蓮はすばやくその愛らしい唇を塞いだ。
「っっ!!? つ…敦賀さっ…んんんっ!!」
(!!?こここここここれって、敦賀さんに私、キスされてる!!?
私の口に何かついててふき取ってくれてる…とかでもないわよね!!?
ひゃあ!?なにか入ってきたぁ!!?)
あくまで色気のある思考にはならないキョーコ。
突然のキスに、突き飛ばすでもなく
ただされるままになってしまう。
他の男のことなんて忘れさせてやる…!!
自分と二人でいるときにまで他の男のことを考えるキョーコが許せなかった。
ただその怒りはキョーコ自身にではなく、彼女をそうさせる“ヤツ”に向かってだ。
ヤツ以上に彼女を俺でいっぱいにする。
今までは学習能力という理性でどうにか押さえていたが
かまうものか。
唇を奪い、硬直する彼女の咥内に深く舌を侵入させる。
慣れないキスにキョーコは空気を求めて息を上げ、
それはいつしか喘ぎ声となって二人しかいない楽屋の中に響き渡った。
「っはぁっはぁっ…敦が…ふぅっ!」
休みを与えない。
制止の声をあげようとする彼女の唇を更に塞ぎ、彼女の小さな舌を吸い上げる。
ふたりの唾液が混ざり合いだらしなくこぼれていく。
本当はその服の中に隠された胸やきっと彼女自身だって触れたことのない場所をまさぐりたい。
でも、そんなことをしてしまったらもう彼女は俺に微笑んではくれないだろう。
彼女の体中を愛したい気持ちをこの唇だけに込めて
蓮は愛しいキスの雨を降らせ続ける。
キスの嵐の中で、キョーコは次第に
蓮から与えれる初めての刺激に満たされていく自分を感じ始めた。
(……どーしよ…なんだかボーっとしてきちゃった…)
思いもよらない展開。
まさか尊敬してやまない蓮が自分にこんなことをするなんて。
(でも…)
嫌だと感じない自分がいる。
アイツとの行為はあんなに嫌悪感でいっぱいだったのに。
今、唇を合わせている蓮からは、性急さの中にも優しさを感じるのだ。
――――…きもちいい…。
ふとキョーコのカラダから力がすっと抜ける。
夢中でキョーコの唇をむさぼっていた蓮だったが
腕の中のキョーコの異変に気づき、思わずその唇を開放する。
「最上さんっ!?大丈夫っっ!!?」
脱力しきったキョーコは蓮の腕の中で
自分をそうさせた張本人に向かって小さく微笑む。
「キスって、こんなに気持ちいいものだったんですね…」
思いもよらない言葉に蓮はただキョーコだけを見つめだけで精一杯になる。
「私、敦賀さんのこと、好きなのかも…」
無意識に、心に浮かんだ言葉を口にする。
それからややあって、キョーコは自分で言ってしまった言葉にはっとし口をつぐんだ。
(これって、告白じゃないっ;;;;)
キョーコは蓮の腕に支えられたまま自分の発言の恥ずかしさにうつむいた。
蓮は何も言わない。
まさか自分の無理やりの行動に対して彼女がそう感じてもらえるなんて。
蓮は何も言わないかわりに腕の中の彼女を抱きしめる腕に力を入れる。
精一杯の愛しさを込めて。
その反応にキョーコが顔を上げると
今まで永久凍土の中に封印していた「人を愛するキモチ」が溶け出しすほどの
愛しい笑顔を浮かべた蓮が居た。
「最上さん、好きだよ」
end