蓮とキョーコが初めて結ばれてから3週間、ずっと二人は会えずにいた。
二人に問題があったわけではなく、蓮が海外で長期ロケに出かけている為である。
長い間会えない時間を何とか乗り越えられるようにと、お互いが自然に求めあって
結ばれたあの夜――――
やっと全てを触れられた彼女が今は夢のようで、その感触を忘れそうで蓮はだんだ
んと心が渇くのを感じていた。
初めての彼女を傷つけないようにと、なるべく無理をさせないように優しく身体を
重ねあった。本当は自分はもっと彼女を渇望していたが、自分の欲望のままに彼女
を抱いてしまったら、壊してしまうかもしれない――――
と、必死で自分の欲望を抑え込んだ。
そんな自分の燻った想いがどんどんと膨れ上がり
――――早く会って触れたい・・・・・・――――
時差の関係で電話をするのを躊躇われ、今の二人のコミュニケーションは専らメー
ルのみであった。声さえも聞けないこの状況が、益々蓮の心を締め付ける。
全く違う人間が同じ気持ちを持つのは難しい話だが、彼女も自分のように自分を想っ
てくれていればいいと願う。
例え自分の半分でもいいから。
そして1週間程の時が過ぎ、やっと蓮は帰国の途に着くことになった。
飛行機に乗る前に久しぶりにキョーコに電話をかけた。
「朝早くにご免ね」
『もう起きてましたから全然大丈夫です!それに・・・その・・・久しぶりに声が聞けて
すごく嬉しいですし・・・』
そう言った彼女の顔はきっと真っ赤だろうと、想像する蓮の顔は穏やかであった。
「今から飛行機に乗って帰るから。予定通りいけば今日の夜には日本だよ」
『仕事も予定通りですか?』
「ああ。時差ぼけを考慮して予定通り明日は夜からの仕事だけだよ。だから昼間は
ゆっくり出来る予定。キョーコは普通に学校だよね。何時頃来れそう?」
『夕方になっちゃうと思いますけど、急いでマンションに行きますね!』
本当は学校なんて行かずに朝から自分の所へ来て欲しいと言いたいところだけど、
最近仕事が忙しくて中々学業に励めないキョーコにそんな自分の欲求をぶつけるこ
とは出来ない。
「会えるのを楽しみにしてるよ」
『私もです』
そして電話を切った。久しぶりのキョーコの声が、蓮の心を潤わせ、愛しそうに何
時までも電話を見つめていた。
蓮が日本に着いたのは、10時過ぎであった。
このまま真っ直ぐ帰ってもマンションに着くのは日付が変わる頃だろうか。
普通は直ぐにでもベッドで横になりところだが、蓮は何よりもキョーコに会いたかっ
た。それが自分にとって何よりも癒しになるから。
しかし、こんな時間にキョーコに会いに行けるはずもなく、とりあず「今、日本に
着いたよ」とメールだけ送り、社と別れてタクシーでマンションへと向かった。
「ありがとうございます」
そう言いながらタクシーから降りて、久しぶりの自分のマンションを見上げる。
時計を見れば予想通り日付は変わっていた。
ふうっと溜息をついてマンションのエントランスへ向かおうとした時、別のタクシ
ーが1台自分の目の前に止まる。
そして、そのタクシーから降りた人物を見て蓮は目を見開いた。
にわかに自分の見たものが信じられない。
タクシーが去っても棒立ちになってる蓮を見て、彼の前に現れた人物は戸惑いながら
話しかけた。
「あ、あのっ。メール見て・・・。敦賀さんが日本に・・・東京に居るって思ったら・・・そ
の・・・///」
俯きながら顔を赤くして、自分の心をこんなにも熱くさせる、今目の前にいる人物は、
ずっと会いたいと願っていたキョーコだった。
蓮はやっとそれを理解して、理解した途端にもう自分の気持ちを抑えることは出来な
かった。
強くキョーコの手首を掴んで、引っ張るようにエレベーターへと真っ直ぐ向かう。
エレベーターに乗り込んで、扉が閉まる前にもう強引に彼女の唇を塞いでいた。
エレベーターが上昇するとともに深くなる口付け。
キョーコも最初はいきなりで戸惑っていたが、彼から与えられる熱情に必死で応えよ
うとする。
チンとエレベーターが目的階層に着いたことを知らせると、一旦唇を離して、蓮はま
た引っ張るようにキョーコの手首を掴んで自分の部屋へと向かう。
そしてまたも部屋の扉が閉まる前にキスを再開する。
玄関で、靴も脱がずに、ただ貪るように口付けを繰り返す。
蓮の腕はしっかりとキョーコの腰を抱き、キョーコもしがみつくように蓮の首に自分
の腕を絡ませる。
漸く唇が離れた時、キョーコは「ぷはぁっ」と空気を求めるように息を吸い込んだ。
それも束の間、すぐにまた唇を塞がれて、口内を貪られる。どんどんと送り込まれる
唾液を飲み込むのが追いつけなくなり、キョーコの口元から唾液が零れてしまう。そ
れに気付いて蓮は唇を離してその零れた唾液を手で拭った。
「はぁはぁ」
呼吸さえも奪うような激しい口付けに二人の息はすっかりあがっていた。
蓮は壁にキョーコを押し付けて、今度は首筋に唇を押し当てた。
「ちょっっ、つ、敦賀さんっ!?」
少し非難するような瞳を向けたキョーコに、蓮は少し理性を取り戻した。
「寝室いく?」
「・・・・・・はい・・・・・・でも・・・敦賀さん長時間のフライトで疲れてるんじゃ・・・」
「寝るよりもキョーコとこうするほうが何倍もの癒しだよ」
そう言いながら蓮はひょいっとキョーコを抱き上げて肩に担ぎ上げた。靴を脱いで玄
関からやっとあがり、キョーコの靴も脱がして後ろに放り投げる。そして向かうはも
ちろん寝室で。
大きなベッドの端にキョーコを座らせると、蓮は優しくキョーコの頬に触れた。
「すごく会いたかった・・・」
「はい、私もです。お帰りなさい」
自分の頬にある掌に自分の手を重ねてふわっと微笑んだ。その微笑に蓮も愛しそうに
微笑む。
そして先程とは違って優しいキスを落とす。
啄ばむようなキスを繰り返しながら、キョーコのブラウスのボタンを一つずつ外して
いく。
ブラウスを脱がして、片手でキョーコの手首を掴んで上に上げると、器用にキャミソ
ールを脱がす。次は自分のシャツのボタンを外そうとすると、キョーコの手が伸びて
きて、それを制した。そして代わりにキョーコがボタンに手をかけていく。
服を脱がせるなんて経験はないのであろう。キョーコは如何にも不器用な感じでボタ
ンを外していく。はっきり言って自分で脱いだ方が早いのだが、じれったい感もある
のだが、キョーコのこの行動に顔が緩まずにはいられない。
やっと蓮のシャツを脱がし終えると、シャツの下には何も着ていなかった為、蓮の逞
しい胸板に目のやり場に困ってキョーコは俯く。
そんな様子にクスッと笑いながら、次は蓮がキョーコの腰に手を回し、スカートのホ
ックを外すと、軽く腰を抱き上げて脱がす。次は自分の番だと、キョーコは真っ赤に
なりながら蓮のズボンのベルトを外す。でも流石にズボンを脱がすのは恥ずかし過ぎ
るようで手が止まってしまう。
蓮はズボンは自分で脱いで、お互い下着だけになると、キョーコをベッドにそっと横
たえた。
覆いかぶさるようにして、またキスを繰り返す。唇だけでなく、瞼や頬などにキスを
落として、首筋へと唇を這わしていく。胸元まで移動した時に、ブラに手をかけた。
「あ、あのっ・・・で、電気を・・・」
「キョーコの全てを見させて」
「でっでもっ・・・は、恥ずかしいです・・・」
瞳を潤ませて懇願するキョーコの言葉を無視して、ブラをたくし上げて赤い部分に吸
い付く。
「んんっ!」
片方の胸を激しく愛撫され、もう片方は赤い部分を攻められる。舌で転がすように舐
められ、たまに尼噛みされ、吸い付かれ、煽られるように快楽を与えられて頭が真っ
白になる。キョーコの口からは嬌声があがるだけで拒否の言葉を発する余裕なんて無
くなっていた。
胸を攻めていた唇を這わせながら下降させていく。
おへそ辺りをなぞった時に、くすぐったいのか腰を浮かせるように身体を捻った。
その様子をかわいいと思いながら、蓮はキョーコの最後の下着に手をかける。
そっと片足を抱き上げて、ゆっくりと脱がしていく。脱がしていくと同時に足に唇を
這わして。
つま先まで這わせると、チュッと音を立てるように指先を舐めた。
「やんっ」
ビクンっと身体を揺らすキョーコが可愛くて仕方がない。
蓮は片方の足にも同じような行為を繰り返す。そして両肘に手を置いてゆっくりと押
し開いた。
「やっ!・・・つ、敦賀さんっっ」
拒否の言葉を気にもせず、蓮はキョーコの秘部へと顔を移動させる。そこはもうすっ
かり蜜で溢れていた。その蜜を唇で吸い上げる。
「――――!!やだっ・・・つ、敦賀さんっっ・・・そ、そんなことっ・・・」
自分のそんな場所に顔を埋められると思っていなかったキョーコはただ狼狽するばか
り。しかしその瞬間に与えられた快感に為す術がなくなってしまう。
「はっ・・・はっ・・・ああっ!」
もう唇で触れていない場所などないのではないか――――そう思わせるくらいに蓮は
唇でキョーコの身体を確かめていく。
「あっ、んんっ・・・あんっ・・・ああっ・・・」
「キョーコはここら辺が感じるみたいだね」
一際高く啼いたキョーコの場所を強く擦るように指を動かす。
「あ・・・やっ・・・ダメっっ・・・」
「ホントに嫌なら止めるけど・・・」
瞳に涙をいっぱいためてただ首を横に振る。その様子に蓮はクスッと笑い、自分の最
後の下着を脱ぎ捨てて、避妊具を付ける。
「・・・キョーコ・・・」
頭がクラクラするような甘い声で自分の名前を呼ばれて、堪らなくなって自分から蓮
にキスをした。
そのキスはまだぎこちないけれど、蓮には嬉しくて仕方がない。
「――――――んっ!!」
蓮はキョーコの身体へゆっくりと侵入していく。初めてではないとはいえ、まだ2回
目の行為、キョーコの眉根が寄って少し苦痛の表情を浮かばせた。
「まだ、痛い?」
「だ、だいじょう…ぶ…です…」
それ程の苦痛な表情ではないけれど、息は荒い。それを気遣いながら蓮はゆっくりと
侵入して自身を全て埋め込んだ。
「はぁ・・・はぁ・・・」
キョーコの頬はすっかりと上気してピンク色に染まっている。じんわりとかいた汗の
せいで髪が顔の所々に張り付き、それがより一層扇情的に見えて蓮の心を煽る。
「キョーコ、ごめん」
「えっ?」
ふいに蓮が発した言葉にキョーコは上擦った声をあげた。
「今日は手加減出来ない」
「ええっ??」
焦った顔をするキョーコをお構いなしに蓮は激しく打ちつけた。
「ああっ!」
ギリギリまで引き抜いて勢い良く打ちつける。それを何度か繰り返し、キョーコを追
い立てていく。
「ひゃんっ!・・・あぁっ・・・あんっっ・・・ああっ」
蓮の背中に回していたキョーコの手に力が入り、爪が食い込んだ。その刺激に蓮は
「くっ」と呻き声を上げるが行為の激しさは衰えることを知らない。
身体を裂かれるような感触に、苦しくもそれでいて頭の芯まで痺れるこの感覚に、
キョーコは何度も意識が飛びそうになる。
「ああっ・・・わ、わたっしっ・・・もう・・・」
途切れ途切れにそう言葉を漏らすキョーコに
「まだまだ足りない・・・・・」
そう蓮は言い、終わらせること許さない。
何度も何度も貫かれ、意識が飛んでもすぐに再開され、蓮が満足するまでずっと身体
を重ねあった。
疲労を浮かばせながら寝ているキョーコの髪を、そっと優しく掻き上げる。
「優しくできなくて・・・ごめん」
そんな言葉を発しても、疲れるように眠る彼女に届くことはないと分かってはいるけ
れど、蓮はそう言わずにはいられなかった。
身体を拭いて、風邪をひかないようにとシャツだけ身に纏わせた。あまりの疲労感な
のか、キョーコの目は堅く閉じられたままで起きる気配はない。
自分はシャツと下着だけをつけてキョーコの横に横たわり、そっと布団をかぶった。
彼女に無理をさせてしまった罪悪感はあるものの、確かに自分の心は満たされてい
て――――。
こんな風に満たされた気持ちで眠るのは何時以来か。彼女と別れた日以来であろう。
自分の安らげる場所は、彼女の隣なのだと、改めて思う蓮であった。