Cafe - death by chocolate
「ん〜〜」
「決まった?」
「は、はい。決まりました」
彼女は、ニッコリ笑いながらメニューから顔を上げた
直視出来ない俺は、ホールを見渡してスッと軽く手を上げて店員を呼ぶ
「俺はコーヒー。彼女は、」と促して
「えっと、death by chocolateと紅茶をお願いします。」とはにかみながら答える
注文を終えた彼女は、以前親友と来た時に食べたこの味が忘れられないと熱弁をふるっている
「こんなに美味しいチョコを死ぬほど味わえるなら本望って感じで、ピッタリの名前ですよね!」
いや、その笑顔で俺の理性が死にそうだよと思いつつ、子供の頃家族で食べたdeath by chocolateを思い出す。そういえば、店によって趣向が違ったよな
そのうち注文した物が届いて、彼女は満面の笑みをもらす
「あっ、一口どうですか?」と自分が食べる前に勧めてくれる
「いいよ、気にしないで。」
普段からあまり甘い物を取らない自分を知ってる彼女は、更に勧める事はせず、そうですか?と届いたばかりのケーキを食べ始める
美味しそうに、満面の笑顔で食べる彼女をずっと眺めていたら、彼女の様子がちょっと変、いや、変わってる子なのは十分承知なんだけど
さっきまで、最近の撮影の事や大好きな親友の話をしていたのに段々言葉数が減って来たのに気がついた
チラッとこちらを何度か見た後、やっぱり食べますか?と手を付けてない方を前にしてお皿を差し出す彼女
美味しいですよ?と様子を伺いつつ、おずおず尋ねる様子も可愛い
「ありがとう」あんまり彼女を見過ぎて、ケーキが欲しいと思われたのだろうと見当をつける
ココが美味しいんですと、華奢なフォークに一口分を取って、差し出してくれる。固まる自分
それを見て、一瞬後に固まったのは彼女
あっとフォークを引っ込めるだろうと思った瞬間には、貰った一口分のケーキを味わっていた
「んっ、美味しいね」
何がとは言わずに、笑顔で告げるとマダマダアリマスヨ?と固い声が返ってくる
「どんな味か見たかっただけだから大丈夫。」彼女が美味しそうに食べるのが嬉しいと告げると
ソウデスカ?と下を向いてゆっくりとケーキを味わっていた甘い午後
おまけ
親友にするつもりで思わず差し出してしまった一口を、何事もなく食べられてしまった。
あの日から、彼は味見がしたいけど、全部は食べられないと時々ケーキやらお菓子を持って来てくれる
一つの物を分け合って、親友や兄弟みたいな感覚かしら
照れくさくも、嬉しく思わず微笑んでしまった彼女の耳が赤くなっているのは誰も見ていなった