洗い終わった最後の一枚を食器棚に片付ける。  
DMゴッコの後、戸棚の位置を見直してくれて  
一人で何処にでも手が届く様になった。  
流石に夜中にあの量は胃にもたれるだろうと、  
先ほどの食事を思い出しながらコーヒーを準備する。  
 
ふと視線をリビングに向け、食事を終えてから  
一言も発しない彼の様子を伺う。  
肩を落とし俯いたまま大きなソファに腰を落す背中は、  
何時もの彼に比べて、意外なほど小さくて驚いてしまう。  
普段ではあり得ない、彼の言動の数々に戸惑いを覚えながら…  
それでも…声をかける事が出来ない…  
 
出来たてのコーヒーを二人分盆に乗せて、リビングへ向かう。  
目の前に出されたコーヒーに気がつかない彼の肩が微かに…  
ほんの微かに震えていたのに気がついた。  
 
サラッ  
 
彼の柔らかな髪を梳き、その後頭部を優しく撫でる。  
ソファに座っていた彼は、身長差の為に身体を斜めに倒しながら、  
横にいる彼女の胸元に顔を埋めている。  
 
…トン…トン…トン…  
 
心地よいリズムで、背中を叩いてくれる…  
まるで泣き出した小さな子供をあやす様に…  
 
「もう、大丈夫です。なにも…心配はいりませんから…」  
 
詳しい理由は知らない…それでも…自然に身体が動いてしまった。  
泣き出しそうな彼を…そのままにはしておけなかったから…  
 
「……ありがとう……」  
 
彼の肩が一瞬強く震えて…静かに抱きしめられた。  
 
 
 
終わり  
 
 

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