「コレ着けてくれる?」  
差し出された白いフリルのついたエプロンを見つめ、キョーコは首を傾げた。  
蓮と付き合い出してから、三ヶ月を過ぎた頃のことだ。  
仕事や学校で時間が塞がっていない限り、自然と蓮の食事の用意や掃除洗濯をするようになり、  
今日もまた蓮のマンションへと夕食の支度をしにやってきたのだ。  
「私、エプロン持ってますけど?」  
キョーコはゲストルームのクローゼットから引っ張りだして来たシンプルな紺のエプロンを、  
すでに制服の上から身に着けていた。  
「それでもいいんだけどね。裸になって着けてくれる?」  
「は?」  
キョーコは自分の耳を疑った。  
「今、なんて」  
「裸にエプロンを、してほしいんだ」  
少し顔を赤らめながらも真摯な蓮の表情に、キョーコは固まった。  
(つ、敦賀さん! どどどどこか頭を打ったのでは??!!)  
「ダメ、かな?」  
子供のような拗ねた顔をされると、キョーコはどう返したらいいのか分からず弱かった。  
「わ、わかりました。や、やりますから、絶対後ろ向いててくださいね!」  
(ど、どうしてぇ〜)  
キョーコは真っ赤になりながら、  
汗のかいた制服を脱ぎ、蓮に貰ったさらさらの白いエプロンに腕を通した。  
 
キョーコが着替えている間、蓮は自分の馬鹿さ加減にため息をついていた。  
きっかけは昨日、某テレビ局のエレベーター内で不破尚と偶然二人きりで乗り合わせたことに始まる。  
すでにマスコミにはキョーコと交際していると公表していたので、何も臆することも  
なかったのだが、尚の存在は蓮とっては因縁めいたものを感じていた。  
数秒の沈黙の後、尚から話しかけてきた。  
「よぉ、キョーコと付き合ってるんだってなぁ、あんた」  
「ああ、悪かったね。幼馴染の君に何の挨拶もできなくて。毎日彼女のことでいっぱいで、  
……不破くんだったけ? 君の事すっかり忘れてたよ。あの子を手放しただなんて、君の目は  
よっぽど節穴だったんだね。彼女のどこを見てたのかな」  
蓮との交際がなくても、DM以降『京子』の存在はマスコミの中では大きくなっていた。  
「てめ、俺はあいつをな……っ」  
何かを喚こうとした尚だったが、舌打ちをし、すぐにふふんっとにやけた笑いで蓮を見上げた。  
「あんたさ。あいつと付き合っているっていっても、どんな時でも必ず夜12時前にはあいつの下宿先へ  
送り届けているんだろ?」  
恋人とはいえ高校生であるキョーコを深夜まで自分のマンションに置いておくわけにはいかず、  
時間をきっちりと守って、だるま屋まで送り迎えをしていた。下宿先の大将が、キョーコの父親代わりだと  
でもいうように目を光らせるようにもなっていたからだ。しかしマスコミでさえ『いつも』12時前だとは  
知るはずもない。毎日張っている気配もないのに。なぜ?  
蓮は無表情で尚を見下ろした。  
「おい、図星か? ははぁん、キョーコと清い交際かよ。あんた不能か?  
いや、あいつがやっぱり色気のない女だったのか。胸ねぇもんなぁ、きっと裸エプロンしたって全然」  
「……それ以上、彼女のことを言うな。鼻をへし折られたいか」  
尚は蓮の殺気ににやけ笑いをひっこめた。  
「彼女は誰よりも魅力的だけどね。君にはわからないようだから『しっかり見せてあげるよ』?」  
そう言い放って、蓮はエレベータを降りた。  
 
(だからって普通、裸にエプロンをさせるか? 俺)  
キョーコから見ないでくださいと釘を刺されたにも関わらず、キッチンを行き来する可愛らしいお尻を  
つい横目で追ってしまう。包丁を持ったり、コンロを使ったりと料理中は危険があるため  
手出しは出来なかったが、抑制しようとすればするほど蓮は自分の理性に限界を感じ始めていた。  
向かい合って食事をとる間、蓮は普段通りにキョーコの料理に舌鼓を打ち、美味しいよと微笑む。  
本当はテーブルの下に隠されたキョーコのエプロンの裾の中のことや、時々見える裸の胸元ばかりに  
気をとられてしまって、味もほとんどわからなかった。  
一方キョーコといえば少しばかり落ち込んでいた。  
(私、よっぽど色気がないんだ。バカショーの言ってた通り? 敦賀さんいつもと変わらない)  
しょんぼりしながら、後片付けのためにキッチンに立ち上がる。  
並んで食器を洗い、皿をふきんで拭いている中、明るく頼んだ。  
「私、もう制服着てもいいですか? 恥ずかしいですし、何だか敦賀さん、私と一度しか……その、  
したこと……ないのに、こんなの変ですし、私って、やっぱり女っぽくないんですよね……」  
最後が涙声になってしまって、キョーコは口をつぐんでしまった。  
「何を言っているんだ」  
蓮はすすぎをしていた皿を落としそうになり、キョーコへ水を掛けてしまった。  
丁度エプロンの胸当て部分に水が染み込んで、胸の形が露になる。  
二つの桃色の頂も現れ、キョーコはとっさに両腕で覆った。  
「なんで隠すの?」  
蛇口を閉め、蓮はキョーコを後ろから抱き寄せた。  
「なんでって、私の見たって……」  
蓮を見上げながら、キョーコは思わぬ艶美な瞳をそこに見つけてしまって目を逸らす。  
「あのね、一度しかしてないっていうけどね、……俺、一度しか出来なかったんだよ」  
「え」  
「今だってかなりの我慢の限界なんだけど。君は高校生で、何度も朝帰りなんかさせちゃ、マスコミの  
いい餌食になるんだよ? 芸能人としての君に傷をつけたくないんだ。でも、そんな誤解をされて  
いるなんて、……今夜は帰さないことにした。もうマスコミは無視する。  
今度は君が泣いてもやめるつもりはないから。今日は俺がどんなに君にまいっているのか何度でも教えてあげる」  
蓮はエプロン越しに、水でくっきりと浮き上がった小さな胸へと右手を這わせていた。  
左手はエプロンの裾から入り込み、蓮の求愛ですでに濡れ始めた秘処をゆっくりと撫で回した。  
「はぁんっ」  
蓮の指の動きに沿って、エプロンのフリルが小刻みに揺れる。  
「シンクに手をついて腰をつき出してみせて?」  
「や、こんな明るいのに」  
「キョーコは俺が欲しくないんだ? 他の女のものになっても平気なのか」  
「平気じゃありません! 私には敦賀さんだけなのに!」  
「じゃあ、ココで応えて?」  
蜜に濡れた花芯を上下に擦る。  
キョーコは目を瞑り、助けを請うように恥部をさらけ出した。  
 
初め蓮の指がほぐすように1本2本と差し込まれては、キョーコのイイところを探ろうとしていた。  
「んぅ」  
声を静かに漏らすのに、それでもはしたないと唇を噛む彼女が愛おしくもあり、また、まだそこまで自分に心を  
許してはくれていないのかと考えて、蓮は動きを止めた。  
「つる、が、さん?」  
キョーコは、不安になって後ろを振り返る。白い頬は上気し、黒い瞳は潤み、  
エプロンで包まれた胸は、濡れた木綿の布で擦り上げられ、赤く充血していた。  
蓮はたがを外してしまいたい思いを抑えて、意地悪く笑ってみせる。  
「今夜はキョーコが好きなようにしてみせて」  
「え」  
長い指は震える花芯に添えられたままだったが、突然放置されてしまい、キョーコは蓮を困ったように見上げた。  
「俺が欲しいって、下の口で言って上手にごらん」  
(し、下の口って、あ、ど、どうすればいいの?)  
混乱するキョーコだったが、その間にも愛液が腿を伝い落ちていく。こそばゆい思いに、キョーコは  
おずおずと動き出した。  
最初は蓮の指の腹が、自分の割れ目の中で往復するように静かに腰を上下させた。  
ゆっくりと回すように。  
それでも何かが足りなくて、蓮の指を徐々に飲み込むようにして、やがては貪欲に求め始める。  
第二関節、付け根と深まるにつれて、キョーコから嬌声が上がり出す。  
「あっ、あっ、あっ、あぁっ、や、いや、恥ずかしい……からっ、だ、め、見ないでぇ、見ちゃいや、  
……あぁ、んぅ、あっ、あっ、あっ、はぁっ、まだっ」  
いやいやと涙目で頭を振りながらも、キョーコの腰は止まらず、蓮の指を内壁で挟みこむ。  
蓮の指の節々を覚えよう刻み込もうと強く行き来する。  
「あ、んぅ、あっ、あっ、あぁっ、いぃ、はぁんっ」  
蓮はキョーコの動きを遮って、指を引き抜いた。  
たっぷりと愛液にまみれた花芯は、まだ何かを飲み込もうと口を広げてひくついている。  
「やぁ、や、やん、やだ……変になっちゃう、はぁ、ぁ、敦賀、さん、意地悪しないで、……もう、  
だめで、す……だめ、なの…敦賀さんの、ください、敦賀さんの、が欲しい…んです、もっともっと、  
私の中を、敦賀さんでいっぱいにして? ください」  
折れそうな細い腰が軽く上向けられる。  
「本当に君は……。俺以外の男をそんな風に誘うんじゃないよ?」  
蓮はジッパーを下ろし、朦朧としたキョーコの秘処へ自身を押し進めていった。  
「はぁ……あぁ、ん、い、あぁっ」  
蓮を懸命にほお張るキョーコをもっと悦ばせたくて、キョーコの乳房を大きな両手で撫ぜる。  
乳首を摘まれて、キョーコの膣内が狭まった。  
「い、や」  
さらに深く深くつながろうと蓮は、キョーコの肩口を抱きしめて激しく打ちつけ始めた。  
キョーコの耳には、蓮の低く喘ぐ声と、湿った二人の粘液が混じりあった音が響き渡り、  
蓮と一つになりたいと願って、蓮の動きに合わせようと腰を揺らしていた。  
「あぁ、はぁ……ま、だ、だ、めっ、だめ、です……さないで……ぁんっ」  
声にならない声を上げた瞬間、自分の中で熱いものが弾けるのを感じて、そして意識を手放した。  
 
蓮は呆けたキョーコを抱き上げ、ベランダの方まで移動していた。  
「え、どこへ……?」  
いきなり木製のデッキチェアへと座らされて戸惑う。しかも寝そべった蓮の上に跨がされていた。     
熱帯夜の生温い風が頬をかすめ、興奮を幾分か冷ました。自分のさっきまでの格好や今  
させられている体勢にうろたえる。  
「キョーコの顔が見られなかったから。今度はしっかり見られる」  
「で、でもここって外ですよ? 誰かに見られたら……あん、だ、め」  
相変わらず、裸にエプロンで、しかも腰紐の部分が解けていて、何の役割もなしていない。  
蓮はシャツを脱ぎ捨ててはいたが、しっかりとジーンズを履いていて、キョーコの  
胸を、背中をと、身体中を触りまくっている。  
「最上階だから大丈夫。男の部屋を覗くおかしな奴なんていないよ?」  
そう言いながらも、蓮の目は五十メートルほど離れた、更に高いマンションの窓を睨みつけていた。  
「でも……んっ」  
「俺、今夜は帰さないって言ったよね」  
下から蓮の腰に突かれびくりとする。  
つい今しがた自分の中を熱く支配していたモノなのに、急に怖気づく。  
「今夜は君が俺を好きにしていいんだよ?」  
「え、でもでも……あぁっ」  
羞恥心が戻ってきて、キョーコは蓮の胸板に手を置いたまま固まってしまった。  
それを察した蓮は、キョーコを自分の顔の上に座るようにさせた。  
「なにを躊躇っているの? 君のココは嬉しそうだけど」  
舌で舐め上げられて、キョーコは身を竦める。  
逃げようとする細い膝を押さえつけ、丹念に匂い立つ花芯に口づける。  
「欲しがっているのは俺だけなの?」  
エプロンの裾から悲しげに見上げられて、キョーコは首をぶんぶんと振る。  
「だって、恥ずかしい……です」  
「キッチンでいやってほど俺を煽ってくれただろう? ほら」  
「あ、あれはっ、はぁっ、ん、あっ」  
蓮の顔の上で、微かに腰を揺らしてしまう。  
「俺と二人っきりなんだから、もっと誰にも見せられないイイ顔を見せてごらん?」  
「あ、そんなの……舐めちゃだめ、や」  
蓮の舌のなめらかな感触に誘われるようにして、キョーコは膝の裏で蓮の両頬を押さえつけていた。  
 
「今度はどうしたいのかな? 蜂蜜でもつけて朝まで舐めてあげようか? 王女様?」  
エプロンの肩紐が肩から脱げ落ちて、右胸が零れ落ちる。  
やわやわと胸をもまれただけで、裸の王女様は身を震わせる。  
「舌だけで満足だったの?」  
蓮の目が細められた。泣き顔になりそうな彼女をいたわりたい気持ちと、いたぶりたい気持ちがせめぎあう。  
「……じっと、じっとしててくださいね? 約束ですよ?」  
キョーコは全身真っ赤にして、蓮の腰の上に移動する。  
蓮は楽しげに、強張る手で自分の服を脱がしにかかる少女のお尻を撫で続ける。  
「じっと、し、てって、あぁっ」  
指がお尻を外して、奥まで侵入してきて、脱力してしまう。  
「ごめんごめん、あんまり可愛かったからつい」  
キョーコは、蓮に優しく涙を舐めとられ、小さな唇を吸われて、吐息をつく。  
蓮自身を初めて間近にして、ドキドキしながら目を伏せた。  
大きさの違いに不安になりながらも、そそり立ったそれに、ゆっくりと身を沈めていく。  
「んぅ」  
改めて蓮自身の圧迫感を感じて、呻いてしまう。  
「君の良いように。どんな感じか教えてくれる?」  
「はぁっ、ああぁ、あっ、あぁ、……んぁ、すごく奥まで来てるの、いっぱいになってて、あっ、や、  
おかしくなりそう、です、あ、んぁっ……や、だ、動かないで…」  
キョーコは蓮と繋がっているのに、まるで自慰を覗かれている気分になり、視線を逸らそうとしたが、  
阻められた。両手首を押さえ込んだ蓮が、腰を一つ突き上げる。また一つ。  
「だめ、だめ、そんなにしたら……っ、あぁ、あっ、意地悪っ、動かないって、はぁん、いや、や、  
激しくしないでぇ、あぁ、あっ、ああぁ、はぁっ、いや、あぁっ、そこがイイのっ、だめぇっ、あぁっ  
きて、敦賀、さんっ、ココなのっ」  
支離滅裂に蓮の動きを責めるキョーコだったが、すでに彼女自身が蓮を求めて、  
とどまることない淫らな腰つきで注挿を繰り返し、快感を得ようと背を仰け反らしていた。  
 
 
「マジかよ……」  
所は、敦賀蓮のマンションから目と鼻の先の新築の高層マンション一室。  
不破尚は、蓮に対抗すべく階数も上、価格も上の自分の城を買っていたのだが、  
そこが蓮のマンションの向かいに面していると気がついたのはつい最近のことだ。  
簡単な望遠鏡で、窓の明かりやベランダまではよく見渡せた。  
だから、キョーコが蓮の家へ泊まることなく毎日下宿先まで帰っていることも知っていた。  
しかし、今日は思わぬ場面に出くわし、呆然としていた。  
キョーコが蓮の上に跨り、何度となく絶頂を迎えている姿を見つけてしまった。  
ついには、蓮自身を口で奉仕し出すキョーコがレンズ内に登場した時には、尚自身も暴走していた。  
ごくりと喉をならし、あわや自慰に耽りそうになり、我に返った尚はカーテンを閉めた。  
「マジかよ……」  
長い間ケータイに並ぶ女の番号を見つめ続けていた。  
 
 
ベランダには少し肌寒い風が吹いていた。  
「敦賀、さん?」  
霞がかった意識で、名を呼ぶキョーコを蓮は再び抱き上げた。  
「ごめんね、ちょっとひどいことしたね」  
「え?」  
キョーコの猫のような舌の柔らかさに気を失いそうになりながらも、彼女の汚れた口元を拭い、  
大事そうに寝室まで運んだ。  
「もう、君なしではいられなくなった、心も身体もね」  
日向のにおいのするベッドの上で、蓮はさらにキョーコの身体を組み伏せた。  
「私は、ずっと側にいますよ」  
キョーコの微笑みに、蓮は何度となく打ちつけた楔を奥深く埋め込んだ。  
喘ぎ声が、蓮に更なる欲情を駆り立てる。  
「……ん、大将にどう、言い訳しようか。ここへ呼び出してキョーコのいやらしいところ見てもらおうか。  
君から襲われましたって」  
「いやです……二人で朝まで幸せなことをしてましたって報告しますよ」  
本当に正直に白状しそうなキョーコの唇を、蓮はそっと塞いだ。  
「朝までね」  
キョーコの脚を持ち上げると、それから飽きることなく愛しい人の柔らかな果実を  
味わい楽しみ始めた。  
 
 

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