ダークムーンがクランクアップを迎えて一ヶ月。
LMEのエントランスホールで
久しぶりにあの人の姿を見掛けた。
「あぁっ!キョーコちゃん!キョーコちゃんだよね!?」
女子学生のようにキャピキャピと駆け寄ってくる社さん。
……と、その隣の敦賀さん。
「あ……、こんにちは。」
「やぁ。久しぶり。」
ダークムーンが終わってから一緒の仕事をする機会もなくて
本当に久しぶりだったから少し緊張してしまう。
「キョーコちゃんっ、今日はどうしたの?ラブミー部の仕事!?」
「あ、いえ。今日はこれから撮影で……」
「へぇっ、何やるのドラマ!?バラエティー?」
「いえ、あの、お恥ずかしいんですけど。」
私はモジモジして仕事の内容を告げた。
「……えっ!?お酒のキャンペーンガール!?」
「……らしいです。」
「らしいって……よく酒屋にビールのポスター貼ってあるよね!?
アレって水着になるんじゃないの!?」
「はぁ……。クライアントからはそう聞いてます。」
「ええー!水着!?蓮っ、キョーコちゃんが
水着になるんだって!」
「へぇ……それは……。暑くもないのに頑張るんだね………。
風邪を引かないように、せいぜい気を付けるんだね。」
この時一瞬、敦賀さんの周りの温度が下がった気がするのは
………気のせい?
「れ〜ん〜?いつまでもヘソ曲げてんなよ。」
車での移動中、社さんが俺の機嫌をうかがってくる。
「何のことですか?俺デベソじゃないですから。
曲がりませんね。」
「………そりゃあさぁ、好きな子が大衆の面前で
肌を晒すなんて、誰だって嫌だと思うよ。」
「………。」
「だけどこれは仕事なんだから。
キョーコちゃんはタレントさんなんだし、
今回のことが無くてもそのうち
グラビアの話も来てただろうし。」
「わかってますよ。そのくらい。」
――だけど、どうしようもなくイライラするんだ。
彼女の体を見たカメラマンの目を潰してやりたい。
「それにしてもキョーコちゃん、色白だし若いし
きっとお肌とかスベスベなんだろうな〜。
お酒飲んだらさー、体がピンク色に上気しちゃったりして」
「………社さん。あなたは俺をなぐさめたいんですか。
からかいたいんですか。」
「んーー。どっちも?」
まったく……この人は…………………
………ん?
「ちょっと……おかしくないですか?」
「え?何が?」
「普通お酒のCMって、未成年を起用しますか?
ただでさえ最上さんは高校生なのに……」
「……あっ」
俺がその異常に気付いたのは、
最上さんと別れてすでに二時間がたった後だった。
「えっと、ここでいいのよね?」
クライアントから指定された撮影場所は
ごく普通のマンションのように見えた。
間違ったのかしら?
だけどあんまり有名な会社じゃないみたいだし
スタジオを押さえられなかったのかもしれない。
そう思いながらエレベーターに乗り込む。
着いた所はやっぱり普通のマンションの一室で
少し緊張しながらインターホンを鳴らした。
「あ、京子さん。お待ちしてました。」
中から出てきたのは先日会ったばかりのクライアントで
私は一安心して招かれるまま部屋に入った。
中にはごく少数のスタッフと
撮影用の機材があるだけ。
「あ……の、スタッフってこれだけなんですか?」
見渡す限りでは、クライアントも含めてたったの三人。
「そうです。
事前にお伝えした通り今日は水着の撮影なので
スタッフはカメラマンと助手だけです。」
私に気を遣ってくれているんだ。
「じゃあ早速ですけど、衣装に着替えてきてください。」
カメラマンに水着を渡され、
言われるがまま別室へと向かった。
『最上さんの今日の現場?
えーと、どこだっけ。ちょっと待ってて。』
一抹の不安を感じた俺は、
事務所の椹さんに電話を入れた。
『えーと、ああコレね。最上さんが
自分で取ってきた仕事だよ。』
「自分で…?」
『そうそう。なんでもクライアントから直接交渉されたらしい。』
「事務所を通さず、ですか?」
『最上さんはキュララのオーディションと言い
(ニワトリのレギュラーと言い)
自分で仕事を決めてきちゃうことが多くてなぁ。』
「……で、今回のクライアントは!?」
『えーと、AVカンパニー?聞いたことない会社だなぁ。
所在地は南青山………』
嫌な予感がする。
俺はハンドルを握り、急いで車を引き返した。
「わー!凄くいいね京子ちゃん!似合う!」
「そ……そうですか……?」
渡された衣装は、ビキニというよりただのヒモで
着てみるとギリギリ乳輪が隠れるくらいの
わずかな布が付いているだけだった。
「最近はこのくらい小さいのが流行ってるんだよー。」
「そ……、そうなんですか。」
最近の若い娘さんはなんてハレンチなのかしら。
「ごめんね、まだちょっと準備が終わらないから
これでも飲んで待っててくれる?」
そう言ってカメラマンさんに渡されたのは
紙コップに入ったピンクのジュース。
甘くて口当たりがいいから、これならいくらでも飲めちゃいそう。
それから30分たったけど、まだ準備が終わらないみたい。
「京子さん、お待たせしてごめんなさい。もう一杯どうぞ?」
撮影アシスタントが気を遣って
コップにジュースを注いでくれる。
「ありがとうございます。」
そのジュースを二杯、三杯と飲み干した頃、
………あれ、変だな。なんだか体が熱くなってきた。
ライトのせいかな?
「京子ちゃーん!ごめんねお待たせー!
撮影入りまーす!スタンバイお願いします!」
ようやくカメラの前に出たとき、
私の足はフラフラしていて、とても立っていられる状態じゃなかった。
「あれ?どうしたの京子ちゃん。
ちゃんと立ってくれなきゃ困るよ。」
「すみませ……」
だけど、体に力が入らない。
ペタっと床に座りこんだまま、身動きできない。
「まぁいいや。とりあえずそのまま何枚か撮るねー」
バシャッバシャッと響くシャッターの音。
「いいね、その表情色っぽいねー」
目がトロンとして、口が半開きになってしまう。
「じゃあ次はちょっとだけ水着の肩ヒモを落としてくれる?」
「……ふぇ?」
「自分じゃできない?」
カメラマンが指示を出すと、
助手の男が背後から近付き、私の肩ヒモを下げた。
「やっ」
支えを失った布は、意図も簡単に
私の胸からずり落ちた。
「や……やだぁっ」
両手で隠そうとすると、
助手が私をバンザイさせた状態で拘束する。
降り注ぐフラッシュの嵐。
やだ……恥ずかしい……!
見ないで……!
「京子さんの乳首ピンクで綺麗ですねー。」
クライアントも、カメラマンの横で一緒になって笑ってる。
誰か助けて……!
「京子ちゃん、乳首は立ってる方が写真映えするから
ちょっと触るねー」
カメラマンが私に近付き、乳首をギュッと摘む。
「んっ!!」
引っ張られると痛い。けど痛いくらいが丁度良かった。
さっきからうずいてうずいて、
どうしようもなくなっていたから。
「あー、カチカチに勃起してきた。」
カメラマンが嬉しそうに言う。
「こっちはどうですかね?」
クライアントが私の膝を持ち開脚させ
布ごしから蕾に触れる。
「あぁ、こっちも勃起してますね。」
クリトリスをわざと爪で弾く。
その度に私の口から声が漏れる。
腕を拘束されて、胸を遊ばれ、クリトリスを刺激され
三人の男の手でめちゃくちゃにされている。
「ふぁぁっ、お願い、やめてぇっ」
「ダメですよ京子さん、まだ撮影は終わってませんよ。」
そう言ってクライアントは下の水着もずり下げた。
男たちの前で、私の一番恥ずかしい部分が露になった。
「うわぁ、すごいグチュグチュですね。
なんでも簡単に入っちゃいそうだな。」
クライアントの男は
黒いチューブのようなものを取り出し私の膣に添えた。
「いやっ、何するの!」
「これですか?これは病院で使われてる胃カメラです。
あっちのモニターに京子さんの中が映りますよ。」
ズプズプと男が管を挿入する。
「こっちも綺麗なピンクですね。
まだあんまり使い込まれてない色だ。」
モニターを確認し、男は喜々としてカメラを深く挿入していく。
やだ……この人たち狂ってる!
助けて……誰か……敦賀さん!
バンッ!!!
マンションのドアを蹴破り、
俺は社さんと共に室内に入り込んだ。
「つ……敦賀蓮!?どうしてここに!?」
一目見ただけでわかる、そのあまりにも異様な光景。
「敦賀さん!?」
男たちが彼女から離れて
その泣き顔が見えた途端
俺の中で何かが音を立てて切れた。
「!!だめ!敦賀さん!!」
バキッ!!
気が付くと、俺は男たちに殴りかかっていた。
「キャアアアア!!ダメ、やめてぇぇ!!」
意識のずっと向こう側で、彼女の叫び声が聞こえる。
「……ん、れん、蓮!!!やめろ!!」
後ろから社さんに押さえられて、ようやく我に還った。
「う…っ…ひっく……」
泣きじゃくる最上さん。
「キョーコちゃん、大丈夫!?」
社さんが自らのジャケットを彼女の肩に掛ける。
ふと、足元を伝うコードに目をやった。
「キョーコちゃん、なに……?これ……」
彼女の半身に繋がれた管。
それを目で辿って初めて、
俺たちはモニターの存在に気付いた。
「蓮……」
社さんが心痛な面持ちで俺を見上げる。
俺は最上さんの前にしゃがみこみ、
精一杯作った顔で笑いかけた。
「最上さん……抜くよ?」
彼女の中に埋め込まれた管に手をやる。
ズルっという音を立て引き抜くと、
彼女の全身がビクンと跳ねた。
意識を取り戻した男たちが、勢いよく部屋を出ていく。
「蓮!俺はヤツらを追うから!キョーコちゃんを頼む!」
そのあとを追って、社さんも部屋を飛び出した。
こんな状態の最上さんと
どう接すればいいのかわからない。
彼女の方も、ただ泣きじゃくるばかり。
掛ける言葉も見付からず
俺は彼女の体を抱き寄せた。
小さい肩。細い腕。
この体をヤツらが触ったのかと思うと
嫉妬で気が狂いそうになる。
と、彼女が俺の服の袖をぎゅっと摘んだ。
「敦賀さん……お願いがあります……」
「え?何?なんでも言って!」
彼女が救われるなら
俺はどんな要求も受け入れるつもりだった。
だから、
「私を……今すぐ抱いてください……」
この言葉に、俺は驚きを隠せなかった。
「どう……して、最上さん……」
「このままアイツらにされっぱなしじゃ嫌なんです!
それに、さっきピンクのジュースを飲まされて、
それから体がすごく熱くて………。」
媚薬、か……?
「でも、ダメだ。
こんな状態の君にそんなことできない。
後できっと後悔するぞ。」
「後悔なんてしません!
こんな状態だから敦賀さんにして欲しいんです!
お願い……でないと私、死んでしまいます……。」
自分でも、なんて恥ずかしいことを
言ってるんだろうって思う。
けど、欲しくて欲しくて堪らない。
敦賀さんのモノで私の中をめちゃくちゃに掻き乱してほしい。
奥まで突いて、壊れるくらいの刺激が欲しいの。
「入れるよ……」
決心したように、敦賀さんは私の両足を持ち上げて
ゆっくりと楔を挿入する。
「ぁぁぁああんっ!!」
すご……大きい。
ぐちょぐちょという音が耳に響く。
ゆっくりと、いたわるようなストローク。
でも違うの、そうじゃないの。
「優しくしないで……!壊してくれて構わないから!」
その言葉に、いつもの敦賀さんの優しい雰囲気が消えた。
まるで私を憎むかのように、激しく己を打ち付けてくる。
「はぁ……っ!んあぁぁっ!」
すごい。奥をえぐられるみたい。
私も腰を振って、必死に敦賀さんの動きに合わせる。
でも敦賀さん、すごく速くて力強い。
本当に壊されてしまいそう。
「あああああああ!!!壊れちゃう、壊れちゃうよぉ!!」
敦賀さんはより一層ギアを上げる。
「君が望んだことだろう?」
「そうだけど……でも……っ!んぁあっっ、イッちゃう!イッちゃうーー!!」
頭の中が真っ白になって
それからギューっと背中がのけぞった。
「はい、次は後ろ。」
休む間もなく敦賀さんは私を四つん這いにさせ
後ろから犯す。
「イッた後だから中が痙攣してるね……。」
冷静な声で突き上げる。
私はあまりの激しさに
両腕で上半身を支えることすらままならない。
「ゃああああああ!!」
またギアが一段上がった。
なんて人!
「敦賀さん、私、また、また……っ、あああああああああ!!!」
簡単に崩れ落ちる。
なおも敦賀さんは攻めをやめない。
結局私が失神するまで、
この日は十数回イカされた。
ぐったりとうなだれるような彼女の寝顔を見て
さすがにやりすぎたかと後悔する。
男たちへの嫉妬と、守れなかった苛立ちを
すべて君にぶつけてしまった。
それから……
『優しくしないで』
君のこの一言が……。
どんなに優しくしても足りないくらい、
そのくらい君が大切なのに。
どうしたらわかってもらえる?
俺の気持ちも知らないで……
「ひどいな、君は……」
一人大きくため息をつく。
さぁとりあえず、彼女が目覚めてからのことを考えよう。
今度こそ俺は、君を守る糧になりたい。