カタッ
「どうぞ、粗茶ですが」
「ありがとう、嬉しいよ。君の淹れるお茶は何時も美味しいからね」
「へへっ、ありがとうございます。あっ、プレゼント…お菓子だよって仰ってましたから、お茶請けに出しますね」
「良いよ、気を遣わなくて。お邪魔してるのは俺の方だし」
「そんな…気になさらないで下さい」頂き物ですしと言いながら、シュルリとリボンを解いてハート型の箱を開ける
*ぼうふぅん*
箱を開けた途端に勢いよく煙が立ち込める。敦賀さんが、慌てて私を抱きとめ、箱から遠ざけてくれた
「…なっ!?」
ゴソゴソ…煙の中心で何かが動いている…緊張が走り、私の腰を引き素早く後ろへ庇ってくれる敦賀さん
「…んっ…」
煙が引いていき、声の主が少しずつ姿を表す。淡い緑色の服の裾が見え…つま先立ちの様子からその主が伸びをしているのがわかる…更に煙がひき、髪が次いで顔が明らかになる…
「ふわぁぁぁぁっ」
少し高い声で欠伸を出す彼を見たとき…心臓が止まるかと思った…
「…えっ…コーン…?」
金色のさらりとした髪を揺らして、声の主がこちらをゆっくりと振り返る
「…?」不思議そうに首を傾げながら…
「ke@nobi fkjw/kffi&$!」
??!…聞き取れない…
「えっ…コーン?今なんて…?」
「ん?メリー クリスマスって言ったんだよ…えっと…」
「…キョーコよ…覚えて…無い?…」
「キョーコか、宜しく!…僕、今日が始めての人間界だから、サンタ違いじゃない?」
手のひらに乗りそうな小さな体をクルリと回転させながら話す小さなコーン…
「あっ…そうなの…そうよね…随分小さいし…って?サンタ?だって緑色の服だし…妖精じゃぁ…?」
「今サンタって呼ばれるのは、元々は色々だったからね。魔女だったり、聖人だったり、悪鬼だったり…妖精だったり。でも、キョーコが呼びたいならコーンでも良いよ。」
彼はニコッと人懐っこく笑い、キョーコが落ち着かないなら色を変える位なんでもないよっと宙を飛んだ…まるであの時河原で見せてくれた様に…そして、スウッと服が薄い緑から赤と白のいわゆるサンタ服と変わる…
「へへっ、お揃いだねキョーコ」
と溢れんばかりの笑顔を向けてくれるから…
「かっ…可愛い!!」
思わず手で彼を掬い胸元に抱きしめる
「クスクス…くすぐったいよ、キョーコ」
「あっごめんなさい」
慌てて胸元からチビコーンを離す
ヒョイ
敦賀さんの優雅な指がチビコーンの襟元を掴む
「最上さん?…ほら、コレ…コーンも苦しそうだし、離してあげよう?」*キュラエスト*
ひっっ!?イキナリ最高級に怒ってらっしゃる!何故?!
「…何こいつ?キョーコ?」
ぷうっと頬を膨らませてジタバタと手足を動かすチビコーン
「こいつじゃなくて、敦賀さんよ、コーン!」
「ふんっ…ツルガサン、離せ!無礼者!」
敦賀さんは、スタスタと長い足を利用して素早く机の反対側に回り、チビコーンをそっと下ろしてあげる
「…すまないね、苦しそうだったからつい…」
ニコリとしていますが…敦賀さん、目が…目が笑ってません!
睨み合うチビコーンと敦賀さん…
「…キョーコ〜、こいつ嫌い…虐めるよ〜」
グスグスと泣き出し、チビコーンが胸元に飛び込んでくる
「あぁ、泣かないの…コーン。大丈夫よ」
よしよしと頭を撫でていると、敦賀さんがツカツカと近づいて来て、再び手を伸ばす
スルッ
「あっ!…ちょ…やめっ…んっ……コーン!」
敦賀さんの手を逃れようとコーンが服の中に入り逃げ回る
敦賀さんも、私の服の中を逃げ惑うコーンを捕まえるのは躊躇われたらしくて、固まってしまった
「んっ…やっ……ひゃぁっ…中に入っ…やっ……つ、敦賀さん…」
くすぐったくて、涙目になってしまう。コーンを捕まえようと自ら手を伸ばすがすばしっこくて、身をよじらせても届かない
「あっ…お、お願いですから…んっ…つ、つか……外にっ……」
敦賀さんにコーンを捕まえて貰う様にお願いをする…
服の中からチラリと顔だけ覗かせるチビコーンは、蓮に向かってニヤリと不敵に笑った
カチン
「…最上さん…ごめんね…少し…君に、触れるだけだから…」
そう言うと、敦賀さんは腰に手を回して、向かい合う形で私を抱き寄せた
ふわりと、何時もの良い香りがして…こんな時なのに、顔が赤くなる…
背中から入ってくる敦賀さんの大きな手が熱い事に驚いて…
出来るだけ肌に触れない様にしてくれているけれど…それを…かえって敏感に感じ取ってしまうのが恥ずかしい
チョロチョロと逃げ回っていたコーンがウエストのくびれを伝ってお腹の方へ移動する
「…んっ…!」
何故か足がしびれて、体を後ろに反らせてしまった
敦賀さんは、私を支えている片手に力を込めて、私が倒れない様にしてくれる…もう片方は、コーンを追う為にお腹の方に寄せられる…
「あっ…」
「…最上さん…ごめん…少し、静かに……でないと…」
抱き寄せられながら、頭の上で囁かれる…敦賀さんの息遣いで髪が揺れる
「すみま…んっ…がま…っ…できなっ……くて…あっ…!」
チビコーンが胸元に来たと思ったら、敦賀さんに口を塞がれた…彼の唇で…
「…っ!?」
チビコーンは、まだ胸元で動いていて、あろう事かブラの中に入ろうとする…もちろん敦賀さんの手もそこに行くわけで…
「!」
敦賀さんの手は、出来るだけ胸に触れない様にコーンを探しているけれど…ついにどこにいるかを突き止めて…
一瞬の戸惑いの後、「ごめんね」と繋がったままの唇から聞こえてきた…サッと背中のホックを外され、ゆるくなった胸元に大きな手が伸び…チビコーンが逃げる前に…捕まえた
敦賀さんは、チビコーンごと手を服の中から引き出して、私の背中に回し…もう一度強く抱きしめてから、ゆっくりと唇を離した…
私は、ゆっくりと敦賀さんの片側に守られながら、彼の反対側の手の中にいるチビコーンを見つめる
「君は、何者だ?!」詰め寄る敦賀さんに対してコーンは呑気に答える…
「言ったろ?サンタだって。キョーコにプレゼントを届けに来ただけだよ」
訝しげにチビコーンと対峙する敦賀さん。それもそのはず、チビコーンはプレゼントの入っている袋らしき物なんて持っていない
「どこに…」そんな物が…と問いただす前に、チビコーンが答える
「ん〜、本当のプレゼントは、キョーコのなくした物…だったんだけど…」チラリと私の方を見てニコリと笑うと「もう見つけたみたいだから、いいやっ」と呟いて小さな煙と共に消えてしまった…
?!
「……何、だったんだ…?」
さっきまで、チビコーンが居たはずの敦賀さんの手元を二人で見つめる
…お詫びに、二人にプレゼントをあげるよ…
頭の中に声が響いたと思ったら…フワリ…周りは一面の銀世界となり大粒の綿雪がフワリと肩にかかる
余りに突然の事で、二人とも目を大きくしてお互いに見つめ合う
「綺麗…ですね…」
「…あぁ…」
ふと、彼の目元が緩み、耳元で囁かれる…そのお願いに驚いてしまったけれど…少し考えて、返事の代わりに…そっと目を閉じてみた