決壊がキレた…―――。
自分で歯止めをかけたはずだったのに…今、画面の中の天使と悪魔から目を反らせない。
自ら『禁忌』とした大切な子を傷つけた悪魔。
大切なあの子の泣き顔…。
演技のはずなのに、俺には不破に裏切られた彼女の泣く様はその過去に涙しているようで。
思考が落ちる…理性が消えていく―――
プルルル、プルルル…
「はい、もしもし」
「最上さん?あのさ、ちょっとお願いがあるんだけど…」
「はぁ、なんでしょうか?」
「なんだか喉痛くて…この前作ってくれた、喉が辛いときにいいアレってどう作るんだっけ?」
「かっ風邪ですか!?敦賀さんは寝てて下さいっ!大人しくしてて下さい!!」
プッ、ツーツーツー…。
クスリ―――
期待通りの反応に思わず笑みがこぼれてしまう。
嘘ついてごめんね、キョーコちゃん。でもね、壊れちゃったんだ。
さて、病人の演技をしますか…。
ピンポーン
ドアを開けると買物袋を両手に下げ、息を切らした彼女がいた。
「もぅ、お仕事大変なのにしっかりご飯食べないからですよ!」
ぷりぷりとしながら部屋に上がり込んで来る。
罠にかかっちゃったね…もう逃げられないよ。
「ごめんね、まさか来てくれるなんて。」
気だるそうに服を着崩して、軽く咳込む様子はどうみても病人だ。
「ああ!敦賀さんは寝てて下さい!すぐに体にいいもの作りますから。」そう言った彼女はこっちに背中を向けて台所で作業を始めてる。
「じゃあお言葉に甘えて」
寝室へ行きますか―――。
しばらくすると冷えピタやら氷枕を持って彼女が入って来た。
「熱があるといけないので…」
嘘も限界かな…。
額に伸ばされた彼女の手を掴み、そのままベッドへ引きずり込む。
「えっえっ!?」
驚くよね…でも構ってなんかいられないんだ。
自分の体の下に組敷き、そっと唇を重ねる。
少し震えている、柔らかい唇。
これから全部手に入れさせてもらうね、キョーコちゃん…。
「なっなんですかぁ!?」
「んー俺の決壊が切れちゃったんだ。だから君を捕まえることにしたんだよ。」
そう囁いてみたけど、やっぱり意味はわかんないんだね。
手足をばたつかせて抵抗してくる。
ふと蓮の目にキョーコが氷枕を包むために持って来たタオルが止まった。
「そんなに暴れちゃだめだよ。」
そう言うと今度は唇をこじ開けて深く、深くキョーコの口を責めながら華奢な手首をまとめてタオルで縛ってしまう。
「んぅぅっ…」
やっと唇を離すと飲み込めなかったどちらのものか解らない唾液が口から伝う。
力の抜けた肢体、潤んだ瞳と合わさってその様はひどく扇情的で…。
「敦賀さん…ほんとどうしたんですか…?」
不安そうだね、ひょっとしたら少しの恐怖も混ざっているのかな…?
「キョーコちゃんを俺のものにしたいんだ……君のことが愛しいから」
キョーコが言葉を紡ぐ前に蓮はまた深く口付ける。
君の答がなんであっても逃がさないからね。
呼吸で上下する彼女の胸を優しく揉みしだくと驚きの中に艶の混ざった可愛い声が聞こえてくる。
その声は俺の脳髄をゆっくり溶かしていくようで…ぞくぞくする。
服を捲くり上げて舌先で頂点を転がす。
だんだんと彼女の肌が桜色に色づいてきた。
「あっ、ぅんん…っ」
もっとその声を聞かせて欲しい…。
手をスカートの中に潜り込ませるとそこは湿り気を帯びていて、彼女が俺に感じてくれていることを物語っていた。
まだだよ。もっと感じさせてあげる、俺だけを感じさせてあげる。
「やっあ、そんなとこ見ないで下さいぃ…」
下半身を纏っていたものを全て脱がせると羞恥でかぁっと顔が、躯が紅に染まる。
ほんと、可愛い…。
足を閉じようと力がこもり、縛られた手で抵抗を見せる。
が、蓮の愛撫で体に上手く力が入らないのか、抵抗の意味を成さない。
「大丈夫だよ、キョーコちゃん」
ぐいっと腕を彼女の上に上げて見つめる。
「ほら、君はこんなに綺麗なんだから…」
指を1本そこに埋めていく。
「ひっあぁ、やぁぁ…っ」
きっと初めての、下半身に感じる異物感に眉をひそめる表情すら愛しい。
ゆっくり内壁を擦りながら慣らしていく。
「あっあっ、…っはぁ…」
慣れてきたみたいだね。
艶が含まれた声とくちゅくちゅという水音に急かされてるみたいだ。
もう1本増やすとそこがほんとに狭いことが分かる。
もう大丈夫かな…。
「入れるよ…」
そう言って口付け、自身にゴムをつける。
押し当てると慣らしたとはいえ、抵抗感が否めない。
「いっ…つぅ……っ」
涙を浮かべて痛みを堪えている。
「キョーコちゃん、力抜いてゆっくり呼吸してごらん…」
素直にその言葉に従ってゆっくり息をする。
ぐっと力を込めて押し進めるとやっと全てが入った。
痛みに耐えて、呼吸を荒くしている彼女…。
「ありがとう…ね」
彼女を見つめて髪を抄く。
閉じていた瞳を開け、不意に彼女は微笑んだ。
「敦賀さんが好きだから…敦賀さんの全てを受け入れたかったんです」
どくん…。
いきなりの告白に心臓が跳ねる。
「え……」
今の言葉は…反則だよ、キョーコちゃん。
かぁっと自分の顔が紅くなるのが分かる。
「敦賀さん、顔真っ赤ですよ…?」
つられたのか彼女まで頬を染めてくすくす笑っている。
「まったく、君って子は…」
なんでそんなに俺の感情を揺さ振ってくれるんだ。
たくさんのキスを彼女に降らせて動き始める。
「あっあん、んぅ…」
だんだんと嬌声が高くなって、きゅうきゅうと締め付けてくる。
温かい彼女の中に包まれて、締め付けられて、いきなり告白されて……限界がくる…。
一際深く、彼女を貫く。
「つっ…ぅ、キョーコちゃん…!」
「あ、ぅ…っ、やぁぁぁぁ!」
彼女の中に全てを放った。
荒い息遣いをしながらも眠りに落ちた彼女抱き寄せる。
「逃がしてなんかあげないから…逃げても、捕まえるから」
縛ってしまっていた彼女の腕を解放する。
赤い痕…。
逃がしたくない一心でつけてしまった痕に我ながら苦笑せざるをえない。
でもこれは君が俺のものになった印。…もう手に入れた。
痕に口付け、今まで感じたことのない満ち足りた気持ちで蓮は眠りに落ちた…。
END