「キョーコちゃん、お疲れさま。今日も突っ込み絶好調だったね!」  
 
きまぐれロックの収録がなんとか終わり、ほっとため息をついたキョーコに声がかかる。  
ブリッジロックのリーダーだった。  
「あ・・お疲れ様です」  
慌てて坊の頭をはずし、ペコンとお辞儀をしたキョーコだったが、リーダーの手にあるものを見て少し驚いた。  
 
それはラ○ドフリーパス招待券2枚。  
「あ・・・」  
「あ、これ、ね。昨日ちょっと知人からもらったんだけどね・・・。キョーコちゃん好きかなあって思って・・・。良かったら一緒にどう?これからならまだパレード間にあうよ。あ、でも用事があるのなら、キョーコちゃんの都合の良いときでいいからさ」  
頭をボリボリ、照れながらリーダーは早口で一気に言う。  
「こういうのって絶対キョーコちゃん好みだと思ったンだよね〜」  
 
「・・・す、すいません、実は先日デ○ズニーに行ったばかりで・・・。その時ちょっと疲れすぎてしまったので・・・私はしばらくは遠慮したいなって思ってるんです」  
 
本当は先日ではなく、昨夜のことだったのだが。  
キョーコは昨日のディズニーランドの大騒ぎと今朝の・・・のおかげか、実はまだ少し気鬱で身体がだるいままなのである。  
学校はやはり丸サボりしてしまい、下宿先で夕方まで殆ど熟睡していたのだが、微妙に疲れがとれないまま仕事に来たのだ。  
 
「え・・・そ、そうなの・・・いつ?何があったの?」  
「せ、先日です・・・。ちょっと説明しにくいんですけど・・・、あんまりはしゃぎすぎちゃって・・・思い出しても自分が恥ずかしいというか・・・。すいません、こんな理由で失礼だとは思うのですが・・。本当にすいません」  
消え入るような声で言うと、キョーコは深々と頭をさげた。  
 
「・・・・。キョ、キョーコちゃん・・・。なんか、アレだね」  
「アレ?」  
「あ、いや・・・」  
着ぐるみのままで暑かったというのもあるだろう、キョーコの頬がほんのり赤く染まり、ライトに少し光る汗が額ににじみ・・・そして疲れているのか、少し細められた目に瞳が潤んでいる。  
 
何と言うか・・・『艶めかしい』?  
 
しぐさも声の艶も、そこはかとない色っぽさが滲みでていて・・・リーダーはそれ以上キョーコに突っ込んで聞くことができなくなっていた。  
「そ、か。解った。あ、あそこ疲れるもんね、ごめんね、無理言って」  
もう一度深々と頭を下げて退場するキョーコを、リーダーは頭から湯気をだしながら見送った。  
 
「リーダー、また・・・玉砕?」  
「ディズニーで絶対キョーコちゃんのツボだと思ったんだけど。ゴメンねリーダー、俺の作戦大失敗」  
スタジオの影からこっそりエールを送っていたメンバーの2人が、こそこそとややってきた。  
 
「い、いや・・・誘って良かったよ・・・。いいもの見れた・・・」  
 
「ほへ?」  
「やば・・俺、今日ちょっと、マジやば・・・。マジ惚れするかも」  
口の中でつぶやき、ぽかんとしている2人に照れ隠しにわざと大声で  
「メシ食いにいこっか。いくぞーっ」  
とご機嫌に背中をバンバン叩いたリーダーであった。  
 
LMEに戻ったキョーコは、タレント部門に挨拶に行きその他雑務をすませて。  
そしてラブミー部の部室で一息ついた。  
 
時計は10時をまわったところ。  
 
キョーコは携帯を取り出し、留守電メッセージを聞いた。  
収録中に録音されたらしいそれは蓮からのもので、約束に遅れてしまいそうだとの内容。  
キョーコは出られなかったのを残念に思いつつ、何度もメッセージを再生した。  
 
それからは連絡はない。  
 
緑茶を飲み干すと、キョーコは蓮のナンバーをダイヤルした。  
留守電だった。  
「今晩は、最上です。遅くまでお疲れ様です。・・・今日はこれでもう帰宅します。今朝はご迷惑をおかけして大変申し訳ありませんでした。敦賀さんもお身体に気をつけてください。それでは・・・」  
いつもより必要以上に畏まったメッセージになってしまった。  
切ると、キョーコは部屋をでた。  
 
通用口を歩いていると、偶然にも社に出会った。  
「あっキョーコちゃん、お疲れ様〜〜。まだ仕事なの?」  
ニコニコ笑いかけてくる。  
蓮はいなかった。  
 
「あ、社さん、お疲れさまです。昨日は色々とありがとうございました」  
キョーコは激しく動揺しながら、挨拶をする。  
悪事をはたらいているところを、目撃された気持ちだった。  
「いえいえ、どうだった?デ○ズニー」  
「とても楽しかったです。パレード感動しました」  
「そか〜良かったね。蓮も楽しんできたようだったよ」  
「そ、そうですか・・」  
 
蓮の名前がでただけなのに、キョーコはドキドキしてしまう。  
 
「あの・・・。今日は敦賀さんは?」  
「今社長室だよ。もうすぐ戻ってくるんじゃないかな」  
「そうですか」  
それで留守電だったんだ・・・。  
 
「うんうん、時間あるならちょっと待っていったら?・・・キョーコちゃん?ちょっと疲れている?昨日のことが原因で」  
社はキョーコの目を覗き込む。  
「顔が少し赤いし・・」  
 
「い、いえ、大丈夫です。・・・でもやっぱり少し疲れたかな。今日はこれで帰ります。敦賀さんには失礼ですけど、また後日挨拶しますのでと、よろしくお伝えください」  
 
キョーコは慌てて足早に社のもとを離れた。  
蓮の名前だけで、これだけ動揺しているのに、社の前で平気で蓮に挨拶できる自信が全くなかった。  
きっと社さんに何もかもばれてしまうに違いない。  
最初に蓮と顔を合わる時は、誰か他の人も一緒にいるのはとても嫌な気がした。  
 
・・・・本当は会いたくて、たまらなかったのに。  
 
 
ビルをでて地下鉄の入り口まで行く。  
心残りで一度後ろを振り返ったが、当然誰もいない。  
残念だが仕方ないと諦めた瞬間。  
携帯が鳴った。  
「・・・もしもし」  
 
「・・・やあ、俺だけど・・・」  
 
10数分後、キョーコは蓮の車に同乗していた。  
 
「社さんはまだ仕事があるから。・・・だから待ってて良かったのに」  
ハンドルを握りながら蓮が言った。  
「すいません。遅くなってしまったし、敦賀さんもお疲れだろうと思いまして・・・」  
「君は疲れた?社さんが心配していたよ。元気がなかったって」  
「い、いえ、そんなことはないです。大丈夫です」  
 
赤信号で車を止めた蓮は、ギアをはずし、キョーコの方を見る。  
「・・・遅くなって、ごめんね・・・」  
 
手を伸ばしてキョーコの頬をなでた。  
キョーコはびくっと肩を震わせて下を向く。  
手は耳の後ろにすべり、首の後ろにまわった。  
そのまま下におろし、キョーコの左手を握る。  
 
信号は青になり、手を握り合ったまま発進した。  
「敦賀さん、片手運転は危ないです」  
キョーコは手を外そうとしたが、蓮に強く握り締められて、そのまま黙った。  
 
蓮のマンションに到着した。  
駐車場でもエレベーターの中でも、また2人は黙ったままだった。  
 
キョーコはこのまま付いていって良いものかどうか、激しく迷った。  
部屋につけば、何が始まるのか2人ともすっかり解っている。  
解っていて、黙ってついていく自分が、期待している自分が、恥ずかしくて落ち着けなかった。  
 
部屋に入るとすぐ蓮はキョーコを抱きしめてきた。  
「キョーコ・・・。逢いたかったよ・・・」  
強い抱擁にキョーコは息がつまりそうになる。  
「つ、敦賀さん・・・あの、夕食はすまされましたか?」  
「大丈夫だよ、君は?」  
「私は食べました。敦賀さんあまり食べてないのでしたら何か作りますが・・」  
話の途中で蓮はキョーコの唇をふさいだ。  
 
「・・・んっ・・・」  
激しいキスに眩暈がする。  
舌をからめとられて息が苦しい。  
唇を外し、蓮は言った。  
 
「また・・借りてきたネコ、する?・・・でも今夜は容赦しないよ。さっき君が帰ろうとしたのも許さないから・・」  
 
瞳の奥に燃える欲望を見たキョーコは全身の力が抜けていった。  
 
引き寄せた身体は柔らかく蓮の手に従順に馴染む。  
しかし、まだ戸惑いと羞恥を隠せないキョーコに、蓮にはその格差が初々しく新鮮だった。  
「今日はずっと君が頭から離れなかった・・・・こうしたかった。こうして、こうして、それから・・・」  
耳元で囁き、髪に顔をうずめてキスをする。  
キスは首筋から喉元へ、指先でボタンをゆっくり外しながら、鎖骨、胸元へ唇は降りる。  
キョーコの手は蓮の身体を形だけ押し戻して震えていたが、唇に触れた場所は熱くなり、溶けていった。  
 
蓮はキョーコを抱いたまま床に横になった。  
ブラウスは全開になり、襟元もはだけ両腕に絡まるだけになっていた。  
胸の谷間に鼻を押し付け、ブラジャーのレースを噛みながら少しずつずらしていく。  
 
蓮はキョーコの脚を膝で割り、身体を重ねた。  
「・・・・っ。つ、敦賀さん・・・・、ここ・・で・・・?・・・っ・・」  
濃厚なキスで朦朧としたキョーコもさすがに戸惑い、懇願する。  
声は掠れて蓮の耳に甘く届いた。  
 
「・・・止まらない・・」  
 
蓮はそれだけ言うと、僅かに下着からずれて覗いた乳房の中心を口に含んだ。  
「・・・っっ・・」  
キョーコの身体に電流が流れる。  
抵抗は蓮の重みで僅かに震えただけだった。  
 
蓮の指が背中にまわりホックを外す。  
解放され、ぷるんとはじけて出た小ぶりな肉を蓮は許さず、手と口で弄り、たわわせた。  
 
チリチリとした快感が走り、脊髄から腰に集まる。  
キョーコは気がつかないうちに膝に力を入れ、蓮の脚を締め付けていた。  
腕の力は抜けてしまい、蓮の肩に震えながら添えているだけになっている。  
 
蓮は赤く染まり硬くなった乳首から唇を離すと、身体をずらしキョーコの唇を再び貪った。  
 
柔らかい唇は甘くどんなに味わっても飽きることがなかった。  
本気で食べてしまいたい衝動を抑えながら、ようやく応えはじめたキョーコの舌先を優しく吸う。  
しばらくして、やっと蓮はキョーコの身体を離した。  
抱き上げてベットルームへ連れて行く。  
 
このまま最後までいきそうになったが、キョーコの身体の負担を考え何とか自制することができた。  
一度目は恐る恐る、彼女が壊れないように慎重に抱いた。  
余裕のない愛しかただったが、それだけは何とか成功した。  
二度目の今、焦る自分がなかなか抑えられずにいる。  
が、衝動に逆らえずすぐ終わらせるのは避けたかった。  
もっとゆっくりと、キョーコの身体を感じ、キョーコにももっと深い満足を与えたかった。  
 
広いベットにキョーコをおろす。  
キョーコは両手で胸を隠し、そのまま身体を横にして吐息をついた。  
蓮は自分のシャツを脱ぎ捨て、そしてキョーコのブラウスとブラジャーを彼女の両腕から抜き取った。  
うつぶせ気味になった、キョーコの両肩をそっと撫でる。  
傍らに肘をついて横になり、シーツをひきよせ、そして、華奢な背中にそっと口付けをした。  
 
「・・・・っ・・・」  
 
予想していなかった背中への愛撫に、キョーコはビクンと反り返った。  
「・・あっ・・敦賀さんっ・・・いやっ・・・」  
小さい声で抗議し、這って逃れようとするキョーコ。  
それを蓮は安々と押さえつけ、肩甲骨に舌を這わせながら、両脇から手を回し再び乳房を愛撫する。  
 
「・・・・っっ・・・ぅ・・」  
 
キョーコはうつぶせのまま、シーツを引掻き、漏れる声を押し殺した。  
他に抵抗できるすべも持っていなかった。  
 
しかしキョーコのしぐさは逆に蓮の欲望を煽り立てていた。  
どこまで我慢できるか・・・、反応を見ながらあらゆる場所に手をはわせる。  
うなじ、肩甲骨、脇腹、背筋をさがって腰骨のところまで蓮はキスを落とし、味わい、跡をつけ、甘噛みした。  
そして下着を剥ぎ取りキョーコの内股に手をかけ、すべりこませていく。  
 
キョーコはギリっと奥歯を噛みしめ両手で口を押さえた。  
 
 
「・・・キョーコ・・・熱いよ・・」  
 
耳朶を弄りながら、蓮がつぶやく。  
右腕は震えるキョーコの脚の間で動き回る。  
指が中に入った時、キョーコの腰が浮き震えた。  
今朝の痛みがピリリと来て、ほんの少し蓮の指を赤く濡らした。  
 
「あ・・・いや・・・や・・・」  
 
しかし快感は前と比べ物にならないほど強く、キョーコはかぶりをふりながらうわ言のように拒否の言葉を呟いた。  
蓮は手を離し、キョーコの身体を返して上を向かせる。  
 
「・・・嫌ならやめる?」  
じらすつもりで蓮は言った。  
が、瞳を潤ませ自分を見上げるキョーコを見て、返事を聞く前に唇を塞いだ。  
汗ばんだ身体から甘い香りがたちのぼり、突き上げる衝動に蓮の最後の理性は飛んだ。  
 
膝を開かせ、腰を割り込ませる。  
 
その瞬間キョーコは思わず声を発し蓮の腕に爪をたてた。  
初めて聞いた喘ぎ声は、ミルクを欲しがる仔猫のように高くか細い声だった。  
 
キョーコは朦朧とした意識の中で困惑していた。  
 
痛みはまだまだ強くあったのだが、それよりも重苦しく耐え難い快感が気になった。  
前は身体を重ねた事実での満足感の方が強かった。  
正直快感は殆どなく、こういうものだと思ったし、今回もそうだと思っていたのだが。  
 
蓮に覆いかぶされ、揺らされる自分の身体が、これほど熱く濡れるとは想像もしなかった。  
脚の奥の中心から滲み出る愛と欲望に意識は散り散りになった。  
身体が浮いているのか、横になっているのかすら解らなかった。  
 
自分の中で蠢く蓮が、かきあげられる髪の中の指が、鎖骨を這う唇が、腰を押さえる腕が、何もかも熱く、しびれた。  
 
「あっ・・・あっ・・・あっ・・・あっ・・・」  
 
漏れる声がキョーコ自身のものと気づいた時、羞恥で全身が震えた。  
慌てて両手で口を押さえたが、蓮に阻まれ腕を頭の両側に押さえつけられる。  
 
「・・・んんっっ!・・・んっ・・。あっ!敦賀さん・・・!んあっ・・あっ・・や、やめ・・・・はあっ・・・!!」  
 
抑えるものがなくなり、我慢もきかず、声を出し続けるキョーコ。  
 
 
まだ2度目なのに・・・いやらしい・・・っ。  
 
そう思った瞬間、キョーコの腰から脊髄へ強い快感が走りぬけた。  
「ああっ・・・!!!」  
キョーコの意志に反して背中が反る。  
全身がガクガクと震え、腿は蓮の腰を激しく締め付けた。  
 
「・・んっ・・・!」  
「キョーコッ・・・・」  
 
蓮は動きを止めた。  
キョーコの奥は、千切れんばかりの締め付けで痙攣していたが、しばらくすると絡めとられるような、うねりがやってきて蓮を包んだ。  
目の奥で火花が散ったようだった。  
今まで経験のなかった強烈な快感をキョーコの身体に感じ、蓮もはじけてしまいそうになる。  
が、何とか耐えて波が引くのを待った。  
 
 
少しずつ力が抜けて、とろんとなるキョーコ。  
「敦賀さん・・・」  
頬は紅潮し少しはれぼったくなり、瞳は潤んでいた。  
 
「綺麗だったよ・・・キョーコ」  
 
蓮は愛しさに胸を震わせ、目頭にキスをする。  
つながったまま、しばらく優しいソフトなキスを続けていた蓮は、そっとキョーコの胸に手を置いた。  
「んっ・・」  
キョーコはビクッと反応して嫌がった。  
 
快感の余韻で少しの刺激にも強く反応してしまうのだ。  
 
「んん・・・っ、や、やめて・・敦賀さん・・」  
キョーコが蓮の手を押さえる。  
「大丈夫だよ、目を閉じて、まかせて」  
 
微かな刺激を与えながら、蓮は再び動き出した。  
腰を大きく動かさずに、僅かに小さい円を描いていく。  
 
「・・・・っ」  
キョーコは目を閉じた。  
蓮がまだ終わっていないのを知り、我慢するつもりだった。  
が、しばらく身を任せていると、先ほどとはまた別の何かがザワザワと身の内に沸いてくるのを感じた。  
本当は自分は耐えているのではなく、快感を更に深く感じ取ろうとしているのではないか。  
 
キョーコは戸惑いながら、目をあける。  
蓮も恍惚とした表情で快感に耐えていた。  
目が合うと瞳を閉じて、また唇を重ねる。  
キョーコの中でじわじわと膨らんできたそれは、キスの深さと比例して再び大きいうねりとなっていく。  
 
 
吐息が抑えられず漏れ、腰が再びわななきはじめた。  
 
「あっ・・・あっ・・・あっ・・・・・。い、いやっ・・・。いやぁ・・っっ・・」  
1オクターブも高くなった自分の声に驚くキョーコ。  
「いいんだよ。もう一度・・・いってごらん」  
少しずつ蓮の腰の回転が大きくなる。  
 
静かな動きのため、腰と腰は本当に溶け合ったかのようにぴったり重なり濡れあっている。  
が、内部は蓮は更に締め付けられ、キョーコは奥に当たる熱い快感で足の先までしびれていた。  
 
「・・・んっ・・!」  
キョーコが再び息を詰まらせ、身体を震わせた。  
腰が自然に蠢く。  
 
蓮はまた動きを止め、胸に口付けをする。  
硬くしこったそれを、そっと舌の上で転がした。  
もう一つの頂には触れるか触れない程度に親指の腹で揉みまわした。  
 
「っ・・・!?」  
 
深い快感で熱いキョーコの身体が跳ね、またよじれた。  
指は休まず刺激を与え続ける。  
「あっ・・ううんっ・・・!はあぁっ」  
 
震えは止まることなく、緩急をつけて何度もキョーコを襲っていた。  
蓮のたった指1本と舌先の刺激だけで、キョーコは翻弄された。  
 
「あっ・・やめて、止めて、敦賀さん、ああんっ・・・あっ・・!!」  
 
切羽詰った声で哀願し、キョーコは耐えられず涙をこぼした。  
もう一段高い絶頂はすぐそこだった。  
 
 
「可愛いよ、キョーコ。こんなに感じて・・・。俺のものだ、この身体、俺だけの・・・誰にも触らせない、ずっと俺の・・・」  
 
やっと腰を動かし始めた蓮に、キョーコは必死ですがりつき、更に甘い声でいつまでも泣いた。  
羞恥心は完全に飛んでしまい、キョーコは蓮にあわせて動き、彼の問いに何度も何度も求められる言葉を叫んだ。  
 
 
 
 
次に気がついたとき、キョーコは蓮の腕に包まれていた。  
 
身体も心もとてもだるく、重たい。  
規則正しい呼吸と心臓の音に、蓮も眠っているのが解った。  
 
部屋は暗く、しんとしている。  
そっと動くと、蓮の腕は無意識にもっと強くキョーコを引き寄せた。  
 
「・・・ん・・・。気がついた?」  
「あ・・すいません、起こしてしまって」  
「大丈夫だよ。それより君はどう?・・・身体の具合」  
「は、はい。大丈夫です」  
 
キョーコはそっと蓮の首に顔を寄せて甘えた。  
頭を乗せた腕と合わせた胸のぬくもりが暖かい。  
幸せで胸がつまり、キョーコはまた目を閉じた。  
 
蓮は身体を寄せてくるキョーコが可愛くて仕方なく、腕に力をこめる。  
 
話があったのだが、それは明日の朝言うことにしよう。  
そう思い、蓮も目を閉じる。  
明日の朝、驚くキョーコの顔が目に浮かんで少し笑った。  
 
先ほど宝田社長に呼ばれて、昨日のデートがばれていたことを教えられたこと。  
仲間はずれにされたと拗ねられ、社長はその場でLMEの慰安としてラ○ドを貸し切ることを宣言したこと。  
ついでに君たち2人のイベントを・・・色々(話してはくれなかったが)、考えているらしいこと。  
社さんはそれが原因で、スケジュール調整のため残業になったこと・・・。  
 
 
 
 
キョーコの寝息を聞きながら、蓮も眠りに落ちた。  
心の底から安心して眠りに落ちる感覚は、生まれて始めてのことだと気がつき、愛しさに胸があふれていた。  
 
(終わり)  
 

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