―――――敦賀さんにお願いがあって来ました
深夜2時、彼女は俺の前でそう言った。
礼節を重んじる彼女がこんな時間に来るのだ、よっぽど切羽詰った状況に違いない。
しかし、これはまるで――――夜這いみたいじゃないか。
逸る気持ちを抑えて、紳士の仮面をかぶる。
この子が他の男にもこんなことをするようになる前に、一度お灸を据えておかねばなるまい。
「しかし、今日は時間も遅いよ?」
「はい・・・申し訳ないんですが、明日も撮影があるので早めにお願いしたくて・・・」
「そう、俺としては深夜に女の子を家に上げるのはどうかと思うんだけど」
「・・・」
彼女の表情が暗くなる。
――――これは罠だ。
「もし、どうしても見てほしいなら帰宅させるのは明朝になるからね?
深夜に女の子を帰宅させるなんて危ないからね」
「・・・はい!お願いします!」
てっきり断わられると思っていたのだろう。
彼女は俺が了承したことに驚き、表情を明るくした。
俺は車を停め、彼女を連れて自宅の扉をくぐる。
彼女は鍵を掛けたことにも気づかない。
なんて無防備なんだろうか。
信頼されていることは嬉しいが、男としては複雑である。
「実は・・・ポーズのとり方を悩んでまして、一度敦賀さんに見てもらいたいと思って」
夜分にすみません、とお辞儀をしながら俺を上目遣いで覗き込む。
話を聞くとどうやら監督と彼女の間にイメージの齟齬があるらしい。
まるで昔の誰かみたいだ、と少し自虐的な気持ちになったがさらりと気持ちを切り替えた。
「じゃあ、そこで演ってみて」
ソファー脇に立たせて、彼女の立ち振る舞いを観察する。
彼女は少し躊躇いながらも指定された場所で彼女の思うポーズをとった。
「ナツは普通の女子高生なんだよね?」
「はい・・・でもボス的な立ち位置なので、何か人をひきつけるようなものがあると思うんです
…ただ、恐ろしいだけじゃないような。」
俺は彼女の背後に立って、腰に手を当てて少し彼女の体を動かす。
「こうすると偉そうに見えるよね」
「そうですね」
「けど、こうすると少し変わるだろ?」
「はい」
「つまり、立ち位置も重要だけど、カメラからの見え方って言うのもあると思う」
「はい」
俺と彼女の身長差は結構なものだ。
上から見下ろすと服の中が見えてしまう。
今日は白の下着らしい。
しかし、無防備すぎる彼女に次第に腹が立ってくる。
俺はこんなに我慢しているのに、この子はいつもこうだ。
―――少しお仕置きしてしまおう。
片手はそのまま彼女の腰に、もう一方はスカートの中へ手を入れる。
「つ…つるがさん?」
彼女の俺を呼ぶ声が少し上ずる。
下着越しになめらかな双丘を揉みしだく。
「君はまったくもって危機管理がなってない」
「・・・?」
「こんな時間に来るなんてどうかしてる。…今日は逃がさないから」
「!」
そう言って腰を押さえていた手を取り払って、柔らかな胸を背後から愉しむ。
「ふぁ・・あ・・やっ」
少し小ぶりだが、控えめな彼女らしくて愛らしい。
「な・・・ん、でっ」
ブラの上から薄紅の蕾が自己主張してくる――彼女自身は気づいていないが。
やわやわと触るだけで決して無理強いではないのに振り払うことができないのは何故だろうか。
そのまま上着のボタンをはずし、ホックすらもはずしてしまう。
「や・・こんな・・・」
次第にキョーコの体から力が抜けていく。
「…っ!やあっ!」
蓮の手は胸から下り、スカートへ、さらに下着の中へと潜っていくとキョーコは拒絶の悲鳴を上げた。
そこは薄っすらと水気を帯びており、彼女がそれまでの愛撫で感じていることを証明していた。
軽く耳朶を噛みながら耳元で囁くと、身を捩じらせて逃げようとする。
「後ろからされて感じてたの?」
「ふ・・ちがっ!」
「じゃあ、どうしてこんなに濡れてるのかな?」
「・・・っ」
蓮の指はゆっくりと泉の周りを撫でていく。
強くもなく、しかし弱くもなく。
曖昧な刺激がキョーコの熱を高ぶらせていくが、一向に差し入れる様子はない。
「や、、なん、か、へん、、、」
「どうしたの?言ってごらん?」
蕾を弄られ、涙目になりながらも高ぶる感覚に抗おうとする。
「・・・言え、ま、せん…」
「そっか、じゃあこのまま続けるよ」
言いながら蓮はキョーコの膨らんだ肉芽を弾いた。
「やぁんっ」
膝が震え、まっすぐ立つことすら困難になってしまったキョーコは蓮にしがみつかざるを得ない。
二人の体が密着する。汗ばんだワイシャツすら今はもどかしい。
(心臓の音が聞こえちゃう・・・)
キョーコはきゅっと目を閉じ、この慣れない行為を遮断しようとしたが、それすらも許されない。
目を閉じるということは、この行為を容認することにも取れるからだ。
蓮はそれすらも愉しむようにキョーコを見つめていた。
は、と2人の視線が交錯する。
(げ・・・帝王モードっ)
これが冗談ならいい、と思っていた。
いつものように「冗談だよ」って言っていつもの紳士の敦賀さんに戻ったならどんなによかっただろうか。
今の彼の目は獲物をいたぶる肉食獣だ。
「さっきも言ったけど、今日は帰さないから覚悟しておいてね」
まだ、夜は始まったばかりだ―――――――