カイン・ヒールの姿なら出歩いても騒がれない(でも遠巻きに注目は集めてる気が…)事
に気付いた敦賀さんが思いついた事。
「敦賀蓮じゃ出来ない事をしよう」
というわけで、電車に乗って二人でお出かけする事に。
確かに敦賀さんってどこへ行くにも車かタクシーだから、電車に乗るってこと自体が新鮮
なのかも知れない。
前に代理マネージャーやったとき自転車で移動したらファンに追いかけられて大変な事態
になったもの。
ホームに立っていても、ある意味注目は集めてるけど誰も敦賀さんだって気付かない。
無造作にたらされて顔が半分隠れる様な前髪のせい?
でもこんなに長身でオーラがある人なんてそうそう居ないと思うのだけど。
私から見たらどう見ても敦賀さんにしか見えないのに。不思議。
「不思議ですね…」
「うん。意外とね、顔なんて見てないんだよ。特に忙しいときはね。」
考えていた事が口から漏れていたらしい。
だからわざわざ朝のラッシュ時に乗るのかしら?遠出するのかな?
敦賀さんのコートの袖を軽く引っ張る。
「そういえば、どこに行くんですか?」
「秘密」
「楽しいところですか?」
「うーん…たぶん…ね」
そう言われると同時にホームへと電車が到着した。
乗り込むとドアを背にした私の前に覆い被さるように立つ敦賀さん。
これだけぎゅうぎゅう詰めだと、視界が敦賀さんの胸でいっぱいになってしまう。
それでも私が押しつぶされないようにドアに左の肘をついて庇ってくれる。
いくらカイン・ヒールの風貌でカタギじゃない空気を放っていても、こんなところがやっ
ぱり敦賀さんらしい。
なんだか照れくさいようなこそばゆいような気持ちがじんわりと広がる。
恋人同士なんだな、とこんな些細な事で再確認してしまう。
停車駅の乗降で離れてしまわないように敦賀さんのコートをきゅっと掴み、敦賀さんの広
い胸に頭を預けた。
発車して少し立った頃、なんだかお尻のあたりに違和感を感じる。
誰かの手がもぞもぞ動いているような…?
ん…え?…痴漢?
「つ、つる…」
言い切らないうちに敦賀さんの長い指がそっと唇に当てられる。
そうだった、こんな所で敦賀さんなんて言ったら大変な事になってしまう。
と同時にお尻から違和感が消えた事に気付いた。
──まさか、犯人は敦賀さん?!
唇に当てられた手が視界から消えると同時にまたお尻を撫でられ始める。
お尻だけでは飽きたらず、不敵にもスカートの中へと潜り込み、
内ももを軽くつねられたり爪先でつうっとなぞったりと、かなり大胆に動いている。
──敦賀蓮じゃ出来ない事って、もしや痴漢のこと?
キっと敦賀さんを睨むように見上げても、肘越しに素知らぬ顔で眼下に広がる風景を眺め
ている様子。
そうこうしている間に下着越しに秘部の割れ目のラインに沿ってゆっくりと前後する手が。
本物の痴漢だったら…というのもおかしいけど、もし知らぬ他人の手だったらそれこそ嫌
悪感しか感じないだろう。
だけど敦賀さんに触られてると思うだけで、こんな満員電車の中なのにじんわりと濡れて
しまう自分自身が恥ずかしい。
「湿ってる…ね…」
クスクスと笑いながら敦賀さんが小声で囁く。
それだけでかぁっと火照り始める体。
そんな私の姿をよそに手の動きはどんどん奔放になっていく。
つっと手が離れたかと思ったとたん、腰骨の下あたりで結ばれていた下着のリボンを解か
れてしまった。
ひんやりとした外気に晒される秘部。
電車の揺れに耐えようと少し開いていた足をあわてて閉じようとしているのに、膝のあた
りにいつの間にか差し入れられた敦賀さんの足に阻まれてしまう。
握っていたコートをつんつんと引っ張り、イヤイヤと首を振って意思表示しているのに止
めてくれない。
下着ごしに触れていたラインを再度なぞられる。
「……っ!」
思わず声が出そうになってしまう。
見上げると敦賀さんはにんまりと口元を綻ばせてる。
徐々に前後の振り幅を大きくしていく敦賀さんの指。
時折花芯をかすめる。
「ん…っ!」
思わぬ刺激に声が出そうになり、敦賀さんの胸に顔を埋める。
更に円を描くように、すでにぷっくりと膨らんでいるであろう花芯を軽く押しつぶされる
と、それだけで肌が粟立ち膝が揺れた。
くちゅ、くちゅ、と電車の振動音とアナウンスに混じって聞こえる粘度と量を増やした音。
周りに聞こえてしまうんじゃないか、と不安になった所で再び手が離れた。
大きな乗換駅に着いたようだった。
敦賀さんの背後に居た人達が大きく入れ替わるが、混雑具合はさして変わらなかった。
──降りてもっと触って欲しい…な。
なんて、ひどく浅ましい事を考えてしまう。
敦賀さんに切り開かれ、馴らされた体がじんわりと火照り、一度も触れられていない頂で
すらぴんと立ち上がっているのが分かる。
電車の中、人混みの中、という背徳感がそうさせるのか、恥ずかしいけれどひどく気持ち
がいい。
ドアが閉まり電車が動き始めると同時に、今度は前の方から手が伸びる。
濡れそぼった秘部をかき分けるように、一本の指がゆっくりと進入してくる。
「んぁっ…」
唇を噛みしめ快感に耐える。
ゆっくり抜き差しされると思わずため息が漏れてしまう。
でも緩慢に動く指先だけでは物足りなくて、もっともっと触って、激しくして、と目で訴
えるのに、伝わらないのかそんな私を見て敦賀さんは微笑むだけで。
焦らされ過ぎたのか、太ももにまで蜜が溢れてきているのが分かる。
それなら、と自分で気持ちのいいところに当たるように探るように腰を動かしてみる。
「──…?どうした?もっと?」
耳元で囁かれる敦賀さんの声に、コートにしがみついたままこくこくと頷くと、二本目の
指が入ってきた。
「あぁっ……!」
漏れる声が我慢できない。
敦賀さんの腰に手を回し顔を胸に埋めると、二本の指が私の一番気持ちいいところを擦り
始める。
「んっ…んっ…んぁっ…あっ…!」
自然と腰が揺れ、敦賀さんの指を飲み込もうと無意識に動く体。
自分でもきゅうきゅうと指を締め付けているのが分かる。
「もう…あぁっ…いっ…ちゃぅ…んぁっ…!!!」
小刻みに震える下肢。きゅっと閉じたまぶたの裏で白くなる視界。
背筋を走り抜ける快感に抗えず、そっと意識を手放してしまった。
気がつくと薄暗い建物の中にあるソファーにもたれ掛かるように座っていた。
ここがどこなのか、どうやって移動してきたのか全く覚えてない。
まさか…電車の中でイってしまうなんて。
──…ん?敦賀さんは?
キョロキョロと見回すと、ボタンが並び光るパネルの前でなにやら真剣に考え込んでいる
敦賀さんが。
まだ靄がかかったような頭でぼうっと敦賀さんの背を見つめる。
──何を…しているの…かな…?
ボタンを押しかけて止めるを何回か繰り返した後、意を決したように敦賀さんがボタンを
押して何かを受け取るとこちらへ戻ってきた。
「気がついた?」
「はい…でもどうやってここへ?」
「ん?支えながらだけど歩いてきたよ。覚えてない?」
「それはそれはとんだご迷惑をっ!」
思わず土下座しようとして敦賀さんに止められてしまった。
「じゃあ行こうか」
「そういえば…ここが目的地ですか?」
「そう」
敦賀さんはにっこりと神々しいまでに微笑むと、私の手を取ってエレベーターへと歩き始
める。
途中パネルの前に差し掛かったので、ちらりと見てみる…と。
たくさんのベッドの写真が並んでいる?
なんだろう?部屋の写真?
なにやら様々な色を基調とした部屋が並んでいる気がする。
手を引かれながらも視線だけはしつこくパネルを追う。
──敦賀さんが押したあたりは…っと。
ピンクや白の天蓋付きお姫様ベッドのある部屋が見える中で、敦賀さんが押したと思わし
きパネルは残念ながら黒と赤を基調とした部屋だった。
──きっ、きっと、明かりが消えてたから黒っぽく見えただけよねっ!
嫌な予感がしつつも自分を励ましながらエレベーターに乗り込んだ。