彼女が他の誰に攫われるのも………イヤだ。  
 
理解不能な感情の中で、たった一つ見つけた明確な答え。  
 
…俺は彼女を離さない。…絶対に。  
 
 
「………俺の部屋に行こう…?」  
「え」  
 
「今度は俺が気持ちよくしてあげる。………このままじゃ…帰せないよ」  
 
かあああああっ…と彼女が真っ赤になるのがわかる。  
 
「や…そんな…そんなつもりじゃ……っ…私はただ…っ」  
 
 
彼女の背中をなぜる。ビクンっと身体が跳ねる。  
「ここで……してもいいんだけど…?」  
 
「え?い・いやそんな、こんなところじゃ…あのっ…誰に見られちゃうかわかんないしっ…」  
 
くす。  
何、じゃあ、さっき君がやってたのは見られてもいいことなのか?  
 
 
「わ・私あの…帰ります……」  
 
「だめ。」  
 
「え」  
 
 
すっと彼女の股間に手を伸べる。  
 
「はっっああんっ…」  
 
 
やっぱり。  
 
 
「こんな状態で帰せないよ。ね。おいで。朝まで時間はまだたっぷりある。  
…………手加減なしでいくから………天国まで連れてってあげる……」  
 
「…………」  
 
「それともここでいく?天国に。」  
 
 
「い・いいいいいいきます!…あ、いえ、違います!!あの………お部屋に………」  
 
「OK」  
 
 
軽く口付けるとマンションに向けて車を走らす。  
 
真っ赤になったままうつむいてる彼女を、もう一度心ゆくまで抱くことができる。  
 
誰にも渡さない。  
誰にも触らせない。  
 
どこまでも勝手な男だと自嘲してしまう。  
 
他の男じゃものたらないくらいの夜を彼女にあげよう。  
離れられなくなるくらい…一つに溶け合おう。  
 
 
そうして朝がこなければいいのに。  
 
 
 
 
FINE  
 
 

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