ピピピ…。甲高い電子音が広い寝室に響く。
俺は携帯電話のアラームを止め、むくりと起き上がった。
普段の寝起きはいい方なのだが、今朝は頭が重くすっきりとしない。
俺はいつもの習慣でシャワーを浴びようと、クローゼットから着替えを掴み出すと
ぼーっとした頭のまま浴室へと足を向けた。
ぺたぺたと裸足で歩きながら何か大切な事を忘れている気がして、
ぼんやりと考えている背後で、今しがた通り過ぎたゲストルームの扉が開き
少女が勢いよく飛び出してきた。
「敦賀さん!おはようございます!」
「!」
しまった。そうだ、朝まで最上さんとモデルウォークの特訓をして、そのまま
彼女を泊めたんだった。なんでそんな大事なことを忘れてたんだ俺は。
すっかり彼女のことを失念していた俺は振り返った姿勢のまま固まってしまい、
手にしていた着替えを落としてしまった。
最上さんは、上半身裸にパジャマのズボンを履いただけの俺の姿に
薄く頬を染めて視線を逸らしていたが、俺が物を落としたことに気付くと、
それを拾う為にしゃがみ込もうとする。
「い、いや、いいよ、自分で拾うから!」
慌てて制止の声をかけるが、しかし彼女はそのまま俺の着替えを拾おうとし、
しかし手に触れる寸前でそれが下着と気が付いたらしく手が止まった。
そうだよな、年頃の女の子が男物の下着なんて、とちらりと考えながら
この隙に自分で拾おうとしたが、彼女はそのまま着替えを拾い上げた。
そうか、彼女は旅館育ちだし、あの不破と同居してたんだから男物の下着にも
慣れてるのかとどこか遠い意識で考えながら、手を差し出そうとした、その時。
立ち上がる為に俺の方を振り仰いだ彼女の顔が見る見る内に真っ赤になり、
すっくと立ち上がったかと思うと手にしていた物を俺に投げつけるようにして
ゲストルームへ駆け込んでしまった。
「敦賀さんてば破廉恥です〜〜!!」という叫び声を残して。
急激なその反応の意味がわからず、?マークを浮かべながら自分の体を
見下ろして気が付いた。
テント状に膨らんだ、パジャマの股間に。
「いや、あの、これは男の生理現象で…。」
力なく呟く俺の言葉が彼女に届くわけもなく…。
どうやって言い繕おうかと言い訳を考えながら、俺はよろよろと
当初の目的地である浴室へと向かった───。