☆私立ロストック学園☆ 一時限目  
 
ラウテルン学院とならぶ、全国に散らばる小数精鋭の全寮制名門校。  
この兎離州校の校長は山際、笹倉担任のクラスに、新しい転校生がやって来た…。  
 
「…函南優一です、よろしく」  
「皆、仲良くするんだよ!席はあそこだ…こらぁ土岐野、起きろ、何故朝から寝てる?」  
「すみまっせーん、成長期で眠いもんで…イテッ、起きてます!く、苦しいーっ!」  
笹倉担任がヘッドロックで制裁をかけている間、優一は最前列の眼鏡のボブの美少女と目があった。  
「あっ…!?」しかしキッとした眼差しの後、  
「早く自分の席についたら?」と冷ややかに言われてしまった。  
微かな膨らみのある制服の胸についている名札をチラッ見ると、草薙、とあった。  
 
「オレ土岐野、よろしく。ヤバイ時はカンニング頼むぞ」  
「…よろしく、でも僕も怒られるから、カンニングはダメだよ」  
それにしても…草薙さんって…素敵だな…。  
函南は初恋の少女の面影を、会ったばかりの草薙に見出だし、  
甘酸っぱい気持ちになっていた。  
僕は恋に落ちたのかな…これって、一目惚れ?よくわからないけど…。  
そして草薙水素も、記憶のどこかに函南の眼差しを呼び起こし、  
切ない気持ちに襲われていた。  
「…もしかして…似てるわ…」  
 
休み時間になると、気の強そうな髪を後ろでくくった、  
これまた可愛い少女が優一に近いて来た。  
「…君が函南?いつも統一テストで上位常連だよね?  
ふーん、もっと超ガリ勉タイプかと思ってた!」  
「なっ、違ったろ?俺もさぁ、安心したんだよねー!」という土岐野を無視し、  
「私は三ツ屋碧、次のテスト結果、楽しみにしてる!」  
と言うと振り返らず立ち去った。  
「彼女、カーワイイだろ?男勝りだけどさ!彼女は皆をライバル視してて、  
お前の評判も聞いて気になったんだろ!」  
とその時優一は、ふとこちらを見ていた水素の静かな真っ直ぐな視線を感じた。  
 
草薙さんが…どうしてあんな目で…僕を見るんだろう?  
既に、優一は水素の事で胸が一杯になり始めていた。  
 
寮に帰ると土岐野は、悪い、今夜は出かけてくる!  
と何処かへ抜け出して行った。  
優一は勉強する気にもならず、ベッドに寝そべると、  
自然に手が股間へと伸びた。  
当然、頭に思い浮かべるのは草薙の事だった。  
妖しい熱さが腰回りで火照り出す…。  
あぁ…草薙を想像の中で裸にし、色んな淫らな姿を思いながら、  
勃起し汁まみれのペニスを激しく扱く。  
草薙さん…イヤラシイ事を彼女と出来たら…!  
優一は顔を歪めて、激しく息をつきながら草薙の名を呻き、  
右手を早め、限界へと昇り詰めて行った。  
 
そして…!張り詰めたペニスから、熱く粘っこい大量の精液と、  
絶望的な快感が一気に、激しい全身の律動と、絶叫と共に放たれた…!  
優一は取り付かれていた…それは草薙への思いか、ただの性欲だったのか?  
自慰の惨めさと快感で我を忘れるまで、その夜は彼自身をいたぶった。  
 
ああ…草薙さんが、僕を、こんなふうにさせるんだ…。  
 
 
☆私立ロストック学園☆二時限目  
 
朝になると、寮に土岐野が戻ってきた。  
「実は少し離れた所に、全寮の女子短大があって、  
そこのお姉様に時々飯奢ってもらって寝てるんだ、  
今度一緒に連れてくからさ!」  
「…土岐野君、バレたら退学だよ、ちゃんと勉強もしなきゃ …」  
優一は、なんで彼がここに入学出来たのか不思議だった。  
「土岐野君は、変わってるよね…上着も一人違うしさ、  
ロストックの生徒らしくないよね」  
差し出されたタバコをくわえながら優一は言った。  
酒は飲まないが、タバコは習慣になっている。  
「制服は校章付でダサいだろ?古着屋で似た奴買って着てる。  
こう見えても、俺は推薦入学だぜ?  
でも実は、留年しててさ。バイクの支払いのバイトで忙しかったんだよ!」  
そうか、土岐野君はダブりだったんだな…先生から目をつけられる訳だ…。  
「…どんなバイト?」  
「もう辞めたけど、徹夜で大人の女の人と一緒に騒いだり、  
酒飲んだりチヤホヤするお仕事…ま、ホストともいうがな」  
…!!!こんな兎離州みたいな田舎にも、ホストクラブってあるんだな…。  
しかしホストって…。  
「湯田川っているだろ、あいつNo.1でメチャクチャ稼いでるぞ!」  
休み時間に、新聞ばかり読んでる彼か…土岐野はみんなの事、何でも知ってるみたいだ…。  
 
「…ここだけの話だが、草薙っているだろ?  
あいつさ、男嫌いに見えるけど、前の担任とデキて、  
妊娠したって噂があるんだよ!担任はそのせいか突然辞めちまってさ…。  
彼女は全国トップ成績の生徒なんで、スキャンダルは揉み消されたらしい」  
 
え…?草薙さんが?!  
大人の男の人と…寝た、なんて、そんなの本当なのかな…。  
もう、ヴァージンじゃないんだ…。  
優一は昨夜のオナニーの空想での、悩ましげな草薙の全裸を思い出し、  
再びモヤモヤした気分になった。  
 
…彼女の恋人に、なれたらな…。  
あんな目で、昨日僕を見つめたのは、どうして…?  
 
その日の授業中も、勉強しながら優一は草薙の事を考えていた。  
そして時折、視線を感じると、草薙と目が合った。  
「僕はゆっくり、彼女と恋に落ちていく…」と心で呟いた。  
 
休み時間、校舎裏の木陰に立つ草薙をみつけ、優一は近づいた。  
「やぁ…ここでタバコ吸ってもいいかな?」  
「構わない。私にも一本頼む」  
彼女も吸うんだ…優一はタバコを渡し、火を付けた。  
しばらく何本か無言で吸った後、優一は勇気を出して尋ねてみた。  
僕達、何処で会った事があるよね…そんな気がするんだけど。  
「何?それ、口説き文句?」  
「小さかった頃、近所に女の子がいて…名前も知らなかったんだけど、  
突然引越したんだ…何故かわからないけど、思いだした…」  
…。水素は黙って煙を吐いた。  
「…それ、初恋だったの?」  
「そうかもしれない、ただお互い離れて見つめ合うだけだったけど…。  
居なくなって、寂しかった」  
「…彼女の事、忘れられなかった?ずっと思い続けた?」  
「うん…彼女の瞳が、ずっと心に焼き付いてる…」  
タバコを消して、優一を鋭く見据え、水素は言った。  
 
「函南…私がその彼女だと思う?」  
 
 
☆私立ロストック学園☆三時限目  
 
その時、始業のチャイムが鳴り始め、優一と水素は教室へ戻った。  
「…やっぱり…そんな気がした…函南…優一…か」  
水素もまた、想い出の中の、近所の優しい瞳をした男の子を思い出していた。  
…ただ子供過ぎて、意識しすぎて見つめ合うだけで何もなかった。  
名前すら知らなかった、だけど… 。  
あれは間違いなく初恋だった…あんな気持ちはあれっきりだった。  
だって、先生とは…先生とは…ただ、ただ一度だけ…!  
 
…水素は前の担任との間の、ほろ苦い情事を思い起こしていた。  
大人の男…中年に差し掛かり、世間の汚さを知りつくした、  
教師にしては珍しい、クレバーで無頼な、危険な魅力の男…。  
 
…私は、先生のお気に入りの生徒だった。ハッキリとした意見を持ち、  
成績も抜群、そして何よりも、先生を崇拝すらしていた。  
勉強を頑張れたのも、そうする事で、先生に認められ、近付けると思ったから…。  
 
あの日は激しい雨だった…気持ちをぶつけてしまおうと、  
意を決して先生の家を訪ねると、そこには女がいた。  
ベッドに寝そべっている先生…そして、女。  
どんな種類の女かは、一目で解った。  
私が彼の生徒と察すると、女は静かに席を外した。  
「今から俺達は寝るんだが…草薙、何しに来た」  
凍りついて応えられなかった。  
でも、たぎる思いが高鳴るのを抑え切れなかった…。  
「幻滅したか?大人の男は教師でも例外じゃない、商売女とも寝る。で…お前はどうしたい?」  
私は後ろ手で鍵を掛けて、先生を真っ直ぐ見据えながら、  
制服を脱ぎ捨てていった。  
 
先生は私が裸になっていくのを、黙って寝転び眺めていた。  
女性の丸みが殆どない、幼い私の裸を一瞥すると、  
こっちへ来い、と先生は私をベッドに招いた。  
処女か、と私の瞳をじっと見て呟やくと、先生はまるで遊ぶ様に、  
乱暴に私の体を自由にいたぶり始めた。  
経験した事のない恥ずかしさ、痛みと緊張、なすがままに奪われる屈辱、  
そして…多分…先生の女になれた、という不思議な喜びで我を忘れた。  
 
先生の大きな手、ゴツゴツした指、タバコとウイスキーの混ざった荒い息、  
汗の匂い、ハスキーな低い声、長い舌と、荒れてささくれた唇。  
…そして先生の…ああ…!  
激しく貫かれて、もて遊ばれ、いじくられた揚句、ボロボロにされても、  
奇妙に私は幸せだった…。  
例え先生が、私を一夜限りのオモチャにしていただけだとしても…。  
歪んだ喜びと、痛みと快感…私が先生に求めたのは愛じゃなくて、  
それだけだったのかもしれない。  
明日の事なんてどうでもよかった。  
 
…行為が終わり、ベッドから立ち上がると、両足の間から、  
鮮血と精液が脚を伝って流れ落ちた。  
涙は一滴も流れなかった。  
黙って無感情のまま部屋を出ようとすると、タバコを吸う彼に呼び止められた。  
「草薙…俺でよかったのか?」  
「はい、後悔はしてません。…失礼します」  
ドア脇に立っていた女を後にして、寮まで傘もささずに、雨の中を歩いた。  
 
そして…暫くして、私が処女を捧げた先生は、学校を辞めた。  
 
 
☆私立ロストック学園☆四時限目  
 
土岐野はその夜、優一をバイクに乗せて、近所のカフェへ連れ出した。  
以前言っていた、女子短大の彼女たちに会うためだ。  
「オッサンより、かわいい年下が好きなんだろうなー、彼女たちはさあ。  
ん、でもフーコは前、不倫してたってクスミが言ってたっけ?」  
優一は黙って、ミートパイを食べていた。  
暫くすると、車で彼女達がやってきた…。  
 
派手なギャル系がクスミ、少し影のある、大人びたショートカットが  
フーコだった。  
「こいつは函南優一。すげえ頭いいんだぜ」  
「…優一君っていうんだ、よろしくね…」  
色っぽくフーコは囁いた。  
そして優一は、大きく開いた胸元から目が離せなかった…。  
「じゃ、そろそろ行くか?」、との土岐野の言葉で、四人は女子短大寮へ向った。  
 
優一は、フーコの部屋で二人きりになった。  
既に童貞ではなかったが、年上の、しかも経験豊富な女性とは初めてだった。  
「ふふっ…緊張してる?初めてなの…?」  
優一は首を振った。  
微笑みながら、フーコはゆっくりと、着ている物を床に脱ぎ捨てていく。  
きめ細やかな肌、むっちりした腰つき…。  
「…かわいい、こんなに大きくなって…イケナイ子…いじめてあげるわ…」  
ああ、ごめん、草薙さん…!  
ごめん、僕は、僕はこんなの、抗えないよ…!  
フーコは優一のモノを、慣れた様子でフェラチオし始めた。  
イヤラシイ子、何も知らない顔してスケベなんだから…。  
優等生はこんなにならないわよ?…いっぱい、ビュッ!て出したいんでしょ…。  
卑猥な言葉を囁かれて、優一は羞恥心と快感でのたうちまわった。  
激しい射精の瞬間、絶叫する間際、脳裏に草薙の姿がかすめた。  
 
「…すごい量ね?…こんなにたくさん…。  
ねえ、優一君、次は私を喜ばせて…」  
フーコは優一に覆いかぶさり、乳房を口に含ませた。  
乳首は大きく、敏感に優一の唇と舌に反応する…。  
みだらな声であえぐ、「悪い子ね、いけない事がとっても上手…嬉しいわ…!」  
優一は大人の肉体に、ただただ圧倒されていた。  
あえぎながら、フーコは優一に跨り、ゆっくりなめらかに腰を廻し始めた。  
…粘膜の音が絶え間なく続く中、フーコは自分で乳房を揉みしだいた。  
もうこうなっては、優一には、なにもなす術はなかった…。  
可愛い子、一緒に来て…さあ…!お願い、来て…!  
二人は、お互いにしがみ付きながら、絶頂を迎えた…。  
欲望だけが、堅く二人を結びつけた。  
 
昔、不倫してたの、っていうか、風俗のバイトしてたから。  
そのとき、あんたの学校の先生とも寝たわ…。  
ベッドの優一に、フーコはコーヒーを渡しながら言った。  
「学校、楽しい?」  
「うん」  
「勉強は好きなの?優等生なんでしょ、わかるわ…。  
また来てくれる?…きっとだよ…」  
優一は頷いた。  
 
ごめん…草薙さん…僕は、いったい何をしてるんだろう…?  
君と、君と一緒にこんなことが出来たら、僕は…!  
 
 
☆私立ロストック学園☆五時限目  
 
優一は、先日のフーコとの情事の最中も、  
草薙の事を考えていた自分の気持ちを、改めて振り返っていた。  
…草薙さん…。 …僕達は、初恋の相手だと思うんだけど、違うかな?  
君みたいな女の子の事だけを、僕は幼い時からずっと夢見てきた…。  
君を忘れた事なんてない、夢の中で、僕らはずっと一緒だった。  
でも最近、僕の夢に夜出てくる君は、とっても淫らだよ…。  
 
授業中、優一がじっと彼女の後ろ姿を見つめていると、  
『誰を見てる?あのオカッパか? それとも三ツ矢か?  
見ろ、三ツ矢の今日のピンクのブラ!透けてるぞ、レースまで!  
チラリズム最高ー!  
もう辛抱堪らんから、机の下でズボンのポケットからセンズリ掻くわ!』  
と、土岐野がノートの切れ端を回して来た。  
…。『土岐野君、授業中だよ!変態行為は止めたほうがいいよ。  
僕が見ているのは、三ツ矢じゃなくて、オカッパの子』  
と、優一は返事を書いて再び土岐野に回した。  
『声出さなきゃ、してもばれないだろ?しないけどさ。  
しかしお前の女の好み、変わってるな!オカッパで掻いた事あんのかよ? このデカチン!俺はあれじゃ抜けん』  
再び回ってきたメモを見た優一は、 …土岐野はいい奴なんだけど…。  
軽く溜息をついてクラスを見渡した。  
篠田は教科書読むふりして、模型雑誌か…。  
湯田川は、何故か新聞をコッソリ読んでる。ホストなのに、勉強熱心…なのかな?  
結局、まともなのは、僕と、女子二人しかいないみたいだ…。  
 
休み時間、優一は再び草薙の姿を探した。  
クラスの女子二人は、親友というわけでもなく、 取り立てて常に一緒ではないようだ。  
屋上で、タバコに火を着けようと、ライターを捜している草薙を見つけて、  
優一は自分のマッチで付けてやった。  
「ん…ありがと、助った」  
「…考えてみてくれた?この間の話」  「…何の事?」  
「僕の初恋の女の子の事…夢に見続けてきた、ただ一人の忘れられない女の子…。  
あれは…君だったんじゃないかって」  
「さぁ…?何の証拠も証明の仕様もないよね…あの辺、住んでた事覚えてるけど」  
「うん…でも、君の瞳を見た時に、懐かしい記憶がした」  
 
…優一、私にも解ってる。  
何だか…。胸が切なく、甘酸っぱい思いで、一杯になりそうになるから…。  
私は体を先生に捧げた、けど傷ついてても、心はまだ、誰にも…。  
 
「函南…。そんな事言ってても、結局経験あるんでしょ?」  
「…うん、あるよ…」  
「彼女の事忘れた事ないなんて…嘘つき…」  
水素は遠くを見つめたまま、大きく煙を吐いた。  
「…じゃ、その子の事考えてオナニーした事は?」  
優一は、暫く間を空けて答えた。  
「…あるよ。始めて精通したのも、彼女の事考えて触ってた時だった」  
「…そう。気持ちよかった?」  「うん…ものすごくね」  
どうして草薙さんは、僕にこんなイヤラシイ質問ばかりしてくるんだろう…?  
「…函南」 「なに?」  
「…今夜、私の事考えてオナニーしていいよ」 「えっ…?!」  
「明日感想聞かせて」  
 
草薙はスカートを翻し、優一を残して立ち去った。  
 
 
☆私立ロストック学園☆六時限目  
 
「今晩は私の事考えてオナニーして」  
優一は、水素の言葉を考えあぐねていた…。  
もうとっくにしてる、って言えばよかったのかな?  
…女の子も結局、男みたいにイヤラシイんだね…。  
 
寮では、水素と三ツ矢は同室で、どちらも成績優秀、気性の激しい美少女だが  
、性格は大きく違っている。  
水素はより寡黙でフェミニン、三ツ矢は感情表現するスポーティーなタイプだ。  
ライバル視し、時には同族嫌悪で気まずくなる事もあるが、  
親友でなくとも、数少ない女子どうし、部屋では話す機会もある…。  
 
「あー、さっぱりしたな、草薙さん、次シャワーどうぞ!」  
と三ツ矢がコットンのティーンらしいブラとパンティ姿で、浴室から出て来た。  
「あ…じゃあ次、私も」  
と水素も服を脱ぎ、入浴の準備を始めた。  
水素の下着は、黒の総レースで、パッド無しの透けるブラとTバックのセット、  
幼い体型にそれらは、妙にエロチックだった。  
「ねえ、草薙さんは、なんでいつも勝負下着なの?」  
三ツ矢は、入浴を終え、髪を乾かしている水素に尋ねた。  
「…だって、いつそんな気持ちになるか解んないし」  
「それって、エッチしたくなるって事?!」 「そう」  
「でも、誰と?うちの学校の男子達って、あんまりだよね…函南だけはマトモそうだけど!」  
「一人の時…自分でしたくなる時だってある」  
「えっ…?それってオナニーしちゃう、って事?  
私、まだ…自分ではした事ないんだ…」  
「したほうがいいよ、やってみたらいい。  
それに、ふふっ…土岐野のアンタを見る目に気付いてない?  
あれは、三ツ矢としたいって露骨だ」  
「土岐野?カンベンしてほしいな! …草薙さんは、今、誰か好きな人、いるの?函南?」  
「…秘密」  
「草薙さんは経験豊富だよね。私と違って、色っぽいし。私はつい生意気になっちゃう、  
バカだって解ってるんだけど…。あー、彼氏欲しいなあ!」  
 
三ツ矢はベッドに横たわると、すぐ寝息を立て始めた。  
水素は、学校を辞めた『彼』が、  
今だにしばしば近所で目撃されているのを知っていた。  
もう彼に対する憧れは消えうせていたが、  
再会すればベッドへ直行する事になるのは確信していた…。  
心でなく、自分の体がそれを期待しているのが、自分でも悔しかった。  
そして、新しく現れた函南優一…。  
かつて『先生』に自分がもて遊ばれた様に、  
今回は、彼を自分の魅力で虜に出来る予感がしていた…。  
 
私達、どれだけ我を忘れて、二人で夢中になれる…?  
優一は今頃、私を夢見ながら、ベッドの上の地獄で身悶えしてるはず…。  
そして水素は、パンティへと右手を滑りこませ、敏感な部分を擦りながら、  
暖かな内部へ指を出し入れし始めた…。  
ジュースで溢れ、卑猥な音が秘部から漏れる。  
激しい息遣いを堪えながら、水素は優一との行為を想像し、身をくねらせ、  
遂に奥まで指を入れ、深いエクスタシーに達した。  
…ゆっくり指を引き抜くと、三ツ矢の方を見た。  
すっかり寝入って気付いていない。  
 
夜はまだ長い…水素は、再び指先を柔らかな割れ目へと滑らせた。  
 
 
☆私立ロストック学園☆七時限目  
 
放課後、優一は水素に中庭へ呼び出されていた。  
「…で、函南。どうだった…?私の事考えて、オナニーした感想は?」  
「ん…良かった、もう…自分を止められなかった…」  
「それは良かった。…ちゃんと私の名前を呼んで逝った?」  
「…うん、土岐野は外泊してたし…」 「どんな事考えてやった?」  
「ねぇ…草薙さんは、なんで僕にこんなイヤラシイ事ばかり聞くの?」  
「イヤラシイのは函南もでしょう?  
私の事考えながら、射精して一杯出した、それも何回もね…違うの?」  
あの時の初恋の女の子が、成長した僕にこんな事を言うなんて…。  
「…私もした、函南の事考えて」  
「…本当?!だとしたら、嬉しいけど…」 「本当だ、そんな嘘ついても仕方ない」  
優一はタバコの先端の、紅い焔を見つめるとつぶやいた。  
「…草薙さん、大人の男の人と付き合ってたって聞いたけど。真剣だった?」  
「さあ…昔の事は忘れた」  
水素は吸っていたタバコを投げ捨て、足で踏み消した。  
「…で、函南、私達、これからどうなるの?」  
水素は、切ない眼差しで優一を見つめた。  
「どうって…僕は草薙さんの恋人になりたい」  
「いいよ、わかった…ただ… セックス抜きの恋愛なんてない…函南、私にはそれが全て」  
 
そして二人は、誰もいない図書室に潜りこんだ。  
「函南、さあ好きにして…」水素は制服を無造作に脱ぎ捨て、淫らな下着姿になった。  
「…どうにでもしていいんだよ…」  
しどけない姿で、水素は自分の右手をパンティのクロッチから入れ、  
指を使い愛液の音を響かせ、左手では固くなった乳首をいじり、妖しく見つめて優一を誘った。  
優一は、辺りを見回しおながら、おずおずと裸になった…すでにペニスは固く屹立していた…。  
「大きいね…ねぇ、入れて」 優一は覆いかぶさり、体を激しく揺すり始めた。  
「ああ、優一…もっと激しく…! …もっと…優一、お願い…私を殺して…!」  
夢にまで見た、水素とのセックスに、優一は全てを強引に奪われていった…心も、体も…。  
ただひたすら、何かに操られた様に腰を振り、水素の中へと突き刺した。  
とろける様に甘美な刹那の中で、優一は水素に囁いた、  
「ね…僕らはずっと一緒だよ…」  
重なり、一つに溶け合い、二人は永遠に思えるエクスタシーと、死の様な静寂の間を行き来した…息が切れるまで…。  
水素は優一が自分とのセックスに夢中になる姿に、激しい征服感に似た喜びを感じた…。  
私が彼を狂わせてる、そして私も溺れて、それを見た彼もますます虜になって激しく壊れていく…!  
しかしもう、最後には自分が支配しているのか、支配されているのか水素にはわからなかった…。  
ただ、優一が愛しかった。  
 
荒れ狂った嵐が過ぎ去った後、夕日が窓から、二人の静かに抱き合った裸体を照らしていた…。  
 
 
☆私立ロストック学園☆八時限目  
 
週末に学期終了を迎え、クラス全員でのボーリング大会兼飲み会があった。  
愉しめないな、本当は優一と、二人きりで街に出たかった…。  
水素は内心、つまらなかったが付き合った。  
草薙さん、あまり感情を顔に出さないほうがいいよ…付き合いなんだから、  
と優一は囁いたが、水素はつまらなさを隠そうとしなかった。  
みんな子供だな、とタバコの煙を吐き出しながら。  
 
結局、ボーリング大会では土岐野が圧勝だった。  
三ツ矢が、土岐野やるじゃん!と珍しく応援していたせいかもしれない。  
「賞品はねえのかよ?ビール奢ってくれ、みんなで飲もうぜ!」  
その後は、久しぶりに皆で深夜まで酔い潰れて、寮へ戻った。  
優一含め、男子は皆泥酔し、部屋へ転がりこみ眠ってしまった。  
 
三ツ矢と部屋に戻った水素は、先にシャワーを浴びた。  
彼女自身はすっかり酔いから覚めていた。今日はもう、眠るだけだ…。  
「三ツ矢、待たせた、次シャワー使って…」草薙が浴室から出ると、  
三ツ矢が下着姿になり、ベッドの上で自分をまさぐりながら、体をよじり息を弾ませていた。  
かなりまだ酔っている様だ…。   
「どうした?三ツ矢?」  
まだオナニーした事ない…、とか照れてたくせに、  
酔って遂に、羞恥心のタガが外れたか…。  
「いい事だ、自分の体の喜ばせ方を知っておくのは大切だから」  
外れかけたブラから覗いた両の乳首を、胸でクロスさせた両手でつたなく弄りながら、  
三ツ矢は恍惚としている…。  
ホント、まだ子供だ…やり方知らないな?水素は三ツ矢に言った。  
「三ツ矢、乳首だけで満足にはイケない、同時にクリトリスに触って、  
中に指をアレみたいに出し入れしてみて…簡単だ」  
「気持ちいい…」  
溜息を漏らす三ツ矢に、水素は告げる。  
「…もっと感じてイキたいのなら、誰かにされてるって、想像しながらじゃないとダメだ。  
…誰かクラスの男子、そう、土岐野にでもされてるって、考えながらしたらいい」  
 
水素の言葉に反応した三ツ矢は、土岐野との淫らな想像を始めた様子で、  
堪らなく興奮しだし、激しく喘ぎはじめた…。  
そしてお決まりの上昇を始め…遂に爆発した…!  
何度も全身を痙攣させ、声を上げ、長引く喜びに浸っていたが、  
やがて静かな眠りに落ちていった。  
やれやれ、三ツ矢、次は実際に土岐野としてみるんだな…。  
…本当はアイツの事、好きな癖に…!  
フッとほほ笑むと、水素は三ツ矢に毛布をかけてやった。  
 
次の昼下がりに目覚めた三ツ矢は、己の乱れた下着に気づくと、  
「なんか昨日は酔ってたけど…私…もしかして…あの…まさか…!」  
と顔を赤らめて水素に尋ねた。  
「ああ、酔ってオナニー始めてた。  
気持ち良さそうだった、土岐野とやってるって想像しながら逝ってたよ」  
「え…全部見られてたの…? 恥ずかしいな…。  
酔ってたんだ、私、馬鹿みたいだよね…!」  
「いいよ、みんなやってる事だし。 気持ちよかった?」  
「あは…なんか、癖になりそう、どうしよう…」  
「しまくって死ぬ訳ないんだから、やれば? 何なら実際に土岐野と」  
「…勉強手に付かなくなりそう…。  
草薙さん、誰にも言わないで、お願い!」  
「わかってる、安心しろ、誰にも言うわけない」  
 
覚えたての子供ってこれだから…。  
水素の心に一瞬、苦い初体験の想い出がかすめたが、  
優一の抱擁を思い出し、体に熱い火照りが走った…。  
 
 
☆私立ロストック学園☆ 九時限目  
 今日は終業式。笹倉が生徒達に睨みを効かす。  
「休みだからといって、生活の乱れる事の無いように!バイトも禁止だ!」  
休みに入ったものの、家に帰れるわけでもない。  
特別講習という名の授業が、新たに始まるだけだ。  
ただし、余暇は学期中よりふんだんにあった。  
 
そして…水素はある噂に心捕われていた。  
あの『彼』が、ラウテルン学院で、再び教鞭をとっているというのだ…!  
…会うのか?もう私も一人前の女だと見せ付けてやる?  
それともただ、復讐の様なセックスををしたいだけ…?  
水素は、タバコを何本も揉み消しながら 考え続けた…。  
「…優一が私に与えてくれる、優しさと安らぎは本物…。  
ただ、先生との間には、やり残した事がある…!  
それを終わらせないと、  
私は大人の女にはなれない…」  
水素は、過去を置き去る為に、無謀な狩りへと、独り出発する決心を固めた…歪んだ欲望を隠して。  
「草薙さん、でかけるの?」 優一が聞く。  
「あ…妹と、母の墓参り。すぐ戻る」  
「僕も、一緒にいこうか…?」  
「いや、いい。大丈夫だ、すまない」  
複雑な家庭事情を知るせいか、優一は嘘を疑ってはいない様子だ…。  
「そう、気をつけて」  
水素は優一を後に残し、ラウテルン学院ヘ向かった。  
 
そして、すぐに再開の時は訪れた…!  
「…草薙か?久しぶりだな、どうした?」  
「…何故、私が来たのか…察して下さい」  
タバコの煙を吐き出す姿も昔のままだ…水素の胸に、チクりと痺れが走った。  
「草薙…俺の事は忘れろ」  
「その為に来ました…本気です」  
「…ケリをつけたいんだな?わかった、お前がそう望むなら…」  
残酷な彼の視線に、水素の体に戦慄が走った。  
 
そしてホテルで、爛れた処刑の儀式が始まった…。  
「…いい女になったな、男はいるのか?」  
無言で水素は服を脱いだ…下着は、黒のガーターベルトとストッキングだけ…。  
これは私の闘い、例え血祭りにされても、挑まなければ…!  
「教えて欲しいのなら、教えてやる…」  
ベッドで、彼はあの日の様に、再び水素を乱暴に、思うがままに扱った。  
…でも今の私は、もう震える処女じゃない、欲望ある一人の女…!  
乱れて喘ぎ、快感にのけ反る水素に、  
「…売女顔負けだな、もう全て経験済みか?」  
…彼は冷たく言い放ち、あらゆる体位で、一方的に攻め立てた。  
捕われ、逃れられない地獄のなかで、水素は、捻れた奴隷の喜びを味わわされ続けた…。  
 
「…草薙、お前のひたむきさは両刃の剣だ…。自分を大事にしろ」  
彼は、振り向かずに立ち去った。  
…味わったのは苦痛、それとも喜び…?  
そして、何を勝ち得ただろう…?  
もう、逢う事も無い…これでいい…これで…。  
私の少女時代は終わりだ…。  
軋む身体を横たえ、水素は思った。  
 
 
☆私立ロストック学園☆十時限目  
 
…水素が寮に戻ると、優一が所在なげに待っていた。  
「草薙さん、おかえり…遅かったね。  
なんだか、疲れてるみたいだけど…大丈夫?」  
「…ああ、少し頭痛がする。でも大丈夫だ。  
じゃ…もう寝るから…」  
「わかった、おやすみ…」  
振り返らず、虚ろな眼差しで通り過ぎていく水素を、  
優一は心配そうに見守った…。  
 
部屋には、ありがたいことに、三ツ矢はいなかった。  
今は、誰にも会いたくない…まるで、現場を再度訪れた後の、犯罪者みたいな気分だった…。  
頭痛薬を飲み干し、シャワーを浴びた。  
…もう、これで終わり…全て終わった…。思い残した事など、もうない…。  
ベッドに横たわり、水素は『彼』の残像、指の、唇の感触の記憶を振り払った。  
また何処ですれ違っても、私達はお互い、今までどうり、ただの他人だ…これでいい…。  
でも、忘れる事が出来る日が、いつか来るのだろうか…?  
今夜だけは、水素に、優一のあたたかい包容は、必要なかった…。  
一人孤独でいたかった。  
まだ若くて美しく、学費免除される程に、将来を約束された、優秀なエリート校の生徒…  
そして、全てを受け入れてくれる、優しい恋人もいて…  
私は恵まれている…。なのに、私はどうして、  
もっと、もっと愛されたいと心ひそかに願ってしまうんだ?  
…それも一番、決して私を愛してくれなかった男から…!  
…どうしてだ?草薙水素…。  
もう忘れろ…ただ、今は、眠ろう…。  
 
優一は、水素の部屋の前まで来て、立ちすくんでいた。  
僕はどうするべき…?きっと、昔の男の事だと察しはついていた。  
僕が、彼女をずっと忘れられずにいたように、きっと彼女にとっても、  
乗り越えるのがつらいんだ…  
彼女は強い人だけど、でも、どこかすごくもろい…。  
どんなことがあっても、僕が、彼女から離れることなんてないのに。  
…草薙さん…、君の凍った心を、僕が溶かすことが出来たら…!  
「函南、どうしたの?何か用?」  
三ツ矢がバイトからこっそり戻ってきた。  
「ううん、なんでもない…おやすみ」  
優一はその夜は結局、自分の部屋へと戻った。  
 
翌日の講習の後、函南は水素と校庭を歩いた。  
「草薙さん、昨日のあれって…。嘘だよね」 「何が?」  
「本当は、昔の人に会いに行った、違う…?」  
「煙草、頂戴!…だとしたら、何?」 「…何も」  
優一がくれた煙草の火を、水素はもの憂げに吐いた。  
優一が、理解してくれる訳がない…。  
 
「…そんなの、僕は別に、気にしないよ…」  
しばしの沈黙の後、優一は突如、水素を強く抱き寄せた…!  
…普段の彼では考えられない、激しさと情熱で。  
「…僕が、君の傍から離れる事なんかない!  
…どんな君であっても。  
君の心が変わるまで…僕は待つよ…!」  
水素は、優一にかき抱かれながら、彼の頬を涙が伝っている事に気がついた…。  
そして同じく、自分の瞳にも…。  
 
…私の帰る場所は、優一のいるところ…きっと…。  
…たぶん、きっと…!  
 
 
☆私立ロストック学園☆十一限目  
 
それから優一は、何事もなかったように、水素に接した…。  
…むしろ、以前よりもっと、寄り添い始めてくれている気さえした。  
水素は、優一がどうしてここまで、自分を受け入れてくれるのか、理解出来なかった…。  
 
…これが、見返りの無い愛情…無償の献身…?  
彼は私に、自由に彼をねじまげさせてくれてる…。  
…優一、本当に私が好き?  
どれだけ試しても、  
どんな私でも…それでも、私を好きでいてくれる…?  
 
その夜、土岐野が外泊した優一の部屋に、二人はいた…。  
ワインを、水素は手酌で注いでは、飲み干している…。  
「…ねえ、草薙さん、まだ飲むの?もう、やめたほうがいいよ…」  
心配した優一が、ボトルを取り上げた。  
「…函南…寝ようか…?」  
水素はむしり取る様に、服を脱ぎだした。  
まだ、そんなに酔ってはいなかったが、酒無しでは、  
今夜、優一に抱かれる勇気はなかった…。  
優一に対する、贖罪の気持ちが全くないと言えば嘘になる…。  
…ベッドにけだるそうに、全裸で水素は寝そべった。  
優一が服を脱ぎ始めると、水素はタバコに火を着け、大きく煙を吐いた…。  
「…函南、平気なの?  
…私、昨日、他の男と、寝たんだよ…」  
裸になった優一は、黙って、水素の横に身を寄せた…。  
「…それも、自分で望んで、メチャクチャにされたかったから…  
大人の男に」  
優一は、水素の瞳を見つめたが、水素はうつろに視線をあわせなかった…。  
「…その人、前の担任だった、違う?」  
「そう、妊娠して中絶もした…」  
「…それで、またその人に会えて、幸せだった?」  
…私が感じたのは、空虚で、歪んだ、激しい悦びだけ…。  
「幸せだったか…、わからない…」  
水素は短くなったタバコを消した。  
「そう…。僕は今でも、君に逢えて、幸せだと思うよ…」  
「…それで?  
…どうするの、寝ないの?私達」  
優一は、水素の上に覆いかぶさると、まるで始めての様な、優しいキスを始めた…。  
舌が絡まるたびに、二人の呼吸は、荒くなっていく…!  
…どうして、こんなに私に優しいの?どうして…。  
普段の物静かな優一が、息を乱し、我を忘れ、夢中になっていく姿に、水素はとめどなく濡れた…。  
『彼』が与えてくれた、激しい刺激とは違い、優一の真剣な、純粋な欲望が、まっすぐ自分に向けられている事に、水素はひそかに喜びを感じた…。  
汗ばんだ二つの若い裸体が、一つになり、溶け合い、求めあった…。  
この瞬間、彼が私の中にいる時、私は幸せ…、嘘じゃない…!  
…果てる寸前の、歪んだ優一の表情が愛おしかった。  
そして、優一が水素の内側で弾け…熱くほとばしるのを感じるのを感じると同時に、  
水素の全身を、喜びが貫いた…激しく抱き着き、彼を受け止めた…!  
 
「…じゃあ、おやすみ…」  
何度も求めあった後、優一は、水素にキスをして眠りについた。  
水素は優一の肩に頭を寄せ、彼の寝息を聞いていた。  
…あたたかい…。  
それだけの事が幸せだなんて。  
優一、私は知らなかった…。  
 
 
☆私立ロストック学園☆ 十二限目  
 
休みの間、禁止されているが、生徒達は学校の目を盗み、バイトに励んでいる。  
それぞれの個性を生かして、小遣稼ぎだ!  
「私は子供が好きだから、ベビーシッター。  
ロストックの生徒って、信頼もされてるし、凄く楽しい!  
まあ、ボランティアみたいなものだから、時給良くないけど…」  
「…女子はやっぱり、あれが一番、手っ取り早い稼ぎじゃないか?  
つまり、体張って売…!イテッ!三ツ矢、冗談だ、笑う所だろ!人類最古の職業だぜ?」  
「…土岐野君、あんまり三ツ矢さんには、下品な冗談は通じないと思うよ…」  
函南は、黙ったままの草薙に気付いて、さっとタバコを差し出し、火を着けながら言った。  
草薙は、函南の細やかな気遣いが、まんざらでもなさそうに、煙を吐いた。  
「函南はバイトしねぇのか?」  
「…草薙さんに世話を焼くバイトをしてる、無給だけど」  
函南のウイットの効いた返事に、草薙はフッと微笑んだ。  
「ハッ、そりゃ激務だな!ご苦労さん。  
…篠田なんかさぁ、造った模型やフィギュアをオクで売って、小金貯めてんだぜ?  
一日中、雑誌で研究してるのは伊達じゃない、あれはもうプロだな!」  
「…土岐野君、最近部屋にある、凄いエロフィギュアは、篠田君が造ったやつ?」  
「…ああそうだ、羨ましいだろ!函南も頼めよ、友人割引価格だ」  
「…僕は戦闘機の模型がいいな、カッコイイし」  
…エロフィギュアなんて最低…三ツ矢が軽蔑の眼差しで、えぐる様に土岐野を見た。  
「今、俺はゲーセンのバイトしてるけど、楽勝だぜ?  
暇な時はアーケードでタダで遊ぶし、隠れてビールも飲める」  
「…草薙さんは?小学生の家庭教師とか、どう?」  
「どうだろ、別にいいよ…。ありがと、三ツ矢」  
ふと、小学生の妹が、水素の心をよぎった…。  
そこへ、湯田川が現れた。  
「よっ、bPホストの登場だ!」土岐野が囃す。  
「いや、お前のドンペリコールは凄かった、あれは真似出来ない」  
「湯田川亜伊図、アイズ、だぜ?  
源氏名いらずだよなー、この色男!」  
表情変える事なく、湯田川は席についた。  
「何だ、飲み食いするもの無いのか…まあいい。  
…実は昨夜、店に笹倉担任が来た。  
何も知らずに来たらしいんだが…光栄にも指名を頂けた」  
水素は眉を動かしただけだったが、皆はパニックに陥った!  
「…え、先生が…!ホストクラブ?」 「嘘よ!信じたくない!不潔!そんなの嫌すぎるよー!」  
「確か、笹倉はガキと旦那を残して、兎離洲で単身赴任だ…。  
淋しかったのかね?  
で、補導されたのか?」  
「いや…ボトルを入れて、朝まで二人で飲んだ」 「…見つめあう、先生と湯田川君ー?  
いやあああー!想像したくなーい!」  
「独占指名か…。  
あえて死語で聞くが、朝までしっぽりと…だったのか?」  
「…ああ、しっぽりとだ…」  
「やめてぇー!聞きたくないーっ!」 三ツ矢は半泣きだ。  
「…女は灰になるまで女、っていうからな…」  
 
「…草薙さん、大丈夫?  
よそに行こうか?」  
「…いや、大丈夫だ」  
教師と生徒…よくある、ありふれた話。  
でももう、私には関係ないもの…!  
…水素は、皆のはしゃぐ様子を、微笑んで眺めていた。  
 
 
☆私立ロストック学園☆十三時限目  
 
翌日以降、生徒達は、笹倉担任の態度に、何か変化があるのでは…?  
と注意して、一挙一動を見守ったが、何事もなかったように、通常の厳しい笹倉だった…。  
湯田川もプロのホストとして、ポーカーフェイスで通していた。  
 
今夜は、寮で函南と土岐野は、ビールを飲みながら過ごしている…。  
「うーん、知らんふりするのって、大変だな!  
俺は笑い堪えるの、必死だったぞ。湯田川は流石だな」  
「…土岐野君は、よく授業中、ニヤニヤしてるから別に怪しまれないよ…。  
僕はなんだか、先生の顔、正視できない…」  
「しかし、今後、オキニにされて同伴!…とか湯田川の奴、どーすんだろうなぁ。  
金か、テストの点数と内申書の水増しで、貢いで貰うのかね?」  
「うーん、どうかな…?お互い、ビジネスで割り切るのかも。  
…土岐野君、先にシャワー使うけど、いいかな?」  
「ああ、先に使え」  
優一は、シャワーを浴びたら、草薙さんの部屋に行こう…と、蛇口を捻ろうとした。  
…その時…!  
微かに、水道管か何かを伝わり、どこかから、悩ましい女の喘ぎ声が聞こえた…!  
「…!?誰だろ…?ねぇ、土岐野君、ちょっと来て…!」  
「…何だよ、俺に背中流せってか?しかし、相変わらずお前のデケェな!」  
「…しっ!…聞こえる?…ほら、声が…!」  
「…!って、ここの女子、二人しかおらんだろーが!草薙か?」  
函南は首を振った。  
「…三ツ矢か!函南!あっち行け!  
勿体ない、お前が聞いたら耳が腐るぞ!」  
と、土岐野は裸の函南を浴室から追い出した。  
「土岐野君…早く出てよ…」  
 
…その時、三ツ矢は湯気の充満した浴室で、全身泡まみれになり、  
鏡に映った自分を見ながら、指を使って喘ぎ、オナニーに夢中になっていた…。  
あ…ん、気持ちいい…っ!  
何度目かのエクスタシーに達すると、三ツ矢はシャワーで、淫らな匂いを洗い流した。  
 
「…三ツ矢、もう病み付きみたいだな?」  
水素は三ツ矢が、浴室から出てくるなり言った。  
「…うん、だって凄く気持ちいいんだ…。なんか、毎日どんどんエッチになってくみたい!…どうしよ…」  
「別に、したいだけやれば?…道具使う手もある」  
「…えっと、バイブとか?んー、買っちゃおうかなもう…。  
草薙さん、持ってる…?」  
この間まで、あんなに恥ずかしがってたくせに…。  
水素はタバコに火を付けた。  
「…いいや、今は持ってない。三ツ矢、実際、土岐野とすれば?」  
「…嫌だ、そんなの…恥ずかしいよ…」  
何言ってるんだろ、馬鹿な子…!  
水素は微笑んで、煙を吐いた。  
 
「…たまらん…!声だけとか、マジで生殺しだ!  
すまん、函南、待たせたな!  
もう俺は出すもん出したから、シャワー使え」  
「…土岐野君、今後覗きとか、盗聴にエスカレートしないようにね…」  
「篠田に、等身大三ツ矢フィギュアを造らせるか…」  
「…それ、何てダッチワイフ?」  
まったく、もう…。  
 
函南はシャワーを浴び始めた。  
…さあ、草薙さんが、僕を待ってる…!  
 

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