この日俺は最上さんが食事を作りに来てくれたあと、どうやら寝てしまっていたようだった。
後片付けは彼女一人だけにさせてしまったのは申し訳なく思っている。
しかし、それとは別に俺は激しく興奮していた。
純粋な君だったからこそ、俺はこの日幸運だったのだろう。
そんな素敵な一日。
なんとなく感じる気持ち悪さに、いつも手伝っている食事の後片付けを俺は辞退した。
「どうしたんですか」と君に聞かれ、正直にこの気持ち悪さを言って看病してもらおうと思った俺の心は、
君の純粋に心配そうにしている顔を見て口に出すのを留めた。
多少気持ちが悪いだけなのだし君にそこまで面倒を掛けたくはなかった。
人を好きになることでこんなにも不器用になってしまう俺を誰が知り得ただろう。
自分でも驚いているこの気持ちに、戸惑いながらも毎日を結構楽しく過ごしていた。
今まで感じたことのなかったこの気持ちを誰に話すでもなく、君を想い夜を越えていった。
そしてこの想いは君にはまだ伝えないつもりだ。
だからもう少し先輩と後輩の関係を感じていたかった。
だから俺は「悪いけれど、少し寝るから最上さんが帰るときに起こして」とだけ言い、寝室へと移動したのだった。
寝室に向かう俺の背中で心配そうな声で「大丈夫ですか?」という君の声が少し遠くに感じ、
同じに愛しく感じた。
久しぶりに深く気持ちよく眠って気がした。
それを気持ちのいい声が呼び戻す声が聞こえた気がした。
その声は決して不快ではなかった。
「・・・がさん、敦賀さん。」
気持がいい声に呼び戻されると何故か顔不思議そうな顔をした君がいた。
何かと思い彼女に聞いてみるが彼女は何も言わず笑顔で「おはようございます」と言ってきただけだった。
そのあと「気持ちよく眠ってたのに起こしてしまってすみませんでした」と律儀に謝ってきた。
その後送っていく車の中で彼女は先程の話題自分からしてきた。
「あの・・・」
普段とは違う言いにくそうにしている君を少し不思議に思いながらも話しの先を促すよう相槌をうつ。
「うん、なに?」
「あのですね、少し不思議に思ったことがあって・・・。」
またしても会話が止まってしまい本当に何事かと思い始めた。何か言いにくい大事なことなのだろうか。
そんなことを思っていたら彼女が意を決したように話し始めた。
「あのさっき起こした時に何か硬いものがあったんですけどあれってなんだったんですか?」
「・・・へ?」
思いもよらないことに少し動きが止まってしまい、車が道に逸れ危うく電柱にぶつかりそうになったところを間一髪食い止めた。
彼女のその質問が何のことを意味しているのか聞いた瞬間に分かってしまった。
しかしそれに反し彼女は本当に分かっていないようだった。
どうやら彼女は朝勃ちのことを知らないようだった。
俺は隣で今までの交通事故未遂のことで動揺しているようにあちらこちらに目をやっていた。
そんな彼女に「ごめん、ちょっと手元が狂ったみたい。驚かせちゃったね」といい、未だ動揺しきっている彼女をそっと抱いた。
お互いの早鐘のような心臓を音を聞きながら、この先長い道のりに苦悩を深めていたのだった。