カタッ
「どうぞ、粗茶ですが」
「ありがとう、嬉しいよ。君の淹れるお茶は何時も美味しいからね」
「へへっ、ありがとうございます。あっ、プレゼント…お菓子だったらお茶請けに良いかもしれませんね」
「良いよ、気を遣わなくて。お邪魔してるのは俺の方だし」
「そんな…気になさらないで下さい」頂き物ですしと言いながら、シュルリとリボンを解いてハート型の箱を開ける彼女
「………」
無言のまま、沸騰しそうな位赤くなる彼女…何が入ってるんだ?
「何が入ってた?」
「…エ、ヤ…ナンデモナイデスヨ?」アハハと固く笑う…明らかに怪しい。隠そうとする彼女に「見せて」と言うが早いかそのプレゼントを肩越しに覗き込む
「……」自分の目を疑った…いや、レース付きのハンカチだったのかも?
「…最上さん?」
「ひゃい!?」
跳び上がりそうな勢いで返事をする彼女…見間違いでは無さそうだ
「ねぇ…これをくれたスタッフって…男性…だったの?」
「…いえ…女性のスタイリストさんが選んだって…撮影前に言ってたので…」
その言葉に少し安堵を覚える。これ以上馬の骨は要らない…
以前雑誌で見かけて、可愛いとスタイリストと話していた物だ…と、しどろもどろに話してくれる
「…ねぇ…最上さん?」
片手を机につき、もう片方の手で彼女の髪を優しく梳く…髪を一房取り耳に掛けてやる…照れた顔が見える様に…
「…ハ…イ……」
余計に赤くなり固まる彼女
「コレ、どうするの?」
「…えっと…ど、どうしましょう…」
折角貰った物だけれど…物が物だけに受け取りにくいですし…と遠慮がちに答えるのが彼女らしくて、思わず笑みがこぼれる
「うん…そうだね…コレは丁寧にお返しした方が良いかもしれない…」
横を向いて目線を合わせてくれない彼女に少し悪戯したくなり、わざと後ろから耳元で囁いてみる
「ねえ…キョーコ?」
彼女の名前を…昔…ちゃん付けでないと呼ばせてくれなかった名前を囁いてみる
「次の仕事…直ぐに終わらせるから待ってて…?」
髪を梳いていた手を耳元から首筋に指を這わせて、彼女の柔らかな頬を辿る
「エッ…ハイ…ソレハ、ノープロブレムデス…ケド…」
軽くこちらを向かせて目を合わせる
「うん、ありがとう…帰りに一つ店に寄ろう。きっとキョーコも気にいるよ…」
唇の形をすっとなぞり彼女の目を見る…
ムムムムム
社さんからの時間切れコール…少しつまらない気がするけれど、この後の事を楽しみにして我慢する…
「…後で…迎えに来るよ」
去り際に頬に軽くキスを落とし、また紅くなる彼女の様子に満足して楽屋を後にする
…さぁ、どうしてくれようか…