レイノの一騒動から翌夜―
撮影も順調に進み、心の緊張が解けてくる。
浴衣を着て、いそいそと浴場へ向かう準備。
「百瀬さん、行きます?」
ちらっと、伺いを立ててみるキョーコ
「台詞を入れたいから…部屋のを使うかも…ごゆっくり。」
やんわりと微笑んで、脚本を睨む。
「行ってきます。」
ここ数日の習慣で、部屋の鍵を持って浴場に行く。
カチッと施錠して、パタパタと歩いていく。
「ゆっくり…考えなきゃ…」
女湯の暖簾をくぐって、脱衣所へと向かう。
誰も居なくなった浴場前―
カタンと、暖簾を男湯と女湯を入れ替える。
「これで元通りっと…感謝しろよ?蓮。」
近場の椅子に座って他の客が来ないように監視する社―
カラカラ〜っと、戸を開けると湯気で前がかすかに見える状態。
そのまま洗い場でシャワーを使って汗を流す。
不意に、昨日の事を思い出し、ボディータオルで、ごしごしと強く身体を洗う。
あの嫌な感覚―
「…っ…」
ザバッとお湯で泡を流して、そのまま露天風呂の扉を開けて飛び込む。
誰もいない浴場だから出来る事―
「あ…ご…ごめんなさい・・」
バシャっと水音が立ち、溜息が聞こえる。
呆れられた様だと、少し首を竦める。
でも、自分には――
「…気持ち…悪い…こんな…」
空を仰ぎ見ると月が浮かんでいる。
「敦賀さん…」
ぎゅっと自分の身体を掻き抱く。
「きっと…私は…」
ちゃぽっと、お湯を手に掬って月を浮かべる。
目覚め始めた感情が、幼いままで止まってはくれない。
ふわりと湯気が頬を撫でる。
「好き…」
その一言を呟いて照れて、バシャバシャと手でお湯を叩く。
ゆらゆらとお湯が揺れる。
「…君は、静かにお風呂も入れないの?」
聞きなれた声が、すぐ近く。
「へぇ??」
ゆっくりと声のする方向へ、立ち上がって近付いて見ると蓮の姿―
混乱する頭の中、バシャッと身体を沈める。
「こ…ここって・・女湯ですよね??」
慌てて、確認する。
「男湯だよ。」
「~~~~っ!!え!?で…でも暖簾が…っ」
あがろうと思うが、立ち上がって自分の裸を見せる事に躊躇する。
ぐるぐると思考が回る。
「……勢い良く飛び込んだけど、どうか・・した?」
お湯の注がれる音が、沈黙を紡ぐ。
「・・あ……わ…忘れ…たくて…」
―その一言が蓮の何かを急き立てる。
水音を立てないようにそっと、キョーコに近付く。
「感触が・・残ってる感じがして・・っ…」
心なしか声が震える。
「…へ…変な事言ってすみません…っ…」
俯いて、そのまま身体を抱きすくめる。
思い出して、余計に穴に嵌る。
キョーコの腕を掴み、自分の腕の中へ閉じ込める。
「…ごめん、思い出させて。言いたくなかっただろう?」
労わるように頭を撫でる蓮。
ほんのり色づいた肌。
上気して潤んだ瞳。
「敦賀さ……」
伺うような眼差し。
「好きだよ、キョーコちゃん。」
半ば放心したように、蓮を見つめるキョーコ。
頬に柔らかくキスを落とし、反応を待つ。
「で…でも…」
“好きな人はここでは作らない”というあの言葉が引っかかる。
「キョーコちゃんは?」
一筋の涙。
ぐるぐると、あの言葉が回っていても、自分の気持ちは正直に現れてしまう。
「好き…っ…」
言い終わるかどうか、そんなタイミングで言葉を奪われる。
啄むようなバードキス。
愛しさがより一層増す。
「…っ…ん…」
軽く、キョーコの咥内へと侵入を図る。
キョーコの舌を優しく絡め、吸い、嬲る。
お湯の熱さと、キスの激しさで頭が朦朧とし始める。
「…敦賀さ・…っ…」
はぁっと、解放された唇から甘い吐息が漏れる。
首筋に口付けを落とす。
唇が肌に触れると小さく震える肢体。
手のひらで乳房を包み込み、柔らかく揉む。
「…や・…っ…」
包み込まれた手のひらが熱くて、余計に熱さに浮かされる。
心臓が早鐘を打つ。
ふらふらと、蓮に寄りかかって身体を預けてしまう。
「キョーコちゃん??」
表情を見ると、真っ赤な顔で意識を投げている。
湯あたりしたようだ。
ザバッと露天風呂から上がり、脱衣所の籐の長いすに寝かせる。
手早く浴衣を着て、キョーコの浴衣を着せる。
「さて…」
カラカラと戸を開けると社の姿。
にっこりと笑顔を返すその顔は、期待に満ちた眼差し―
「あれ?キョーコちゃんは?」
本人同士しか知らないのに、あっさりと聞いてくる。
「…湯あたりしたみたいで…他の人に見られるのもマズイので、少しそこで監視して
てください。」
軽々とキョーコを抱えて浴場の廊下に出て、そのまま自分の部屋に向かう蓮。
「蓮?キョーコちゃんの部屋はそっちじゃ…」
ニヤニヤしながら蓮に尋ねる。
“この人は”と、突っ込みを入れたいが、キョーコが最優先。
「このまま帰したら百瀬さんが大変でしょう。だから、社さん。お願いします。」
誰がなんと言っても今の社が、一番はしゃいでいる。
「OK。連絡はしておくから。俺はその後、ラウンジで酒飲んでるよ。」
クスクスと笑い、二人が別れる。
ふわふわとした浮遊感。
そよぐ風。
「…ん…っ…」
見上げると天井―
お風呂に行っていて…それから―??
記憶が途中で抜けている事に気付く。
もぞもぞと起き上がり、ぼんやりとした頭を覚醒させる。
「気が…ついた?」
ほっとした表情が間近。
パタパタと団扇で風を送る。
「・・あ…」
喉がカラカラに乾いて痛む。
くっと、喉を押さえて周囲を見回すキョーコ。
何を求めているのかに気付き、水の入ったコップを目の前に。
「あ…ありがとうござ…」
クイと、水を口に含みそのままキョーコに口付ける。
「ふ・…っ…ん…」
咥内に水分が満たされ、ゆっくりと嚥下する。
小さく喉が上下するのを確認して、もう一度口移しで飲ませる。
「っ…は…ぁ…」
うるんだ眼差しで蓮を見つめるキョーコ。
「敦賀さん…あ・・あの…」
浴場で告白した事を思い出して、赤面しながら見つめる。
“他の男には見せては駄目な表情”
そう、蓮は思う。
「君が好きだよ。嘘偽りなく。」
力強く答え、キョーコを抱きしめる。
人のぬくもりが安心できる事を、初めて理解するキョーコ。
「わ…私も…好き……です。」
消え入りそうに答えると、そのまま口付けられる。
「嫌と言われても止まれない。怖いと感じるなら、言って?」
ギュっと蓮の背中に腕を回して、答えを出す。
唇がキョーコの身体にキスの雨を降らせる。
柔らかい乳房の感触を楽しみながら、薄紅の粒へ口付ける。
「−ぅ…っ…」
ピクンと跳ね、伸ばしていた足が彷徨う。
小刻みに、何をしても跳ねる身体。
「可愛い・・」
するっと、露になった太ももから足の付け根まで手を滑らせる。
「や・・ぁっ…」
ゆるゆると付け根や、ウエストラインを撫でる。
顔を背け、湧き上がる感覚と羞恥に紅潮する。
じわじわと何かが下半身から湧き上がってくる―
触れたくて仕方なかったキョーコの身体。
触れば触るほど愛しさが駆け巡る。
「なんか…変…」
チュっと首筋に口付ける。
「何が?」
分かっている事をあえて聞く蓮。
「…け…経験豊富な敦賀さんと一緒にしないで下さいぃ〜」
顔を真っ赤にして蓮を上目遣いで睨む。
クスクスと笑い、
「こんなに、ドキドキしながら抱くのはキョーコだけよ。」
まだ抱いてもいないのに、さらりと解答を出されて撃沈。
するりと、白い防護壁を撫でる。
「やぁっ・・」
びくっと触れられた場所に警戒する。
湿り気を帯びている壁を指の腹で撫でる。
触れて欲しくて疼いていた箇所が素直なレスを返す。
「んっ…つ・・敦賀さ…っ…」
和えかな言葉を自らの唇で塞ぎ、咥内を嬲る。
咥内なのか、下半身からなのか、水音が部屋に響く。
モゾモゾとさざ波のように押し寄せる感覚。
するりと防護壁の向こう側へ侵入を図る。
それに気付き、肢体が硬直する。
「や…っ…」
グイと、防護壁を取り払う。
これ以上にないくらい恥ずかしさで顔を赤くして…
「つ・・敦賀・・さ・・・」
柔らかい猫毛の鉄条網を撫でる。
くちゅりと、掻き分けて眠れる紅玉を探る。
指の腹で撫でて、ぷつりと実り出す。
「可愛いね。ここも。」
ちゅっと、紅玉を唇で包み、軽く扱く。
「んっ!・・アッ・・ッ…!」
背中が撓り、襲いくる快感に翻弄される。
後から後からトロトロと沸き出でる泉。
「甘いよ…凄く。」
つぷりと、紅玉の皮を暴き、更に追い詰める。
空気に触れるだけでもジワジワと感じるのに、更に強い快感を与えられる。
「も…っ…気持ち…くて…ず・・ずるい…ですぅぅ…」
羞恥で顔を両手で隠しながら必死に訴えてくる。
ゆっくりと、泉の中へ侵入を謀る。
甘い香りが媚薬のようで、酷く興奮する。
下肢が緊張したのに気付き、開いている手で紅玉を撫でる。
「…っ…ふぅっ…んっ…」
手で衝動的に突き抜ける声を押さえる。
キョーコそのものが愛しくてたまらない。
「―っ…」
―今すぐ掻き抱きたい衝動と戦う―
「も…っ…あ……」
甘い吐息―
キュゥと紅玉を嬲り、反応を楽しむ。
「ん…−っ!!」
ビクビクっと、身体が跳ね、透明な雫がシーツを濡らす。
くたりと脱力して、放心しているキョーコ。
「・・っ…気持ち・・良かった?」
こくりと頷く。
「感じやすいんだね。」
耳元で囁き、自分の浴衣を取り払い、足元の四角い包みを開けて、取り付ける。
キョーコの泉へと自分の楔をあてがう。
びくりと硬直するが、するりと、蓮の背中に腕を回す。
「…怖い?」
ゆるく首を振り、
「敦賀さんじゃなきゃ・・嫌です…」
じっと、潤んだ眼差しで見つめられ、思わず口付ける。
「…ごめん…優しくしたいけど…無理かも…」
グッと、キョーコのウエストを掴み、逃げられないようにする。
「−ッ!」
唇を塞いで痛がる悲鳴を殺させて。
「爪…立ててもいいから…」
「い…た…っ」
メリメリと、身体のどこかから音が聞こえる。
仰向かせて、挿入が楽なように、苦痛を和らげようと口付ける。
ズッと、狭い随道から、突き抜ける感覚。
小刻みに震えている身体。
瞳からこぼれる涙―
「大丈夫?」
零れ落ちる涙をキスで拭う。
「き…気持ち…い・・…です・・か?」
―この子は、どこまで溺れさせる気なんだ!?
「うん。俺は気持ちいいけど…キョーコは、大丈夫?」
小さくキスをされ、
「…お…お返し…です…っ…」
涙交じりに微笑んで―
ゆっくりと動き、内壁の感触を味わう。
動くたびに、内部が変化する。
痛みを堪えるように、柳眉を顰めて耐えている姿。
ドクッと、自分の楔に血液が集中する。
「−っ・・ごめっ…」
腰を荒く掴み、自分の快楽を優先する。
「や・・っ…いた…はっ・…ん…っ…」
最奥を抉るように嬲り、自身の猛りを駆け上がらせる。
「…っ・…ん…っ…は・・ぁ・・っ」
動きについていけなくて、頭が白くなる。
「−っ!!」
グッと、最奥を突き上げて自分の欲望を迸らせる。
きゅうきゅうと、内壁が余韻を味あわせる。
ぐったりとしているキョーコ。
一呼吸して、頬に触れる。
「大丈夫?」
「…っ…ん…」
夢心地のような表情。
「…愛しているよ。キョーコ。」
柔らかく口付け、頭を撫でる。
幸せそうな寝顔―
「もう…手放さないから―」
愛しい者を今、手に入れた―