「抵抗しないなら…食べちゃうよ?」  
スルリと腕を胸元に滑らされて、耳元で囁かれる。  
 その言葉と共に送り込まれた吐息−  
ゾクリと寒気が走る。  
「……っ…」  
声が出ずに、ヒュゥッと喉が鳴る。  
 胸元に滑らされた手は、そのままウエストラインへ伸びる。  
グッと力を入れて、体のラインを撫で上げられる。  
親指が丁度、ブラの上からでも頂点を当てる。  
 ビクッと自分の意志と反して跳ねる。  
『いや…』  
思えど、声が出ない。  
「…泣かないんだ。」  
クスリと耳元で笑われる。  
ただただ、嫌悪感しか沸かない−  
 なのに身体は防衛本能に目覚め始めている−  
片腕を拘束され、自由な手でキョーコの身体を撫で回される。  
「あんた、不破の大事なモンなんだろ?」  
“アイツにとって大事”   
その言葉がレイノを突き動かす本能―  
「ち…が…」  
否定しようと視線を合わせるが、その視線の猟奇さにキョーコは言葉を失う。  
 その隙に、両手を拘束し近場の白樺の木に縫い止める。  
「…や…っ…」  
腕に力を込めても振りほどくことが出来ない。  
 男の片手で両手を拘束される事が、これほど怖いと思えた事も無いキョーコ。  
小刻みに震える肩―  
「もっと、怯えて。俺の征服欲を掻き立たせてみせろよ。」  
耳元で囁かれ、ねっとりと耳朶を嬲られる。  
『コワイ』  
純粋に恐怖を感じる。  
向けられた矛先が本人でなく、自分にあった事がより一層駆り立てて。  
「・・っ…や…だ…」  
首を振って抵抗すると、あっさりと耳朶は解放された。  
 その代わり、首の当たりからジッという音が耳に入る。  
後ろから、キョーコの胸を触る片腕―  
恐る恐る振り向くと―  
 レイノが、ワンピースのファスナーを咥えて下ろしているのを捉える。  
「やっ!…嫌っ!」  
ジワジワと、キョーコの背中が空気に触れる。  
 背中のちょうど真中あたりで、ファスナーを下ろす音が止まる。  
少しだけ安堵するが、小さく笑う声を耳にする。  
 プツッと、胸を覆う緊張の糸が外され、そのまま背骨のラインを舐め上げられる。  
「−っ!!」  
ゾクゾクと背筋に寒気と言い様のない感覚を送られる。  
声にならない声。  
「気持ち…良くさせると思う?」  
ひやりと、背中から冷たい空気を感じ取り、ただただ震えるキョーコ。  
「ねぇ…赤頭巾ちゃん」  
レイノの言葉に、キョーコは悲鳴の声すら奪われる――  
 
自由になる手をキョーコのしなやかな肌に滑らせる。  
 そのまま、ぷつりと少し尖った粒へ、矛先を向けた。  
指の腹で撫で、爪で弾く。  
 項から肩甲骨のラインへ舌を滑らせる。  
ピクッと小刻みに震える身体。  
「っ…ぁ…」  
軽く耳朶を甘噛みして、ワンピースの裾をたくし上げ、  
両足の間に膝を割りいれる。  
伝線しているストッキングを躊躇い無く引き裂く。  
「…や…っ…」  
するりと、レイノの指がキョーコの下肢へと伸びる。  
 デルタラインの真中を撫で上げられる。  
「―っ…!」  
抵抗すら出来ずに、されている事を受けるしかない状況―  
 悔しさで目の前がぼやけ始める。  
「なんだ…反応しているんだな。ちゃんと」  
少しずつ潤み始めた場所を指に感じる湿度で理解する。  
ぷつりと主張している蕾を入念に責める。  
 ビクッと、熱と刺激が身体を駆ける衝撃―  
「や……な…っ・…ぁっ!」  
良く理解出来ないが、得体の知れない感覚に襲われる。  
 それが何なのかわからないが、そこを触られる度に走る―  
「…ぁ…っ!んん…」  
拒絶でなく、熱の混じる声―  
 つぷりと布をずらしてダイレクトに嬲る。  
「や…ぁ…ぁんっ…」  
声が思わず出てしまう。  
『嫌なのに…どうして…?』  
混乱する頭。  
 でも、快感には順応してしまう。  
「…もういいか…」  
カチャリとベルトを寛げる音が耳に入る。  
その瞬間、キョーコの脳裏に一人が思い浮かぶ―  
 恐怖感が一斉に責め上げてくる。  
「い…いやぁっ!!」  
 足を閉じたくても割りいれられた膝で阻止される。  
ファスナーを下ろす音。  
「や……敦賀さ…っ…」  
小さく出した名前―  
 
 ピタリとあてがわれたレイノの刃。  
「赤頭巾ちゃんの猟師は来なかったね。」  
クスクスと笑い、キョーコの内部へ侵入を図る。  
「いやぁぁぁっ!!」  
喉が張り裂けるような叫び―  
 白樺の幹に爪が食い込む。  
ドンッという、音に続き、ドサッと崩れ落ちる音―  
 フッと拘束されていた力が無くなった両腕。  
「??」  
 良く分からないが、誰かが後ろから抱きしめているぬくもり。  
「大丈夫??」  
柔らかく頭を撫でられ、優しく問い掛ける声。  
 抱きしめている腕が上下に動いている事から、走っていたのだと理解する。  
「怖くなかった?」  
ぎゅっと力を込めて抱きしめられる―  
 ボロボロと涙が溢れ、抱きしめている相手を見る。  
『こんな事で…やっと気付いたなんて…』  
その言葉は声に出ない。  
 涙が答えだと。  
「ご・・・ごめんなさい。心配…かけて…」  
ペチッと軽く頬を叩かれる。  
 でも、表情は笑っていない―  
「今は、そういう言葉を聞きたいんじゃないよ。今は、感じたことを堪えずにぶつけていいから……だから…俺を安心させて?」  
 『安心させて』その一言を告げた表情―  
貴方が泣きそうな顔をするのは何故?  
   
堰を切ったように泣き続け、眠りに落ちたキョーコ。  
「俺が…全てをかけて守るから…」  
左手の薬指に口付けを落とす。  
「俺に君の心を預けて欲しいよ」  
真摯な眼差しと、闘志が入り混じる―  
 
目覚めた想いはまだ闇の中―  
 
 

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