「今度は梨園の御曹司だって?また雑誌に書かれてたけどどうなんだよ」  
開口一番、飛鷹は問い質した。  
「やーだ、チェック厳しいのね飛鷹くんたら。食事に誘われたのは本当だけど、まだ何もないわよ」  
 
ここは飛鷹の控え室。  
受験勉強を避けるため、エスカレーター制の私立に通う飛鷹だったが、あまりに成績が酷いと  
体裁が悪いと言うことで、よく教科書を持ち込んで勉強している。  
琴南奏江は、そんな飛鷹にときどき呼び出されている。  
数年前に撮ったドラマの競演以来懐かれて、奏江の方も、自分の兄弟達とは全く違う、  
大人に囲まれて育ってきた精神年齢の高い飛鷹といると無駄な気遣いをせずに済むので楽だった。  
 
「そんなことより、今日はドコみてほしいの?  
 最近難しい問題が増えたから、理系だと答えられないかもしれないわよ?」  
「今日は見なくて良いんだよっ。なんだよその脚。お前露出高すぎ。それで男引っかけるのかよ」  
「な、なによっ。関係ないじゃないっ。そういうコトに口出しされたくないわ」  
「関係なくないに決まってるだろっ。俺は奏江が――奏江は俺の言うこと聞いてればいいんだよ」  
「もー、ワガママね。飛鷹くん…やっぱりまだまだ子供だわ〜」  
 
ワガママ。図星をさされて頭に血が上る。  
「子供なんかじゃねーよっ!お前こそあいつらにどんな目でみられてんのかわかってないんだろ?!」  
「…なによ。社会経験よ?私だって本気じゃないわよ。  
 しょーもない男にひっかかるよりも、名門だったり、育ちが良かったり、  
 ちゃんとした相手の方が女の株が上がるんだから。」  
 
「じゃあっ!!俺で良いだろ?!芸能界では折り紙付きだ!」  
「お、俺って…」  
思わぬ言葉に、絶句してしまった。  
「俺だよ!奏江から見るとまだ子供かもしれねーけど!  
 ずっと好きだったのに、いろんなオトコと騒がれてばっかりで!  
 これ以上待ってたら誰かのモンになっちまうじゃねーか!!」  
「えっ……?ええっ?!」  
すっくと立ち上がり、奏江の横を通り過ぎると、後ろ手に扉の鍵をかけた。  
「邪魔が入ってほしくないからな」  
「邪魔って…なによ」  
質問には答えず、強い眼差しを向ける。  
 
「奏江はオレのこと、どう思ってるんだよ」  
「ひおうくんの――こと…?」  
  先輩?友達?同僚?弟のような?  
頭の中をぐるぐると言葉が空回りする。  
どの単語も適切でなく、何も告げることができなかった。  
 
「やっぱいい」  
言いよどむ奏江を制止する。  
「奏江がオレのことを嫌ってないのは知ってる。義理だけで構ってくれるタイプじゃないことも。」  
「……。」  
「オレって対象外?」  
奏江と変わらなくなった身長。やっとここまで追いついた。同じ高さの目線で、じっと覗き込む。  
奏江はやけにドギマギして、思わず赤くなった顔を逸らしてしまう。  
それだけで、劣勢がはっきりしてしまった。  
「急にそんなこと言われても…」  
  どうしよう。もっと強気にでれば良かった。私、飛鷹くんに押されてる。  
 
うろたえた奏江を見て、飛鷹は勝ち誇ったようにニヤリと笑った。  
 
「奏江はオレのこと好きだよ」  
頤に指をかける。  
「立場とか年とか考えすぎて、認めづらいだけだって。意地張るなよ。かわいー奴」  
飛鷹はゆっくりゆっくり顔を近づける。  
逃げようと思えばいつでも逃げられるのに、魅入られたように動けなかった。  
 
「オトナがすること、教えてよ」  
重ねられる唇。顎をかすめる、まだ髭も生えていないつるりとした素肌が心地良い。  
こんな少年の相手は初めてで、戸惑ってしまった。やんわりと押しつけられていた唇から、舌が顔を出す。  
ちろちろと、まるで口紅を舐めとるように、奏江の唇を這い回る。  
こそばゆくて、抗議しようと口を開いた。  
「こらっ…ひお…っ」  
飛鷹はすかさず吸い付いて、隙間から舌を侵入させると、綺麗に並んでいる小さな歯を  
一つ一つ愛おしむようにさぐってゆく。歯の裏側から上顎、そして舌に到達すると遠慮なく絡めた。  
 
「んっ…んん!」  
  子供のくせに、なんてキスするの?!  
  コイツ、慣れてるわ――信じられない。生意気。  
押しのけようと手を突っ張ったが、飛鷹はハナからキスだけでやめるつもりはなかったらしい。  
豊かに盛り上がった胸に手をやる。  
 
「奏江…お前の胸、でかいなあ」  
下から持ち上げると、確かな重量が手のひらの上で揺れる。包み込もうとしても手に余り、  
そっと掴むとぽよぽよと形を変えた。  
服地越しに爪で先端を軽くそろそろと引っ掻く。三度、四度と繰り返すうちに、隆起が伝わってきた。  
 
「やだ、ちょっと…!んんっ、やめなさいってばっ…」  
突起をキュッと摘むと、奏江は唇を噛み、仰け反って白い首を晒す。首に舌を這わせると、  
香水の匂いとは別に爽やかなシャンプーの香りがして、大人びて見える奏江が急にあどけなく感じられた。  
「巨乳女優とか言われたくないから、目立たない服着てんの?」  
「そんな頭カラッポな呼ばれ方、絶対にお断りだわ…」  
思春期の終わり頃から、めきめきとバストが成長した。もともと気を使っていたおかげで  
均整のとれたスタイルだったが、いまではアンバランスなほどに大きい。  
 
「他はこんなに細いのに、エロい身体」  
引き締まったウエストに片腕を絡みつける。スカートの裾から忍び込んだ手が、ストッキングの上から  
臀部を揉みしだいた。適度な肉付きが柔らかな弾力を返す。内腿のくぼみを指先でくすぐるように撫でると、  
ぴくりと震え、脱力して壁にもたれかかった。  
「んっ、だめ…こんなの…」  
「ほんとに?」  
さらに上へと指を這わせ、敏感な部分に押しつけると、熱気と湿り気が伝わってきた。  
「やぁっ、こんなとこで…」  
「誰も来ないよ」  
 
スリスリと撫で続ける。水分がじんわりと布を突き抜けてきそうだ。  
ショーツは陰唇の形に張り付いて、指を陰核に誘導する道であるかのようにくっきりと浮き出している。  
ガイドに従って往復し、時々核を押しつぶす。  
そうしながらも、カットソーをたくし上げ、ブラジャーを押し上げようとして、窮屈さに断念する。  
ホックを外すと、たわわなバストが弾け出た。その透明感のある肌はしっとり吸い付くようで、すべすべとなめらかだった。  
 
「うわぁ…すっげぇ胸…こんなキレイなの、見たこと無い」  
むっちりと豊満に突き出た胸の先端は先ほどの愛撫で桃色に硬く尖り、周りを一段階淡い円周がふち取っている。  
奏江が身動きをする度にぷるぷると扇情的に震え、飛鷹を誘う。吸い寄せられるように口に含んだ。舌先で転がす。  
「そこ、だめ…っ。やあっ、ああん!」  
「弱いんだ?ここ」  
 
ちゅくっ、ちゅっ、じゅるっ。  
唇で挟み、すする。夢中になって揉み、頬ずりし、吸う。赤い跡がいくつも残された。  
唾液でてらてらと卑猥に光り、上気した奏江の表情と相俟って、飛鷹のタガを完全に吹き飛ばす。  
 
「ストッキング、じゃま…。脱いで…」  
甘えるようにせがむ。  
煽りたてられ、すっかりその気にさせられた奏江は、ストッキングを脱ごうとかがんだところを  
背後から抱きかかえられた。堅いモノが押し付けられる。その感触にびくりと緊張したとき、  
下着の脇から指が入り込んだ。とろりとした蜜が溢れる。  
かたく立ち上がった乳首をこねながら、的確に陰核を捉え、意外なほど優しくさする。  
 
「ふぁ…あん」  
奏江が愉悦の声を洩らしたのを確認すると、指を動かす範囲を広げて、膣口にも愛撫を加える。  
充分に潤い、柔らかなそこに安心すると、指を刺し入れクチュクチュと音を立てた。  
「奏江、好きだ……入れて良い?奏江が欲しい…っ」  
「もう…ホント、しょうがないんだから…っ」  
太腿の半までずりおろされたストッキング、着けたままの下着。  
飛鷹は布地を掻き分けて愛液にまみれた秘所へと、性急に突き入れた。  
「あ――あぁんっ」  
「ん、…くっ」  
 
  うわ――ぬめるっ…絡み付く!  
身体のぶつかり合う打擲音と、液体が空気と肉を巻き込む淫らな音、そして嬌声が響く。  
はだけた衣類から覗く双乳は腰を打つ度に悩ましく揺れ、飛鷹の手から滑り出そうになる。  
背中から腰に巻き付くようにしがみつき、突き入れながらも奏江を愛撫する手は休まずに、乳頭と陰核を刺激し続けた。  
たらたらと汗が流れ落ちる。前後運動の激しさで奏江の長い黒髪が撥ね、飛鷹の肌にサラリと降りかかる。  
「んっ、はんん…!ひおうくんっ!」  
奏江の中の締め付けが強まった。頭を下げ、腰を突き出し、飛鷹に押し付ける。  
飛鷹は応えて、ぐりぐりとえぐるようにかき混ぜた。  
「あっ、ああっ!ああんっ、だめ、いっちゃう…!!」  
「かなえっ……!」  
ぎゅうーっと狭まり、飛鷹から一切を搾り取るように蠕動する。  
我慢できずにそのまま射精してしまいそうになるが、砂粒程の最後の理性が働いて、なんとか奏江から抜け出す。  
抱きしめ、滑らかな背中に頬を当てて、胸を手にしたまま、果てた。  
 
 
「ごめん、奏江〜。夢中でやっちゃった。次は奏江が無茶苦茶気持ちいいようにするから」  
「つぎ?!次とかないから!!」  
「何回でもできるのに。なんてったって若いから」  
「若すぎなのよ!!!」  
「もー1回していい?」  
「いーえ、今日はもう遠慮しときます」  
「へえ〜。今日でなければいいんだ?」  
ちょっと意地悪く、けれど心底嬉しそうに笑う。  
「…ねえ、飛鷹くん。あなた、すごく慣れてない?」  
  なんかイかされちゃったし。必死な割に余裕あったし。  
「親父やお袋達がさあ。つまんない女にハマらないようにって、何年か前から、その――女の人を来させて。」  
「そ、そのとき何歳だったの?!」  
「何歳だったかなー」  
「信じられない…」  
頭を抱える。  
「確かに、追っかけ達と興味本位でやらずに済んだから、良かったかなと思ってたんだけど」  
すべすべの奏江の胸をこねくり回しながら、感慨深げに言う。  
「一回で奏江のトリコになっちゃったから、やっぱり意味なかったのかも。こんな反則みたいなカラダ、今まで一人もいなかった」  
「ちょっ…!今までって、何人くらいとしてきたのよ?!」  
「覚えてない」  
けろっとした顔で言い放つ。罪の意識もないらしい。  
「でも、これからは奏江しか欲しくない」  
「何が『オトナのすること教えて』よっ!!も―――!この、大嘘つき――――!」  
飛鷹は、ばしばしと胸板を叩かれながらも、幸せそうに奏江に抱きつく。  
「食事だけならカモフラージュにいいけど。他の男に身体さわらせたらダメだからな!絶対!!」  
 
でも、なんで奏江って、前の男らと長続きしなかったんだろ…?手放せないだろ、常識的に考えて。  
非常識な男子は、自分が常識的なつもりでそんなことを考えていた。  
 

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