下着メーカーのイメージガールを務めることになった恋人の
記者会見があるという。
今日。
数日前に電話で知らされた俺はあまり面白くないわけで。
それでも、乗り気だった社長に窘められて…
蚊帳の外な俺の意見なんて所詮一笑に付されて終わり。
仕事帰りに椹さんに無理を言って
会見の様子を見せてもらったけど
気に入らないと言ってしまったせいか
彼女の笑顔は少しひきつっていた。
本人に怒ってるわけじゃないんだけどな。
関係を公にしたせいで飛び交う俺に関する質問には、
全てそのひきつった笑顔で対応している様子に苦笑してしまう。
今日はこれから逢えるから、ちゃんと誤解を解かないと。
でも、我慢した俺にも、ちょっとだけご褒美が欲しいな。
ああ、早く逢いたい。
「ただいま…お邪魔します…」
ドアが開く音がしてしばらくすると、疲れた様子の彼女が姿を見せた。
俺の視線に気付くといつもの笑顔。
「おかえり」
近寄ってくる身体を引き寄せて。
「見たよ?記者会見」
耳元で囁くと、身体がびくっと動く。
かわいいな…。
別に怒ってないよ?もう。
だって、みんな知ってるだろう?
キョーコが、俺のものだってことはね。
腕の中に閉じ込めて、ぎゅっと抱き締めると
細い手が恐る恐る俺の身体に添えられる。
それを掴んで、指先にキスを落とすと、
彼女が小さく口を開いた。
「…まだ怒ってます?」
「最初から怒ってないよ?」
「うそ」
「君には怒ってない。仕事には…ちょっと怒ってたけど」
「またそんなヘリクツ…」
「だから機嫌直して?ほんとに怒ってないから…」
「ん…もう…」
言葉とは裏腹に、安心したように身体を預けてくる彼女にそっとキスをひとつ。
しばらく俺の動きに合わせて変化していた
柔らかなその唇が俺のそれを包むように愛撫を仕返して。
「まだ着けてるの?あれ」
「ん、そのまま服着て帰ってきたから…」
「じゃ…見せてくれる?俺にも」
灯された熱が、先を求めて動く。
彼女の同意を得ないで…でも多分許してくれるよね…?
きゅっと目を閉じているその瞼にキスを落としながら
衣服をするすると脱がせていくと現れる
ショッキングピンクのセットアップ。
「あ…や、やだ…あんまり…見ないで下さい…っ」
「何で?」
「だって…社長さんのデザインで…色も…アレと同じ…」
「可愛いよ?よく似合ってる…こんなの、着てたろ?」
ショッキングピンクのツナギはよく目立っていて、
元気な彼女にはそれはそれは似合って。
その頃のことを思い出して少し笑う。
「…だから、です…あのツナギそのまんまなんだもん…」
「あ、こんなところにラブミープリントがあるんだ…ほんと、凝ってるな、あの人は…」
カップの外側にある、ラブミープリントをなぞると、
上から甘いため息が降ってきた。
そのまま手のひらで包むように揉み上げる。
「っ…あ…つ、敦賀さん…まって」
「どうして?…嫌?」
少しだけ抵抗しようとする身体を押さえて、肌に唇をつけた。
かわいい。
この下着もかわいいけど…やっぱり中身がいいな…。
そのまま彼女の顔を見上げると、
頬をほんのりと紅く染めて目を閉じている。
「キョーコ…」
彼女に火を灯すために、ゆっくりとその名を呼ぶ。
胸を覆うピンクの布を少しずつめくりながら唇を進めていくと
甘く彩られたため息が空気を揺らして…。
「嫌ならやめるよ…?」
そうは言っても、俺はもう我慢できない。
君にもスイッチを入れてあげる。
だからいつもどおり…早く俺を欲しがって?
早く君が欲しい…。
「っ…ずるい…私ばっかり脱がされて…」
そう呟いたかと思うと、彼女の手が俺の服に伸ばされる。
ああ…ごめんね。
「じゃあ…俺のはキョーコが脱がせて」
「…っ…はぁ…っ…」
彼女が服を脱がせてくれた後、同意も得ないで彼女を攻め始める。
「今日あそこにいた人たちは…
キョーコがこんな風になっちゃうなんて…知らないんだよ?」
そう。
知ってるのは俺だけ。
下着をつけた姿はみんなに見られてしまったけど…
本当はそこから先が、すごいんだよね…キョーコ?
だから、これからも‘それ’は、俺だけに見せて…。
「…や…あっ…ん…」
もどかしくて、下着を取り払って直接愛撫すると、
それだけでもう溶けてしまいそうに身体をくねらせて喘ぐ。
「かわいい…」
舌でなぞりながら、煽るだけ煽って…
尖った先を吸いながら転がすと、呼吸も上がっていく。
「こうされるの、好きだろ………?」
「っっ…や…だ…」
「嫌?…気持ちよさそうだよ…?」
しばらく胸だけを攻めていると、もどかしそうに彼女が身を捩る。
「ね…俺のも触って?」
先をねだる彼女の手を掴んで、ジーンズの上から、自分にそっと触れさせる。
「…あ…も…こんな…敦賀さ…」
「キスしてくれる?」
「っっ…」
すでに大きくなっていた自分のそれを取り出してから、
恥ずかしがる彼女の頭に手をやって促すと、
やがて自らゆっくりと顔を近づけていく。
「ん…」
暖かく湿る舌先が触れて、鼓動が強く打つ。
絡みつくように動く舌に、包み込むようにして上下する唇に
意識が持っていかれそうになって…。
「…あ……」
「っ…どう…ですか…?」
目を伏せて、俺を愛撫しながら発せられる言葉が淫らに響いて、
不規則に与えられる刺激に、思わず彼女の髪をつかんでしまう。
「…はっ……す…ごくいい…よ…」
彼女がくれる不思議な快感に身を預けていると、
不意に強く吸い上げられて、放ってしまいそうになる。
「っ…も、いいから…」
やめさせようとして伸ばした手が彼女によって遮られる。
「キョ…コ…やめ…っ…」
彼女が首を振って俺を見上げる。
段々その唇の…舌の動きが速まって、
俺が出してしまうのを促してるかのようで…
キョーコ…君はほんとに…
「……く…っ……っ!」
襲ってきた射精感に飲み込まれて、身体が少しだけ跳ねた。
耐え切れず彼女の口に出してしまうと
それを受けて彼女がこくんと喉を鳴らす…。
「飲ん…だの…」
「…気持ちよかったですか…?」
いたずらっぽく笑う彼女を抱き起こして、
端から零れた自分の欲望を拭うように口づけた。
嬉しさと…少しの罪悪感。
苦味も彼女のフィルターを通れば甘くさえ感じられて。
貪るように絡め合う。
「…ん……ぅ…」
自分が仕掛けたはずなのに、逆襲されてるみたいで…でも悪くないな…。
ほんとに…イヤだって言わないんだから…。
こんなことだけで、俺が天にも昇るくらい幸せ、になれるって、君は知ってる?
ほんの少しだけ燻ってた、君の身体を人目に晒してしまったことへの憤りも
もうほとんど跡形もないよ。
だから、今度は俺が…気持ちよくしてあげる…。
俺でいっぱいに、なって?
彼女を床に横たえて、ひとしきり口付けを交わした後。
「…もう、これ脱いだほうがいいね?」
「ん…っ…あ…だ…だめ…」
「びしょびしょだよ…」
湿り気を帯びて、ほとんど意味をなさなくなったそれに指をかけて
少しずつ降ろしていくと、透明な蜜がわずかに糸を引いた。
取り去った後、ゆっくりと脚を開かせる。
繁みのあたりにそっと顔を埋めて、舌先で紅い芽を舐めると
途端に身体が踊り始めて…。
「あっ…あ…やめ…汚いから…っ」
「美味しいよ…どんどんあふれてくるね…気持ちいいんだ…」
強めに吸い上げたり、舌で弾いたり。
俺に合わせるように発せられる甘く淫らな声が俺を煽る。
彼女のそこが十分に溶けているのを見て、舌をもぐりこませた。
「あんっ……も…やぁ…っあ…ダメぇ…あ…あ…つるがさ…んっ!」
ぐるぐるとかき混ぜていると、身体が震えて、
彼女が達したことを教えてくれた。
それでも入り口は誘うようにひくひくと動いて、
あふれる泉は口で吸い取っても、
感じすぎた彼女がすぐにいっぱいにしてしまう。
「もっと気持ちよくなって…キョーコ…」
もう少し乱れる彼女を見ていたくて、そのまま、指を差し込んだ。
緩められた場所に合わせて数を増やしていく。
自分をそこに埋めてしまうと、ただ我を忘れて攻め立ててしまうから…。
「んっ…はぁ…っ…もっ…おかしくなっちゃう…っ…やめ…つるがさ…あんっ」
「もっと見せて…声出して?…俺だけに見せて…」
「っあん…っ…ん…やぁ……っ」
指で下の入り口を攻めながら、胸に吸い付くと、一段と高い声があがる。
本当にかわいいね…君は…。
右腕を彼女の首裏に伸ばして、そこから口に指を差し込むと
喘いでいたかわいい口が俺の指を咥えて舌を絡ませ始める。
さっき俺自身にしていたように巻きつけて、指だとわかっているのか
軽く歯をたてて。
「つるがさ…ちゅー…して……?」
指を口から引き抜くと、切れ切れに呟く声。
普段は絶対に見られない、
かわいいおねだりに顔が緩んでしまう。
こんなに君を好き勝手に出来るのも、俺だけ。
征服欲にも似た感情が満たされていく感覚に、ぞくぞくしてしまう。
手で下の口を攻めるのは止めずに、
唇を重ねると、彼女のほうから慣らされた甘い舌を差し込んできて…
湿り気の残る指で、硬く尖った胸の先を弄る。
「…ふ…ぅ…んっ…んん…」
しばらくその味に酔っていると、ふいに彼女が唇を離す。
「ん…っあ…も…だめ…またきちゃ…うっ…はあぁぁっ…あんっ…ああっ!」
薄く開けられた瞳から涙が零れ落ちる。
宥めるように唇で触れた。
くすぐったさに歪む顔はすでに紅く染まっていて
より、彼女が飲まれた快感の深さを教えてくれる。
「どうして欲しい…?もうやめようか…2回もいっちゃって…満足した?」
はあ、はあ、と息をつきながら彼女がうらめしそうにこちらを睨む。
額にキスを落とすと、その手をきゅっと掴まれて。
「キョーコ?…教えてくれなきゃ俺もわからないよ?」
わざと焦らして、それでも耳元で舌を差し込むようにして囁くと、
掠れた声で「いじわる…」と呟いて、観念したように目を閉じる。
「俺のが…欲しい?」
それでも…我慢できなくなった俺が、少しだけ探るようにして
自身をあてがうと、紅く濡れた彼女が先端をきゅうっと咥え込む。
短い間に何度も絶頂に達したそこは、
まるで俺を待っていたかのように敏感に反応し始めて。
「…キョーコ、教えて…」
あえて進めずに入り口で留まっていると
彼女が俺の手のひらに、自分のそれを絡ませる。
「ん?」
「…いじわるしないで…もっと…きて…」
「欲しい…?」
「…ん…っ…ほし………」
「待ってて…」
「…あっ…あぁんっ!」
ため息と共に告げられた答えを待って、一気に沈めていく。
どろどろに溶けたそこは、何の抵抗もなく俺を受け入れてくれる。
彼女の了承を得る間もなく前後に身体を震わせて。
「あんっ…あ…やあんっ…あ…っん…は…あぁっ」
だけど、蜜があふれてるその場所は俺を半端なく締め付けて
動き始めて間もなく、俺が放ってしまいそうで…
「キョーコ…きもちいい?」
優しくしたいと思うのに、いつもめちゃくちゃに突いてしまう。
君と一緒にいきたくて…
焦らすために我慢してた分だけ、動きを強くする。
この後、自分の欲望を吐き出した後もずっとずっと
暖かい君の中にいつまでも留まっていたい…
「んあっ…ふ…っ…あんっ…きもちい…っ…」
腰を持ち上げて、深く咥え込もうとする身体が愛しくて。
俺の前でだけ乱れて…俺のだけ受け入れて…
こうすることが増えていくたびに、少しずつ淫らになる身体…俺だけの。
「ん…俺も…すごくいい……キョーコ…っ…」
「あっ……あんっ…つるがさ…んんっ」
繋がれた場所から響く淫らな水音。
床に敷かれたラグの濃い色に映える白い肢体。
揺れる胸に誘われるように唇を寄せて…
「んっ…ぃや…っ…も…っだめえっ…んっ…はぁあんっ!」
彼女が上げた嬌声に前後しての締め付けに
耐え切れず放つと、2人の身体ががくがくと揺れ落ちた。
目の前の彼女をぎゅうっと抱きしめる。
「っ……はぁ…っ…」
「ご…めんね…きつかった…?」
目を閉じて荒く息をつく恋人に詫びるように、キスを繰り返す。
「だいじょ…ぶ…」
俺の頬に手を添えると、彼女が微笑んだ。
それはいつも彼女が俺に見せてくれる極上の微笑みで。
…つまらない嫉妬にかられて、
ベッドではない場所で、また無理をさせてしまったのに
それでも君は俺を責めはしなくて。
いつもいつも…ごめん…ね…。
しばらく身体を重ねたまま余韻に浸っていたところで
触れる肌が少し冷たくなっていたのに気付いて、
彼女を抱き起こした。
「お風呂、入ろうか」
「も…お風呂ではしませんからね…っ」
名残惜しさを残しながら身体を離し、抱え上げて立ち上がると、
俺の首に掴まった彼女がむくれた顔でそう告げる。
「約束はできないな…」
「なっ…」
途端に降ろしてくださいと暴れ始める彼女を抱く手に力を込める。
ほら…君のそんな言葉で…そんな顔で…
また熱が上がりそうなんだけどね?
「向こうで考えよう?」
お風呂で2人であったかくなって。
そしたら君の考えも変わるかもしれない。
今日はもう離れていたくない。
もっともっと、俺だけに与えられる君が欲しくて。
確かめさせて。
俺だけに…開かれる心も…身体も。