この子はホントに…もう…。
なんて無茶するんだ、まったく。
赤く腫れ上がったくるぶしを目の前にしながらため息が出た。
ダークムーンごっこ…につきあわせたのは俺なんだが、彼女の使命感は恐れ入る。
恐れ入ると言うか…
……………はぁ。
あのなりゆきで彼女がおとなしく引き下がるとは思ってなかったけど…
女の子がやると思わなかったよ…あんな悪質訪問販売員みたいなこと…
まったく……この子は…
嘉月として、美月としての言葉の応酬をしながら
痛々しい彼女の足につける薬をガーゼに出して
それをつけようと彼女の足をとった時
ドアの外で少し冷えた感触が手のひらに伝わってきて
滑らかな肌が吸いつくようで
思わず細い足首を撫でてしまった。
「…!?せ・先生?」
はっ…
………俺は…今、何をした????
「あ、や、ごめん…」
じゃない。何を謝ってるんだ俺は。
今俺は敦賀蓮じゃないんだ。嘉月…この子の先生なんだ。
そしてこの子も…彼女も美月。最上キョーコじゃないんだぞ。しっかりしろ!蓮!
「い・いや、本郷、薬つけるから、もう少し前に足を出してくれるか?」
「あ・は・はい…こう…ですか?」
さくり
と割れるように彼女の足が開いた瞬間に太ももの奥までちらりとのぞく。
思わず目をそむけた。胸がドクッと鳴る。
顔が思わず赤らむのがわかる。
だから何をやってるんだ俺は!
これじゃあ盛りのついた高校生だろ。
なるべく見上げないように彼女の白い足の傷を見る。
足首から滑らかな曲線を描く彼女の足が、妙に扇情的で、
自覚はしたくないが完全に欲情しているのがわかる。
気付かれないように
息を整えて、そうっと傷にガーゼをあてる…
「…!ひゃぅっ…」
ビクンと彼女の足が跳ねる。
しみるんだろうけど、俺はまったく別の想像をしてしまい、ますます自分で混乱してきていた。
ああ、頼む…頼むから美月…そんな声を出さないでくれ
理性が飛びそうになる…
「…ありがとう…先生…あの…具合はどうですか?風邪だって聞いて…」
美月は無邪気に笑いながら話し掛けてくる。
この子は教え子。この子は婚約者の親戚。そして…この子は絶対に好きになってはいけない子…
敦賀蓮としての俺にとっても
この子は………
喉がからからになってる。
彼女の問いに答えられない。
演技の練習だといったばかりなのに
…………嘉月
お前ならどうするんだ。
愛しい女を目の前にして
堪えられるのか?…この状況で
彼女の足首を支えながら
かすかに自分の手が震えてくるのがわかる……
……………………焦がれるほど欲しい………
このまま
力づくでも
自分のものにできたなら………
誰もいない。
誰も見ていない…………
誰も来やしない……ここには。
「?せんせ…?」
美月……お前を このまま……………
する…っ
彼女のひざの裏まで手を滑らす。
ビクンと彼女の身体が震える。
気付けば俺は彼女の足にくちづけをしていた………
「せんっ…せっ???……!…」
顔を真っ赤にして、何がおこったかわからない彼女。
理性と本能がせめぎあう。
でもどうしても唇が…彼女の足から離れない。
上に下に、夢中で這わせる。
「…やっ…は…ッ…せん……ッつ・敦賀…さっ…あんっ…」
どうしていいのかわからないように、彼女の身体がうごめく。
これは演技なのか、それとも本気なのか
彼女もわからずとまどっているようだが…俺も同じ。
いけない。
もうやめなきゃ。
もう終わらさなきゃ。
頭ではわかっていても…止まらない。
もう唇は彼女のひざのあたりにまできていて内股に這い出してゆく。
ダメだ…いけない…
この子はダメなんだ……!!!!
嘉月としての自分と、敦賀蓮としても気持ちが重なってくるのがわかる。
「や・あっ…んっ…あ・ああんっ…っ敦賀…さ…」
苦しまぎれで顔をあげた時、彼女の真っ赤になって感じてる顔が目に入った
ぱちん
何かがはじけたような音が聞こえた気がした。
長い夜がはじまった……音だったのかもしれない