CMの収録後、足早に携帯を掴んでとある番号に連絡する。  
数回のコール音。  
 その後、何回か会話をして切る。  
パクンと携帯を閉じたときの満面の笑みを、社は見逃さなかった―  
「れーんー?おイタは程ほどにしないと、お兄さんは怒るよ?」  
やんわりと、とばっちりを喰らう相手を考えると忠告せざるを得ない。  
 キラキラと笑顔を向ける。  
「やだな、社さん。そんなことないですよ?それに、これで今日は仕事終って明日は丸々  
オフだし」  
さわやかキュラレストを見せ付けられては何も言えない。  
「…可哀想に…」  
ぽつりと、呟いた一言が空に落ちる―  
 
不意に、携帯のコール音。  
 着信の名にぎょっとする。  
(えっ?!えっ!?社長から!?)  
慌てて携帯の通話ボタンを押す。  
「はい…最上です。」  
 色々と話を聞いて、頷いて―  
「判りました。じゃ、待ち合わせ場所で伺えばいいんですね?」  
パクンと携帯を閉じる。  
―ラブミー部の私しか出来ない仕事って・・??―  
 
にやにやしながら携帯をくるくると回すローリィ。  
「俺を伝書鳩にした分は高く付くぜぇ?蓮。」  
(愛は偉大!)  
と、つくづく再認識したりする―  
 
 
ドォンと聳え立つ高層ホテル―  
「こ…ここでなんの仕事なんだろ?」  
おそるおそるロビーに向かい、フロントへ尋ねる。  
 よくよく考えると、指定された部屋が不明―  
「あの…最上と申しますが…―」  
名前を聞くと、にこりとコンシェルジュが近付き、  
「クライアント様から伺っております。どうぞ、こちらのサロンへ―」  
手を引かれるままホテルの美容サロンへと連行される―  
 
―今まで経験した事のないかつてない、美貌への喜び―  
隅々まで磨かれた肌。  
そして、用意されたドレス―  
「こ…これを?」  
にこにことエステティシャンは微笑み、  
「はい、クライアント様から是非にと―」  
満面に笑顔を出されては拒否も出来ず―  
今日CMで着せてもらったドレスの色違い―  
 綺麗にメイクを施され、サロンを出るとコンシェルジュのお出迎え―  
「プリンセス、お手を―」  
恭しく跪いて、手を求められ、ほんのり顔を赤らめて手を差し出した―  
 
エレヴェーターに乗り、カードキーを挿しこんで、上昇する。  
 エレヴェーターから外界が見れた―  
「綺麗…」  
ぐんぐんと上昇するエレヴェーターに都会の光が下に見えて―  
チン、と到着音。  
コンシェルジュが、手を引いてドアを開ける。  
「プリンセス、お着きでございます。」  
ドアを開くと―  
 
「御苦労。下がって良いよ。」  
悪戯気味に微笑んで、コンシェルジュが去る―  
「プリンセス・シンディ。今宵、一時の夢を一緒に―」  
口付けられた首筋が火照る―  
 
パタンと閉じられたドア。  
 目の前にはワインと外界を見下ろせるガラス壁―  
「どうぞ―」  
手を引かれ、きちんと椅子を引いて座りやすいようにエスコートしてくれる。  
「えっと…今日の仕事って―」  
指を唇に当てられる。  
「今日は、シンデレラと王子様の一時だよ。他はいらない。」  
小さく笑い  
「でも、俺の事は蓮って呼んで欲しいな?キョーコ。」  
色気含みのある視線で見つめられ、ドキリと胸が高鳴ってしまうー  
(期待してもいいの?)  
心が少しだけ踊ってしまう。  
テーブルを見ると、綺麗にセッティングされた夕食―  
「未成年には、あまり勧められないけれど…」  
カシャンと、ワインクーラからワインを取り出す。  
「後学のお勉強だね。」  
グラスに半分注ぎ、自分のグラスにも―  
 すいとグラスを持って目線の高さに持って行く。  
「乾杯。」  
 軽く斜めにして、視線を交わす。  
ドキドキしながらグラスに口を付ける。  
 ゆっくりと傾けてワインを含む―  
「・・っ…」  
たどたどしく嚥下するまでを見つめて―  
「大丈夫?」  
軽くグラスを空け、キョーコに確認をとる。  
 不慣れな行動全てが愛しく見える。  
「・・あ…はい。…アルコールが強いかと思ったんですけど…甘くて…美味しいです・・」  
感想を素直に述べたキョーコを優しい眼差しで見つめる。  
 アルコールが入っている所為か、お膳立ての所為か、心と体がふわふわとした感覚―  
テーブルに並んでいる食事をCM撮影時の話や、ホテル内であった出来事を幸せそうに話す  
キョーコ。  
 グラスが空になると、ついつい注いでしまう。  
嫌と言わずに、そのまま飲んでくれるから―  
 
不意に、カチリとデザートスプーンが音を鳴らす。  
 顔を赤く染めて、ぼんやりと見つめる―  
「飲ませすぎちゃった…かな?」  
ある意味で確信犯なクセに―  
 
ふわりと抱き上げキングサイズのベッドへと連れて行く―  
 
―ふわふわして、気持ちいい―  
うっすらと目を開けると、ドレスを寛げられてベッドで寝かされていた―  
「??」  
状況が判らなくて、見渡すと―  
「気がついた?」  
小さく笑われ、両手を縫いとめられる―  
「between the Sheets?」  
するりとドレスを脱がされ、CMと同じシチュエーション。  
小さく笑い、  
「シンディ、このまま脱がしても良い?」  
ぼんやりと思考が落ちている頭で一生懸命考えるが―  
CM撮りの時と交錯して―  
「王子様の、お気の召すままに」  
にこりと微笑まれ、柔らかく微笑み返す―  
 
フロントホックブラにTバックにガーターベルトの姿―  
自分以外には絶対に見せたくないと思う。  
 プツッと、フロントホックを外し、胸を寛げる。  
抑えが無くなった胸がわずかに揺れる。  
壊れ物を扱うかのように、空いている片手でやんわりと包み上げる。  
 首筋に唇を寄せ、小さくキスの雨を降らせる。  
「んっ…ぁ…」  
小さく反応を見せてくれるのが嬉しくて―  
 手のひらで、ぷつりと主張した蕾を唇で包む。  
ちゅっと軽く吸い上げ、舌先でやわやわと刺激を送る。  
「あっ…ん…っ・・」  
思わず漏れる声。  
 気恥ずかしさで口元を手で隠して声を殺したいのに、拘束されてままならず―  
するりと、自分の蝶ネクタイを外して手首を拘束させる。  
手を頬にかざして、ゆっくりと口付ける。  
 口腔内を舌で蹂躙し、竦んでいる舌を絡めとる。  
「っ…ん…っ…」  
鼻が掛かった、それでも艶のある声。  
 甘い口腔内を堪能しつつ、空いている手でTバックの上からやんわりと刺激を送る。  
指の腹で刺激を送るにつれ、しっとりと湿度を増し、エレクトし始める蕾。  
 はぁっと、小さく甘い吐息が漏れ、上目遣いで潤んでいる眼差し―  
 
やわらかく足先から付け根までを撫でさする。  
「っ…ぁ…」  
ピクンと初々しく反応する姿。  
 何度か身体を重ねている筈なのに、いつまでも新鮮さが抜けない。  
それが夢中にさせる理由だけど―  
「いつになったら、心も手に入れさせて貰えるのかな?」  
耳元で甘く囁いて揺さぶりを掛ける。  
 答えようとする唇を自分の唇で塞ぐ。  
―聞くのが怖くて言葉を消した―  
「俺以外の誰にも近付いたりしないで―」  
つぅと、Tバックラインを撫で、薄い壁の隙間から指を侵入させる。  
ビクリと身体が跳ね、声にならない悲鳴は絡めとられる。  
侵入した指でやわやわと内部を探る。  
「っ…は…っ…ん…」  
気持ち良い場所がどこか判っているのに、もどかしく焦らす。  
水音が小さく響き、ゆるく腰が動く。  
 小さく笑み  
「どうしたの?」  
もっと深い快感を与えて欲しいと、腰が強請る。  
「っ…じ…わ・・ぅ…」  
判っていて聞く。  
 その尋問する表情が、どうしようもなく妖艶で―  
女心に嫉妬できるくらい。  
 クッと、肉壁の上部にあるザラザラした場所を擦り上げられる。  
「ア…ッ…ん…く・・っ・・」  
ビクビクと反応する様を見て、幸せそうに見つめられる。  
 するりと、Tバックを器用に脱がせ、ぷつりと尖った紅玉へ指の腹を滑らせた―  
「んんっ…も・・…っ…」  
じりじりと身体を火照らされ、快感を焦らされる。  
「可愛い。」  
首筋に口付け、コロンと身体を四つん這いにさせる。  
 つぷっと、秘所に指を入れ、甘く耳朶を噛む。  
「っ・・も…っ…焦らさないで…っ・・」  
潤んだ眼差しで訴え、ガーターとストッキングだけ身に纏っている姿。  
―この上なく煽情的で―  
 
何も言わず、自分の楔を突きたてた。  
「んんっ…あ…はぁっ…」  
力任せに押し込まれた衝撃と、ぴったりと奥まで突き抜ける快感の波―  
 待ち侘びていた悦楽。  
「…待ってた?」  
絡みつくほどに、ぎゅうぎゅうと締め付ける快感。  
「すごく…熱いよ。」  
ウェストを掴み、グイと自分の方向へ引き寄せる。  
「アッ!…やっ…んんっ!」  
引き寄せられた反応でコツッと奥に当たる。  
 腰を引いて逃げようとする―  
「嫌?」  
 耳元で囁かれ、知らず知らずに内部が締まる―  
「…っ…れ…ん…」  
観念したように、俯く。  
 つぅと、指を紅玉に這わす。  
ビクビクと背中が撓る。  
「は…あぅっ…んっ…もっ…」  
嫌々と、首を振って可愛く喘ぐキョーコ。  
甲高い声を上げる箇所をじっくりと責める。  
「やぁっ・・あっ…はっ…」  
拘束された両手がきつくシーツを掴む。  
「れ・・ん…っ…」  
抉るようにストロークを繰り返し、更に追い詰める。  
「−ッ!!」  
声に鳴らない悲鳴を上げ、くたりと脱力する。  
 小刻みに震え、ベッドに沈む。  
肉壁がきつく締め上げ、射精感が突き上げる。  
「ッ…」  
深く呼吸し、駆け上る衝動を堪える。  
 するりと拘束された両手を解く。  
「・・れ…ん・・」  
「何?キョーコ。」  
ずるっと、緩慢に動く―  
「蓮の…身体…抱かせて…」  
熱を帯びた視線で見つめられる。  
 その表情が見たこともなく艶めいていて―  
 
「ふふっ…」  
面白そうに笑い、自分からあぐらをかいている蓮の上に乗る。  
 自分の重みでズンッと脊髄に快感が走る。  
「…はっ…ん…っ」  
両手を肩に置いて、たどたどしく動く。  
 コアラの子供が抱きついているような愛らしさ―  
気持ちの良い箇所を探る様に動く。  
 しかし、深く快感を得られる場所が判らない―  
「キョーコ。」  
それでも、一生懸命愛してくれる姿が嬉しくて。  
 ポスっと後ろに倒されて、正常位の形にされる。  
「??」  
足をMの字にさせて、ゆっくりと動かす。  
 肉壁の上部にあるGスポットをカリが擦り上げる。  
「やっ・・あっ…ずっ…ずるっ…」  
首に腕を絡め、押し寄せる快感を味わう。  
 ベッドのスプリングが揺れ、小さな快感を付加させる。  
「ずるくないよ…っ…」  
悪戯に笑って、口付ける。  
 肉壁がぎゅうぎゅうと締め付け、溢れる快感の言葉は唇で塞がれる―  
飲み下せない甘露は唇の端から零れ落ちた―  
 
突き抜ける快感と、脊髄を駆け巡る射精感。  
「も…めっ…イ…イ…ッ…」  
ズンッと最奥を蹂躙して自分の堕性を迸らせる。  
 ビクンと熱を感じ取って、肩に爪が食い込んだ―  
「−っ!」  
ビクビクと痙攣を起こして力なく気を失うキョーコ。  
 汗で張り付いた額の髪の毛を梳く。  
「ごめんね…」  
駆け巡った快感の余韻を味わい、ずるりと自身を引き抜く。  
 覚えたての頃よりもハマっている自分に気付いた―  
小さく詫びて、バスルームに連れて行く。  
 
ちゃぷちゃぷと、ぬるめのお湯で身体を丁寧に洗う。  
 首筋ではなく、胸元あたりに跡をつけていた事に気付く。  
「怒られるかな?」  
悪戯に笑んで、浴槽に溺れないように抱き上げて入れる。  
 
―ゆらゆら気持ちいい―  
ふっと目を開けるとお風呂に入れられていた。  
「あ・・れ?」  
自分の記憶を辿る―  
 が、今の状態への結論は判らない。  
しかし、自分の後ろには暖かい人肌。  
「気が付いた?キョーコ。」  
するりと手を伸ばされ、思わず指を絡める。  
「…気持ち良過ぎるのはズルイです。」  
顔を真っ赤にして応える答え―  
「気持ち良くしたくなるんだよ。キョーコが好きで愛しているから。」  
チュッと、左手の薬指を意味深に口付ける。  
 恭しく見つめて。  
「キョーコが納得するまで俺は待つから。」  
優しく告げる言葉が嬉しくて。  
身体だけでなく心も求めてくれている事が―  
「でも、待たせ過ぎると強行するからね。」  
―社長と共謀していくらでも―  
頭の中ではその時の算段もついている。  
 にっこりとキュラレストで微笑まれ、返事に戸惑う。  
ふと、食事に飲ませてもらったワインと、とある本で知ったお酒を思い出す―  
「いつか…ダイアモンドカクテルを飲ませて下さい。」  
メルヘン思考であっても、熱烈な返答に蓮が満面の笑顔を浮かべ、頷いた。  
「君に似合うものを約束しよう。だから、迷わずにYESと言えるように俺も頑張るよ。」  
 
いつか、かならずそのカクテルを贈れるのを祈りつつ―  
 
 
 

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