「セツ…」
若干の怒気をはらんだ声が後ろから掛けられた。
「…なに?」
「何を着てもお前は似合うが、それは短すぎる。こっちを履けといっているだろう」
振り向くと、差し出された手には長いパンツ。
そして私が今私が履いているのはショートパンツ。
「…いや。だって今日の格好ならこっちのほうが可愛いもの。これで出かけるの」
少し考えるふりをして、でもきっぱりと言い切る私を見て敦賀さん扮するカインがため息をつく。
「何もお前の脚を見せびらかしてやる必要はない」
「だから…見せびらかすとかじゃなくて、今日はこっちがいいの」
このくらいなら兄さんに甘えるわがままな妹で通るだろう。
「そういうつもりなら…」
言い切るやいなや、ドンとベッド向かって肩を押された。
「ちょっと兄さん。なにする…」
ベッドの上だから痛くはないが尻餅をつくような勢いで座り込み、文句を言おうとしたその時。
「…えっちょっと…兄さん!」
私の足首を両方の手それぞれに掴み、強引に脚を開かせたかと思うと太ももの内側、それも限りなく付け根に近いあたりにカインが唇を寄せた。
「──っ!!!」
さほど長い時間ではなかったと思うが、唇が離れた後にはくっきりと赤く痕が。
「それを披露しながら外を歩けるなら好きにすればいい」
そう言い残すとドアを開けて部屋を出て行ってしまった。
(こっこんなんで外なんて歩けるわけないじゃないっ!もうっ)
思わぬ行動にセツが抜けかけて耳まで赤くなってしまったのを見られていないだろうか、
少々心配しながらもパンツを手に取りのそのそと着替えるキョーコであった。