「さーお兄ちゃん行こ!早く早く!」シフォンがアースを急かせる。  
「ちょ、ちょっと待ってよシフォンちゃん・・・まだブーツ履けてないし・・・」  
「シフォン、アースさんを困らせないの!アースさん、慌てなくてもいいですよ」  
「あれー、お姉ちゃん何かうっすら口紅なんかつけてる?どうして?」  
「えっ・・・い、いやねえシフォン、お買い物に行くんだからお化粧するのは当然でしょ?」  
「ふ〜ん、いつもはすっぴんなのに・・・まっ、いいか」  
「ステラさんとても綺麗ですよ・・・見違えちゃった」  
「あ、あらアースさん・・・お世辞がお上手なんだから・・・」  
「お世辞じゃなく、ほんとに綺麗です、ステラさん」  
「ぽっ・・・」  
ステラはアースに褒めてもらい、頬を赤く染めた。  
「お兄ちゃん用意できた?じゃ、レッツゴー!」  
 
シフォンは相変わらず元気だ。昨日のこと等もう忘れているようだ。  
 
「お兄ちゃん、手、つなご?」  
「えっ、手を・・・?」  
「いいでしょ、別に」  
「あ、ああ、いいけど・・・」  
 
と言う前にシフォンはアースの手を掴んできた。小さいからアースがちゃんと握ってあげないとすぐにでも抜けそうだ。  
 
「・・・ア、アースさん・・・私も・・・いいですか?」  
「ス、ステラさんまで・・・、か、構いませんけど・・・」  
 
ステラは手ではなく、腕組みをしてきた。  
 
「ちょ、ちょっとお姉ちゃん?腕組みなんてずるーい!」  
「い、いいじゃない、私だってアースさんとこうしたかっ・・・あっ・・・」  
「ス、ステラさん・・・?俺と・・・こうした・・・かったって・・・?」  
「・・・ち、違います!な、何でもないです!さあ、い、行きましょ!」  
「ステラさん・・・?」  
 
アースはステラの気持ちが自分に向いているような発言をされ、ちょっとびっくりした。  
 
「(ステラさんには俺に半ば強引にキスされて、それだけで俺を好きになるってのは・・・普通あり得ないだろ?)」  
「(でも、もしステラさんが俺のこと・・・い、いかん!お、俺にはラブという大事な人がいるんだ!ここは冷静に・・・)」  
 
「ス、ステラさんやっぱり手を繋ぎましょう、シフォンちゃんにも悪いし・・・」  
「そ、そうですね・・・」  
ステラは腕組みを外し手を繋いで笑顔を見せたが、何だか残念そうな顔つきだ。  
 
その後3人は仲良く手を繋いで、商店街に入っていった。  
「さあ商店街に着いたよお兄ちゃん!えーっと、何を買うんだっけ?」  
「船内の飾り付けとか、花束とかだよ」  
「飾り付けならそこを角を曲がったお店に売ってるよ!」  
「ではそこで色々見繕いましょう、アースさん」  
「はい・・・色々とありがとうございます」  
 
店内には多種多様に対応できる飾り付けが一杯揃えてあった。  
「うわーっ結構飾り付けでも色々あるんだなあ」  
「お兄ちゃん、こんなのどう?キラキラしててパーティーっぽいよ!」  
「アースさんこっちの方が良く無いですか?ラブさんは大人の女性ですし・・・」  
「えーっ私の選んだのにしようよー、可愛いから私好みなんだー」  
「シフォン、あなたのパーティーじゃないんだから、ワガママ言わないの!」  
「ぶぅー!そうだけど・・・こっちの方がいいと思うんだけどなー」  
「最終的にはアースさんに選んでもらいましょう。どれが良いですか?」  
「う〜ん結構難しいなあ。こういったのは男じゃなく女性に選んでもらう方が無難かなあ」  
「そうですか!分かりましたステラにお任せ下さい!」  
「えーっ私も一応女性だよ!私にも選ばせてよ!」  
「そうだけどそれじゃなかなか決められないわね・・・シフォン、じゃああなたは花屋さんで花束を選んできなさい。私は飾り付けを選んでおくから。それであいこでしょ?」  
「うーん・・・まあいっか。分かった!じゃあ私は向こうの花屋さんで選んでくるから、飾り付けはお姉ちゃんに任せるわ!」  
「じゃあ、きちんと選んでくるのよ、シフォン」  
「はーい」  
 
シフォンは花束を選びに走り去った。  
 
「ごめんなさい、俺こういったのはセンスが無くて・・・、2人がいてもらって助かります」  
「いいんですよアースさん。これくらいのことなら私達に任せてもらえば」  
「じゃあ早速、選んで下さい。船内は結構広いので、多めに買っておいた方がいいかもしれません」  
「分かりました!」  
 
ステラはテキパキと店員に欲しい飾り付けを指示していく。  
「へええ、ステラさん流石だな・・・なんて要領良いんだ」  
 
そして数分後・・・  
 
「アースさん、これで全て揃いましたよ!」  
「は、早いっ!さすがステラさんだ」  
「いえいえ、こういった飾り付けとかするのは昔から好きなんですよ。結構多めに選びましたが、どうされます?」  
「明日の夜にラブやみんなと合流する予定だから、明日の朝に隣町の飛行場にあるエリシオン号に届けてもらえますか?」  
「承知しました!」店員が飾り付けを箱に詰めだした。  
 
「ふふっ、色々選びましたからね。楽しいパーティーになるといいですね!」  
「ありがとうステラさん」  
 
そしてその店を出て、シフォンが花屋から戻ってくるのを待っていた。  
 
「そういや明日の朝に船内の飾り付けをする、ということは今日まだお時間あります・・・よね?」  
「え?ええ、エリシオンに戻るとしても明日でしょうから、まだ時間はあるといえばありますが・・・何か?」  
「シフォンには内緒にしてほしいんですが・・・」  
「な、何でしょうステラさん・・・(ゴクリ)」  
「き、昨日の続き・・・してほしいかな・・・って」  
「へっ?昨日の続き・・・?」  
 
ステラは顔を真っ赤にしてもじもじしながらアースに語った。  
 
「あまり大きな声では言えないんですが・・・ちゅ、チューの続きが・・・したいんです・・・」  
「ちゅ、チューの、続きぃ!?」  
 
アースはびっくりした。半ば強引にやってしまったキスの続きをステラが望んできたのだ。  
 
「え、あ、その・・・」  
「ごめんなさい・・・アースさんに・・・キスされた時・・・私・・・ボーッとしちゃって・・・身体がすっごく熱くなって」  
「で、でもあれは俺が強引にやってしまった訳で、あの、その・・・」  
「私はあれがファーストキスだったんです。あの夜、興奮して一晩中眠れませんでした」  
「そ、そうだったんだ・・・ご、ごめんなさい」  
「謝らなくてもいいです・・・私・・・アースさんに危ない所を助けて頂き、治療中に空の闘いで受けた背中の大きなキズを見て、その勇敢さに私の心はアースさんに傾きかけました」  
「は、はあ」  
「そこてあのキス・・・強引でしたけど、それで私の心はもうアースさんの虜になりました」  
「ステラさん・・・」  
「シフォンが入ってきて中途半端でしたが、もう私はあなたのことが忘れられないんです。だからお願いです!今日の夜、私の部屋へ来て欲しいんです」  
「し、しかし・・・」  
 
アースは悩んだ。ステラがここまで自分を受け入れてくれるとは思いもしなかった。じっと見つめるステラの大きな瞳。その瞳に負けてアースは喋り始めた。  
 
「分かりました・・・今晩、あなたの部屋に行きます。でも、俺はこれからも空の闘いに出る必要があるので、今日1日だけとなりますけど、それでもいいですか・・・?」  
「か、構いません・・・私を・・・女に・・・して下さい・・・」  
 
ステラは涙を浮かべ、アースの胸に飛び込んだ。アースもそれに応え、ぐっと抱きしめた。  
 
 
その後シフォンも花屋から戻ってきて、全ての準備が済んだ為3人は家に戻った。もう空は夕暮れ時だった。  
「ステラさん、シフォンちゃん、今日は本当にありがとうございました。おかげで楽しいパーティーが開けそうです」  
「いえいえ、そんなに気をお使いにならなくてもいいですよ、アースさん」  
「お兄ちゃん、パーティー楽しみだね!」  
「うん、ラブの喜ぶ顔が楽しみだよ」  
「ねーお兄ちゃん、今日この後どうするの?」  
「(ギクッ)えっ・・・?」  
「(シフォンたら何を・・・)ア、アースさんはもうお帰りになられますよね」  
「(ステラさん今夜のことをシフォンちゃんには内緒か)え、ええ。今日はそろそろおいとましようかと」  
「シフォン、アースさんは明日からまた空に戻らないといけないらしいから、ここでお別れよ」  
「えーっ寂しいなあ。今日もウチに泊まっていけばいいのにー」  
「シフォン、勝手な事言わないの!(私は今夜会うけどね・・・フフッ)」  
「ちぇーっ、じゃあ、また地上に降りてきたらウチに寄ってね!お兄ちゃん!」  
「あ、ああ。分かったよ。また空が平和になったらきっとシフォンちゃんに会いに来るよ」  
「約束だよ、お兄ちゃん!」  
 
シフォンと約束を交わし、アースはそのまま飛行場へ向かう(フリをした)。  
 
「さあ夜はステラさんと・・・グフフ・・・」  
アースは夜のことで頭が一杯。ニタニタしながら歩いていると、後ろからポンと肩を叩かれた。  
 
「ん?誰だい?」アースが振り向くと・・・  
 
「よっアース、ここで何をしてるんだ?」  
「き、君は・・・ラ、ラブっ・・・!?」  
 
なんとここで会ったのはラブだった。ラブは普段着の格好でいたため、すぐにラブと見分けが付かなかった。  
 
「さっきからニタニタしながら歩いていたけど、何か嬉しい事でもあったのか?」  
「えっ!?い、いや違うよ・・・何でもないよ(ヤベッ、俺そんな顔で歩いてたのか)」  
「ふふーん相変わらず怪しいなあ。まっ、何があったか知らんが明日の夜にはちゃんとエリシオンに戻るんだぞ」  
「わ、分かってるさ。ところで、ラブはどこに行ってたの?」  
「ああ、剣のメンテナンスで鍛冶屋へ行ったり、久々に孤児院とかにも寄ってたりして、今戻ってきたところだ」  
「へーっそうなんだ」  
「ひととおり用事が済んだので、今日はこれから特にやる事がなくなってしまった。ところで、アースは昨日からどこで寝泊まりしてるんだ?」  
「へっ?ち、近くの宿屋さ(・・・ほんとはステラさんの家だけど)」  
「そうか。じゃあ、私もその宿屋に泊めてもらおうかな」  
「えっ!ラブと一緒に?(ヤ、ヤベッ)」  
「なあアース・・・私達、闘いに明け暮れてお互いゆっくりする時間が無かったじゃない?せっかくの休日だし、今日の夜は一緒に・・・ス、スキンシップでもしないか?」  
 
「いいっ!ラ、ラブがそんなことを言うなんて・・・さ、寂しかったのか?」  
「さ、寂しかったわけじゃないぞ?その、つまり何だ、こんな時だからこそ、一緒にいる時間を作りたいだけ・・・なんだ」  
 
アースはラブの言葉に、納得せざるを得なかった。確かにアースとラブは一緒の墓に入ると誓いあった仲。  
空ではキャプテンと隊長という肩書きだが、なかなかそれ以降発展が無い為、お互いの愛情を確認しあうことが出来なかったのが事実だ。  
 
「せっかくの休日なんだし・・・いいだろ、アース・・・?」  
 
アースは悩んだ。  
「(ステラさんには今日の夜行くと約束してるし、ラブをほっとくわけにもいかないし・・・ああ、どうしよう俺)」  
「(そうだ・・・いいことを思いついた!)」  
 
「ラブ、申し訳ないが今日は俺まだ用事があってさ、宿屋にも戻る予定は無いんだ。明日の夜、エリシオンに戻ったら(パーティー後に)君の部屋でゆっくり・・・」  
「・・・私より大事な用事なのか?私と一緒にいるのが嫌なのか?」  
「い、いや違うよ。ほんと外せない用事なんだ・・・(ステラさんのことは口が裂けても言えねえ)」  
「うっ(涙)・・・アース、そんな男だったなんて・・・」  
「ラ、ラブ泣かないで!ほんと違うんだ!君を愛している気持ちは変わらない!明日の夜、ちゃんとお互いの気持ちを確認し合おう!」  
「ほ、ほんとに?」  
「ああ、約束する!ラブを愛しているのが俺だってことを、証明してやる!」  
「分かった・・・アースを信じる・・・じゃあ、今日は仕方ないから別の宿屋を探すね」  
「ご、ごめんなラブ・・・無理言って」  
「ううん・・・明日の夜、頑張ろうね・・・」  
「わ、分かったよ・・・(うわあ・・・ラブがこんなに積極的とは・・・)」  
 
「じゃあアース、明日」  
「う、うん」  
 
ラブの背中が少し寂しそうに見えた。愛するラブの誘いを断ってしまいなんだか胸が痛い・・・しかしステラとの約束も破る訳にもいかず・・・  
 
「あーっ何か変な気持ち・・・俺の浮気性もそろそろ封印しないといけないな・・・」  
 

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