一度外れてしまった箍はそう簡単には締められない…―  
 
 
沖縄の雲行きが怪しい。  
嵐が来る…そんな気配を社は感じた。  
まさに今の蓮の心境を表しているかのような空模様だ。  
あるいは、これから起きる波乱の幕開けの兆しなのだろうか。  
 
蓮が復調し、『オリジナルの嘉月』を演れるようになって、  
いよいよダークムーンの撮影も本格化を迎えた。  
軽井沢ロケが組み込まれ、キョーコらも既に現地入りしている。  
しかし蓮はというと、専属モデルとしての沖縄撮影ロケを消化しておかねばならなかった。  
本来なら、軽井沢の後に沖縄ロケがスケジューリングされていたのだが、  
蓮が嘉月を演じることができなかったために、その分先伸びしてしまったのだ。  
少しでも長くキョーコとの時間を共有したいのだが、沖縄ロケを再調整することなどできる  
はずもなく、早く終えたい一心で蓮は撮影に臨んでいる。  
だが、そんな蓮の心境を知ってか知らずか、それまでの鮮やかな沖縄のブルーを  
急に鈍いグレーの曇天が覆い、一時撮影中断を余儀なくされたのだった。  
 
 
 クソ…こうなってるのも俺の所為なんだが。  
 悪い虫が集らないよう、こうして余計な気を揉むこともなかったのに。  
 そんなことよりも…  
 
 
「蓮、さっきから何思いつめた顔してるんだ?」  
社が心配そうに蓮の顔を覗き込んだ。  
 
「待機時間、長くて疲れたのか?」  
「いえ、全然大丈夫ですよ。それよりも軽井沢ロケの方が心配で」  
すかさず社がニヤリとする。  
「キョーコちゃんのことがそんなに心配なんだ〜?」  
「社さん。この分だと今日の撮影続行は無理でしょう。  
 このままだとダークムーンの撮影進捗の方に迷惑がかからないかと」  
間髪いれず切り替えした蓮の反応が面白くなかったのか、  
社は子供のように拗ねながら手袋をはめた。  
「…ちぇ…面白くないなぁ。ちょっと現場に状況聞いてみるよ」  
言った後、またニヤリとした。  
「ついでにキョーコちゃんの様子も聞いておこうか〜?」  
「つまらないこと言ってないで電話するならさっさとしてください」  
蓮は表情を変えずに社をあしらったが、心の中では波立っていた。  
 
 
 あの子、今頃どうしてるんだろう。  
 他の出演者たちと上手くやっているんだろうか。  
 軽井沢の雰囲気に飲まれてはしゃいでないかな。  
 メルヘンの世界に飛んでなきゃいいんだけど…  
 
 
「ええぇ!?そんなことが…」  
社の素っ頓狂な声が、蓮の思考の底から引き上げた。  
 
通話の切れたケータイを片手に、社の笑みは引きつっている。  
「たた大変だよ!蓮!!悪い予感が当たってしまってるよーー!!」  
「まさか…」  
知らず知らずのうちに蓮の手は固く握り締められていた。  
「偶然スタッフが目撃したみたいだけど…聞いたら百瀬さんも現場に居合わせたみたいで」  
泣きそうな顔で社が叫んだ。  
「まさか本当に不破が軽井沢に来ているなんて…!!」  
 
 
 天使の体がゆっくり傾いでいく  
 細い両腕の先にあるのは黒い悪魔――  
 
 何度も見たせいか、脳裏にくっきり焼きついている。  
 目を閉じれば容易に蘇る、あの子を見る不破の表情…  
 
 
沖縄来てからというもの、蓮は出立前夜に見た不破尚のPVが片時も頭から離れなかった。  
何度もリフレインして、そして不破の驚いた表情が最後に出てくる。  
ただでさえ、不破の彼女に対する気持ちの変化という不安要素が連を苛んでいたのに、  
そこへ来て神の悪戯としかいいようのない偶然。  
もう、居てもたってもいられなくなり、蓮は思わず立ち上がった。  
「社さん、少し離れます」  
社の返事を待たずに、蓮はホテルの方へ走り去った。  
「あーあ、ありゃ相当重症だな」  
社は思わず嘆息した。  
 
結局、蓮の写真撮影は丸2日を費やしてしまい、合流のタイミングも  
見積もっていた最大の遅れをとってしまった。  
ショータローの軽井沢入りの事実を聞いた直後に、蓮はキョーコのケータイに電話したが繋がらず、  
その後撮影が再開したので、ついにかけ直すタイミングを失ってしまったのだ。  
その間またしばし歯がゆい思いをし続けなければならなかったのだが、  
逆に繋がらなかったことで、少し冷静さを取り戻すこともできた。  
蓮は今、自分を辛うじて抑えている。  
堰を切って問い詰めてしまわないようにするのは至難の業だった。  
例え声のみの電話であっても。  
 
 
そして沖縄入りから3日目の早朝。  
撮影を終え、ようやくフライトの待ち時間で空港から電話を入れることができた。  
もう数時間で会えるはずなのに、やはり少しでも気持ちを落ち着かせたい。  
「敦賀さん!どうですか、沖縄の撮影は順調ですか?」  
思いのほか元気な声のキョーコに、蓮は逸る気持ちをどうにか抑えた。  
「さっき終わったよ。予定より遅れちゃって。  
 今からこっちを出て、そっちに合流するよ。  
 最上さんこそ変わりない?」  
「ハイ、順調に取り終わっています。後は嘉月の到着を待つばかりです!」  
探りを入れる蓮の気持ちとは裏腹に、ロケの進捗に対する答えのみが返ってきた。  
「そうか、スタッフにも迷惑をかけてしまったね。向こうに行ってから大変かな」  
「フフ、敦賀さんなら一発オーケー出してもらえるんで、始まれば滞ることはないですよ〜」  
「…そうかな。確か撮影は軽井沢入りから2日目だったよね。  
 空き時間に軽井沢を見て回ったりした?」  
「百瀬さんと少しホテルの周りを散策したりしましたよ。  
 雰囲気がちょっと懐かしくて。で…」  
一瞬の空白があった後、受話口からキョーコからの不機嫌な空気が吹き出す。  
蓮の表情が一瞬、暗く翳った。  
「いえ、何でもないです。害虫をいくつか目撃したもので…気になさらないでください」  
いくつか、というのが連にはひっかかったが、これ以上突っ込むこともできない。  
「…そう…都会にはない悪い症状をもたらす虫もいるから、充分気をつけるようにね」  
「はいっ!敦賀さんも気をつけて、早くいらしてくださいね!待っています」  
キョーコは言葉どおりに意味を捉えただろう。  
しかし、そのことがますます蓮を焦燥感に駆り立てた。  
一刻も早く彼女に直接会って、不破と何ごともなかったのか、確認したい。  
そんな思いで埋め尽くされている自分自身にハッとし、蓮は愕然とした。  
 
 
 俺は…もう完全に蝕まれているな…  
 声を聞くだけでもこんな調子なんだ。  
 この状態で今あの子にあって、自分を抑え続ける自信など…ない。  
 
やっとのことで蓮と社が軽井沢に合流したのは、午後を少し回った頃だった。  
遅れを取り戻すべく、蓮は現場に到着して休む間もなく嘉月の単独シーンを2カット撮り、  
引き続いて、美月たちとの絡みシーンを何カットか撮り終えた。  
到着直後に挨拶は交わしたが、キョーコとまともに向き合ったのは、夜の9時頃、  
ホテルに引き上げてからだった。  
 
キョーコは特に変わった様子もなく、むしろ軽井沢の澄んだ空気を吸って、  
イキイキとしていた。  
「敦賀さん、本っっ当にお疲れ様です!」  
先に現場を引き上げていたキョーコが、ロビーのソファから勢いよく立ち上がる。  
「キョーコちゃんもお疲れ様〜!もしかして、蓮を待っててくれたの?」  
満面の笑みを浮かべた顔の社が、疲れを忘れたかのようにキョーコに駆け寄る。  
「はい…!社さんもお疲れ様です!お二人ともあちこち移動、大変だったでしょう?」  
「うん、でも今日は飛行機とタクシーのみで移動だったからね。  
 蓮に運転させない分、まだよかったよ」  
「そうですか。ところで敦賀さん。沖縄ではちゃんと食事、されてました!?  
 …敦賀さん?」  
キョーコの呼びかけに、ハッと蓮は我に返った。  
「私の顔に何かついてます…?(もしやまた死相とか…)」  
顔を引きつらせるキョーコに、蓮は慌てる。  
「いや、元気そうだなって思って。わざわざ出迎えてくれてありがとう。食事は…」  
と、語尾を曖昧に濁す。  
無意識のうちに見入っていた、なんて言えるワケがない。  
その表情から、会わなかった間の手がかりや、痕跡、少しの変化も見落とすまいと。  
「やっぱりまたコンビニおにぎりとかですか!?」  
「ハハ…ちょっと暑さにやられて食欲なくてね」  
さらりと誤魔化したつもりだが、役者・敦賀蓮とは思えないぎこちなさを有していた。  
 
「そう思って、実は…」  
キョーコは、持っていた両手ほどの大きさの包みを差し出した。  
「待ち時間が出来た時を狙って…たいしたものは作れなかったんですけど…  
 良かったらお夜食にでも食べてください」  
「…わざわざ合間に作ってくれたの?」  
「材料もあまりなくて、カンタンなものなんで恐縮なんですが」  
と、照れ隠しにはにかみながら、キョーコは付け加えた。  
思いもよらぬ不意打ちに、蓮は体中に温かいものが染み渡る気がした。  
「ありがとう」  
受け取るその表情は、骨までとろけるような極上の笑顔だった。  
キョーコは怨キョが何匹か焼かれるのを感じたが、  
思い出したようにさらにカバンから同じ包みをもう1つ取り出す。  
「よかった…あの、社さんもどうぞ」  
ニコニコ様子を見守っていた社はぎょっとする。  
室温が急激に下がったように感じるのは気のせいではない。  
「え!?…あ、あの、ありがとう、キョーコちゃん」  
まずいんじゃないの〜?と狼狽しながら社も包みを受け取る。  
ちらりと横に視線を遣ると、既に似非紳士スマイルの仮面をつけた蓮がいた。  
「最上さん、疲れてるだろう?そろそろ休んだ方がいいんじゃないかな。明日も早いしね」  
キョーコは蓮の急変についていけず、困惑の表情を浮かべたが、  
ここは疲れた蓮を気遣い大人しく引き下がる。  
「いえ、私よりも敦賀さんこそ、今日はゆっくり休んでくださいね!」  
「はは、わかったよ…」  
と言いかけた蓮の視線がある一点で釘付けになる。  
既に隣の社はあわあわとパニックを起こしかけている。  
一変した蓮の表情に、キョーコは思わず息を呑んだ。  
今まで見たこともないような、氷のように鋭く暗い表情だが、  
その瞳の奥には煮えたぎるマグマが垣間見える。  
怪訝に思い、キョーコは鋭い視線を送るその先を振り返った。  
 
「!!!!???」  
ショータロー、あんた何でここに、と続けたかったが、驚愕のあまり声が出ない。  
キャップをかぶり、ラフだが芸能人であることを意識した格好をしていた。  
手ぶらでこの時間にフロントに居るなんて、どう考えてもこれから外出しますよ、という状況だ。  
まさか、同じホテルに宿泊してるなんて、想像だにしていなかったキョーコは、  
動揺を隠し切れない。  
程なくショータローもキョーコに気づき、一瞬目を見張る。  
が、隣に並ぶ蓮を見た瞬間、すぐさま眼に危険な炎をちらつかせ、自嘲的な笑みを浮かべた。  
ポーンと音が鳴り、ロビーのエレベーターの扉が開いた。  
「尚、ごめん、お待たせ…!?」  
そう言ってエレベーターから降りてきた祥子が、ただならぬ空気を察知して足を止めた。  
「ぎゃっっ!!キョ、キョーコちゃんもこのホテルだったの!?!?…え!?つる…」  
『賀蓮まで…!?』と残りの言葉は何とか大量の空気の塊と一緒に飲み込んだ。  
今までにかいたことのないイヤな冷や汗が、祥子の背中を伝う。  
一触即発しそうなこの状況をなんとか打開しようと、  
とりあえずマネージャーとして蓮たちに挨拶した。  
「あ、お、おはようございます。不破尚のマネージャーの者です。  
 ドラマの撮影なんですってね。私たちもちょうどレコーディングに来てるんですよ。  
 偶然ですね〜同じホテルなんて〜オホホ。  
 では私たち、これから食事にいきますんで、失礼しますね!!」  
一息に言い切った祥子の精一杯の笑顔は、史上最高に引きつっているであろう。  
蓮を睨み付けて微動だにしないショータローの腕を必死の思いで取った。  
「いやぁホントこんなことってあるんですね〜ではごゆっくりどうぞ〜!!!」  
このまま帰ってこなくていいからなぁ〜!と心の中で叫びながら、  
社も同様に大量の汗を掻きながら、最高の作り笑いで応える。  
祥子に引っ張られながらショータローは出口に向かったが、蓮達に一番接近した時、  
急にピタリと立ち止まった。  
 
祥子は肝が冷える思いがした。  
「アンタ…この間もキョーコと一緒にいたよなぁ?  
 同じ事務所だからってコイツの面倒みなきゃなんないなんて、  
 先輩のメンツ保つのも大変だな」  
ショータローは剣呑な笑みを浮かべながら口火を切った。  
その瞳は真っ向から蓮を睨みつけ、今にも噴出しそうな炎を燃やしている。  
祥子と社の心臓が数mほど飛び跳ねた。  
嫉妬の眼…蓮にはそうとしか映らなかった。  
蓮はスッと一歩前に出た。  
「彼女は優秀だから教え甲斐もあるし、一緒にいるだけでいい刺激を与えてくれるよ。それに」  
蓮は薄く笑い、さっき渡されたばかりの包みを軽く持ち上げる。  
「料理も上手いしね。彼女の魅力を見抜けなくて残念だったな」  
そういって、ショータローの眼を見据えた。  
その眼力にショータローは思わず仰け反ってしまう。  
視線が熱風を伴ったかのようだった。  
あまりにも美しく光を放つその瞳の奥には、臨界寸前の核爆発を思わせる輝きが凝縮されていた。  
「尚、行くわよ!!!!」  
祥子は悲鳴に近い声を搾り出した。  
一刻もこの場から立ち去りたい祥子は、ショータローの大きな体を半ば引きずりだすかように、  
ホテルを出て行った。  
 
トゥルルル―…トゥルルル―…  
ホテルの一室のルームフォンが鳴り響く。  
シャワーを浴びて髪を拭いていたキョーコは、何度目かのコールで気づき、  
とりあえずバスローブを引っ掛けて、慌てて受話器に飛びついた。  
「ふはぁーい!!」  
「………最上さん?」  
「…敦賀さん…ですか!?」  
既にもう11時を回っており、そろそろ明日の早朝ロケに備えて休まねばならない時間だ。  
それよりも、今、蓮から電話がかかってくるということがキョーコには恐ろしい。  
部屋に戻る前の蓮の態度が脳裏に浮ぶ。  
「ごめんね。もしかしてもう寝てた?」  
言葉はいつも通りの気遣いなのだが、口調がいつもと違い暗いものだった。  
何故だか、キョーコの鼓動は一瞬早くなった。  
「…いえ、今お風呂から上がったところです…あの…どう…かされたんですか?」  
少しの沈黙の後、低い声が応えた。  
「じゃ後で」  
「え…?」  
キョーコが返す間もなく、そのまま電話は切れた。  
受話器を持ったまま、何がなんだかわからないまま呆然とする。  
先ほどの一連の出来事が蘇ってきた。  
 
「すみません!!!敦賀さん!!」  
ショータローが出て行ったあと、背中を向けたままの蓮に、キョーコは反射的に頭を下げた。  
「アイツあんな失礼なことを敦賀さんに…本当に申し訳ありませんでした!!!」  
目の前で暴言を吐くショータローに何も言えず、悔しくて腹ただしくて、  
怒りと憎さのあまり涙がこみあげてくる。  
「どうして最上さんが謝るの。気にしてないからいいよ」  
蓮は依然としてキョーコの方を振り返らず言った。  
声音には、不機嫌さをまとわしていた。  
それはキョーコがショータローに成り代わって詫びることに対してだった。  
しかし、単にショータローの取った態度へのものと勘違いしたキョーコは、  
焦ってますます言い募った。  
「いえ…今から行ってアイツに謝らせます!!」  
「そんなことはしなくていい」  
遮るように蓮はキョーコへ振り返った。  
蓮と目が合い、キョーコは思わずドキっとする。  
その表情は先の冷酷なものとは違い、その瞳は暗く燻った翳りを帯びていた。  
 
 
 敦賀さんは、疲れたから、と一言だけ言って、すぐに部屋へ引き揚げて行ったけど…  
 一度も私の方を振り向かず、行ってしまった。  
 やっぱり…ショータローのせいで怒ってるよね…?  
 どうしよう…  
 でも、「後で」っていうのはどういうこと…?  
 
 
明日というようなニュアンスではなかった。  
まさか、と思った瞬間、ドアをノックする音がした。  
「!!!!」  
キョーコは飛び上がった。  
急かすように、再びノックがある。  
「は、ハイ…ただ今!!」  
ドアを開けると、長いすらっとした足が見える。  
恐る恐る見上げた先には、キョーコが予想した通りの端整な顔立ちがあった。  
「敦賀さん…」  
 
蓮は黙ったまま、ドアの隙間からするりと身を入れると、すかさずドアを閉めた。  
キョーコは目を白黒させる。  
「つ、つ、つ、つる…!!?」  
蓮は相変わらず何も言わず、静かに、と言わんばかりに、  
そっとキョーコの唇を人差し指で牽制した。  
キョーコはすぐ目の前に立つその美貌を仰ぎ見、軽く目を見開いた。  
口元に当てられたその手が、あまりにも冷たかったからだ。  
「誰かに見られたらさすがにマズイからね」  
そういいながら、後ろ手に回した左手でガチャリと鍵を回した。  
蓮の行動が全くわからず、キョーコは混乱していた。  
「つ、敦賀さん…ど、どうされたん……!?」  
やっとのことで言葉になったが、蓮と目が合った途端、キョーコは息を呑んだ。  
その瞳には魔力が宿っているかのように煌々と輝き、怪しく魅惑的だった。  
耐え切れず、反射的に視線を逸らした。  
「聞きたいことがあってきたんだ」  
その声は低くて、どこか官能的な響きを有している。  
正常な判断を狂わせる、悪魔の誘惑ような危険な匂いがした。  
「不破のこと、どう思ってるの?」  
「……!?」  
キョーコは言葉を発することが出来ない。  
目を泳がせながら、質問の真意を探ろうとする。  
しばし沈黙が支配した後、やっとの思いで口を開いた。  
「…敦賀さん、どうかされたんですか…!?」  
蓮はなおも続ける。  
「不破は君のなんなの?」  
「…あ、あの、ショ、ショータローのヤツが敦賀さんに対してあんな態度を取ったことは、  
 本当にすみませんでし…」  
「そんなことはどうでもいい」  
狂気を孕んだその瞳に射すくめられ、キョーコはもはや何も言えなかった。  
「さっきも言ったよ。何で君が不破のことを謝る?  
 俺が聞いてるのはそんなことじゃない。  
 それとも、そんなに君は不破を庇いたいの?」  
じり、と蓮とキョーコの間合いが縮まった。  
 
このシングルルームの入り口は狭く、キョーコは壁際に背中を預け、  
蓮とほとんど体が密着しそうな距離にいる。  
キョーコはたまらず、部屋の奥へと逃れようとした。  
しかし、その行動を先に読んでいた蓮は、逃すまいと両腕で檻を作る。  
移動しようとした反動で、キョーコと蓮の体がわずかに接触する。  
その手と同様、体も驚くほど冷え切っていた。  
よく見るとうっすら髪が濡れている。  
シャツとパンツは先ほど見たものとは違うものを身に着けていたから、  
おそらくシャワーを浴びたのだろう。  
が、湯上がりの印象はなく、まるで冷水を被ったようにも見受けられた。  
「…敦賀さん、ホントにどうされたんですか?敦賀さんらしくないです」  
いつもとはあまりにも様子が違いすぎる蓮に、キョーコは戸惑いを隠せない。  
「君さ、今、この状況、わかってる?」  
「……え……?」  
蓮の長い綺麗な指がキョーコの耳朶に伸びる。  
すっと触れ、そのまま軽く頤(おとがい)をなぞり、そしてキョーコの唇に辿りついた。  
先ほどとは違い、ゆっくりと親指で慈しむように捕えた。  
「俺はね。君のこの唇から不破の名前を聞くたびに」  
蓮の指が離れる。  
「君をどうしてやろうかと思うよ」  
夜の帝王を思わせる、あまりにも淫靡な笑みに、キョーコは全身の力が抜けていく気がした。  
「俺以外の男のこと、考えられなくさせてみせる」  
そう囁くようにいい、蓮はキョーコをじっと見つめながら、そのままゆっくりと体を寄せ、  
禁断の果実を口にするように、その唇を塞いだ。  
もはやキョーコは目を見開いたまま、動くこともできなかった。  
今、自分に何が起きているのか理解できないというように、小刻みに瞳が震える。  
ほんの数センチの距離で見る、その形のよい切れ長の瞳は、何故だか懐かしい瞳を想起させた。  
ただ唇と唇を重ね合わせていたのは、ごく短い時間だった。  
だが蓮にとってはキョーコとの初めて交わす口付けは神聖なもので、  
とても長い時間のように感じられた。  
そして禁忌に触れた後、悪魔と化してゆく自分を、まるで他人事のように  
意識の遠くからスローモーションで眺めていた。  
 
キョーコの目がさらに大きく見開いた。  
唇を割って、蓮の舌が侵入してきたのだ。  
「……!!?」  
初めてのことに、両手で蓮の体を力いっぱい押して抵抗した。  
が、それ以上の力で押さえ込まれ、全く歯が立たない。  
蓮は、キョーコの瞳の奥底を覗き込むように、キョーコから視線を外さない。  
蓮の舌が縦横無尽にキョーコの口内を動き回る。  
歯列をなぞり、舌を絡ませ、唾液を混じり合わせ、淫猥な音がかすかに聞こえる。  
深くまで差し入れられた蓮の舌に、キョーコは息苦しさを覚え、  
思わず鼻腔と喉の奥から声が漏れた。  
「……ん……ふっ………」  
決壊した堤防から鉄砲水のように溢れ出した欲望は、歯止めも効かず、  
激しさを増すばかりだった。  
徐々に思考も乱れ始め、キョーコはただただ蓮のされるがままになっていった。  
 
貪るようにキョーコの舌を味わった蓮は、ぐったりとしたキョーコの背中に手を回し、  
足を取って抱き上げた。  
そして、そのままベッドの上へと抱き降ろす。  
蓮の体には少々狭いシングルベッドが、二人分の体重を受け、みしりと鳴った。  
事態の展開についていけず、抵抗することもできないまま、  
キョーコは激しい口付けの余韻に朦朧としていた。  
蓮とは対照的に、キョーコの体は風呂上りの残滓をまとって火照っている。  
またそれが、蓮の欲情を煽り立てた。  
自らのシャツをすばやく脱ぎ捨て、引き締まった上半身をあらわにし、  
蓮は再びキョーコの唇を捕えた。  
今度は目を閉じて、キョーコの舌をたっぷりと味わう。  
キョーコは薄く目を開けていたが、蓮の長いまつげと、  
きつく顰められた整った眉根をぼんやりと見ていた。  
 
 
 敦賀さん…どうしてこんなことを…  
 
 
だが思考はそれ以上固まらず、気づくと蓮の唇は離れて、キョーコの耳元に寄せられていた。  
「君の体は温かいな…」  
そう囁いたあと、耳の中に温かいものが侵入してきた。  
「……うん……あぁっ…!!」  
意識せず出てしまった自分の声とその大きさに、キョーコは自分自身に驚いてしまった。  
キスもおろか、男性に抱きしめられたことのない男性に免疫のないキョーコが、  
耳の中を舐められるなんてことは、想像だにすることもできないことだったのだ。  
「……つる…がさん…!!…やめ…やめて!!」  
うっすら涙をにじませるキョーコに、ますます煽られる。  
「耳、そんなに感じるの?」  
悪魔のような笑みを口元に浮べた。  
「もっと声、聞かせて…」  
その熱い吐息と囁き声だけでも、キョーコに先の快感を思い出させるには充分だった。  
「……つ、つるがさ…あぁっ…あぅ…ううぅ!!」  
しかしその意識もすぐに散り散りになってしまう。  
両肩を押さえつけられ、足の間には長い蓮の片足でロックされて、身動きできない。  
くすぐったいような何ともいえない初めての感覚に、首をすくめてしまいたくなるが、  
蓮はそれすらも許さなかった。  
さらに刺激を与え続けられ、やり場のないキョーコの両手は空を掻いていたが、  
蓮の肩にたどり着くと、力を込めて縋り付いた。  
 
耳の後ろや首筋に唇を這わし、もう一度、口付ける。  
その間に、キョーコのバスローブから覗く鎖骨に手を這わすと、襟元をはだけさせた。  
キョーコの小ぶりだが形のよい膨らみがあらわになる。  
「……!!」  
そして、唇を塞ぎ続けながら、壊れ物を扱うかのように、やさしく撫で回した。  
その頂にある飾りに触れるたび、キョーコの息が跳ね上がる。  
だんだんと間隔を狭めるように、その頂点だけを刺激しはじめた。  
「…っ!!」  
ようやく唇を解放した蓮は、目線はキョーコの顔から外さず、顔を膨らみの頂へと移動させる。  
手は全身の凹凸を隈なく調べるかのように、滑らし始めた。  
脇の凹み、脇腹のくびれ、臍のくぼみ、腰骨の張り出し、腿の膨らみ…。  
ひとつひとつの形を念入りに触覚で確かめるかのようだった。  
そして、膨らみの頂にある、薄い桃色の尖った突起に舌先を伸ばした。  
 
「…敦賀さん…!いや……!!やめてください…」  
自由になったキョーコの口から抗う言葉が飛び出す。  
もちろん、蓮はまったく聞く耳をもたず、攻撃の手は緩めなかった。  
しばらく舌先でくるくると一番敏感な突起の先端だけを軽く刺激し、反応を伺う。  
「…っ……ぅぅ……ふっ…」  
嬌声とは言えない、小さな吐息で時々喘ぐ。  
それがまた蓮には新鮮で、もっと乱してやりたいという欲求を駆り立てた。  
突起を口のなかに含んで、粘膜と舌で擦るように転がし始める。  
時折甘噛みし、唇で挟み、舌で玩びながら堪能した。  
「……ぁ…いやっ……」  
そうして舌で乳房を楽しみつつ、その手の矛先はついに不可侵の場所へと向けられた。  
バスローブは帯の部分のみキョーコの体に巻きつき、裾はというと、  
蓮の愛撫に抗う動きによってに既に肌蹴て乱れていた。  
しかも風呂上りに飛び出したままなので、もちろん下着は身につけていない。  
裾から覗く薄い茂みに、蓮は目を細める。  
唐突に舌での愛撫を止め、三度キョーコの唇を奪う。  
 
 
 俺だけを感じているその表情を、一番近い距離で見たい――  
 
 
口付けながら、柔らかい猫の毛並を思わせる茂みを、  
愛おしさを込めて繰り返しそっと撫でた。  
ビクっとキョーコの体が震える。  
そしてゆっくりと、その茂みの中へ指を潜ませていった。  
 
すでに湿り気を帯びた秘境は、滑らかになっている。  
何かを探るように、指が渓谷の窪みを行ったりきたりしていたが、  
そうこうするうちに、手前に小さなルビーの原石を探り当て、そこで止まった。  
触れた瞬間、肩にかけられたキョーコの手に一層力が込められる。  
蓮は、ルビーを優しく捏ねるように刺激した。  
キョーコの腰がふるふると揺れ、少しずつ堅固な砦は開いていった。  
脳の芯が痺れ、初めての快感にその目は虚ろになっている。  
そうしてわずかに緩んだ足の付け根が閉じないよう、自らの足で固定し、  
際限なく蜜が湧き出す泉の周辺を指先で円を描いた。  
そして、泉の中へゆっくりと人差し指を沈めた。  
もはや拒むこともなく、すんなりと蓮の指を受け入れる。  
襞を擦り、肉壁を指の腹で軽く引っかき、充分に綻んだのを確認すると、  
そのまま2本・3本と沈めて、めちゃくちゃに掻き回した。  
眉根を寄せ、羞恥に全身を上気させたキョーコの姿に、蓮の体中の血液が一点に集中する。  
不意にキョーコから蓮が体を外した。  
キョーコは次の成り行きを見守るかのように、潤んだ瞳で蓮を見つめた。  
が、ハッと表情が引き締まる。  
「……!!!」  
蓮が細身のパンツのジッパーを降ろし、自分自身を解放していた。  
ようやく外に出れたと、はちきれんばかりに主張しているそれは、  
狂おしいほど猛々しく天を突いていた。  
蓮が取り出したものの大きさに、キョーコは目を見張る。  
これから自分の身に起こる先行きのつかない展開に、その瞳には恐怖の色を浮かんでいた。  
蓮はゆっくりと、キョーコの誰も迎え入れたことのない場所へピタリとあてがった。  
「…お願い、やめて!!」  
同時に近づいてきた蓮の唇を逃れ、イヤイヤをするように、首をねじった。  
蓮の視線からも逃れるように、顔を背ける。  
「…私……こんなこと…もう、どうしていいかわからないです…」  
涙声だった。  
 
「今の敦賀さんは知らない人みたいです…それに…男の人がこんなことするなんて、  
 初めて知ったから…キスもしたことないのに…私、なに言ってるんだろ」  
蓮の動きが止まった。  
「敦賀さんのこと、とっても尊敬していて……だけど、今の敦賀さんは怖いです。  
 いえ……本当は…少し前から敦賀さんと会うことが怖かったんです」  
どうして、と促すように蓮はキョーコの顔を見つめた。  
「…コーンに…悪い魔法をかけられてから…」  
「悪い……魔法?」  
キョーコは意を決したように、話し始めた。  
「…そうです。演技テストの日、敦賀さんがコーンにキスしたのを見た瞬間、  
 心の中が妙にざわついて…。  
 私の決心を、それを覆す程の力があるような気がしたから…」  
蓮は躊躇した。  
 
 
 それは、どういう意味なんだ…  
 俺を意識してるってことなのか…?男として…  
 
 
「さっきショータローが暴言を吐いたときも、敦賀さんが傷つけられたってことが  
 許せなかったんです…ショータローが言ったってことより、何よりも。  
 それも私なんかのことで…」  
そしてキョーコは蓮へ顔を向けた。その瞳はまっすぐに蓮を見ていた。  
「私、正真正銘、ショータローのことはもう何とも思ってないんです!  
 アイツとこれ以上係わるつもりもまったくなくて。  
 庇うなんて意味で言ったんじゃないんです。  
 本当に、敦賀さんのこと、あんな風に言われたことが悔しくて…」  
蓮は堪えきれず、細く小さな体をぎゅっと抱きしめた。  
「…キョーコちゃん…ごめん…!」  
キョーコはこぼれ落ちそうなほど目を見開いた。  
そしてその瞬間、今までまったく想像だにしなかった考えが頭を過ぎった。  
 
 
 敦賀さんの好きな相手って……高校生……まさか…!?  
 
 
そうだとすると、今までの一連の行動には合点がいくではないか。  
そして、そう考えた後は、キョーコを先ほどまで支配していた恐怖感はどこへやら、  
何故だか心臓のリズムが早くなっていった。  
「俺は……なんてバカなんだ……」  
蓮の体温と鼓動を感じ、不意に温かい感情がキョーコの体に流れてきた。  
ショータローにも抱いたことのない、初めての感情だった。  
自分でもよくわからないが、目の前にいるこの人を慰めたい、そんな思いがキョーコを包んだ。  
優しく蓮の背中に手を回し、そっと撫でる。  
「…あの………私…敦賀さんにキスされるの、いやじゃなかったです…」  
頬を赤らめ、恥じらいながらつぶやいた。  
驚いた表情をする蓮が可笑しくて、キョーコは思わず微笑んだ。  
それを見た瞬間、蓮の中で燻っていた何かがバラバラに弾けた。  
黒い感情が洗い流されて、胸を焦がす熱いものが体中に染み渡る。  
 
 
 ああ、俺は本当にバカだな…  
 もうどうしようもないくらい、君が愛しい…  
 
 
気づくとキョーコの唇を塞いでいた。  
先よりももっとずっと熱っぽく激しく吸いたてる。  
そして、もうキョーコの全てを自分のものにしたい気持ちを抑えきれず、囁いた。  
「…君を俺のものにしていい?」  
じっと見つめる蓮の瞳の中に優しさを見つけ、キョーコはほっと安堵した。  
そうして真っ赤になりながら黙って小さくうなずいた。  
 
再び自身をあてがうと、キョーコが不安そうな目をする。  
「大丈夫、俺に預けて」  
ゆっくりと蓮はキョーコの中に身を沈めていった。  
「…うぅ……ん……」  
先端の括れまでが侵入し、そこからは徐々に太さを増していく。  
「……あ!痛っ……!」  
「…もっと力を抜いて」  
苦痛に顔を歪めるキョーコに、蓮はあちらこちらに口付けをしながら意識を逸らしてやる。  
やはり初めてだけあって、キョーコの中はかなりの狭さだった。  
もともと体の小さなキョーコと、ただでさえ日本人離れした蓮のものは、  
互いに受け入れられる許容量のギリギリだった。  
何ひとつとて隔てるものはなく密着している、この体と体。  
キツイ締め付けに、蓮の意識はそれだけで弾け飛びそうだった。  
「…入ったよ……」  
そっとキョーコの腹部に手をあて、撫でる。  
まさにこの中に自身が入っていることに、何とも言えない感慨を覚えた。  
「…つ、るがさん……!」  
キョーコは蓮の背中に両腕をまわして抱きついた。  
キョーコ自身にも、この隙間なく繋がっているという思いがそうさせたのだろう。  
互いに唇を寄せ合い、上も下も深く繋がる。  
そうして蓮はゆっくりと腰を動かし始めた。  
 
「……うぁ……はぁっ…!」  
小さく呻くキョーコの様子を見ながら、キョーコの感じるポイントを探す。  
「……あっ!」  
角度を変えながら突いていくと、ところどころ嬌声に変わる部分に出会った。  
念入りにその箇所を探り当てると、突き上げた瞬間、キョーコの表情が艶っぽく乱れる。  
蓮はそれを見逃さず、その箇所目掛けて激しく突き上げた。  
「……はぁっ……ん……」  
その快感に彩られた表情が、ますます蓮の容積を膨張させる。  
何度も何度も楔を打ち込まれ、甘い痺れがキョーコを襲う。  
「ふっ…ふぅっ…」  
喘ぐ声がだんだんと短くなり、キョーコは快感の波にさらわれそうになった。  
「……つ、るがさん…何か変な…感じ…」  
快感で満たされた蓮の表情は、ゾクゾクするほどの色気を放っていた。  
「…わたし……何か変……つ、つるがさ……」  
「…はっ……俺も…もう…」  
「…あっ……あっ…!!」  
蓮の顔が最高に色っぽく歪み、思わず声が漏れる。  
「……くっ…」  
蓮のわずかな喘ぎ声を聞いた瞬間、キョーコは視界が真っ白になった。  
体がガクガクと震え、脳の核から全ての感覚がスパークした。  
蓮は激しく収縮するキョーコの中に、白濁した欲望を最後の一滴まで放つ。  
そして熱いものがキョーコの体を支配した。  
蓮はまだ熱を持ったまま、強張りの収まらない自身をキョーコの体から引き抜いた。  
そして、息の上がって焦点の定まらないキョーコに優しく口付けし、強く強く抱きしめた。  
 
 
 キョーコ…大好きだ……!  
 
 
「体、キツくない…?」  
心配そうに蓮はキョーコを覗き込む。  
「な、何とか大丈夫です。あっ…!」  
そう言うなり立ち上がろうとして、よろめいてしまう。  
素早く蓮は体を支えた。  
もうお互いの体温をしっかり吸収しており、差し伸べた蓮の腕は力強く温かかった。  
「…生理、いつ?」  
唐突に質問され、キョーコは面食らう。  
「あ、え…!??あの…」  
「大事なことなんだ」  
「…あ…の……予定ではもうすぐ…です…ハイ」  
最後の方は消え入るように応える。  
「そう……じゃあ大丈夫かもな」  
少し安堵の表情で蓮はつぶやいた。  
理性が飛んで勢いに任せたとは言え、避妊もせずに行為に及んでしまった。  
彼女のこれからの女優人生を狂わせるわけにはいかない。  
そうやって、我が物にしてから冷静に判断する自分の身勝手さに自己嫌悪した。  
「シャワーでしっかり流してね。あ…俺が流してあげようか」  
そう言って蓮は意地悪く笑った。  
「…敦賀さん…!」  
頬を膨らませ、顔を真っ赤にしてむくれる。  
「何かあったらすぐ言ってね。俺はいつでも受け入れられるから」  
真摯なその眼差しに、キョーコはドキっとした。  
「…ハ、ハイ……」  
慌ててシャワー室へと飛び込もうとしたが、蓮はキョーコの腕を離さない。  
そしてそのまま抱き寄せた。  
「もう誰にも渡さない」  
 
 
 悪い魔法なんかじゃない…  
 こんなに胸が温かく優しい気持ちになれるもの…  
 
 
そう思ったキョーコの頬に、一筋の涙が伝った。  
 

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